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2009/07/31

インスタント沼

Instantnuma
はむちぃ: ご主人様、急用とは何でございます?
ゆうけい: やあはむちぃ君、すまんね、ちとまた映画につきあってくれんかね?
は: はは~ん、奥様がお留守なのをいい事にまたまたトホホ系映画でも観る算段でございますね(;一_一)。
ゆ: いやいや、トホホ系じゃなくてユルユル系だよ(*^_^*)。
は: 分かりました、三木聡様の「インスタント沼」でございますね。そして目的はずばり麻生久美子様、ですね。
ゆ: 当ったり~。
は: はあ、まあようございます、久しぶりに映画館までお供いたしましょう。

『 監督・脚本:三木聡
キャスト:麻生久美子、加瀬亮、風間杜夫、松坂慶子、相田翔子、笹野高史、ふせえり、岩松了、他

2009年、日本映画、119分

非科学的なことは一切信じない、雑誌編集者の沈丁花ハナメ(麻生久美子)は、担当する雑誌が廃刊になって会社を辞することになり、母親の翠(松坂慶子)は何を考えたかカッパを探して池に落ち昏睡状態になるなど、泥沼の渦中にあった。同じ池から発見された母が投函した古い一通の手紙から自分の出生の秘密を知ってしまったハナメは、行方知れずだという実の父かもしれない男・沈丁花ノブロウ(風間杜夫)の居場所を探し、訪ねてゆくことにする。ノブロウは怪しげな骨董店「電球商会」を営んでおり、店にタムロするパンク青年・ガス(加瀬亮)からは「電球」と呼ばれていた。ノブロウのいい加減で身勝手な性格に呆れ果てたハナメだったが、彼らと触れ合っていくうちに骨董に興味を持ちはじめ、自ら骨董屋を開業する。なかなか商売がうまく行かずテンションの上がらないハナメに電球は「物事に行き詰まったら水道の蛇口をひねれ」という教えを伝授する。』

は: いやはや、何と申しましょうか、ふざけてるんだか真面目なんだか、、、
ゆ: 「亀は意外と速く泳ぐ」や「転々」を撮った三木聡のセンスがお好きな方は2時間クスクス笑い続けてられますし、
は: 麻生久美子ファンの方は、
ゆ: 2時間彼女の奮闘振りを楽しんでいられますね。
は: しかし、どちらでもない方が映画館でご覧になったら、、、
ゆ: 元気が出ますね!
は: 怒る元気しか出ませんよ、きっと(--〆)。
ゆ: まっ、そうかもね(苦笑。

は: 三木様のセンスと先程おっしゃいましたが、メインストーリーが奇想天外で人を食っていて、細部にはとことん拘るあたりでございましょうか。
ゆ: そうですね、パンフの三木聡のインタビューによりますと、土に水をかけると沼が出来上がると言う「インスタント沼」の発想は、昔彼が担当していた「北半球で一番くだらない番組」中の「日光テレフォンショッピング」というコーナーで取り上げた事があるそうです。
は: その馬鹿馬鹿しい構想を綿密な脚本・演出で意味不明なのに面白い映画に仕上げるという技は、まさに三木様の真骨頂でございますね。で、今回ご主人様のツボにはまった演出はどんなところでございます?
ゆ: 意外な事に三木映画初主演となる麻生久美子に、徹底して体を張った演技をさせてるところですかね。
は: やっぱりそこにきますか(-_-;)。
ゆ: いやほんと、麻生久美子の張り切り振りは凄いよ、余程三木映画に出るのが嬉しかったみたいです。先日のTV番組「情熱大陸」でリハと本番の演技の違いを見ておりましたので余計に楽しめました!

は: まあそれはそうと、映画レビューでございますので、演出技法的な所を説明していただきませんと(-.-)。
ゆ: そうですね、演出としては、映画冒頭に子フレーム中で展開される8mmフィルム風の短いカットの連続が面白かったですね。
は: 麻生久美子様がマシンガン・トーク的に自らの泥沼ぶりをおしゃべりになることにより、観客に手短にバックグラウンドを説明する技法でございますね。それにしても背中に「バカ」と書いた張り紙を張らせて駅構内を歩かせたり、ゲリラ撮影的なことをしてらっしゃいますね。
ゆ: だから言ったでしょ、体張ってるって(笑。

は: 他のキャストも三木常連組が大半ですので、安心して観ていられますね。
ゆ: そうそう、その下地の上にゲスト組がどう絡んでいくかが三木映画の見所なんですけど、
は: 「転々」での三浦友和様のような役割を今回は風間杜夫様が怪演しておられました。ご主人様は三浦様を高く評価しておられましたが、風間様はいかがでございます?
ゆ: まあ役割的に三浦友和ほど重いものを背負ってないので、怪演にとどまってますけどこれは仕方ないでしょうね。
は: 加瀬亮様はいかがでございました?
ゆ: トサカ頭が良かったですね(笑。「情熱大陸」で麻生久美子と絡むシーンだけ観た時はステレオタイプなチンピラ風演技で終始するのかなと思ってましたが意外に良かったです。「ハチクロ」「硫黄島」「それボク」「犬と私」とそれなりにいろいろな役柄をこなしているだけあって、三木監督の起用にちゃんと応えてましたね。

は: というわけでございまして、三木聡ファン、麻生久美子ファン限定でございますが、2時間楽しめて元気を貰える映画でございます。
ゆ: 張り紙やナンバープレートなどの小ネタやエンドロール後のサービスカットもお見逃しなく!

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2009/07/30

Talking With Strangers / Judy Dyble

Talking with Strangers
  前記事で一体何時になったら着くことやらとぼやいていたら、それが天に通じたんでしょうか、突然に配達されてきました。イギリスのベテラン・フォーク・シンガーJudy Dybleの新譜「Talking With Strangers」です。2004年にちょっとだけ紹介した「Enchanted Garden」以来5年振りとなりますね。
 ジュディ・ダイブルと言ってもご存知ない方も多いとは思いますが、イギリスの伝説のフォーク・バンド、フェアポート・コンヴェンションのオリジナル・メンバーであり、更にはイアン・マクドナルドの恋人であった関係でキング・クリムゾンの結成時にも少し関わっていました。第3期KC解散後に出された「Young Person's Guide To King Crimson」には彼女がメイン・ボーカルをとる「Talk To The Wind」が収録されています。
 今回はそのコネクションを活かしてKC人脈からは何と直々にロバート・フリップ翁、元恋人のイアン・マクドナルドパット・マステロット、フェアポート・コンヴェンションからはサイモン・ニコル、ペンタングルからジャッキー・マックシー、更にはオール・アバウト・イヴからジュリアン・リーガンと、見る人が見れば(笑)垂涎の超豪華ゲストが参加しております。

1: Neverknowing
2: Jazzbirds
3: C'set La Vie
4: Talking with Strangers
5: Dreamtime
6: Grey October Day
7: Harpsong  ~Harpsong  Instrumental ~

 まあ豪華ゲストはさておいて、今回のアルバムの中核となるのはNo-ManのTim BownessとCromer MuseumのAlistair Murphyの二人。ジュディのライナーノートによると、二人の子供が手を離れて後インターネットを使うようになり、新たなミュージシャンとのつながりができティムと知り合う事ができ、ティムからアリステアを紹介された、との事です。

 この3人を中心に、期待通り、懐かしくも新しいトラッド・フォークの世界が展開されていきます。クラシカルなFC時代の雰囲気そのままの「Neverknowing」に続き、少しボーカルにイフェクタをかけて夢想的な雰囲気をかけ、更にはイアンのフルートが初期KCを髣髴とさせる「Jazzbirds」、そしてELP時代のグレッグ・レイクの名曲「C'set La Vie」と続くあたりはオールド・ファンにはたまらない構成ですね。

 タイトル曲「Talking with Strangers」は、中核となる3人で完成させたとても美しい曲で、アリステアの流麗なピアノをバックにジュディとティムがデュエットしております。「Dreamtime」ではティムとジャッキーがバックボーカルを取り、イアンが再びフルートを演奏、そしてあのパットが大人しくドラミングしております(笑。デュエットの「Grey October Day」をはさみ、いよいよ最終曲「Harpsong」で大団円を迎えます。

 この「Harpsong」、先ずは19'19"という演奏時間がプログレしております。そして動員人数も凄い。中核の3人に加え、上に挙げたゲストをすべて総動員。そして途中でいきなりそれまでのトラッド・フォークの雰囲気を完全にぶち壊すKCも真っ青なインプロヴィゼーションが展開されます。いやあ、やってくれましたわ(笑。この一曲だけでもKCファンには貴重なコレクト・アイテムと申せましょう。

 というわけでたった7曲しか入っていませんが、ブリティッシュ・トラッド&プログレ・ファンなら買う価値あり、の一枚でございます。

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2009/07/28

The Isle of Dreaming / Kate Price

The Isle of Dreaming
 Kate Priceと言ってもイギリスの爆乳モデルの姐さんではありません。ハンマー・ダルシマーを始め、多彩なエスニック楽器を弾きこなす才媛です。と言っても良く知らんのですが(をいをい。
 実は先月初めにMAO.Kさんのブログで試聴して、ケルト好きの私はすぐに密林をクリックしてしまいました。が、ついでにJudy Dybleの新譜も一緒に注文してしまったためか、待てども待てども一向に来る気配無し。忘れかけていた頃にケイトさんの方だけ届きました。

1. Isle of Dreaming
2. Andalusia
3. Voices of My People
4. Phoenix
5. Kate Counts Eight
6. Sea of Silence
7. Mystic Warrior
8. Planxty Almblade-Cruso
9. Beloved

『ケルトの幽玄さをはらみながらも、スパニッシュ風のギターがヴォーカル・メロディーに憂いの表情を色づけていく「The Isle of Dreaming」、タイトル通りアンダルシアの風景を描写した哀愁感に満ちた「Andalusia」、シタールやサーランギを意識したヴァイオリンといったインド風味が濃い10分以上の大作「Voices of My People」、タブラがレゲエっぽいリズムを刻む「The Phoenix」、ギターとダルシマーの美しいアルペジオに様々な楽器が絡んでいく、雄大な空間を連想する伸びやかなメロの「Kate Counts Eight」、All About Eveが歌ってもおかしくないようなフォーク・ロック風の「Sea of Silence」、アコ・ギとダルシマーによるブルースっぽいパートと、Kateさんのスキャットも含んだニュー・エイジ的なフレーズが交互に現れる「Mystic Warrior」、ダルシマーがメインの室内楽的でクラシカルな「Planxty Almblade-Cruso」、静かに歌われるラブ・ソングの「Beloved」まで、ケルトのトラッドを下地に据えながら自由に飛翔していくような透明感に満ちた淡い色合いの音と、それに相応しい天使降臨系の彼女の歌声が堪能できます。(MAO.Kさんのブログより)』 

 ジャケも良い!という以外、特に付け足す事はございません(笑。それにしても多才な方ですね。所謂癒し系BGMとして流しておくにもぴったりなんですが、それだけでは勿体無い。ケルトをはじめとする多様な民族音楽に根ざす原初的リズム・たメロディを一つ一つ丹念に掘り起こし、現代音楽として昇華させているような感じがします。。。ズビバゼン、これも半分以上MAO.Kさんの受売りです<m(__)m>。

 さて、録音の方も良好で楽器の種類も多彩です。とここまで書けばオーディオファイルの方々にはピンと来ると思いますが、オーディオチェックのリファレンスにも使えます。実は今あるインシュ・ボードを導入中なんですが、そのチェックにも重宝しております。

 さあ、あとはJudyさんですが、果たして来るんでしょうか(笑。

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2009/07/26

君はフィクション / 中島らも

君はフィクション (集英社文庫 な 23-23)
君はフィクション (集英社文庫 な 23-23)
 今日7月26日は中島らもの命日です。先日のセルフ・セレクション・ベスト10で紹介した「わかぎゑふさんのコメントに泣く」を書いてから5年の歳月が経ったわけですね。アクセス記録を見ますと沢山の方にその記事を見ていただいたようで、感謝しております。ちょっとはらもさんへの供養になったでしょうかね?あの世で「余計なお世話や」とぼやいてるかもしれないけど。
 その彼の最後の短編集が「君はフィクション」で、最近未刊行短編3本を追加して文庫本化されました。先日買ってもうとっくに読み終わったんですが、裏を見ると「2009年7月25日 第一刷」となっています。深い意味はないのかもしれませんが、泣けますね。

山紫館の怪
君はフィクション
コルトナの亡霊
DECO-CHIN
水妖はん
43号線の亡霊*
結婚しようよ
ポケットの中のコイン*
ORANGE'S FACE*
ねたのよい - 山口富士夫さまへー
狂言「地籍神」
バッド・チューニング

 異端者、特に精神・身体障害者への強いシンパシーを示す「君はフィクション」「DECO-CHIN」「ORANGE'S FACE」、怖いようなおかしいようなもの悲しいような、らも風としか言いようのないホラー「山紫館の怪」「コルトナの亡霊」「水妖はん」「43号線の亡霊」「狂言地籍神」「ポケットの中のコイン」、音楽への傾倒を示す「DECO-CHIN」「バッド・チューニング」、中津川フォークジャンボリーや京都ロック・シーンのルポとも言える「結婚しようよ」「ねたのよいー山口富士夫さまへー」、どれをとってもらも節は健在です。

 死の数年前はアルコール・薬物中毒、躁うつ病で入退院&拘置所留置などを繰り返し、完全に日常生活は破綻していたはずの彼ですが、他作品とのネタの重複や若干の文体の乱れはあるものの最後の最後まで書く文章は昔からのらもそのものだった、と言うところには畏怖の念さえ覚えます。

 ことに未刊行だった3作品は文体に切れがあるし、文章が立っていて凄いなと思います。他の短編より以前にどこかに発表されたものならむべなるかな、とも思いますし、もしこれが死の間際の作品であったなら、蝋燭の灯の消える前の最後の輝きだったのかもしれません。

その時、後方で、全ての色彩が炸裂した。ビュウウンという、ものすごい音がして、色彩の、光芒のかたまりが彼のポルシェを抜きさっていった。そしてそれは中央からフェンシングの刃先のように、真紅や、青や、緑や、オレンジ色の閃光をひらめかせながら一つの光の玉となり、そのままビュイッという音だけを残して路上から消えたのだった。(43号線の亡霊)

らもさんの散り際そのもの、かな。

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千住真理子とイタリアの名手たち@兵庫芸術文化センター

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 先日のライブレポートで、「夜のガスパール」を一度生で聴きたかったと書きましたが、弦楽器ではベタですがヴィヴァルディの室内楽を聴きたいと思っていました。そんな折り、千住真理子さんがヴィヴァルディの国、ヴァイオリンの故郷イタリアから呼び寄せた熟練の名手とともに兵庫県立芸術文化センターでコンサートを開催されたので出かけてきました。

Date: July 25th. 2009
Place: 兵庫県立芸術文化センター 大ホール

演奏:

千住真理子  (vn)
ピエロ・トーゾ (vn)
ピエルパオロ・トーゾ (cel) 
エルネスト・メルリーニ (cen) 

プログラム :

ヴィヴァルディ: トリオ・ソナタ ニ長調 Op.1-6 
ヴィオッティ: 2つのヴァイオリンのためのセレナード 第3番 ト長調 
ヴィヴァルディ: 協奏曲集「調和の霊感」より 第8番 イ短調 Op.3-8
ヴィヴァルディ: ヴァイオリン協奏曲集「四季」Op.8より “春”
-intermission-
ヴィヴァルディ:  協奏曲集「調和の霊感」より 第6番 イ短調 Op.3-6
ヴィターリ:  シャコンヌ ト短調 
ヴィヴァルディ: ソナタ イ長調 Op.2-2 (without Mariko)
ヴィヴァルディ: 協奏曲集「調和の霊感」より 第11番 ニ短調 Op.3-11

Encore
ヴィヴァルディ: 「四季」より 冬 第2楽章
ヴィヴァルディ: 「四季」より 夏 第3楽章

『マンジャーレ(食べて)、カンターレ(歌って)、アモーレ(愛して)の国。そんな陽気で愛に満ちあふれたイタリアから音楽の名手たちがやってきます。共演するのは、人気ヴァイオリニスト、千住真理子。千住さんは、芸術文化センターの開館以来、「オペラハウスでオペラ・アリアを」をテーマに、オペラのアリア集を演奏、楽団との共演、無伴奏リサイタルなど、様々な顔を見せてくれました。そして、2009年夏、太陽の輝く季節、イタリアの名手たちとのバロック共演が4度目の登場となります。
イタリアを代表する作曲家、バロックの巨匠、といえば、まず、その一人はヴィヴァルディ。私たちが大好きな「四季」を作曲。今回の“サロン風”コンサートでは、抜粋して「春」をお聴きいただきます。ヴィヴァルディのいくつかの作品のほか、ヴィターリ、ヴィオッティの二人のイタリアの作曲家の作品をお楽しみいただくコンサート。4人の名手たちが、優雅なヨーロッパのサロンの世界へと誘います。(HPより抜粋) 』

 構成はヴァイオリンx2チェロチェンバロの3種4器です。ホールの規模としては中ホール程度が最適なのだろうと思うですが、千住さんの集客力を考えると大ホールも止むを得ません。実際、地味目のプログラムにもかかわらず2000席余ある大ホールが超満員でした。

 グリーンのロングドレスが映える千住真理子さんの持つ淡色系のストラディヴァリウス「デュランティ」の響きは明朗ながらも陰影のある深みのある音で、あれだけの大きさの会場の空気をある時はたおやかに、ある時は激しく動かしていました。ピエロ・トーゾ氏のヴァイオリンは渋い、の一言でマエストロという言葉がぴったりでした。前半の2、3作品などではまさに「ツイン・リード」ヴァイオリンで見事でした。ウィッシュボーン・アッシュみたい、と言うのは冗談ですが、先日紹介したカルミニョーラ&ムローヴァの絡みを思いだしました。

 チェロとチェンバロはサポートに徹しておられましたが、視覚的にはオレンジ色に彩色された美しいチェンバロの存在感は抜群でした。それに比して音が小さいのには少々驚きました。ピアノよりは音も残響も控えめなのは十分理解していましたが、聴覚的にはヴァイオリンよりもずっと控え目な音量です。弾いておられるのは古楽の音楽学者でもある方なのでこれが真に正しい弾き方なのだと思います。やはり中ホールくらいが最適なのでしょうね。

 さて、プログラムは、千住さんが以前から大好きなヴァイオリンの故郷であるイタリアの古楽集です。当然ヴィヴァルディ、特に四季の「」がメインになるのは当然ですが、個人的には「調和の霊感」の第8番がよかったです。特に第二楽章は意外なほどパセティックで、二人のヴァイオリンが濃厚に絡みあいながら奏でる美しい旋律が所謂「ヴィヴァルディ調」から一歩抜け出したロマンを感じさせました。また、ヴィオッティもヴィターリもいいアクセントになって眠くならずに済みました(笑。

 でも最後の2曲まで至るとさすがにヴィヴァルディ調に少々飽きてきて、やっぱり四季からどれかをやってほしかったな、と思いました。
 その辺は千住さんも分かっておられたのでしょう、アンコールで冬2夏3を演奏すると言う大サービスをしていただきました。最後のスリリングな夏3ではまさにエンジン全開、雷鳴や雹を表現した激しく速いパッセージを千住さんとトーゾさんが競い合い、終了後は大ホールを揺るがすようなスタンディング・オベーションに包まれました。
 というわけで千住さんが満を持して催したプログラムだけの事はある、充実した演奏会でした。また一つ勉強できた事に感謝しつつ帰路につきました。

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2009/07/25

昨日のマスターズ練習

Redshadow
 Red Shadowの飛鳥です。。。ああ久美子様、何と言うトホホ映画に(涙。てなことはさておいて、秋のマスターズ大会と予約していたコンサートが見事にバッティングして焦りまくっている今日この頃、またまたマスターズ日記です。

アップ: 50M x2本
 きょうはいやにあっさりしたアップ。。。多分後のメニューはきついな、と思いつつ泳ぎはじめます。

グライドキック: 75Mx1本+25Mx1本 x4本
 75のうちの最初の25は個人メドレー順で4泳法のキック、後の好きなキックで、2分サークル。次の25はダッシュ。結構4泳法のキックにも馴れてきますた。ここで休憩。

スイム: 50M x12本
 本日のメイン。90秒インタバルで。。。これでクロールなら楽勝ですが、そう甘くない(--〆)。
1-3本目: クロール
4-6本目: バック
7-9本目: ブレ+クロール
10-12本目: バタ+クロール
 ひえ~。本数が進むにつれ、だんだんきつくなっていきます。

ダッシュ: 50M x3本
 まだまだ時間が残っております(-_-;)。ということで、最初の25は徐々にペースを上げていき、帰りの12.5はノーブレで。腰が痛かったのでここまでずっとオープンターンで行ってましたが、3本目だけ試しにクイックターンで行ってみました。その後の12.5で死にそうになりました(笑。

ダウン: 200M

計: 1450M

 まあ腰が痛いなりに最後までこなせました。何やかや言いながらブレも鈍足ながらそこそこ泳げるようになってきたし。

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2009/07/24

初恋 / 四角佳子

初恋
 普段AMAZONやHMVからメールが来てもヘッドラインだけ読んで片っ端から消していますが、先日「四角佳子(よすみけいこ)」の名前を見つけた時はさすがに腰を抜かすほど驚きました。おまけに「待望のファースト・アルバム」、、、えええええっ?、まさにタイムスリップ感覚でした(笑。
 ご存知ない方のために説明しておきますと、通称「おけい」さん、元六文銭のボーカリストです、と言うよりは吉田拓郎の最初の奥さん、と言ったほうが分かりやすいですかね。当時は美貌と美声で知られていましたので、結婚を機に引退された時は惜しむ声がしきりでした。拓郎がその責任を取って「新・六文銭」に参加したくらいです。後にも先にも拓郎がバンドメンバーになったのは、多分この時だけでしょう(Kinki Kidsとの企画バンドは別にして)。
 2000年に及川恒平のソロ・ライブに小室等とともに参加したのがきっかけで3人で2003年に「まるで六文銭のように」としてバンド活動を再開されていたそうです。そしてこれが初のファースト・アルバムとの事、ご本人とこれも拓郎人脈で元猫の常富喜雄の二人がプロデュースしています。

1. うれしくて
2. 初恋
3. ホワンポウエルの街
4. 春の風が吹いていたら
5. 私の青空
6. かざぐるま
7. 君のために
8. 幸せになれる天才
9. しずかな雨
10. 旅の途中
11. インドの街を象にのって
12. ささやかでも愛の歌

 もう一曲目のイントロからシンプルなフォーク調アレンジであの頃へタイムスリップさせてくれますね。でも彼女の声が聞こえた来た時はちょっとキーが落ちたな、と思いました。もう40年近くたっていますものね。でも間違いなくおけいさんの声です。優しくて包んでくれるような暖かい感じはそのままです。

 どの曲も安心して聴ける、所謂癒し系の歌ばかりです。その分やや単調で、真剣に聴き通すには余り向いてないかもしれませんが、ピックアップして聴いたり、BGMとして流しておいたりする分にはとても良いと思います。
 私の世代ですとピックアップするならやはり彼女の引退前のセルフカバーでしょうね。まず六文銭からは11の2曲(「キングサーモンのいる島」収録)、特に「ホワンポウエルの街」はとてもいい曲ですし、アレンジも良いです。

 そして白眉はやはり、吉田拓郎の名作「伽草子」でデュエットしていた名曲「春の風が吹いていたら」でしょう。やっぱり聴くと胸が熱くなります。久しぶりに「伽草子」も引っ張り出してみました。この曲の一曲前が「長い雨の後に」、吉田拓郎が柳田ヒロのピアノだけをバックに赤裸々に当時の心情を吐露した泣ける曲です。

僕のそばに 妻がすわる
傷だらけの 心ひらき
長い雨はもうすぐ終る
僕たちは肩をよせる

この詩の妻とは「よしだけいこ」、つまりおけいさんです。拓郎の病が癒えて、二人で「春の風が吹いていたら」をカバーしてくれる日が来たら、と願わずにいられません。

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2009/07/23

日本の医療小説・ノンフィクション40冊(2)医療ノンフィクション傑作20選

Kunioyanagida
(柳田邦男氏)
 前回に次いで、日経メディカルの500号記念増刊号「日本の医療小説・ノンフィクション40冊」企画よりノンフィクション編を取り上げてみます。選者はやはり前回と同じく書評家の東えりか氏と日経メディカル編集長千田敏之氏です。

医療ノンフィクション傑作20選
1:ガン回廊の朝 柳田邦男(1979)
2:誰も書かなかった日本医師会 水野肇(2003)
3:エイズ犯罪 血友病患者の悲劇 櫻井よしこ(1994)
4:ルポ 精神病棟 大熊一夫(1973)
5:ガン病棟の九十九日 児玉隆也(1975)
6:乳ガンなんかに負けられない 千葉敦子(1981)
7:生と死の境界線 岩井寛(1988)
8:「死の医学」への序章 柳田邦男(1986)
9:癌と闘った科学者の記録 戸塚洋二、立花隆編(2009)
10:病院で死ぬということ 山崎章郎(1990)
11:救命センターからの手紙 渡辺祐一(1998)
12:検疫官 小林照幸(2003)
13:レーザーメス 神の指先 中野不二夫(1989)
14:蘇る鼓動 後藤正治(1991)
15:凍れる心臓 共同通信社移植取材班(1997)
16:日本の臓器移植 相川厚(2009)
17:院内感染 富家惠海子(1990)
18:「尊厳死」に尊厳はあるか 中島みち(2007)
19:わたしのリハビリ闘争 多田富雄(2007)
20:臨床瑣談 中井久夫(2008)

テーマ
1-4:戦後から現代までの医療を俯瞰
5-9:癌闘病記
10-12:現場で戦う医師たち
13-16:医療技術の進歩
17-18:医の倫理
19-20:現代医療の問題点

 やはりノンフィクションは小説にもましてよく読んでいますね。ですから大半は知っていますが、特に「病院で死ぬということ」は初めて読んだ時は涙で最後まで読みとおす事が大変だったのを覚えています。読後には全く自分の分野とは畑違いのこの方向へ進もうかとさえ考えましたが、続編が次々と出るに連れて少しずつ覚めてしまいました(苦笑。
 一方で「レーザーメス 神の指先」などは自分の専門分野のど真ん中なんですが、冒頭の医師の態度が余りに奇矯で最後までのめりこめなかった覚えがあります。たしか、アポロ12号の月面着陸のTVでの生中継に熱中する余り、9時からの外来業務をサボタージュしてしまい、ついに外来時間が終わってしまったと言うエピソードでした。それにはそれなりの理由があるとはいえ、当時の真面目な自分には許せない愚行のように感じましたね(^_^;)。

 前回取り上げた「和田移植」に関しても二冊入っています。ただ、いくら最近の言動がおかしいとはいえ、立花隆氏の渾身の力作「脳死」「脳死再論」が入っていないのはやっぱりおかしいかな、と思います。

 

 あと、医療関係者以外の方が医療ノンフィクションを読まれる場合気を付けていただきたいのは、医療自体が日進月歩であるため賞味期限がある事、そして医療には不確定な要素が多く、また立場によって考え方も大きく異なってきますから、著者の主張が必ずしも100%正しいとは限らない事です。

 例えば柳田邦男氏の「ガン回廊の朝」は、発刊当時大変感激しながら読んだ記憶がありますが、例えば今の医学生、研修医あたりが勉強するにはもう古すぎます。まさに古典を読むような感じでしょうね。もちろん医学の歴史、先達の苦労を知るには良いでしょうけれども。

 そう言えば柳田邦男氏の講演も学会で聴かせていただいた事があります。失礼ながら、あれだけの文章を書く方とは信じ難いほどぼそぼそとした語り口で、話の内容も要領を得なかったので大変がっかりした覚えがあります。そのときの体調がお悪かっただけなのかどうかは分かりませんが、それ以後あまり氏の著作は読まなくなりました。

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2009/07/22

日本の医療小説・ノンフィクション40冊(1)医療小説傑作20選

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(故吉村昭氏)
 医療系雑誌「日経メディカル」が500号発刊を迎え、その記念増刊号が今日職場へ贈られてきました。
 増刊号のテーマは「日経メディカルは何を伝えてきたか」で、全編大変読み応えがありました。そしてその中に「日本の医療小説・ノンフィクション40冊」という企画がありましたので、ブログに取り上げてみる事にしました。選者は書評家の東えりか氏と日経メディカル編集長千田敏之氏で、医療小説を20冊、ノンフィクションを20冊セレクトされています。今回は先ず小説を取り上げてみましょう。

医療小説傑作20選:
1:海と毒薬  遠藤周作(1958)
2:背徳のメス  黒岩重吾(1960)
3:白い巨塔  山崎豊子(1965)
4:神々の沈黙  吉村昭(1969)
5:消えた鼓動  吉村昭(1971)
6:ダブル・ハート  渡部淳一(1975)
7:生きている心臓  加賀乙彦(1991)
8:孤高のメス  大鐘稔彦(2005)
9:冷い夏、熱い夏  吉村昭(1984)
10:命  柳美里(2000)
11:恍惚の人  有吉佐和子(1972)
12:黄落  佐江衆一(1995)
13:明日の記憶  萩原浩(2004)
14:閉鎖病棟  箒木蓬生(1994)
15:空中ブランコ  奥田英朗(2004)
16:今夜、全てのバーで  中島らも(1991)
17:チーム・バチスタの栄光  海堂尊(2006)
18:神の汚れた手  曽野綾子(1980)
19:廃用身  久坂部羊(2003)
20:風花病棟  箒木蓬生(2009)

テーマ:
1:医者とは何者なのか
2、3:医療小説の金字塔
4-8:移植と脳死
9、10:癌告知
11-13:認知症
14-16:精神科医療
17-20:新潮流

 普段「医療モノは嫌い!」とか言いつつ、悔しいけど結構読んでるなと思いました(笑。 北壮夫南木佳士が入らずに何であいつが(^_^;)とか思ったりもしましたが、テーマを決めての選択である事もあり、まあ概ね妥当なんだろうと思います。特に1、2、3、11、18などは戦後日本文学の全ジャンルでセレクトしてもその中に入ってくる傑作だと思いますし。

 個人的には中島らも加賀乙彦は好きですね。もちろん一番好きなのは「今夜、全てのバーで」。ちなみに日常的に使っていたセルシン(diazepam)がそんなに効くのか、と驚いた覚えのある作品です(笑。

 先日記事にした改正臓器移植法に関連してか、移植関連が5冊も入っている事も目立ちます。しかもそのうちの4冊が通称「和田移植」と呼ばれる和田寿郎(当時札幌医大教授)による日本初の心臓移植を取り上げています。
 心臓移植は1967年南アフリカで初めて行われ、そのうち日本でも行われるだろうとは言われていたのですが、1968年に突然青天の霹靂のように行われ、世界で30例目として当時大変な話題になりました。しかし手術を受けた青年は術後63日目に死亡し、その後ドナーの選択、レシピエントの選択ともに疑問点が多く明るみに出て和田寿郎はついに刑事告発されます。結局嫌疑不十分で不起訴になりますが、その後の移植医療に暗い影を落とし、日本は世界から完全に取り残される事になります。二例目の心臓移植は臓器移植法が成立した後阪大で行われましたが、和田移植から既に30年余もの歳月が流れていました。

 個人的にはこの和田移植はドナー、レシピエント二人に対する殺人行為だったと思っています。実は私は学生時代和田寿郎の招待講義を聴講した事があります。まだまだ自信満々、と言うよりはマスコミに対して明らかな敵意を抱いておられ、「医療の医の字も知らない素人に何が分かるか」という傲慢な感じさえ受けました。心臓移植の講義ではありませんでしたが、少なくとも移植に関して微塵の罪悪感も抱いていない事は良くわかりました。

 私の移植嫌いはこの辺に端を発するのかもしれません。もちろん私も今の医療マスコミは嫌いですが、それはあくまでも医療側が間違った事をしていない、と言う事が前提であり、この和田移植のような犯罪的行為は糾弾されてしかるべきであったと思います。
 当時まだ札幌医大の整形外科医師だった渡辺淳一の行動力もさることながら、小説家であった吉村昭の取材の執念と筆力は大したものだと思います。「神々の沈黙」を未読の方で改正臓器移植法に興味がある方は是非一度お読みください。

 ちなみに吉村昭氏は後年舌癌と膵臓癌を患い、2005年7月自宅で息をひきとります。その際、看病していた長女に「死ぬよ」と告げ、みずから点滴の管を抜き、次いで首の静脈に埋め込まれたカテーテルポートも引き抜き、その数時間後に逝去されたそうです。戦前生まれの気骨を感じさせる真の硬骨漢らしい最期だと尊敬の念を抱かずに入られません。享年79歳。ちなみに和田寿郎はまだ存命です。

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2009/07/20

昨日のマスターズ特訓コース

Aaa
 おおっ、あの方のお宝映像、って一体誰?というわけで、臨時マスターズ日記です。マスターズ大会を目指して今月から月二回日曜日に有料で開催されている特訓コース。一回目は歯の治療中で欠席しましたがさて、昨日の初参加は一体どうなったでしょうか?あの~、腰が痛いんですけど。。。と思いつつ自己アップしてから参加。

アップ:50M x2本
 アップの少なさにメニューの濃さが予想されます。。。

キック&スイム:50M x10本
 前半グライドキック、後半スイム。後半も前半のキックを維持して。ここで、ばててくるとブレスで右手が下がる悪い癖を指摘されてしまいました。これを矯正しつつ何とか最後まで持ちました。

スイム:50M x8本
 
第一メイン。耐乳酸練習。というわけでインタバル65秒。男は45秒以内で戻ってくるように(--〆)。さすがに7本目くらいになるとグリコーゲンが切れてきますた。

スイム:25M
 イージー。要するに反対側へ移動するだけですな。。。ということは?

スイム:25Mx5本 x4セット
 やっぱり。インタバル40秒、セット間休憩30秒。まあまあイケるペース。ひたすら泳ぎ続けます。やっぱり右手を意識してました。休むと腰痛がちょっと応えてきてる。。。

ドルフィン飛び込み+スイム:25M x8本
 第2メイン。奇数イージー、偶数ハード。イージー側は低い台、偶数側は高い台が水中に置いてあります。そこからドルフィン飛込みで泳ぎます。ハードはタイムも測定。もう乳酸溜まりまくりで十分ばてておりましたが、何とか最後のハードが18秒22でした。

計:1700M

 ここで時間切れで終了。いければ1900までメニューは用意されていたらしい。。。次回も楽しみですな、フッフッフッ(-_-;)。
 というわけでダウンは自分でしてくださいという事になりました。不思議と疲れが残らなかったのはブラックヴァームのお陰か?腰は。。。(>_<)。

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2009/07/18

ゆうけいのお気に入り記事ベスト10

Einstein2
 5周年記念企画として前回お知らせしましたように、1300近く書いてきた記事の中で個人的に愛着のある記事を10個選んでみました。あくまでも「愛着がある」というのが評価基準ですので、文章の完成度ですとか、反響の大きさですとか、対象物自体の評価ですとかは全く考慮に入れていません。ですから意外に思われる記事も多いかと思いますが、思い出して楽しんでいただければ幸いです。
 ちなみに冒頭写真は番外ですが、今でも結構笑えるので取り上げてみました。2005.11.08の「アインシュタインだフォー」と言うおバカな記事です。nemotaさんに倣って遊んでみたんですが、お笑い界の栄枯盛衰もこうしてみると速いですね(笑。ちなみにリンク先をクリックしてみたら驚くべき事にいまだに遊べるようですので興味のある方はどうぞ。
 ではまいりましょう。

次点: T.REXのアナログ盤復刻 (2007.03.24)
 先ず各カテゴリーから数個ずつセレクトして4-50個リストアップし、それを20個程度にまで絞るのは簡単だったんですが、そこから10個に絞るのは少々辛かったです。その段階でこのブログのメイン・テーマとも言える音楽・映画・ライブのレビューの殆どが脱落してしまいました。どんなに素晴らしい作品でも、書く段階になると客観的評価のため一旦冷静になってしまい、思い入れの部分が若干薄れてしまうのでしょう。
 そんな中でもこのT.REXの記事は結構マーク・ボランに感情移入してウェットな記事になっていますね。まことさんのコメントも嬉しかったです。

第10位: バリ紀行(1)バナナフィッシュに最適の日(2006.03.22)
Tulamben3 さて、10位から始めましょう。旅行・ダイビング分野で先ず思い出すのがこの記事です。バリ旅行の2日目で、この日は息子と二人でのんびりダイビングできで楽しい一日でした。ダイビングがままならない今から思い返すと、おそらく我が人生最良の日ベスト10のうちの一日だったと思います(笑。
 J.D.サリンジャーの「バナナフィッシュに最適の日」が入っている「ナイン・ストーリーズ」を旅行前に息子が私に貸してくれたのも、中島らもがよく言っていたバリという島の持つ魔力だったのかもしれません。だって息子から私に小説を貸してくれるなんで未だかつて無かったですもん。。。そう言えば最近キンタマーニ・コーヒー飲んでないな(笑。

第9位: 10の語られなかった人道的危機(前) (2006.04.19)
 政治的話題や自分の職業に関する話題は全く取り上げないというポリシーで始めたブログなんですが、大震災の事についてポツリポツリ書き出したり、高校野球の暗黒面について悩んだりしているうちに、そのポリシーも徐々に氷解していきました。そして一日閲覧数300程度の弱小ブログであっても、地道に情報を発信していけばバタフライ・イフェクトが起こる事もあるのではないかと思い始めた時期でもありました。
 この国境無き医師団の報告をブログ上にレポートする事については「偽善」とか「ポーズだけ」とかいう言葉も脳裡をかすめ、アップすべきかどうか本当に悩みました。しかし幸いな事に皆さんに好意的に受け入れていただき、また、アクセス解析を見るとこのシリーズは結構多くの方が読んでくださっており、今では思い切って書いてみてよかったのではないかと思っています。

第8位: アメリカの風景:ホイットニー美術館展 (2006.05.04)
 美術展巡りもすっかり本ブログの恒例記事になっていて、その都度褒め倒していますが(笑、心の底から感動して動けなくなってしまった経験は本当は二度だけです。佐伯祐三の「人形」を初めて見た時と、この記事のロス・ブレックナーの「カウント・ノー・カウント」でした。美術館からの帰路、この感動をどう文章で表現していいのか、ずっと思いをめぐらせていた事を今でも鮮明に覚えています。
 お見せできないのが残念ですが、図録を写真に撮ってもこの作品の凄さは伝わらないと思います。さりとて、実物を見ていただければ誰でも感動できるかというと、それも保証の限りではありません。極端な言い方をすれば、巨大なキャンバスに幾つもの穴が開いているだけの作品ですからねえ。アートとは本当に不思議なものだなあと思います。

第7位: 幻影の書 / ポール・オースター(柴田元幸訳)(2008.11.06)
 この記事の冒頭にも書いてありますように、「数年前、このブログを始めた時に文学関係ではこの本の邦訳レビューを書けたら本望だ」と思っていました。その記事をベスト10に入れないわけにはいかないでしょ(笑。まあ冗談はともかく、記事を書き上げた時は感無量でした。今回のベスト10の中では一番最近の記事ですのでさすがに文章の完成度も一番高いように思います。自画自賛ですが(^_^;)。

第6位: 蒼天賦 / はむちぃ独唱 (2006.04.29)
Bluesky 歳時記シリーズで駄句をひねってはおりますが、実はこのぬ~ぼ~とした詩が一番好きなんですよ。この詩を作った経緯を紹介しますと、ある晴れた春の日に緑道をジムに向かって歩いていて、桜が綺麗に咲いていたのでこれを写メしました。真っ青な空に走る一本の筋雲も写しこむ事ができました。と、なんとなく

「時は春 花のころ かぐわしき 風わたる 天蓋に ひとすじの 白い雲」

てな五五調が頭に浮かんできたんです。何となく漢詩の日本語読みみたいだな、じゃあMade In Chinaのはむちぃ君に捧げるか、てなわけで水泳している間中考えて、帰ってから急いで草稿を下書きしたのを覚えています。

 振り返ってみて驚いたんですが、ここまでの五記事のうち実に四記事までが2006年(平成18年)3月~5月に集中しています。心身ともに好調でブログを書く事が本当に楽しい時期だったんだなあとあらためて思います。

第5位: Avanti! / Giovannni Mirabassi (2) (2008.03.03)
Pinochet リクエスト企画から一記事だけ選ぶなんて不公平じゃないかと言われそうですが、この「Avanti!」第2回13あるリクエスト企画記事の中で唯一本当に楽しみながら書けたので強く印象に残っているんです。
 もともと歴史の勉強は好きだったので、リクエストいただいた時点でこのアルバムの写真を全部解説してやろうという意気込みに燃えてました。だからギャグを入れ込む余地も無いくらい突っ走ってますね(笑。さすがに後半、つまり(3)はちょっとバテてますが、この回は(自分で言うのもなんですが)会心の出来だったと今でも思います。

第4位: わかぎゑふさんのコメントに泣く (2004.08.03)
 最近の忌野清志郎氏に至るまで、訃報記事も数多く書いてきました。自分がそういう歳になってきたんだからある程度仕方が無いと割り切ってはいますが、それでも書くのは辛いです。だからいつしか、なるべくサブタイトル(現今日の一言)で済ませるようになっていましたが、それでも記事でせずにはいられない訃報もあるわけです。アクセス記録を見ますと、松原みきさん、カート・ヴォネガット氏の記事などは今でもよく読んでいただいているようです。
 そして本ブログで初めての訃報記事がこの記事だったと思います。キーボードを叩いていてこれ以上泣いたことはないというくらい泣いたのは、この記事が最初で最後です。
 中島らも
が亡くなったのは私が沖縄にダイビングに出かけている最中でしたし、旅行前から大分悪いということは知っていたので、ニュースで知った時点ではああやっぱり駄目だったか、という淡い感慨しか湧きませんでした。でも時間が過ぎていくにつれじわじわと悲しみが襲ってきて、リリパット・アーミーのHPにわかぎゑふさんがコメントを公開された時に頂点に達しました。わかぎゑふさんも悲しみが頂点に達し涙を流したのは死後しばらくしてからだったそうです。その当時の記事にはコメントは抜粋していませんでしたので、今回少しだけ改訂しました。今でもわかぎゑふさんのコメントを読むと涙腺が緩みます(しんみり。

 さて、気を取り直していよいよベスト3です!先ず、第3位は!?

第3位: 海原チイ山登場 (2005.06.25)
Kaibarajpg 3位がこれかよって言わないで(^_^;)。漫画・美味しんぼ終了とともに幕を閉じたお絵描きシリーズですが、一番思い出深いのがこの「海原チイ山登場」です。美味しんぼの海原雄山≒北大路魯山人を下敷きにしていますので思い切り魯山人ネタで遊んでいますが、勿論尊敬していますので失礼の無いように、最後ははむちぃ君に粋な計らいを見せてゆうけい君をぎゃふんと言わせております(笑。ゆうはむ漫談に手応えみたいなものを感じたのはこの作品が最初だったと思います。

では第2位!

第2位: To Kill The Child Part-2 (2004.09.05)
 おそらく殆どの方は覚えてないか知らないでしょうね。ブログを始めて間もなく、初めて産みの苦しみを味わったのがこの記事だったので今でも鮮烈に記憶に残っているんです。
 日本と違って積極的に政治的発言をする海外のミュージシャン達ですが、当時はブッシュ政権のイラン侵攻に集中砲火を浴びせていました。そのうちの一人が元ピンク・フロイドのロジャー・ウォーターズでした。彼は自身のHPに新曲「To Kill The Child」「Leaving Beirut」をフリーで公開したのですが、何れもブッシュを激しく非難する内容でした。今でこそ新曲をネット上にフリーで公開するミュージシャンは多いですが、彼はその先駆的な存在であったと思いますし、歌詞も極めて先鋭的でした。「Leaving Beirut」には

「ジョージ、ジョージ、貴様のテキサスの子供時代のくそ教育が今のお前を生んだのか」

なんていう、直截的で過激な歌詞も含まれていました。一方、衒学的修辞を並べて難解だったのが「To Kill The Child」という曲。これを訳してみようとしたからさあ大変。今見ても満足な日本語にはなっていませんけれども、これが限界でした。ちなみにもうHPでは見られません。興味のある方は、今回この記事のコメント欄にLyricsを掲載しておきましたので、チャレンジしてみてください。

 さて、お気に入り第1位は!?

Nighttrain

第1位: あけてくれ! (2004.12.06)
 えっ?、と思わず脱力しておられる読者の皆さんのお顔が目に浮かぶようです(笑。でも、好きなんですよねえ、この記事と写真。。。仕事が終わって帰宅する途中、某駅の傍の踏み切りの前でじっとシャッターチャンスを狙うこと30分くらい、やっと撮れたのが記事の2写真(勿論後で加工してあります)。
 ちなみにこの記事の日付を見てください。12月ですよ、寒かった~、バカですね、ホント。

 というわけで如何でございましたでしょうか、お気に入りベスト10、やっぱり始めてから3年間くらいが楽しかったんだなあと思います。そしてまた、思い入れが深まるにはある程度の年月も必要なのだろうとも思います。ですからまた何年かすると変わっているかもしれませんし、そうなるようこれからも思い出に残るような記事を書ければいいなと思います。はむちぃともども今後とも応援よろしくお願いします<m(__)m>。

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2009/07/17

今日のマスターズ練習

Ayase5
 5周年御礼、これが当ブログギリギリ限界ショットだす。おっとそこの君々、携帯の待ち受けにしないように(笑。というわけで今日も懲りずにマスターズ日記まいりませう。アップしてても、気候のせいかはたまた筋肉が戻らないせいかどうも腕に思うように力が入りません、さて本練習はどうなることやら。

アップ: 50M x4本
 前半25ずつ個人メドレー順、後半25はクロールで。先週は4人で悲惨でしたが今日はフレッシュな高校生君も一人入り、全部で10人、その流れに乗って何とか、でも腕の掻きで水圧に負けそうになり、関節がきしむ。。。

サイドキック: 50M x4本
 3掻きして10回サイドキックの繰り返し。奇数掻くので両側交互にサイドキックを打つ事になります。苦手な側は辛い。でも50なので何とか。

グライドキック: 100Mx1本、50x1本
 男性の先頭が女性の殿に追いついてしまうので男女間を開けて。しかも男は50Mおまけを一本。キック嫌いやちゅうに(苦笑。終了後休憩。

スイム: 100Mイージー+50Mハード、x4セット
 本日のメイン。2分インタバルで。100をイージーでいくと20秒弱しか休めません。最後まで50をハードで行くのはちょっときつかったですが、意外に前を行く高一君もばててたりして。

ダッシュ: 50M x1本
 クロール以外の種目で(--〆)。やっぱりすんなりは終わらせてくれんか。今の腕の状態でバタのダッシュをするのは不安なので、久しぶりにバックで。意外に気持ち良かった。ダッシュになってなかったかもしれないけど(笑。

ダウン: 200M

計: 1400M

 とりあえず全部こなしました。明日はヨガの後で男だけで焼肉屋で宴会。は良いのですが、明後日またマスターズ大会用の滅茶苦茶厳しい練習があります。ああしんど。でも有料で金払ってるから行かねば。

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ブログ5周年御礼

Hamuchii
 本日7月17日で本ブログも5周年を迎えました。これも皆様のご支援とご愛顧の賜物でございます、本当にありがとうございます。まあ自分でもよく続いているもんだと思いますが、半月先輩のfrancofrehleyさんに倣って、印象に残る出来事ベスト5をあげてみましょう。

第5位: 記事数が1000を突破した
 開始当時は全く先の事なんか考えておらず、また、ココログ自体の容量も今から考えると笑ってしまうくらい少なかったもので、まさか1000も記事は書かんだろうな、と高を括っておりました。が、その日はついにやって来ました。この記事です。

1000年女王、そして超個人的祝祭(2008.03.09)

今見ると随分浮かれてますね(笑。あれからもう1年以上経ち、現在1300間近となっております。ブロガーには大きく分けて、テーマを決めて積極的に記事を作っていくタイプと、記事になるネタが向こうからやってくるのを待つタイプがあると思うのですが、私の場合典型的な後者です。よくぞやってきてくれるもんだと、ネタに感謝したいですね(爆。

第4位: 他ブロガーさんとの交流
 ネットという世界が無ければおそらく一生出会うことも無かったであろう多くの常連さんと知りあえたのもお互いのブログを通じてでした。そしてその一つのキーポイントとなったのはfrancofrehleyさんの主宰される「Progressive Cafe」でのイベント

プログレバンドしりとり合戦
プログレ家系図制作PJ

であったと思います。この企画を通じてネット上でのブロガー同士のおつき合いの仕方も勉強させていただいたと感謝しております。

第3位: 10、20、30万ヒット記念企画
 やっぱりこれは外せないでしょう(笑。先日30万ヒット企画を行ったばかりでまだ記憶に新しいところですが、毎度苦しむと分かっていながら恒例行事化してます(笑。

10万: マーラー5番勝負 Part 1 (Tak Saeki様)
20万: Avanti! / Giovanni Mirabassi (k1xv1x様)
30万: マーラー5番勝負 Part 2 (パリンドローム様)

いやあどれもこれもそれなりに苦労はしましたが、とても勉強になりました。あらためてリクエストしていただいたお三人にお礼申し上げます。

第2位: 体調不良による休止
 一番辛い思い出です。2007年の春頃から体調が思わしくなく、ついに2年前の今頃休止のやむなきに至りました。

Vergiss-mein-nicht / ブログ休止のお知らせ

 正直言ってその時はもう駄目だと思っていましたが、なんとか3ヵ月後に復活させることができました。「Vergissmeinnicht」に対する常連さんの温かいお言葉が身に沁みました。
 今も決して快調というわけではないのですが、無理せずに何とか続けていきたいと思っています。休止の時にも書きましたが、本ブログの記事はある一定のクオリティを保てる自信が無くなれば終わりだと思っています。ボケないようにも頑張ります(笑。

ジャンジャカジャ~ン(古、さて、第一位は何でしょうか!?発表します。

第1位: バーチャルキャラ「はむちぃ」君の確立
 なんじゃそら(爆。と思われる方もおられると思いますが、やっぱり個人的にはこれが他を圧倒しての第一位です。当初からご覧の方はご存知だと思うのですが最初の頃ははむちぃは掲示板担当でした。それを本記事に採用してゆうはむ漫談というテンプレートを確立したことで、随分記事を書くのが楽に、また楽しくなりました。長く続けてこられたのも、はむちぃ君あってのことです、ありがとね(笑。

 如何でしたでしょうか、えっ、オーディオが出てきてないって?そうですね、もちろん多くのオーディオファイルの方と知り会え、幾人かの方とはオフ会も出来た事はとても大切な財産ですし、自らのオーディオライフを充実させる事ができたのもこのブログあっての事だと思います。まあ、ベスト5を超越しているという事でご了承くださいませ。

 さて、折角の五周年ですので記念企画として次回は

個人的に愛着のある記事ベスト10

を選んで発表します。何しろ1300近くの記事の中から敢えて選ばなくてはいけないので結構大変な作業でしたが、ほぼ終わっております。性懲りもなくようやるわ、とやってて思いました(笑。
 おそらく皆さんが想像もしてないような、というか全く記憶に無い記事のオン・パレードじゃないかと思います。ではお楽しみに。

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2009/07/15

崖の上のポニョ

崖の上のポニョ [DVD]
はむちぃ: 本日ご紹介する映画はもう説明不要、興行成績155億円のメガヒット、作品に対する評価も極めて高かった宮崎駿様の「崖の上のポニョ」でございます。
ゆうけい: 彼が息子の「ゲド戦記」にダメ出しして、千と千尋以来7年振りに原作・脚本・監督の三役をこなした作品ですからね、そりゃいい加減な出来ではジブリ・ファンが納得しませんわな。
は: ご主人様は「ゲド戦記の失敗の責任は鈴木敏文と宮崎駿自身にある」と以前論じられたことがありましたし、余計にその思いは強うございましょう。
ゆ: そうですね、ですから世評が高かったのでまあさすがだなとは思っていたんですが、さあどうでしょうね、観てみましょうか。

『海辺の小さな町。崖の上の一軒家に住む5歳の少年・宗介は、ある日、クラゲに乗って家出したさかなの子・ポニョと出会う。アタマをジャムの瓶に突っ込んで困っていたところを、宗介に助けてもらったのだ。宗介のことを好きになるポニョ。宗介もポニョを好きになる。「ぼくが守ってあげるからね」
しかし、かつて人間を辞め、海の住人となった父・フジモトによって、ポニョは海の中へと連れ戻されてしまう。人間になりたい!ポニョは、妹たちの力を借りて父の魔法を盗み出し、再び宗介のいる人間の世界を目指す。危険な力を持つ生命の水がまき散らされた。海はふくれあがり、嵐が巻き起こり、妹たちは巨大な水魚に変身して、宗介のいる崖へ、大津波となって押し寄せる。海の世界の混乱は、宗介たちが暮らす町をまるごと飲み込み、海の中へと沈めてしまう―。
少年と少女、愛と責任、海と生命。神経症と不安の時代に、宮崎駿がためらわずに描く、母と子の物語。(AMAZON解説より)』

は: う~ん、、、どうなんでしょう(ーー;)?
ゆ: 折角何度もレンタル店に足を運んでやっとの思いで借りられたのに、終わるや否や家内に

なんじゃこりゃ、これジブリ?、がっかりやわ

と一刀両断に斬り捨てられてしまいました(涙。
は: さすが歯に衣着せぬ奥様、見事な切れ味でございます(-.-)。

ゆ: ということでもうこれで終わりまひょか(ショボーン。
は: それはご主人様あんまりでございます、ゲド戦記に6回もそれも超長文記事を費やしたではございませんか。。。
ゆ: と言われてもねえ、純幼児向けアニメをこのブログで語ってもしゃあないやん。
は: そこをなんとか、例えばディズニーと手を組んだジブリの世界戦略で、世界のアニメずれしていない幼児の方々のために、敢えて大人の評価に値するクオリティは重要視しなかったとか?
ゆ: それも考えて一応宮崎駿のインタビューなんぞをネットで漁ってみたんですが、情けない事に今までと同じスタンスで作っているみたいです、それでこれ?もう彼もダメかな?

は: 一応彼の生涯のテーマとも言える、人間が自然環境を破壊し続ける悪を軸に据えられてはおりますが?
ゆ: その描き方がまあ幼稚になったもんです。ナウシカの頃の志はどこへ消えたのかね?そう言えばあの頃からもののけ姫あたりで頂点に達した絵や色彩のクオリティも近年下がる一方だし。
は: それこそがジブリの真骨頂でございましたのにねえ。ジブリも外国へアウトソーシングしているんでしょうか?それとも極貧に喘ぐアニメーターがやる気をなくしたんでしょうか?
ゆ: 麻生太郎に聞いてください(笑。しっかし、こんなのでもブルーレイで観たら本当に綺麗なのかなあ?まあ健在なのは

「宮崎走り」

だけですな(毒。

は: 声優も相変わらずでございますね。
ゆ: 有名タレントを起用するジブリの悪い癖が全然治ってませんね。だからいつものように、子供と老人はそこそこしゃべっていても、中核となる大人世代の喋りが平板で絵空事が絵空事のまま。しかも聞きとりにくい。
は: 次々とスタジオに現れる有名人に鈴木様と宮崎様が相好を崩しておられる様が目に浮かぶようでございます。
ゆ: 彼等には何故「ルパンIII世 カリオストロの城」のルパン、次元、五右衛門、銭形、不二子たちが今なおあれだけ生彩を放っているのか、もう一度原点に立ち返って考えて欲しいですね。

は: そう言えば主題歌は大ヒットいたしましたね。
ゆ: 家内も待ち受けコールに使っていましたが、もうやめるわ、と申しておりました。要するに単純なフレーズの繰り返しによる洗脳ですからね。
は: ヒットしたからと言ってクオリティとは比例しないということでございますか。まあご主人様、そんなに落胆せずに、折角のレビューですので、どうか一言お褒めの言葉もお述べになって締めくくって下さいませ。
ゆ: 子供が親を呼び捨てにするという一点を除けば、幼児~学童初期のお子様には良い映画だと思います。それと、タイトルロールとバックに流れるソプラノ歌手林正子さんの「海のおかあさん」は素晴らしいと思います。まあ、そんなとこです。

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2009/07/14

改正臓器移植法成立に思う

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(中山太郎議員)
 7月13日、改正臓器移植法(衆院案=A案)が参院本会議で可決成立しました。まずは長い間放置されていた臓器移植法の改正に尽力された舛添厚生労働大臣、中山太郎議員を初めとする関係者各位のご苦労をねぎらいたいと思います。お疲れ様でした。そして厚労省はこれからの一年間、法体系の整備が本当に大変だと思いますが頑張ってください。さて、今回のA案では次の3点が大きな改正点となりました。

1: 脳死を一般に人の死と認めた
2: 臓器提供の年齢制限を撤廃した
3: 本人の生前の意思提示を必要としなくなった(もちろん拒否権はあり)

 一般には2、3に関連して、子供の臓器提供が可能になった事が賛否両論含めて注目されていますが、個人的には1の持つインパクトの方がはるかに大きかったです。人の死を法律が明確に定義してしまったのは、近代法治国家となった明治以来初めての驚天動地の出来事なのです。ちなみに最初の臓器移植法では「臓器移植を前提とする場合に限り脳死を人の死とする」との限定的な定義でした。まさにこれがセカンド・インパクトなんでしょうね(苦笑。

 あの頃に比べるとマスコミは随分おとなしくて論調も多分に情緒的な気がします。それに比すれば、生命倫理会議の緊急声明はきわめて論理的にA案に関しての疑義を提起しています。その骨子を記載してみますが、詳細はリンク先をご覧下さい。

生命倫理会議 参議院A案可決・成立に対する緊急声明

1)厳密な脳死判定後にも長期脳死の実例がある、という事実が直視されなかった。
2)ドナーとなる子供への虐待の有無を判別する難しさが認識されなかった。
3)「脳死=人の死」であるとは科学的に立証できていない、という最も重大な事実が省みられなかった。
4) WHOの新指針の内容を十分に確認せずに、事実に基づいた議論がなされなかった。
5)ドナーを増やすことが国民全体への責務に反することにはならないか、熟慮されなかった。
6)移植に代わる医療の存在が患者・国民に周知され、また国によって援助されるべきである。
7)現行「臓器移植法」に定められた法改定条件が遵守されなかった。

 論点は明確で正鵠を得ており、個人的には4)に関しては異議がありますが、他は論理的には正しいと考えます。しかし、だからと言ってこの法案成立を敢えて非難する気にもならないところに臟噐移植という医療の是非を問うことの難しさがあると思います。

 本ブログでは今まではこの問題を避けてきましたが、ドナーを送り出す立場で働いている一員として、この改正案成立を機に一応の私見は述べておこうかと思います。

 先ず、個人的な心情として昔から私は脳死臟噐移植という行為には反対です。しかし、脳死臟噐移植という医療がこの世に存在する以上、法案整備の上で行われる事には異議は唱えませんし、むしろ他国任せにする事の方が問題だと思っています。

 先の臓器改正法が論議されていた時点での私の考えは下記の通りで、大筋では今も変わっていません。

1: 「脳死=人の死」であるという科学的根拠は脆弱である
2: しかし現実には、提案された脳死判定の定義を満たした場合回復はまずあり得ない
3: 「臓器移植を前提とする場合に限って」などと留保付きで人の死を定義する事は、医学・哲学・宗教学等様々な倫理的観点から見て人間の尊厳を愚弄している
4: 鎖国社会ではないにもかかわらず、日本だけが脳死臓器移植を認めないのは国際社会の一員としての責務を果たしていない

 ですから臓器移植法が成立した時点で3に関しては大きな不満が残りました。今回出された法案でもA案以外はまだ留保付きで人の死を定義していて、とても支持する気になれませんでした。ですから留保を取り除いたという一点だけで私はA案を評価します。

 問題は留保の取り払い方が私の考え方とは全く逆で「脳死が一般に人の死である」と定義した事。これに関しては生命倫理会議の主張が正しいと私も思います。しかし何の留保も無く「脳死は人の死ではない」と定義すれば

「まだ生きている脳死状態の患者」からの臓器移植を認める

という法案を出すしかありませんが、これが法的に認められるでしょうか。おそらく無理です。

 以上無理な事を無理と知りつつやらざるを得ないのが臓器移植なのだ、というのが私の認識です。送り出す側からすれば断腸の思いだけれども、法には従います。レシピエント側の方々は「使い物になる臓器」を頂く事が何を意味しているのかを厳粛に受け止めて欲しいと思います。

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2009/07/13

1Q84の魅力/ 湯川豊x小山鉄郎

1q84critics
 村上春樹の「1Q84」については一度雑感を書きましたが、もう雑誌・ネット上ではプロ・アマを問わず評論のオン・パレードで「狂騒状態」といっても過言ではないでしょう。私もほとぼりの冷めたころ、すなわちもうネタバレの文章が許される頃にもう一度書こうと思っていたのですが、ここまで百花繚乱となると到底一人で裁ききれるものではないなあ、とあきらめかけていました。
 そんな折り、神戸新聞の7月9日、10日、11日の三日間に渡って「1Q84の魅力」と題して春樹氏と親交のある文芸評論家の湯川豊氏と、以前「物語の力」でも紹介したことのある、春樹氏を繰り返し取材しておられる共同通信の小山鉄郎編集委員の対談が掲載されました。同意できるところもあればできないところもありますが、要領良くこの複雑な小説の骨格と背景を浮かび上がらせている対談ですのでその要旨をまとめてみました。

(上)湯川:支配することの悪を描く、小山:見かけにだまされない
1q84critics2 ・200万部の売り上げは凄い、話題性だけでなく口コミで面白さが伝わっている。
・普通に読めば青豆がリーダーを殺害する前の二人の長い対話がヤマだと思うが(小山)、計三章に渡るにもかかわらず殆ど論じられていない(湯川)。
・文化人類学者フレーザーの「金枝篇」の「殺される古代の王」をどう読むか(湯川)、青豆は「あなたは王なのか」と問うが、「王ではない、声を聴くものになったのだ」と答える。王は人々の代表として声を聴くもので、統治することは神の声を聴くことと同じことだとリーダーは言う(小山)。
・このリーダーは一見麻原彰晃を思わせるが、むしろ映画「地獄の黙示録」のカーツ大佐に似ている。彼は王国を作って住民を支配し「金枝篇」を読みながら誰かが殺しに来るのを待っている(湯川)。この映画を村上春樹氏は好きである。第一章の題は「見かけにだまされないように」となっているから、人物の設定が見かけ通りなのかいろいろ重層的に考える必要がある(小山)。
・このリーダーは人と言うより一個の闇=悪。そして能弁である。村上氏が「発言する闇や悪」を書いたのは初めてではないか。(湯川)
・結論として、村上氏は殺される古代の王を通して人を支配することの悪を描いた。聖性による支配の怖さである。(湯川)
リトル・ピープルは「小さな人たち」すなわち「倭人」=日本人のことではないかと思う。(小山)
・目に見えない存在とも書かれているので卑弥呼の時代にまで遡るわれわれの遺伝子や血脈的なものと考える。(湯川)
ふかえり古事記に出てくる「そとおり(衣通)」姫のことではないか、二人とも失踪する美女で、美しさが衣を通して輝く。そして彼女が平家物語の壇ノ浦の合戦を暗唱する場面があるが、これは安徳天皇が入水するところ、すなわち古代の王の死の場面。(小山)

(中)湯川:閉鎖社会に対する恐怖、小山:原理主義に抗する意思
1q84critics5 ・「海辺のカフカ」刊行時にインタビューした際、村上氏は「閉鎖社会になることの恐怖」を強調し、どんなことがあっても自分はオープンな社会の側に立ちたいと語っていた。(湯川)
・本書がタイトルに引用したジョージ・オーウェルの「1984年」は1949年に想定されたスターリニズムを背景とした閉鎖社会、管理社会の恐怖である。そして今閉鎖社会への恐怖を書くとするとこの題名にならざるを得ないのではないかと思う。(湯川)
イスラエル賞受賞時、様々な批判のある中で彼は一つだけの価値観だけから「そこに行くな」と言われると行ってみたくなるのが小説家だと話していた。受賞スピーチにおいても原理主義に身を預けず、考え迷い傷つく人間の側にいること、その上でいかに自立した存在でいられるかが大切である、と語った。(小山)
・1Q84の世界は現実の時間から少しずれて二つの月が出ている。一つだけの月ではない世界に原理主義に抗する意思もこめられているようにも読める。(小山)
・1Q84を読みながら不思議に日中戦争の事を考えていた、「ねじまき鳥クロニクル」と同じく奇妙な形で入り込んでしまった近代日本の行き詰りのような世界。(湯川)
・DVというのも閉鎖的世界で起きることだ。(湯川)
・執筆中の村上氏を取材した時にオウム真理教の地下鉄サリン事件実行犯に関して「何であの人たちはあっちへ行ってしまったのか。そのことをちゃんと解明しておかなくてはいけない」と語っていた。一方同事件の被害者である普通の日本人たちからは、とても信頼できるボイスを聞いたとも語っていた。(小山)
・閉鎖的で濃密な世界の中で流れに抗さず従ってしまった日本人、その一方でとても信頼できる普通の日本人。その両面を見ることであくまでオープンな社会をよしとする村上さんらしい思考がこの「1Q84」にはある。(湯川)

(下)湯川:物語に託す強い希望、小山:動く中で方向性を示す
1q84critics3 ・二つの月が見えているのは青豆天吾ふかえりである(湯川)。新しい小ぶりの月が緑色なのは青豆(グリーンピース)が20年間思い続けているうちにグリーンピース色になってしまったということだろう(小山)。ずいぶん変わった愛の形である(湯川)。
・日本人はあなた任せで信念も無く時の流れの中で変わってしまいがち(小山)だがそれと反対の「時による風化を簡単には許さないという決然とした思い」を抱く青豆には二つの月が見える。そのような反リトル・ピープル的な人の代表がふかえりである。(湯川)
ふかえりは物語を語る人、リトル・ピープルというのはわれわれの中にある血脈、DNA的なもの。ふかえりが反リトル・ピープル的だとすると物語には血脈的な集団性に対抗できる力があるということ。(湯川)
天吾ふかえりの語った物語をリライトするうちに積極的な人間に転換され月が二つ見えるようになった(小山)、ここに村上氏が物語に託す非常に強い希望があらわれていると思う(湯川)。
・今世界は混迷の中にあり再編成されなくてはならないのは明白であるがそのためには自分のいる場所から動いていかなくてはならない。でも混沌とした闇の中を動いて行くのは恐怖である。その恐怖に対抗するのが物語、物語は動いていくもので、その中であるまとまりと方向性を指し示す(小山)。
天吾と父の和解の場面は奇妙でありながら感動的である(湯川)。天吾は「自分と父は血のつながりがないなら、父を愛せる」と思う、そして青豆ふかえりも、みな親との関係を断って生きる(小山)、つまり一人で生き、一人で死ぬ覚悟みたいなものを持つ人たちが反リトル・ピープルである(湯川)。
・父親と和解した後で天吾が「温かい日本茶」を飲む場面がすごくいい。本当に美味しそうな日本茶である。(小山)
・「空気さなぎ」は天吾がリライトした小説で、その内容は最後に青豆が読むというかたちで明らかにされる。小説内小説が強い光源となって、もう一度全編を照らし出す(湯川)。まさに「物語の力」を実感するところである。(小山)
・長い長い物語の最後に、空気さなぎに包まれた青豆天吾の前に現れる。この小説の一番美しい場面だと思う。(湯川)

 見かけにだまされず重層的に読まなければならないと語っておられるように、村上春樹を知り尽くした二人は重層のうちの深層を中心に語っておられるように思います。
 ですから浅層の部分は敢えてさらりとしか触れなかったのだと思いますが、浅層には浅層の語られれるべき論点は沢山あると思います。それは例えばオウム真理教、日本赤軍、ヤマギシ会といった団体組織であり、DV(domestic violence)、フリー・セックスといった風潮であり、更には文壇・出版界という世界でしょう。
 特に、この本を読む日本人で、リーダーと呼ばれる人物に麻原彰晃を思い浮かべない人はまずいない、その上で確信的にリーダーに神秘性、超能力を付与した事に関してだけは個人的には未だ納得できていません。それに関して「殺される古代の王」を持ち出して論じても隔靴掻痒の感は否めないというのが正直な感想です。
 そしてリトル・ピープルに関してはいささか牽強付会な気もします。まずは村上氏の短編「TVピープル」との類似性について語るべきだったと思います。

 もう一つ言わせていただくと、今一番読者を悩ませている「続編があるのか」という問題に言及しておられない。というか、完結していると言う前提で対談しておられるような気がします。
 例えば空気さなぎに包まれた青豆が現れるシーンを美しいと感じるのはこの小説がこれで完結していると考えていればこそではないでしょうか。この空気さなぎを産み出してしまったのは明らかに天吾であり、そうすると彼はリーダーにとってかわる存在にならなければならず、その後の物語があるとすればその中で天吾には恐ろしい厄災が降りかかってくると考えられるからです。ですからたとえ産まれてきた青豆自体がどんなに美しくても、あのシーンはおぞましいシーンであると、私は感じました。

 もちろん時間の制限、紙数の制限もあって枝葉末節まで語れない事は明らかであり、その制限の中で良くまとめられている記事だったと思います。自身を含めて、読後に考えをまだまとめきれていない方の参考になれば幸いです。

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2009/07/12

佐野えり子 plays Ravel @兵庫県立芸術文化センター

Pacsmall_2 
 以前アルゲリッチの「夜のガスパール」をレビューした事がありますが、その頃から是非一度生演奏を聴きたいと思っていました。そんな折り、兵庫県立芸術文化センターからのDMで「ラヴェルのピアノ全曲演奏会」というパンフを見つけてこれはいい機会だとチケットを購入しました。二夜に渡っているのですが、残念ながら第1夜は仕事の都合で行けず、ガスパールの入っている第2夜に出かけてきました。

佐野えり子: ラヴェルピアノ全曲演奏会・第2夜

Date: July 9th, 2009
Place: 兵庫芸術文化センター 神戸女学院小ホール

佐野えり子 piano

Program: Maurice Ravel(1875-1937)

第一部
1: 古風なメヌエット
2: ハイドンの名によるメヌエット
3: ....風に
  1: ボロディン風に
  2: シャブリエ風に
4: クープランの墓
 I: Prelude
  II: Fugue
  III: Forlane
  IV: Rigaoudon
  V: Menuet
  VI: Toccata

Intermission

第二部:
5: グロテスクなセレナード
6: プレリュード
7: 夜のガスパール
 I: Ondine
  II: Gibet
  III: Scarbo

Encore
1: クープラン: クラブサン組曲より「子守歌 またはゆりかごの中のいとし子」
2: クープラン: おしゃべり

 兵庫芸文の小ホールはグランドピアノの演奏に丁度よいエアボリュームと響きを持っていて好きな会場です。大ホールは広すぎて時としてエアボリュームに負けてしまう演奏会もあったりするのですが、小ホールは先ずハズレがありません。というわけで佐野えり子さんという方の事は寡聞にして知らなかったのですが、心配はしていませんでした。結論を言うと予想以上に良かったです。会場全体が縁故関係の雰囲気に溢れ過ぎていた事を除けば(笑。

 佐野えり子さんは桐朋学園のご出身で世界で活躍されておられるそうです。聡明な感じの凛とした女性で、やっぱり腕の筋肉と手はプロの凄みを感じました。プロですから当たり前と言えば当たり前なんでしょうが、譜面も譜面係も無しでラヴェルのピアノ曲を全て暗譜で弾き通されたのには素直に感心してしまいました。頭の中に譜面が詰まっているのか、もう無意識のプログラミングの中で手が覚えてしまっているのか、大脳生理学的な興味が湧きました(笑。

 さて演奏ですが、一番運指が良く見える席で見せていただきましたが、ほぼ完璧、ミスタッチは多く見積もっても2回くらいしかなかったと思います。ラヴェル独特の高速で上昇下降するきらめくようなパッセージ、右手と左手の頻繁な交差等の技巧を苦も無くこなされていました。

 やはり一番印象に残ったのは「クープランの墓」のトッカータと「夜のガスパール」のオンディーヌです。トッカータは佐野えり子さんがパンフレットにご自身の解説を載せておられますが、

「組曲をしめくくる終曲で、連打音や交差する3度など、高い演奏技術を要求される。中間部はメロディーが浮かび上がり美しいニュアンスを帯びるが、途切れることなく輝く終結に向かう。この曲がオーケストラ用に編曲されなかったのは極めてピアニスティックな効果が高かったからであろう」

と述べておられます。夢見るような中間部(決して寝ていたわけではありませんから(^_^;))から壮大な同音連打でフィニッシュに至る過程はまさに「高い演奏技術」を堪能できました。終了の瞬間、会場から拍手の寸前に「ほぉ~!」というタメ息が洩れていたのが演奏の凄さを物語っていると思います。

 最終曲「夜のガスパール」の直前は余程緊張しておられたと見え、今まで一度も直さなかった椅子の位置を2回修正され、しばらく瞑想し、指を鍵盤の上に一度持っていきながら、一旦下げて深呼吸の後もう一度鍵盤の上で静止されました。こういう音の出る前の緊迫感がライブの醍醐味でしょうね。

 「夜のガスパール」については冒頭に述べたように一度レビューしましたので繰り返しませんが、やはり「オンディーヌ」で終始繰り返される細かく繊細なアルペジオ、「絞首台」での通奏音となる鐘の音の正確さ、そして超絶技巧曲といわれる「スカルボ」でのはねまわるような不気味な超高速のパッセージの表現あたりが鍵となると思いますが、その全てを過不足なく表現されており、本当に良い演奏を聴かせていただきました。
 当然ながら目の方はもう食い入るように運指と体の動きを見続けていましたが、見事に統制の取れた演奏だったと思います。常人では到底保ちきれないような指と手首の角度を維持して打鍵し続ける様は精密機械というよりはむしろスカルボ(小悪魔)のようだ、と変な感心をしていました。

 さすがに感極まられたのか、「夜のガスパール」終了後のお辞儀では目頭を押さえておられたのが印象的でした。アンコールはラヴェルが尊敬して止まなかったクープランの小曲で、これも会場を和ませる良い演奏でした。

 翌日、アルゲリッチの「夜のガスパール」を再聴してみましたが、やっぱり彼女の演奏はメリハリが極端すぎて、フランスのエスプリからはちょっと遠い所にあるなと感じざるを得ませんでした。

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2009/07/11

昨日のマスターズ練習

Lena4
 久々の目力の麗奈ちゃんです。というわけで、久々のマスターズ日記、そう言えば一昨日西宮に出かけたついでにハマデスポーツに寄ったんですが、バイオラバーのヤマホー水着は予約で一杯で店頭に置く余裕無しだそう。圧倒的に需要オーバーですな。
 さて、私の方は歯科治療中で2週間以上も泳いでなくてフラスト溜まりまくり、ようやく昨日出かけてきましたが、これだけブランクがあっていきなり練習をこなせるんでしょうか?

アップ: 50M x4本
 前半25ずつ個人メドレー順、後半25はクロールで。人数が多ければ適当に抜こうと思ってたんですが、今回は何と私を入れて4人。。。まあ後半がクロールだったんで何とか。

グライドキック: 100Mx4本
 
75はゆっくりで何のキックでもOK。一旦止まって25はアウト(全力)。75のインタバルは2分30秒。さすがに久しぶりだと3本目あたり足が動かないし。4本目は半分潜水で距離を稼いだりして。終了後休憩。

スイム: 75M x6本
 
本日のメイン。奇数は25ずつイージー・ハード・イージー。偶数はハード・イージー・ハード。最初は2分30秒の予定でしたがあまりにも開き過ぎるので2分20秒に修正。さすがに偶数の二回目のハードはしんどい。

タイム測定
 50か100で好きな種目で。もう手も足も動かんし、今回は50クロールしか無理。何とか38秒で帰ってきました。まあブランクと体調を考えれば上出来でしょう。

ダウン: 200M

計: 1300M

とりあえず全部こなしましたしフラストも少々解消。

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2009/07/10

⊿ / Perfume

トライアングル(初回限定盤)
 ゴシップ雑誌デビューも果たしていよいよ一流アイドル・グループとして認知された(か?)Perfumeの新作です。⊿はトライアングルと読むらしいですが、セカンドツアーは「直角二等辺三角形 TOUR」と銘打たれており、ま、こっちの方がPerfumeらしくていいような気もしますな。

ディスク:1 
1. Take off 
2. love the world 
3. Dream Fighter 
4. edge <⊿ -mix> 
5. NIGHT FLIGHT 
6. Kiss and Music 
7. Zero Gravity 
8. I still love U 
9. The best thing 
10. Speed of Sound
11. ワンルーム・ディスコ 
12. 願い  (album-mix)

ディスク:2 
1. I still love U 
2. NIGHT FLIGHT 
3. edge 
4. love the world 
5. Dream Fighter 
6. ワンルーム・ディスコ

 中田ヤスタカのマリオネットに徹してここまで来たユニットですから、CDは中田ヤスタカ・プロジェクトの音を聴いているといっても過言ではないでしょう。極端な話、音だけの世界なら初音ミクに歌わせても多分違和感は無い。
 その彼のこれまでのアプローチの特徴は、最先端のサウンドイフェクトを駆使しながら、歌自体は歌謡曲っぽいダサさを残して、それをうまく3人の女の子への親しみ易さにリンクさせて共感の輪を広げていった所にあったと思います。

 が、今回はオーバーチュアっぽい一曲目のTake Offから10曲目のSpeed Of Soundまで題名・曲調・アレンジにある程度一貫性を持たせて、空を翔けるイメージのコンセプト・アルバムっぽく仕上げて来ました。Perfumeの持つ芸術性を一段高いレベルに持ち上げようという目論見なんでしょうか。もちろんlove the worldDream Fighterと言ったシングル・ヒットもちゃんと入れて飽きさせないようにはしてありますが、それにしても曲名からして垢抜けてしまっている(笑。
 まあ冗談はともかく、一昔前のテクノの進化と人気が必ずしも平行しなかったように、彼女たちに合っているかどうか、そしてファンの嗜好にあっているかどうかというあたりは今後慎重にリサーチすべきなのじゃないかと思います。

 そう言う意味では「ワンルーム・ディスコ」みたいなカタカナ・ポップのちょっと崩した親しみ易さが彼女たちの本来の持ち味だとは思うんですが、構成的にはその次の「願い」のリミックスも含め、日本語の曲名を持つ二曲を最後に回すと言うアンコール的な扱いですね。上手いとも言えるし、方針転換の先行きが少し心配な気もします。

 とは言え、個人的にはremixされたedgeが一番はまりました。元々好きな曲なんですが、この派手なリミックスもプログレ魂をくすぐられますね(笑。edgeはDVDにも収録されていますが、武道館とはまた違った振り付けでこれはこれで抜群に良い。まあ、3300円出しても動くPerfumeを観る価値はあると思います。但し4、5、6はTVスポットですので実質1のPVと2、3のライブのみの収録と考えてください。

 というわけで似たようなフォロワーを寄せ付けることなく人気を維持しているPerfume、とりあえずノッチが可愛いうちはダイジョウブですぅ。ってヤマほど「ちょっと待ってくださいよ~(こんにちわぁ根岸風)」の声が聞こえてきそうですな(^_^;)。

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2009/07/06

カルメン・マキ@旧グッゲンハイム邸

Carmenmakiguggenheim
 60年代の寺山修司ファン、70年代のロックファンにとって「カルメン・マキ」は特別な感傷を呼び起こす名前だと思います。彼女が「時には母の無い子のように」で鮮烈にデビューしたのが丁度40年前、1969年のことでした。現在も精力的に活動を続ける彼女は現在40周年記念ツアー中で、7月4、5日と神戸でのライブでしたので昨日行ってきました。
 アイルランドユダヤの血をひく父と日本人の母から生まれた彼女の若い頃は当時の日本にあっては、とびきりのクール・ビューティでしたが、さすがに40年の歳月は彼女の容姿に刻み込まれていました。しかしあの突き刺すような独特の声と強い意思を秘めた眼は40年の時を超えて健在であり、表現力は恐ろしくらいに成熟していました。

Carmen Maki Persona Tour

『瞬きひとつで10年が過ぎ、瞬き四つが川のように流れて道ができた。
1969年、17歳の少女が「時には母のない子のように」で鮮烈デヴューした。
40周年の今、原点に立ち返り「ペルソナ(仮面)」を剥ぐ!!

異能の歌人であり詩人だった寺山修司に
「戦争は知らない」という幾多の人に歌い継がれた佳曲がある。
原曲を歌って四十年を経たカルメン・マキが、
今原点に返って新たに旅立つ!!』

Date: July 4th, 2009
Place: Guggenheim House, Shioya, Kobe City

Carmen Maki (vo, poem reading)

Kyoko Kuroda (p)
Keisuke Ohta (vn)

Setlist:

Part 1:
1: 箱舟の歌
2: にぎわい
3: 北の海 ~人魚
4: 街角
5: 真夜中の花 ~ふしあわせという名の猫
6: 戦争は知らない

Part 2:
7: Monday Blue Song
8: Wate Is Wide
9: 海の詩学 ~ かもめ
10: Vn Solo ~ ペルソナ
11: 友だち ~ てっぺん
12: ジェルソミーナ

EC
1: 時には母の無い子のように including Summertime

Guggenheim_3  ライブについてレポートする前に今回はまず会場について話しておかなければなりません。神戸で異人館と言うと大抵の皆さんは北野坂あたりを思い浮かべられると思いますが、けっしてあのあたりだけではありません。特に夏の避暑地に利用されたのが須磨区塩屋のジェームス山と呼ばれる地域でした。神戸の背後にそびえ立つ六甲山系が最も海に近づくのがこのあたりで、平地は国道2号線、山陽電鉄、JRが辛うじて走れる程度の幅しかありません。

 その山陽電鉄の踏切を挟んで海がすぐそこ、という高台に旧グッゲンハイム邸と言う建物があります。 コロニアル・スタイルの洋館でもう100年を経過していますが、この建物を保存すべく努力が続けられ、今でもアパート兼イベント会場として使われています。何度か関西ではニュースにも登場しましたし、一度ナイトスクープでも「開かずの金庫」が放映された事があります。

Guggenheimhall_2  この洋館でライブは行われました。会場はリンク先の見取り図の1階の半円形ホール、床は木張り、空調は扇風機、照明は白熱電球、ひっきりなしに電車の通過音が聞こえます。また会場には蚊取り線香の匂いも漂ってきます。ちなみにグランドピアノもこの洋館備え付けのもので、珍しくDIAPASON製でした。

 さてこのような滅多にお目にかかれない珍しい会場ではありましたが、心配は杞憂で、とびきり素晴らしいライブでした。

 前日に新アルバム「ペルソナ」が発売され、そこからの選曲が中心となっていましたが、このアルバムの曲の殆どに寺山修司の名前が刻まれており、彼がマキに与えた影響が如何に強いものであったかが分かります。他ならぬその寺山が彼女に歌の道を勧めカルメン・マキという歌手が誕生したわけですが、今回の彼女は詩の朗読を多用し、まさに詩劇を演じているかのようでした。

 彼女が朗読した詩をあげてみますと

北の海: 中原中也 → カルメン・マキの「人魚」へ
真夜中の花: カルメン・マキ → 寺山修司の「ふしあわせな猫」へ
海の詩学: 寺山修司 
友だち: 寺山修司 → 今回唯一の新曲「てっぺん」へ

 これを見ると、70年代にジャニス・ジョプリンの影響を受けて突然ロック・クイーンに変身した彼女ですが、一番深い所ではやはり寺山修司に憧れ続け慕い続けていたんだなと感じます。どれも見事な朗読で、彼女の表現力の豊かさに圧倒されました。例えば序盤、

「 海にいるのは あれは人魚ではないのです
 海にいるのは あれは浪ばかり 」

と言うあまりにも有名な中原中也の詩が彼女の口からこぼれ出るとぞくっと鳥肌が立ちました。その後に彼女の90年代の代表曲の一つ「人魚」が滑りこんでくると、もう完全に彼女がその空間を支配してしまいました。彼女の一挙手一投足に劇団天井桟敷と寺山修司の影が寄り添っているような錯覚にとらわれました。
 また、「海の詩学」の後には、往年のファンには懐かしい浅川マキの「かもめ」が続きます。これも嬉しいサービスでしたね。

 そして忘れてはならないのは彼女が長く封印していた「戦争は知らない」です。寺山修司の代表作でフォーク・クルセダーズを始め多くのアーチストが取り上げたこの曲ですが、やはりカルメン・マキの歌唱には誰もかなわないでしょう。
 この曲を封印した理由についてを彼女は多くを語りませんでしたが、封印を説いた理由については

「娘が20歳になったから」

とポツリと漏らしていました。その心は歌詞の中にあり、というところですね。そして「この曲の持つ普遍的な力は今の時代でも十分通用すると思う」と話されていよいよ歌が始まりました。

「野に咲く花の名前は知らない」

というこのワン・フレーズを聴いただけでもう心と体が震えました。40年近い時を超えてこの曲を彼女の圧倒的な表現力で聴ける日が来ようとは。。。生きていれば何かいい事があるものですね。以前山崎ハコのライブで「飛びます」を聴いて以来の感激でした。

 さて、その彼女をサポートするピアノの黒田京子さん、ヴァイオリンの太田惠資さんについても一言。

凄い

それだけかよ、と言われそうですが、本当に凄い。

 黒田さんのピアニッシモからフォルテッシモに至るまでの自由自在な表現力、完全にグランド・ピアノを鳴らしきる圧倒的で鬼気迫るソロ。
 軽妙洒脱な雰囲気で場を和ませつつ、エレクトリック・ヴァイオリンを含む3台のヴァイオリンで独特の世界を築き上げ、「戦争は知らない」ではなんとユダヤ語でのボーカルも披露した太田さん。

 どれだけのキャリアのある方か全然知らなかったのですが、漠然とお二人ともフリー・ジャズ、或いは現在音楽畑の方かなと思いましたが、帰ってネットで調べてそのキャリアの凄さに納得しました。

 そしてもちろん、アンコールはあの曲です。今回は曲中で見事なピアノ・ソロ、ヴァイオリン・ソロを挟んで彼女が敬愛するジャニスのあの曲まで飛び出しました。

 この三人と約30人程度の観客で醸し出された極めて親密で濃密な音楽空間に2時間半もいられた事が、一晩経った今ではまるで夢だったかのように思います。今は新譜「ペルソナ」を聴いています。やっぱり「戦争は知らない」を聴くと目頭が熱くなります。
 ツアーはまだ続きます。機会があれば是非どうぞ。

遠い日の幻を
さがし求めて
あの道を この道を
さまよう旅路

愛の幸せに満ちあふれている
喜びの微笑みはどこに
(ジェルソミーナより)

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2009/07/01

ディア・ドクター

Deardoctor
はむちぃ: おや、先日のシネリーブルへのお出かけはてっきり「エヴァ・破」と思っておりましたが、「ディア・ドクター」でございましたか。医者もの嫌い、難病もの嫌いのご主人様にしては珍しゅうございますね。
ゆうけい: 先日「おと・な・り」を観た時にこの映画の予告編をやってたんだよね。それだけでストーリー的にはほぼ想像がついて、確かに辟易しかけたんだけど、なんと「ゆれる」の西川美和が監督だというじゃないですか。これはただの安っぽいドラマにはならないなと思いなおして、公開されたらすぐ観にいこうと思っていたんだよ。

『監督: 西川美和
キャスト: 笑福亭鶴瓶、瑛太、余貴美子、松重豊、岩松了、笹野高史、井川遥、中村勘三郎、香川照之、八千草薫

街まで車で2時間もかかる僻村にやって来た、医大を出たばかりの相馬(瑛太)。研修医として赴任してきた彼を待っていたのは、看護師と一緒に診療所を切り回している、物腰の柔らかそうな中年医師、伊野(笑福亭鶴瓶)。数年前、長く無医村だったこの地にふらりとやってきたこの医者は、高血圧から心臓蘇生、地方老人の話し相手まで、様々な病を一手に受け、村人から絶大な信頼を寄せられていた。そんなある日、伊野の元にかづ子(八千草薫)という独り暮らしの未亡人が診察にやってくる。ずっと診療所を避けていた彼女だったが、次第に伊野に心を開き始める。そして、彼女の診療を通じ、伊野が隠していた意外な素顔が浮かび上がってくる――。笑福亭鶴瓶が映画初主演を果たした、『ゆれる』の西川美和監督の最新作。

2009,日本,エンジンフイルム、アスミック・エース
(CinemaCafe netより)』

は: パンフレットを拝見しますとキャッチが「その嘘は罪ですか?」と、やや安っぽいですね。
ゆ: ホント、もうちょっと何とかならなかったもんかね、でもさすがに「ゆれる」を撮った西川監督だけあって、安易なお涙頂戴モノにはなっていなかったですからご安心を。
は: 「ゆれる」では黒沢明の「羅生門」的手法を使って、善と悪、良心と憎悪の間を揺れ動く人間心理を鋭く描いておられましたね。
ゆ: その「ゆれる」をとすれば本作はコメディタッチのになってるんですが、根っからの善人も登場しないし全くの悪人も登場しないあたりが「ゆれる」に通じるものがありますね。その不思議なリアリティが映画全体に微妙な影と揺らぎ感を与えていて秀逸でした。
は: 具体的にはどのような場面でございましょうか。
は: 村民が「神様よりあの先生だ」と崇めていた医師伊野(鶴瓶)が失踪して警察が介入してくる場面から映画は始まるんですが、刑事に聴取されれば誰も失踪した医師をかばうでもないし、平気で白も切る。おかしいと思わなかったのかと問い詰められれば、それで村全体がうまくいくならそれはそれで良かったと開き直る、そのあたりの登場人物のしたたかさが私にとってはとても腑に落ちるので快かったですね。
は: それはご主人様の実地体験から得たものでもございましょう(^_^;)。
ゆ: まあまあそのあたりは後程ということで。

は: 映像的にも西川監督は独特のセンスを持っておられますね。
ゆ: 映画冒頭、真っ暗な村の田んぼ道を遠景で撮って、自転車のライトらしき光が移動するのを追っかける、そのうちに道端に何か白いものが捨ててあるのが見える、光が止まって誰かがそれを着るとどうも白衣だと分かる、その白い影とライトがまた移動していく、あの映像センスでもう一本取られた感じになっちゃいました。
は: 普通農村風景というと、大体はのどかな田畑から描き始めますよね。
ゆ: もちろん昼の棚田を渡る風に揺れる稲穂の美しさもちゃんと描いているんですが、夜の暗い農村の侘しさとの対比が上手かったですね。陰陽の描き分けの上手い方です。

は: さて、初主演の笑福亭鶴瓶様でございますが。
ゆ: なにしろアフロヘアにジーンズのオーバーオールのペイペイの頃から知ってますから、友達が映画に出てるような変な感じでしたね、関西の深夜放送全盛時代に青春を過ごした人はみんなそう思ったんじゃないかな。だから最初の数シーン見ただけで

「ありゃ地でやってるよ」

と分かるんですけどそれでも上手い、まさにハマり役でしたね。
は: 先日はヤンタン時代にお世話になったMBS(毎日放送ラジオ)にプロモーションで出ずっぱりでございましたね。
ゆ: コンちゃん(近藤光史元MBS現フリーアナ、鶴瓶ちゃんやさんまちゃんとため口をきける数少ないアナウンサー(笑))との丁々発止には思わず昔を思い出しましたね。本映画に主演すると決まった時には

勘三郎西川美和は良い女だけどくれぐれも手を出すなよとメールしてきよったわ」

だそうですよ(笑。
は: 「なんでそんなに次から次へと映画の出演依頼がまい込んで来るねん!?」とコンちゃんに突っ込まれておられましたが、
ゆ: 友達つながりがどんどん増えて、方々から声かけられるねん、と答えてましたね。おそらくその通りなんだろうと思います。彼の人柄、人徳なんでしょう。
は: 昔ラジオでいちびり過ぎて大ナベ(伝説の超大物MBSプロデューサー)さんに謹慎を喰らってしまった事もござましたが(笑。
ゆ: その頃から芯はまじめで努力家でしたからね、タモリが昔

「関西から上京されて一番恐いのは鶴瓶だ」

と言ってたはさすがの慧眼でしたね。まあ時々TVでチンチン丸出しやらかしてますけど(爆。

は: 鶴瓶様以外の注目俳優はやはり「ゆれる」の兄役の香川照之様でございましょうか。
ゆ: 今回は鶴瓶に振り回される薬卸のセールスマンというバイプレーヤー役なんですが、それでも上手さは際だってますね。特に喫茶店で刑事(松重豊)から伊野の行動を問い詰められている時に急に椅子ごとひっくり返ってみせ、あわてて体を支えにきた刑事に

「あなたは私に愛情を持ってるわけじゃ無いでしょう、でもとっさに支えにきてくれましたよね、何故ですか、きっとあの先生もこんな感じだったんだと思いますよ」

と嘯くあたり、勿論演出も上手いんですが、こいつはやっぱりスゴいなと思いました。

は: 新米医師を演じる瑛太様は典型的な今風イケメンでございますが。
ゆ: 研修医の頃の私を見ているようでしたね(嘘x800、まあ私はその頃BMWのカブリオレを買う金は無かったですけど。
は: そっちでの「(違」ではないように思いますが(-.-)ボソッ。
ゆ: さすがに「余命なんたら」は見る気がしないですけど、「サマータイムマシン・ブルース」とか「アヒルと鴨のコインロッカー」とか、彼結構良い映画に出て活躍してますよね。この映画でも、鶴瓶との口論や刑事の聴取への対応などで見せる適度に抑制の効いた感情表現なんかは感心しました。
は: やっぱり役者は良い監督との出会いで育っていくんでございますね。
ゆ: 一言言っとくと、あの髪の毛は医師としては不適切ですね(笑。外科処置をやる以上不潔なものはぼさぼさ伸ばしちゃいけません。

は: 女優陣では、昔から八千草薫様のファンでいらっしゃいましたから嬉しかったんじゃないですか?
ゆ: これこれはむちぃ君、余計な事をイワンの馬鹿(*^_^*)。
は: おっ、久しぶりの照れギャグ(^_^;)
ゆ: まあそれはそれとして、伊野の素性をほぼ把握していながら彼を支え続ける看護師役の余貴美子が何と言っても光っていましたね。昔救急現場の経験もあるベテラン看護士という役柄を迫真の演技でこなしていたのには感服しました。「おくりびと」でも渋い演技をされてましたし、日本映画界の貴重な人材だと思います。

は: 美人の役どころは八千草薫様の娘で東京で女医をしている井川遥様でございましたが。
ゆ: 美人の上に結構上手い人で、女医役をそつなくこなしてましたね、それより何より彼女がふと漏らした

「ひとの親は沢山診てるんですけど、自分の親を診に帰る暇が無くって」

という一言がぐさっときましたね(苦笑。

は: というわけでございまして、題名が「Dear Doctor」、全国の医師の皆様に捧げられた映画とも取れますがご主人様、如何でございましたでしょうか。
ゆ: 勿論突っ込もうと思えばいくらでも突っ込めるんですけど、普通の医療モノドラマに感じるじれったさや無知と誤解への怒りなどは殆ど無かったですね。
は: 西川監督は日本の医療の現状、全人医療の理想と現実の乖離、さらには農村医療の現状と問題点など、結構深いところまでリサーチしておられたようですね。
ゆ: 映画一本作るにはこれくらいの努力が必要なのは当たり前なんですが、それをできていない映画が多すぎる現在、彼女のような監督がいるのは心強いですね。まあいくらなんでも往診や救急処置がちょっと上手くいったからって村民総出で万歳してくれる村なんかありませんけど(笑。

は: まあそこはコメディということで(笑。ところでご主人様も農村で往診とかされておられましたよね。
ゆ: 法人の勤務シフトの都合で3年くらい農村の診療所を任されてましたからね。ムササビが飛んでるような山道を往診にも出かけたし、自宅で看取りたいという人があれば夜中でも看取りましたし。この映画の冒頭のシーンのように生き返ったりはしませんよ(爆。
は: その視点でごらんになって如何でございました?
ゆ: まあ限界集落の問題は医療だけでかたがつくわけじゃないですから、力になれるといっても微々たるもんです。皆が皆喜んでくれるわけでも無いし、大病院信仰みたいなものも根強くあって、実際今の日本じゃ車さえあればどこかの大病院へ結局は担ぎ込めますしね。まあその上でですけど、確かに患者さんのバックグラウンドが良く見える、例えば家でどんな暮らしをしているのかが分かるだけでその患者さんの事をより理解できるようになる、またお互い少しは心が通じ合うようになって、大病院で流れ作業のような医療をするよりは全人的医療をできたように思います。それは確かにこの映画でも指摘されている通りですね。

は: そういえば診療所から見える田んぼの四季の移り変わりを見るのが好きだとおっしゃってましたね。
ゆ: 日本の四季を感じましたけど、減反調整で段々と田んぼが減っていくのを見るのは辛かったですね。それはそうと、先程大病院の流れ作業のような治療を批判はしましたけれど、今回の瑛太のように卒業してすぐにこのような場所でずっと研修し続けていても使い物になる医師にはならないことも観る人は知っておいて欲しいですね。むしろこのような場所へはある程度の研修を終えて一般医療に自信がついてから来るべきだと思います。
は: クライマックスの一つが緊張性気胸の急患に余貴美子様の指示で鶴瓶様が恐々エラスタ針を指す場面だそうでございますね。
ゆ: やろうと思えば数秒で終わる手技ですけど、確かにやったことのない人はビビるでしょう。二人共迫真の演技でしたね。実際緊張性気胸は一刻を争う上に判断や手技を誤れば死にますし、おまけにあれほど劇的に良くなる症例ばかりじゃないですしね。だからこそある程度の修練を経ないと自分一人で何でもしなきゃいけない職場へは行くべきではないです。

は: どこへ行こうと命がかかっている以上凄いストレスがかかるものでございますね。
ゆ: 冒頭で刑事がこんな辺鄙な農村の診療所で年収2000万円!?、と驚く場面があるんですが、まああんな事が起こり得て24時間コール状態である以上、決して高くはないですね。勿論私はそんなにもらってなかったですけど、医師不足の現在ではこれ以上の金額で募集しているところは実際にありますよ。

は: というわけで、日本の医療の現状に鋭く切り込みつつ笑いにも溢れている佳作でございます。
ゆ: ラストシーンにはみんな思わず笑っていました、「ゆれる」と違って後味がいいですから是非どうぞ。

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