2012/05/07

テルマエ・ロマエ

Thermaeromae
  GWの最終日、家族で「テルマエ・ロマエ」を観てきました。いつも空いてるシネコンだからと高をくくって行ったら、ロビーは見た事もない盛況。しかもシネコンの中でも大きな方のシアターが満員という初めての光景を目にする事ができました(笑。
 これだけの人数で上映の間中笑いが絶えないと、映画そのものに加えて雰囲気にも酔ってしまいますね。昔の娯楽映画黄金時代を思い出して、久しぶりに浮き浮きした気持ちで映画を観る事ができました。

『2012年日本映画
配給: 東宝

監督: 武内英樹
原作: ヤマザキマリ
脚本: 武藤将吾

キャスト: 阿部寛、上戸彩、北村一輝、竹内力、宍戸開、笹野高史、市村正親、他

「マンガ大賞2010」「第14回手塚治虫文化賞短編賞」を受賞したヤマザキマリの同名コミックを阿部寛主演で実写映画化。古代ローマ帝国の浴場設計師ルシウスが現代日本にタイムスリップし、日本の風呂文化を学んでいく姿を描くコメディドラマ。生真面目な性格で古き良きローマの風呂文化を重んじる浴場設計師のルシウスは、ふとしたきっかけで現代日本にタイムスリップ。そこで出会った漫画家志望の女性・山崎真実ら「平たい顔族(=日本人)」の洗練された風呂文化に衝撃を受ける。古代ローマに戻りそのアイデアを用いた斬新な浴場作りで話題となったルシウスは、時の皇帝ハドリアヌスからも絶大な信頼を寄せられるようになるのだが……。映画オリジナルのヒロイン・真実を上戸彩が演じる。監督は「のだめカンタービレ」の武内英樹。(映画.comより)』

 先に書いたように雰囲気に酔ってしまった事もありますが、単純に面白かったですね。娯楽映画かくあるべし、という感じでしょうか。もちろん後から考えると細かい突っ込みどころ満載、脚本もややスカスカ間は否めないんですが、テンポ良く笑わせてくれるので観ている間はそれほど気になりませんでした。

 映像も見事。舞台が古代ローマ現代日本に分かれるわけですが、古代ローマの壮大なセット、VFX、CGを駆使した描写は見事ですし、それに対して日本の場面場面が(ショールームは別として)おそらく意図的にショボく描かれているのも巧いと思いました。そのショボイ方の風呂やトイレの一つ一つに主人公ルシウスが感動するわけですから。また場面転換に何とプラシド・ドミンゴの歌唱をおふざけ気味に差し挟む脚色も面白く、功を奏していたと思います。

 また、古代ローマ人役に阿部寛市村正親北村一輝といった「濃い」顔の俳優を配し、「平たい顔族」の日本人を笹野高史を中心とした老人を中心にキャストを据えた対比も上手かったですね。ヒロインも上戸彩ちゃんには失礼ですが、「平たい顔族」の中で可愛い子を選んだ絶妙の人選でしたね。惜しむらくは阿部ちゃんが出演場面の半分以上裸じゃなかったか、という大熱演だったのに比して、ちゃんの方は殆ど露出が無かったところ。折角の風呂映画なのに(笑。

 またクラシックファンにはヴェルディをはじめとしてイタリアオペラの名アリア満載ですのでそれも楽しめます。

 というわけで、とても楽しい娯楽映画であったと思います。まだまだ上映は続きますので気楽に映画を楽しみたい方にはお勧めです。

評価: C:佳作
(A: 傑作、B: 秀作、C: 佳作、D: イマイチ、E: トホホ)

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2012/05/01

ももへの手紙

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 家内と映画を観ようかという事になり、予告編を見て気になっていた「ももへの手紙」にしました。アニメは映画館で観るには結構あたりハズレがありリスキーなのですが、家内は十分満足したようで良かったです。

『2012年日本映画  配給: 角川映画

監督、原案、脚本: 沖浦啓之
キャスト: 美山加恋、優香、西田敏行、山寺宏一、チョー、坂口芳貞、谷育子、小川剛生、荒川大三郎、藤井晧太、橋本佳月

監督デビュー作「人狼 JIN-ROH」(1999)で国際的にも高い評価を受けた沖浦啓之が、同作以来約12年ぶりに手がけた長編第2作。瀬戸内海の小さな島を舞台に、1人の少女と亡き父親の残した書きかけの手紙を軸に、親子の愛情を描く。ケンカして和解しないまま父親が事故で他界した小学6年生の少女ももは、母のいく子とともに親戚のいる瀬戸内海の汐島に引っ越してくる。父親が「ももへ」と一言だけ書き残した手紙を手にしたももは、父親が本当は何を書きたかったのかが気になり、空虚な日々を過ごす。そんなある日、ももは「見守り組」と名乗るイワ、カワ、マメという3人組の妖怪に出会う。(映画.comより)』

 私の場合、前々から度々言ってきたように「瀬戸内海」が出てくるだけで満足してしまう傾向があるのですが(笑、今回も舞台は瀬戸内海の小島。みかん栽培が主産業で高齢化が進む一方、瀬戸大橋につながる大きな橋が完成間近で島民は期待と不安合い半ばしているという設定の舞台が、丁寧な作画で巧く描かれていたと思います。

 しかしながら、「父の死」と「母親の病気」といういささか陳腐な題材二連発による少女の成長譚は正直なところ新鮮味に欠けると言わざるを得ず、それで上映時間120分は冗長に過ぎる気がしました。キャラクターデザインも宮崎駿細田守あたりの影響が強すぎて既視感ありまくり。
 一番いけないのはクライマックスとなる台風の日の主人公の行動。どう考えてもあまりにも突飛で非常識なものなので、これには白けてしまいました。

 それでも「藁舟流し」の風習を美しく描いた後、一艘だけ戻ってくる舟のエピソードは、それなりに泣かせてくれます。そして、これでふっきれた主人公が、今までできなかった島の子供たちへの仲間入りの通過儀礼である橋からの飛込みをやってみせるシーンは、御約束とは言え物語にカタルシスを与えてエンディングとなります。

 声優もまずまず。妖怪役の西田敏行山寺宏一チョーの3人は安心して聞いてられますし、母親役の優香も意外に良かったですね。主人公の美山加恋もまずまず合格かといったところでした。

 以上もう少し沖浦啓之ならではのオリジナリティを出し、練って濃縮しもう少し短くまとめて欲しかったとはとは思いますが、まずまず老若男女を問わず楽しめ泣けるアニメ映画にはなっていたと思います。

評価: C: 佳作
(A: 傑作、B: 秀作、C: 佳作、D: イマイチ、E: トホホ)

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2012/04/09

モテキ

モテキ DVD通常版
はむちぃ: 皆様お久しぶりでございます、ゆうけい家筆頭執事のはむちぃでございます。今回は昨年公開の映画「モテキ」のレビューに引っ張り出されてまいりました。
ゆうけい: こういうおにぎやかな映画のレビューを一人でしんみりやるのは寂しくてね(^_^;)、よろしくはむちぃ君。
は: たしかにDVDのカバー写真もド派手なお祭り騒ぎでございますね。おまけに主演女優が四人、それもご主人様にとって直球ど真ん中の好みの方ばかりでございます。
ゆ: 長澤まさみ麻生久美子仲 里依紗真木よう子、よろしいなあ、TVドラマも合わせると合計8人かっ、羨ましいぞ、森山未來君!
は: その台詞は「百万円と苦虫女」の時も聞いた気がいたしますが(-.-)
ゆ: いやいや、あの時は蒼井優ちゃんだけにもっと力が入っていて

森山未來君うらやましいぞっ、なっ、はむちぃ、違うかっ!

となっておりましたな。それにしてもものいい(漫才コンビ)、このごろ見かけませんな、吉田サラダ君どうしているんだろ?
は: ご主人様、話がそれております(ーー;)、付き合いきれませんのでさっさと映画紹介の方、いかせていただきます。

『2011年 日本映画 配給:東宝

監督・脚本: 大根 仁 
原作: 久保ミツロウ

キャスト:
森山未來
長澤まさみ 麻生久美子 仲 里依紗 真木よう子
新井浩文 金子ノブアキ リリー・フランキー

藤本幸世、31歳。(森山未來)。金なし夢なし彼女なし。
派遣社員を卒業し、ニュースサイトのライター職として新しい生活を踏み出そうとしているが、
プライベート(=恋愛)の方はまるで充実しないまま。
新しい出会いも無く、恋する事も忘れ、ロンリーな日々を送っていたが…
ある日突然、異性にモテまくる奇跡のシーズン「モテキ」が訪れた!
趣味が合い見た目もど真ん中タイプなのだが彼氏持ちの雑誌編集者・みゆき(長澤まさみ)。
みゆきの親友で清楚な美形OL・るみ子(麻生久美子)。
ガールズ・バーのハデかわ嬢・愛(仲 里依紗)。
クールビューティな先輩社員・素子(真木よう子)。
まったくタイプの異なる4人の美女の間で揺れ動く幸世。
「こんなのはじめてだ…今まで出会った女の子と全然違う…冷静になれっ!…期待しちゃダメだぁ…」
めくるめくモテキと4人の美女に翻弄されながら、
幸世は本当の恋愛(含むセックス)にたどりつけるのか??(AMAZON解説より)』

は: 本作は原作の久保ミツロウ様が映画のために、TVドラマ版の1年後を舞台に完全オリジナルストーリーを描き下ろしたそうでございます。
ゆ: そうなんですか、とにかく4人の女優をどう森山君と絡ませるかだけを考えてるかと思いきや、一応起承転結のあるドラマになっていたのはそういうことなんですね。
は: ラブストーリーにサブカル、ポップカルチャー系のフレイバーを加えたスピード感とリズム感のある演出、更にはミュージカル風にPerfumeまで登場させて「Baby Cruising Love」を挿入するところなんかは素晴らしかったですね。
ゆ: でもその割りに芯になるストーリーが実は古臭いパターンなんですよね~。しかも後半はややグダグダ感が否めない展開で、お世辞にも褒められたもんじゃなかったですねえ。
は: 評価のしにくい映画でございますね。
ゆ: まっ、結局、女優さんと森山君の絡みを楽しむ映画だと割り切ればいいわけで、そういう意味では「四人にもてる」、というのは看板に偽りありですよ~。
は: 真木よう子様は会社の上司で叱咤激励役のみでございましたからね。
ゆ: ちゃんも別に惚れてるわけじゃないしね、ただちゃんとそれなりの見せ場は作ってありましたが(笑。どんな映画に出てもいい味出しますなあ、この子は。

は: というわけで結局長澤まさみ様と麻生久美子様のお二人がメインキャラクターで森山様との恋の鞘当てになるわけですが、
ゆ: 個人的には麻生久美子ファンなので、まああの程度の露出、演技ですんでホッとしております(苦笑。一方の長澤まさみは長いスランプを振り払おうとするかのような熱演でしたねえ。
は: 胸は揉まれるわ、口移しで水を飲ませるわで、はむちぃメ、心臓が飛び出しそうにドキドキしてしまいました。
ゆ: この映画にかけてたんでしょうかね、とにもかくにも大ヒットしてよかったですな。

は: というわけでございまして、純愛映画「セカチュー」のお二人がこんなになっちゃたか感の否めないはむちぃでございますが、お気軽に楽しめるラブコメ映画でございます。
ゆ: 私は「セカチュー」を全然評価していないのでどうでもいいんですけど(笑、長澤まさみ健在をアピールできた点、その一点で評価できる作品じゃないですかね。

評価: D: イマイチ
(A: 傑作、B: 秀作、C: 佳作、D: イマイチ、E: トホホ)

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2012/04/02

一枚のハガキ

一枚のハガキ【DVD】
  御歳98歳でメガホンを撮られた新藤兼人監督の「一枚のハガキ」です。この作品を以って引退される、ということも話題になりましたし、2011年のキネマ旬報第一位にも選出され、注目を集めました。

『2011年 日本映画 近代映画協会制作、テアトル東京配給

監督・脚本・原作:新藤兼人

キャスト; 豊川悦司/大竹しのぶ/六平直政、柄本明、倍賞美津子、大杉漣、津川雅彦/川上麻衣子 絵沢萠子、大地泰仁、渡辺大、麿赤兒

戦争末期に徴集された100名の中年兵は、上官によるクジ引きによってそれぞれ次の戦地が決められた。宝塚に赴任する松山啓太は、フィリピンへ赴任することになった戦友・定造に妻・友子からの一枚のハガキを託される。
――今日はお祭りですが あなたがいらっしゃらないので 何の風情もありません――
「検閲があり返事が出せない。そして俺は死ぬだろう。お前が生き残ったら、このハガキは読んだと妻に伝えてくれ」と、啓太は定造から依頼された。そして、終戦。100名の内、生き残ったのはたった6名。生き残った啓太はハガキを書いた友子を訪ねる。友子は夫の亡き後、立て続けに家族を失い、古い民家とともに朽ち果てようとしていた。戦後、全てを失った二人が見つけた“再生”への道とは…。(AMAZON解説より)』

 ご自身も戦争召集経験のある監督の執念にも似た思いいれが感じられる反戦映画です。くじで生死が決められる中年兵。兄が死ぬと家を絶やさないために弟と結婚させられる未亡人。九死に一生を得て帰郷したら、なんと父と嫁が駆け落ちしていて近所の物笑いのタネになる帰還兵。声高に反戦を叫ぶのではなく、そのような理不尽な人間模様をペーソス溢れる泣き笑いにくるみ、不幸のどん底からでも、踏まれて伸びていく麦のように人間はへこたれずに生きていくのだ、という人間賛歌で終わっているところに98歳という齢を重ねた人間新藤兼人の真骨頂を見る気がします。

 俳優陣も超一流。主人公大竹しのぶの演技は鬼気迫るものがあり、やはりこの人は天才であり、演技の鬼だな、と再認識しました。柄本明の土下座して頼みながらその後にやっと笑う表情なども、さすがと思わせます。憎めない憎まれ役の大杉漣の奮闘振りも光ります。その他豊川悦司六平直政をはじめ殆どの登場人物がさすが、と言わせる演技を見せます。
 アイドルや若手人気俳優が幅を利かせる日本映画界ですが、こういう人たちの熱演を見ると、演技のレベルがやはり一段も二段も違うなと思います。

 と、ここまで誉めるとキネ旬一位に相応しい傑作、と締めくくるべきなのでしょうし、方々の映画サイトやブログを覗いてみても絶賛の声ばかりなのですが、、、

 残念ながら個人的にはごく平凡な映画だな、という印象でした。演技の凄さに演出がついていかず、クロマキー丸分かりのシーンなど安っぽさが諸所に見受けられる映像にも疑問符がつきます(この点はおそらく低予算が一番の問題なのでしょうけれど)。

 もちろん、だからと言って見る価値のない作品ではありません。過大評価することなく、老監督の思いの詰まった愛すべき小品、として観れば納得のできる作品であると思います。

評価: C: 佳作
(A: 傑作、B: 秀作、C: 佳作、D: イマイチ、E: トホホ)

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2012/03/05

麒麟の翼

Kirinn
はむちぃ: 皆様こん**は、本日の映画レビューは現在公開中の邦画「麒麟の翼」でございます。TVドラマ「新参者」の映画化でございますが、ご主人様はご覧になっておられませんよね?
ゆうけい: 当然ながら阿部ちゃんファンの家内のリクエストでございます。ついでながらもうすぐ公開の、阿部ちゃんが裸で奮闘する風呂映画「テルマエ・ロマエ」のことを話したら、「観にいく、観にいく」と即答しておりました。
は: ご主人様話がそれております(-.-)。当然TVドラマの設定や約束事がそのまま映画に出てまいりますが、それを無視しても楽しめる映画になっているかどうかが鍵でございますね。
ゆ: ついでながら東野圭吾の原作シリーズも読んでおりませんでしたが、それでもまずまず満足できる刑事ドラマとなっておりました。でははむちぃ君、映画紹介お願いします。
は: かしこまりました。

『2011年日本映画、配給: 東宝

監督: 土井裕泰
原作: 東野圭吾
脚本: 櫻井武晴

キャスト: 阿部寛、新垣結衣、溝端淳平、松坂桃李、山崎努、三浦貴大、劇団ひとり、鶴見辰吾、松重豊、田中麗奈、中井貴一 、他

東野圭吾の人気ミステリー「加賀恭一郎シリーズ」第9作の映画化。同シリーズが原作で2010年に放送された連続ドラマ「新参者」、11年の単発ドラマ「赤い指」に続き、阿部寛が主人公の刑事・加賀恭一郎を演じる。東京・日本橋の翼のある麒麟像にもたれかかるようにして死んでいた男の捜査に当たる加賀だったが、容疑者の八島が逃亡中に車にはねられ意識不明に。八島の恋人・香織は涙ながらに無実を訴えるが……。ドラマ版から続投の溝端淳平、黒木メイサらに加え、事件の真相に深くかかわる香織役で新垣結衣が共演。(映画.comより)』

は: TVドラマの映画化といえばとかくストーリーのスケールを大きくしたり、派手なアクションシーンを用意したりしがちなものですが、
ゆ: 本映画はそういう事は全くなく、むしろ地味で堅実な作りとなっておりましたね。あえてわざわざ映画にしなくても、
は: TVで2時間拡大版で放送しても全く違和感がないじゃないか、という意見も聞こえてきそうですが、
ゆ: テーマやプロットは地味でもしっかりと作り込んでいくという姿勢には、ド派手に作って壮大に失敗しているどこかの作品に比べるとむしろ共感しますね。

は: 原作が東野圭吾である点も安心して見られますね。
ゆ: このブログでも「容疑者Xの献身」や「百夜行」などを紹介してきましたが、さすが売れっ子作家だけあって常に一定レベル以上のストーリーを用意してくれますよね。
は: 本作でも殺人事件捜査の流れの揺れや被害者家族の受難、容疑者にまつわる労災隠しという社会問題などを丁寧に描いており、最後のどんでん返しまで納得できる脚本となっておりました。
ゆ: と、ここまで褒めておいてなんですが、そもそも最初に被害者が刺された後、無理に日本橋まで歩いて行かずすぐに救急車を呼んでいれば助かってこんなややこしい話にならなかったんじゃないか、という思いは観ている間ずっとありましたね(苦笑。
は: 結構長い距離を歩けたのですからその可能性はありますね(^_^;)、でもそれを言ってしまうとそもそもこの映画が成り立ちません。

は: さて、各俳優の演技ですが、ドラマの映画化だけあって皆様安定して呼吸のあった演技でございました。
ゆ: 家内お気に入りの阿部寛、渋いですね。ユーモラスな役からこういうシリアスな役まで何でもこなせる上に、ルックスやガタイも映画の大スクリーンに負けませんからこれからも映画で活躍してほしいですね。
は: 映画版のヒロイン、新垣結衣様はいかがでした?
ゆ: そろそろカワイコちゃん女優の殻を破ろうと半汚れ役の演技に果敢に挑戦していましたね。好感は持てましたが、ヘアスタイルのせいか、ずいぶん顔がデカく見えましたね(^_^;)。
は: ご主人様お気に入りの田中麗奈様はもう貫禄の演技でございました。
ゆ: まあ映画の本筋には関係ない役なので、今回はノーコメントということで(笑。

は: ということでございまして、原作やTVドラマをご存じない方も十分楽しめる映画でございます。
ゆ: こういう映画はえてしてDVDで観ようという事になりがちですが、やはり映画館の大スクリーンで観ていただきたいですね。

評価: C: 佳作
(A: 傑作、B: 秀作、C: 佳作、D: イマイチ、E: トホホ)

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2012/01/30

しあわせのパン

Photo
はむちぃ: みなさん、こん**は、本日は公開されたばかりの映画「しあわせのパン」のレビューでございます。もちろん主人のゆうけいが原田知世ファンであるゆえのチョイスでございます。
ゆうけい: 羨ましいぞ、大泉洋君!まあ、それはともかく知世様、前回の主演映画「となり町戦争」はいまいちでしたし、最近紹介した「東京オアシス」ではチョイ役でしかも映画自体がトホホでしたので、今回こそはと期待しておりました。
は: 最近多くなってまいりました地元密着型の映画で、舞台は北海道の洞爺湖畔の月裏という風光明媚な土地でございます。
ゆ: 北海道では1週間早く封切られて大入りだそうで、こういう試みも着実に根付いてきていますね。でははむちぃ君、映画紹介まいりましょうか。

『2012年 日本映画、配給:アスミック・エース

監督、脚本: 三島有紀子

キャスト: 原田知世、大泉洋、森カンナ、平岡祐太、光石研、八木優希、中村嘉葎雄、渡辺美佐子、中村靖日、池谷のぶえ、本多力、霧島れいか、大橋のぞみ、あがた森魚、余貴美子

原田知世と大泉洋が主演し、北海道・洞爺湖のほとりの小さな町・月浦を舞台に、宿泊設備を備えたオーベルジュ式のパンカフェを営む夫婦と、店を訪れる人々の人生を四季の移ろいとともに描いたハートウォーミングドラマ。りえと尚の水縞夫妻は東京から北海道・月浦に移住し、パンカフェ「マーニ」を開く。尚がパンを焼き、りえがそれに合ったコーヒーと料理を出すマーニには、北海道から出ることができない青年や口のきけない少女とその父親、思い出の地を再訪した老夫婦などさまざまな人々がやってくる。(映画.comより)』

は: ホンワカと心が温まる、静かで美しい映画でございました。
ゆ: とはいえ、う~ん、少々退屈だったかな~。

は: そうでございますか?夏から春にかけての景色は大変美しゅうございましたし、
ゆ: 知世様の淹れるコーヒー、大泉洋の焼くパンはとても美味しそうでしたし、
は: 出て来る皆さんは皆さんいい方ばかりでしたし、二人の夫婦の絆が少しずつ深まっていき、最高にハッピーなラストを迎えるのはとてもよかったですね。
ゆ: ということで一つ一つのシーンはいいところが一杯あるのですが、どうも浮世離れしてる世界を見ている気がしましたね。

は: 構成としては主人公二人が経営するパンカフェを舞台に、主人公夫婦や常連さんと夏・秋・冬のお客様との心の交流を描くオムニバス映画型式となっておりましたね。
ゆ: こういう型式だとどうしてもお客様のストーリーがメインになり、主人公夫婦が受身になってしまうんですよね。
は: だからあの元気な大泉洋様も、久々の主演の原田知世様もどうしても「静」的な演技になってしまう。
ゆ: 知世様のイメージには合ってるんですが、ファンとしては「動」的な演技も期待してたんですよね~。

は: 一つ一つのエピソードはいかがでしたか?
ゆ: それがまあ突っ込みどころ満載でね~(苦笑、まあいちいち目くじら立ててちゃきりがないので、大泉君や知世様がそうしていたように温かく見守ってあげないと仕方ない、というところでしたね。

は: 唯一仕掛けとして面白かったのは、大橋のぞみ様のナレーションですね。
ゆ: てっきり飼っている子羊の目線かと思ってたんですが、粋なラストでの種明かしでしたね。

は: という事で、女性監督ならではの感性が光るハートウォーミングドラマであるとともに、ストーリーとしてはやや平板なところが惜しい映画でございました。
ゆ: 綺麗な風景、美味しそうな料理、善良な人々の何気ない日常を切り取った、絵画を見るような感覚で観ていただければ、ちょっと心がホッコリできると思います。

評価: D: イマイチ
(A: 傑作、B: 秀作、C: 佳作、D: イマイチ、E: トホホ)

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2012/01/22

日輪の遺産

日輪の遺産 特別版 [DVD]
  以前紹介した浅田次郎の「日輪の遺産」の映画化です。去年公開されたのですが、残念ながら劇場で観る機会を逸しておりました。小説自体は、浅田次郎にしてはこなれておらず、氏自身も「若書き」で今から思うと書き直したいところも多いと述べているやや生硬な内容・文章なのですが、映画はその辺を巧く処理し、観やすく理解しやすい内容になっておりました。

『2011年 日本映画

監督: 佐々部清
原作: 浅田次郎
脚本: 青島武

出演: 堺雅人
中村獅童 福士誠治 / ユースケ・サンタマリア 八千草薫
森迫永依 麻生久美子 塩谷瞬 八名信夫

 山下将軍が奪取した900億円(現在の貨幣価値で約200兆円) ものマッカーサーの財宝を、秘密裡に陸軍工場へ移送し隠匿せよ―!その財宝は、敗戦を悟った阿南らが祖国復興を託した軍資金であった。
 真柴は、小泉中尉、望月曹長と共に極秘任務を遂行。勤労動員として20名の少女達が呼集される。御国のため、それとは知らず財宝隠しに加担するが、任務の終わりが見えた頃、上層部は彼女ら非情きわまる命令を下す。
 そのとき真柴ら3人の軍人が取った行動とは?果たして少女達の運命は―?(AMAZON解説より)』

 先程も述べたように、まず脚本の巧さが光る映画です。原作では1945年の財宝隠匿にまつわる少女たちの悲話と、1992年の一人の不動産屋が主人公となる一種の宝探し譚が平行して描かれるのですが、映画では後者をばっさりと切り捨て、八千草薫演じる未亡人と、ミッキー・カーチス演じる元マッカーサー付き通訳二人の回想という形で物語を処理しています。
 これにより物語の見通しが良くなり、1945年の事件に観客が集中する事ができるようになりました。その事件の顛末も巧くまとめてあり、浅田次郎氏の原作に見られる過度のマッカーサー賛美も巧く抑制してありました。御涙頂戴を目的としたラスト近くのシーンなど、ちょっと脚色の過ぎるところが気になりましたが、それを差し引いても、十分合格点の脚本に仕上がっていると思いました。

 この脚本があれば「半落ち」等のヒューマン・ドラマを得意とする佐々部清も演出の腕を十分振るえます。
 終戦前夜の軍部の対立と混乱、敢えて敗戦を受け入れ将来の日本のために再訪隠匿の危険なミッションを引き受ける軍人3人、「出て来いミニッツ・マッカーサー、来れば地獄へ逆落とし」というような醜悪な歌を歌いながら、過酷な労働を嬉々として従事する無垢な少女たち、そして完遂直前に彼女たちに降りた命令に愕然とし憤然と抗議する主人公真柴少佐、そして彼らの戦後の運命。

 原作の1992年の時点でもはるか過去となっていて、ましてや、ゆとり教育とやらのせいか、日本が過去にアメリカと戦ったことを知らない若者が多い2011年現在。その今だからこそ再認識するべき内容を、佐々部清監督は当時の彼等彼女らの心に寄り添い、極端に言えば「田舎の駅から洞窟へ荷物を運ぶだけの物語」を、飽きさせることなく最後まできっちりと撮りきっています。

 ある命令の解除がなされたにもかかわらず、一人を除く少女たちがとった行動は今の若い世代には理解しがたいでしょうし、原作を読んだ時点での私も浅田次郎の小説にしては心に響いてきませんでした。この映画を観ても完全に感情移入するわけにはいきませんでしたが、ある程度受け入れる事ができたのは、やはり佐々部清の手腕だと思います。

 その演出に応える俳優陣も堅実なキャスティング。超売れっ子の堺雅人の真柴少佐役が果たして適役かどうか見るまでは若干疑問がありましたが、ちゃんとこなしていましたね。何でもできる器用な人です。ただ、当時の陸軍軍人としてはやはりスマートすぎる印象は拭えませんね。2011年度の日本アカデミー賞には「武士の家計簿」で主演男優賞にノミネートされていますが、確かにああいう役が彼の本分でしょう。
 対照的にたたき上げの傷痍軍人役の中村獅童は見事な適役ぶりを発揮しておりましたし、経理部軍人の福士誠治の熱演にも心を動かされました。意外な適役だったのが、少女たちの学級担任教師のユースケ・サンタマリア。当時にしてはリベラルで子供思いの教師の雰囲気朴訥とした演技で良く出していました。あと、陸軍大臣役の柴俊夫の凄絶な切腹が短時間の出番ながら強いアクセントを映画自体に与えておりました。
 私の好きな麻生久美子は今回は現代側の八千草薫の孫というまあ端役でしたが、画面に出てくれるだけでこの暗い物語に沈む心をを癒してくれました。

 当時の人々の構成への思いを受け止める、という難しい問題をこのような映画で語り継いでいく事は(フィクションとは言え)大変意義深いことと思います。世代を問わず観ていただきたい映画です。

評価: C: 佳作
(A: 傑作、B: 秀作、C: 佳作、D: イマイチ、E: トホホ)

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2012/01/15

ロボジー

Robog
 公開中のコメディ「ロボジー」を家族で観てきました。題名から想像できるとおり、程よいショボサ加減アホさ加減の楽しいコメディに仕上がっておりました。ポスターの「制御不能じゃ。」のキャッチコピーも上手い。これが一番笑えたりして(笑。

『2012年 日本映画 配給;東宝

監督・脚本: 矢口史靖

キャスト: 五十嵐信次郎、吉高由里子、濱田岳、川合正悟、川島潤哉、田畑智子、和久井映見、小野武彦

「ウォーターボーイズ」「ハッピーフライト」の矢口史靖監督がロボットを題材に描くオリジナルのコメディドラマ。弱小家電メーカー、木村電器で働く小林、太田、長井の3人は、企業広告を目的に二足歩行のロボットを開発していたが、発表直前にロボットが大破。その場しのぎで、最近周囲から痴呆を疑われている一人暮らしの頑固老人・鈴木をロボットの中に入れたところ、鈴木の勝手な活躍によりロボットが大評判に。世界中から注目を浴びてしまい……。ミッキー・カーチスが「五十嵐信次」名義で主演。共演に吉高由里子、濱田岳、川合正悟、川島潤哉ら。(映画.comより)』

 二足歩行型ロボットが壊れてしまい、その中に偏屈な爺さんが入る事になる。そのアイデア一発で面白い映画になる予感は十分。
 あとはロボット開発部の泣き笑いをメインに、爺さんの泣かせネタを仕込み、それにヒロインを一人からませて、随所に笑いのネタを仕込めば面白い映画になることは必定。さすが「ウォーターボーイズ」「スウィングガールズ」「ハッピーフライト」の矢口史靖監督。とは言え、それまでの作品に比べれば随分しょぼい感は否めませんでした。

 ロボットの造型がまずしょぼい。
 主人公の偏屈爺さんの風貌・身なりからやることなすことまで、みなしょぼい。
 弱小家電メーカーのロボット開発部の3人がこれまたしょぼい。
 随所に仕込まれた笑いのネタも結構しょぼい。
 A級といえば吉高由里子の可愛さくらいか(笑。

 こう書いてみると完全にB級コメディなんですが、そのしょぼさを逆手にとって絶え間ない笑いに変え、時には爺さんに感情移入させてしまうのが、コメディのツボを心得ている矢口史靖監督の手腕なんでしょう。

 五十嵐信次郎ことミッキー・カーチスの飄々とした演技、涙ぐましく演じるほど笑えてしまう3人組、濱田岳川合正悟(Wエンジンのチャン川合)、川島潤哉、ロボット工学用語を器用にあやつる吉高由里子、みんな熱演でしたが、一瞬だけ登場して笑わせる竹中直人もさすが(笑。

 敢えて言うと、ラスト近くの偽ロボット疑惑記者会見の場面、結局何とかばれずに済むのですが、その免れ方がそれまでの話の進行と整合性がとれていないのが少々気になりました。

 まあ細かい事は気にせずに、最後のダメ押しネタまで楽しく笑ってれば良い映画だと思います。そうそう、エンドロールでは五十嵐信次郎がさすがの歌声でStyxMR.ROBOTOを熱唱しております。

評価: C: 佳作
(A: 傑作、B: 秀作、C: 佳作、D: イマイチ、E: トホホ)

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2012/01/08

たまたま

たまたま [DVD]
  CMクリエイター小松真弓蒼井優の出会いは「午後の紅茶・サーフィン編」だそうですが、相性がよかったのかついに長編映画まで作ってしまいました。去年ミニシアター系で公開された映画「たまたま」です。蒼井優ファンとしては見逃せないところですが、当地では公開されなかったのでDVDになるのを待っておりました。

『2011年日本映画

監督・脚本:小松真弓
キャスト:蒼井 優、森山開次

主題歌:シガー・ロス「インニ・ミェル・シングル・ヴィトゥレイシングル」

たまたま、美しいアイルランドを旅する彼女が出会う、たくさんの日常。彼女の旅の目的とは――。役者という枠を超えた“カルチャー・アイコン”といっても過言ではない女優・蒼井優の主演作品。監督・脚本は今作で初長編作品に挑戦した、CM界で最も評価の高い女性クリエイター小松真弓。 (AMAZON解説より)』

 たまたま水に落ちた手紙(=蒼井優)がたまたまいろんな人と出会い、最後に目的地に辿り着く。という50分余のストーリーで全編アイルランドロケ。映像はとても美しいし、随所に小松真弓の感性が光ります。
 シガー・ロスの音楽を使いながら何故アイルランドなんだ?という疑問が湧きましたが、監督と蒼井優の対談を見てわかりました。ビヨークがアイスランドかアイルランドか分からなかった。。。。。それでアイルランドまでいけるんだから良い商売ですねえ(羨。。。。。

 で、、、これを「映画」としてどうなんだ?と言われると、、、とっても評価が難しい。少なくとも普通にストーリーを楽しむ映画ではない。まあ好意的に評すれば「感性で楽しむ」映画なのでしょう。蒼井優ファンとしては、彼女のイメージフィルムとして楽しく見られました。

評価: 不能

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2012/01/05

マイ・バック・ページ

マイ・バック・ページ [DVD]
  ボブ・ディランの名曲「My Back Pages」から題名を取った、川本三郎のノンフィクションを映画化した「マイ・バック・ページ」です。去年の春に公開されていて気になっていたのですが、ようやくDVDで観る事ができました。
 私自身は学生運動には完全に乗り遅れた世代ですが、それでも何となくあの時代の残り火のようなものを感じながら学生生活を送っていました。本作は、そんな時代の空気を濃厚に詰め込んで、息苦しささえ感じる映画となっていました。ある程度退屈と困惑と後に尾を引く後味の悪さを覚悟してみるべき映画である、と申し上げておきます。

『2011年日本映画

監督:山下敦弘
脚本:向井康介
原作:川本三郎「マイ・バック・ページ」

キャスト
妻夫木 聡/松山ケンイチ
忽那汐里/石橋杏奈/韓英恵/中村 蒼
長塚圭史/山内圭哉/古舘寛治/あがた森魚/三浦友和

1969年。理想に燃えながら新聞社で週刊誌編集記者として働く沢田(妻夫木 聡)。彼は激動する“今”と葛藤しながら、日々活動家たちを追いかけていた。
それから2年、取材を続ける沢田は、先輩記者・中平とともに梅山(松山ケンイチ)と名乗る男からの接触を受ける・・・・・・。

「銃を奪取し武器を揃えて、われわれは4月に行動を起こす」

沢田は、その男に疑念を抱きながらも、不思議な親近感を覚え、魅かれていく。
そして、事件は起きた。「駐屯地で自衛官殺害」のニュースが沢田のもとに届くのだった――。(AMAZON解説より)』

 ベトナム戦争への反対運動、70年安保闘争、それを象徴する安田講堂事件。その余熱がまだ残っていた頃に突発した「赤衛軍事件」と呼ばれる、自衛隊朝霞駐屯地の自衛官殺害事件がこの映画のモデルとなっています。

 その赤衛軍なる新左翼セクトの胡散臭さをこの映画は赤裸々に描いています。松山ケンイチ演じる梅山(偽名)という新左翼の行動は革命と言うには程遠く、声高く語る高邁な理想とは裏腹に嘘と欺瞞とエゴに満ち、自衛官殺人事件で逮捕されてからの自己弁護も見苦しい事この上ない。

 それを東大出の一流新聞社(もろに朝日新聞と分かりますが)の社員、妻夫木聡演じる沢田が何故見抜けないのか?否、おそらくは半ば気がついていてそれでも彼へのシンパシーを捨てきれないのか?
 これは映画だからで片付けられない問題です。現実に原作者である川本三郎が陥ってしまった陥穽であり、その為川本は朝日新聞社を懲戒解雇、実刑(執行猶予付き)を受けているのですから。

 映画では二人が打ち解けて交流が深まるきっかけは、沢田の自宅の離れで二人が趣味について語りあう場面でした。お互いにCCR(クリーデンス・クリアウォーター・リバイバル)が好きであると分かり、梅山が沢田のギターを借りて「雨を見たかい」を弾き語り、そして梅山が沢田の書棚から宮沢賢治の銀河鉄道の夜を取り出して好きだと語る。
 この映画の中でも穏やかで暖かい雰囲気の良い場面だったと思います。逆に言えば、梅山側に立てば、たかがそれだけのことでも人を篭絡できる、という手練手管を心得ていたのかもしれません。

 とにもかくにもこの不思議な親近感を沢田はいい様に利用され、結果的に一人の自衛官が何の咎もなく殺されるという陰惨な事件が起こってしまいます。それでも梅山をかばい続ける沢田の行動にはもちろん彼なりの論理があります。しかしそれも新聞社上層部にあっさり否定され、「新聞はそんなに偉いんですか!?」との必死の抗議も、社会部部長白石を演じる三浦友和

そうだよ、新聞は偉いんだよ

と、一言で切って捨てられてしまいます。この三浦友和の演技は鳥肌ものでしたね。それまで長時間つき合わされてきた梅山、沢田の行動なり思想なりが、「大人」の世界から見れば児戯に等しい稚拙なものだと思い知らされる、寸鉄釘をさすような凄みのある台詞でした。

 このような「敗北」の映画ですから、後味は決して良くありません。が、一本の映画としてみれば実に丁寧に作られていたと思います。監督の山下敦弘、脚本の向井康介ともにこの時代には生まれてさえいない世代ですが、プロデューサーから原作本を渡され、、3年間かかって構想を煮詰めたそうです。それだけのことはあって冒頭にも述べたように内容は濃厚ですし、セットやファッションなども本当に忠実にあの時代を再現しています。

 俳優陣の熱演も特筆に価します。特に松山ケンイチの役への入れ込み様は見事、うすっぺらい新左翼の虚勢の演技には凄みさえ漂っていました。それに比べると妻夫木聡の役割は常識人である分、おとなしめの演技であるため損をしている感じはありました。ただ、ラストシーンで泣く場面には、それまでにある伏線がある分だけほろりとしてしまいました。脇を固める俳優陣も堅実でした。先程述べた三浦友和もさることながら、明らかに滝田修がモデルと思われる京大全共闘議長役の山内圭哉の怪演がとりわけ強く印象に残りました。

 陰鬱な後味の悪い映画だと最初に述べておきながら随分熱く語ってしまいましたが、それだけ優れた映画だったのかな、と今は思います。あの時代を知らない世代の方にも、決して理解しろとは申しませんが政治が混迷を深める今だからこそ一度は見ておいて欲しい映画であると思います。

評価: B:秀作
(A: 傑作、B: 秀作、C: 佳作、D: イマイチ、E: トホホ)

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