2009/11/06

THIS IS IT

Thisisit
はむちぃ: ご主人様、健康もすぐれませんのにまた映画鑑賞でございますか?
ゆうけい: こんにちは~ マイコー・ジャクスンですぅ、なんてね!(ものいい吉田サラダ風)。
は: 。。。。。(;一_一)
ゆ: まぁまぁそう怒らんでも(^_^;)、実はこの前映画館でマイコーの「THIS IS IT」のトレイラーを見て驚いたんだよ。
は: マイケル・ジャクソン様がお亡くなりになって幻となったロンドン公演を、リハーサル映像の編集によってスクリーン上で再現する試みの映画でございますね。
ゆ: そう、あの様な亡くなり方をしたものだから廃人寸前だろう思っていたマイコーが往年の切れを失っていないステージ・リハをしているなんてにわかには信じられないでしょ、これは全編観て確かめなくてはと思っていたんだ。
は: おまけに期間限定で劇場用パンフレットも作成しないという潔さでございますからね。
ゆ: イエスアイドゥー(坂田師匠風)。
は: 相変わらず限定モノには弱いんですから(;一_一)。

『THIS IS IT
製作年度: 2009年
製作国: アメリカ   上映時間: 111分
SONY Picures Entertainment

 2009年6月、1か月後に迫ったロンドンでのコンサートを控え、突然この世を去ったマイケル・ジャクソン。照明、美術、ステージ上で流れるビデオ映像にまでこだわり、唯一無二のアーティストとしての才能を復帰ステージに賭けながら、歌やダンスの猛特訓は死の直前まで繰り返されていた。

解説: 2009年6月に急逝したマイケル・ジャクソンによって、死の数日前まで行われていたコンサート・リハーサルを収録したドキュメンタリー。何百時間にも及ぶリハーサルを一本の映画にまとめあげたのは、『ハイスクール・ミュージカル/ザ・ムービー』の監督兼振付師で、予定されていたロンドン公演のクリエーティブ・パートナーでもあったケニー・オルテガ。コンサートを創り上げる過程では、偉大なスターであり才能あふれるアーティストでもありながらなおも進化を続けたマイケル・ジャクソンの素顔が垣間見える。
(シネマトゥデイ)』

は: こ、これは、確かにリハーサルだけの映像なんですが凄い出来栄えでございますね(驚。
ゆ: これだけの映像を残しておいてくれたスタッフに先ずは感謝したいですね、本当に貴重な映像だと思います。

は: 前田有一氏が構成と編集が突貫工事と大人の事情で明確なコンセプトを示していないのが残念と述べられておりますが?
ゆ: 確かにその通りなんですが、あれだけたっぷりとリハーサルシーンを詰め込んでくれれば文句は言えませんね。かえって余計な演出をしない分、MJファン、音楽ファンにとっては、好ましいと思いますよ。
は: この公演が本当に実現されていたら史上に残る素晴らしいコンサートになっていたでしょうね。
ゆ: 私が見た中ではマドンナのConfession Tourが最も完成された完璧なステージだったと思いますが、それ以上のものになっていたでしょうね。黒人のリズムセクションとキーボードが叩き出す強烈なビート、ステージに花を添えるブロンドの女性ギタリストやバックシンガー、ジュディス・ヒル、そしてオーディションで選ばれた超一流のバックダンサー陣、その全員がMJを尊敬し、彼の注文に機敏に応えていくさまは圧巻でこの映画のもう一つの見所でもありますね。

は: 用意されていたヴィジュアル・イフェクトも凄かったようですね。
ゆ: 当時ジョン・ランディス監督を起用して完成されたショート・ムーヴィーとしてMTVブームを作った名作「スリラー」の新作3D映像は是非見てみたかったですね。それに「スムース・クリミナル」用に用意されたおそらく禁酒法時代のシカゴを舞台にしたモノクロのアクション・フィルム、そして「アース・ソング」に於ける自然破壊に対するマイケルの怒りがこめられた壮大な映像美、どれをとっても断片的ではあれ、蝶一級品の映像ですから完成されていたら会場を圧倒したでしょうね。
は: 蝶一級ではなくて超一級でございます(-.-)。ちなみにこの意味は是非映画をご覧になってお確かめくださいませ。
ゆ: MJはこのコンサートをきっかけとして

「4年で自然破壊を食い止める」

と豪語していますね、これにはさすがに苦笑せざるを得ませんでしたが、彼の熱意だけは十分に理解できましたし、それだけの影響力をまだ行使できる人間であったという事も実感しました。

は: さて、そのマイケル様のパフォーマンスはいかがでございましたでしょうか?
ゆ: 少なくともステージの一定の面積内においての歌唱力とダンスの切れはさすが「King Of Pop」、超一流品でいささかも衰えていませんでしたね。
は: スタッフも彼は音楽とライブの全てを知り尽くしていると感嘆の声をあげておられました。
ゆ: ただ顔のアップはやはり痛々しかったですし、殆ど脂肪が無いんじゃないかと思う程やせ衰えた体で果たして本番を最後まで演じきる事ができたかどうか。。。

は: 選曲はほとんどベスト集と呼んでも差し支えないセットリストでございましたね。
ゆ: 「スタート・サムシング」に始まって名曲のオン・パレード、そしてジャクソン5の曲まで取り上げるつもりだったようですね。「I'll Be There」を彼が歌った時には思わず熱いものがこみ上げて来ましたよ(ウルウル。
は: その曲中で挟まれたモノローグも感動的でございます。
ゆ: 最後には「マン・イン・ザ・ミラー」をもってきて感動的なカーテン・コールが予定されていたようですね。世界を変えたければ先ず鏡の中の自分から、自然破壊を食い止めるのも他人事だと思わず自分から、と言うメッセージをこめていたんでしょう。

は: と言うわけでございまして、リハーサル映像とはいえマイケル様の幻のコンサートを仮想体験できる貴重な映像でございます。
ゆ: 20世紀後半の時代のアイコンであった「King Of Pop」も近年は醜聞にまみれていましたが、その「Inglorious」を再び「Glorious」に転換できるだけの可能性を秘めたコンサートであっただろうと思えるだけのインパクトがありました。
は: それがかなわなかった事が悲しゅうございます。
ゆ: 冷静に現実を見据えればプロポフォルを使用して眠るなんて過激な事をしていたら、たとえ医師の過失で無くてもああなる事はいずれ時間の問題だったでしょう。
は: それだけのプレッシャーを感じながらも「人類愛」と「自然破壊を食い止める」為に再び彼は立ち上がろうとしていたのだとしたら、これはもうこの上ない美談でございますが?
ゆ: 巨額の借金問題などおそらく現実はそうそう綺麗事ばかりではなかったのでしょう。だからこの映像だけが残って再び伝説となった事が彼にとって、そしてファンにとっても良かった、と今は信じたいですね。

は: ところでCDは買われたんでございますか?
ゆ: いやいや、体調不良をおして映画館の大画面とサラウンド音を体感するために出かけたんですからね、家で聴く気にはならないですよ。皆さんも是非映画館でご覧下さいませ。特に近くにIMAXシアターがある方は必見です!

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2009/09/10

孫文 - Road To Dawn -

Sonbun_516_2
は: 今日のレビューは現在公開中の中国映画「孫文」でございますね。
ゆ: 歴史の勉強をしていて有名な人物なのに一体この人は何をした人なのか、今一つピンと来ない人っていますよね、私にとって孫文がその一人なんですよ。
は: 本ブログで扱ったレビューの中では浅田次郎先生の「中原の虹第四巻にちらっと顔を見せますね。
ゆ: あの巻は孫文とは対立してしまった宋教仁が中心となるので、浅田先生は結構批判的に孫文を描いていた印象がありますね、多分嫌いなんでしょう(笑。
は: 実際非常に短気で気分のムラの激しい人物だったようですね。
ゆ: まあ冗談はともかく、清朝末期から中華民国建国、毛沢東による中国統一までの激動の時代の中国において、具体的にどういう実績をあげたのかが世界史の教科書程度ではあまりはっきりと見えてこない人物なんですね。

は: 仕掛けた暴動は悉く失敗し、11回目の武昌蜂起でようやく辛亥革命(1911年)が成った時には孫文様ご自身はデンバーにおられましたし、臨時大統領の座を政治的駆け引きですぐに降りて袁世凱様に明け渡たされますし、その後も込み入った政治工作もむなしく結局統一政権は作れずに「革命未だならず」という遺言を残して亡くなってしまわれますね。
ゆ: はむちぃ君の説明どおり、革命家なのか思想家なのか政治家なのか、今一つ分かりにくい人物です。その思想も三民主義大アジア主義など、分かりやすいようでいて場当たり的で一貫性がないと言うのが後世の評価ですし。でも不思議な事に中国本土と台湾双方で今でも大変な尊敬を受けているんです。
は: 両国に中山大学(中山は孫文の号)という同じ名前の大学があるというのは極めて異例の事でございますよね。
ゆ: 日本にも何度も滞在した人だから日本でも孫文の名は他のこの時代の群雄に比して知名度は高いですしね。しかしその割には映画ではあまり見たことがないんですよ。邦画ではちょっと記憶がなくて、香港との合作の「宋家の三姉妹」くらいなんです。
は: 今回の映画はその「宋家の三姉妹」でも孫文役をされていたウィンストン・チャオ様が再び孫文を演じておられますね。
ゆ: ということで、今回は前置きが長くなってしまいましたが、この映画に関しては、映画の出来よりも孫文自体を知りたくて観てきたわけでございます。

『2006年、中国、
深圳電影製片廠製作
提供: バンダイビジュアル

スタッフ:
監督: デレク・チウ(趙崇基)
撮影: チェン・チーイン(陳志英)
美術: テレンス・フォック(霍達華)
キャスト: ウィンストン・チャオ(趙文宣) 、アンジェリカ・リー(李心潔)、ウー・ユエ(呉 越) 、チャオ・チョン、ワン・ジェンチョン、ヴィッキー・リウ 他

1910年、中国近代国家への夜明けにつながる“革命前夜”。亡命の地マレーシア・ペナン島を舞台に、度々の革命失敗の苦境と失意、そして暗殺の危険に遭いながらも、愛する人に支えられ、理想を失わなかった世界的革命家・孫文の闘いと愛の日々を描く一大歴史ロマン。』

は: 英語の題名が「夜明けへの道」となっておりますように辛亥革命の1年前、苦境の中マレーシアのペナンに亡命していた時代を描いておりますね。
ゆ: 日本を国外追放になってしまってたどり着いたわけですが、ズバリ目的は革命の資金集めだった事がこの映画を観るとはっきりしますね。
は: 港湾労働者の労働条件の悪さに憤慨し、華僑経営者との交渉により賃金アップと休憩時間を勝ち取るという美談も挟まれてはいますが、
ゆ: 結局の所、彼の名声と巧みな弁舌により資金のある華僑をはじめとして世界中から革命資金を集めまくった、というのがおそらく彼の一番の業績だったのかなと思わせるような映画でしたね。そういう意味では、ほんの一時期の孫文を描いただけではありますが彼の実像がある程度見えてきた有意義な映画だったと思います。

は: もちろん女性とのロマンスや暗殺者に狙われる危険を省みない勇気も描かれておりまして、娯楽映画としても十分鑑賞に耐える内容でございます。
ゆ: 実際彼は生き延びて再亡命するわけですから、あれだけ命を狙われていて死なないのも歴史通りなので一応リアリティはありますわな(笑。この頃の彼の伴侶だったチェン・ツイフェンを演じるウー・ユエも好演ですね。孫文が後年宋家の次女と結婚してしまう事が分かってるだけに余計にいじらしかったです。

は: という事で今回は佳品程度の作品ではございますが、孫文という人物に興味のある方や「宋家の三姉妹」をご覧になった方には一見の価値はございますでしょう。
ゆ: 不遇の時代の一断面を切り取る事により、うまく孫文の人間像を浮かび上がらせていると思いました、地味ではありますがデレク・チウという監督の慧眼が光る映画だと思います。

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2009/09/02

ドラゴンボール EVOLUTION

ドラゴンボール EVOLUTION (特別編) [DVD]
ゆうけい: は~むちぃく~ん、あ~そびまっしょ!(^^)!
はむちぃ: ともだちですか、あんたは(ーー;)、はは~ん、またまたトホホ映画に手を染めようとされておられますね。
ゆ: またまた人を犯罪者みたいに~、ちなみに20世紀少年第3部じゃないよ。これだよ~。
は: おおっ、これは換骨奪胎映画と話題になったハリウッド版ドラゴンボール、、、 

『DRAGONBALL EVOLUTION
2009年、アメリカ映画
配給:20世紀フォックス映画
監督:ジェームズ・ウォン 
製作総指揮:鳥山明 
製作:チャウ・シンチー 
出演:ジャスティン・チャットウィン,
エミー・ロッサム、チョウ・ユンファ、ジェームズ・マースターズ、田村英里子、他

鳥山明原作による国民的人気コミックを実写映画化したアクションアドベンチャー。亡き祖父の遺志を継ぎ、世界中に散らばった7つのドラゴンボールを探す旅に出た孫悟空たちと、絶大な魔力によって世界征服を企むピッコロ大魔王との熾烈な戦いを描く。(AMAZON解説より)』

ゆ: 困っちゃうな~、こんなまともに作っちゃ(笑。
は: 「日本アニメの金字塔であるドラゴンボールの実写版」という観念を捨てさえすれば、
ゆ: 立派なハリウッドB級映画になってますよね、一応脚本は首尾一貫してるし、VFXもそこそこ安っぽくて心地よいし、ERIKOには悪いけど、B級スターたちの演技もほほえましいし。
は: B級というところがミソでございますね(笑。
ゆ: 「少林サッカー」のチャウ・シンチーが「ベスト・キッド」を模倣したらこうなるみたいな。但し、ベスト・キッドがそれなりに感動するB級なのに比べると、こちらはやっぱりな~、って笑っちゃうB級ですけどね。

は: 敢えてトホホな所をあげるとすれば、どのあたりでございましょう。
ゆ: 考え様によっては全部ですね(爆。
は: まともに作ってあると言っておきながら(;一_一)
ゆ: まあまあ(^_^;)、問題はとにもかくにもドラゴンボールであることですよ。それを考えたらトホホとしか言い様がないですしょう。ゴクウにしても、亀仙人にしても、原作のイメージからは程遠いですよね。
は: 孫悟飯様だけは一応まともでしたかね。
ゆ: 多分ベスト・キッドのミヤギ(パット・モリタ)を下敷きにしたんで格好はついたんでしょうけど、何ですかあの

「第一のルール:ルールはない」

ってのは(苦笑?おまけに「氣」の英訳が「キー」ですよ、みなさん。
は: チチブルママイにしてもハリウッド式お色気サービス満点で、原作の色気とは全然違いましたね。
ゆ: チチの色気でゴクウがカメハメ波を習得するなんてもう呆れてものも言えませんね(笑。

は: 確かに「別次元」のドラゴンボール、というのが売り文句でもあり、結論でもございますね。
ゆ: B級コレクターがこの世の中には沢山おられますからまあその方々の蒐集欲は満たせる映画だとは思います。
は: ラストのテーマソングは如何でございます?
ゆ: へっ、何だかノイズのようなものは聞こえた気がしますが?
は: 知りませんよ~、全国ウン千万のアユ・ファンを敵に回しても~(ー_ー)!!
ゆ: こんな弱小ブログ炎上しますかいな(笑。それより続編があるみたいなエンドロール後のサービス映像の方が不安ですな。

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2009/08/15

はむちぃの夏休みお勧め洋画2本

Eisenheim
( The Illusionist )
 皆様こん**は、はむちぃでございます。本日は主人のゆうけいが高村薫女史のご著書により前頭連合野がオーバーロード状態でございまして、

「何も考える気がせん、はむちぃ、よろしく頼む」

との一言を残して呆けております故、久々に私メがレビューを担当させていただきます。
 今年は洋画のレビューが少のうございますが、結構観てはおります。その中から、もう新作時期を過ぎて借りやすくなったDVDなどを2本、前田有一様のレビューも参考にしながら紹介させていただきます。よろしくお付き合いくださいませm(__)m。

1:ワールド・オブ・ライズ( Body of Lies )

前田有一採点:70点
はむちぃ採点: 75点
ゆうけい一言: リドリー版アラビアのロレンス

ワールド・オブ・ライズ 特別版 [DVD]

『2008年/アメリカ/カラー/128分/配給:ワーナー・ブラザース映画
監督・製作:リドリー・スコット 
脚本:ウィリアム・モナハン 
原作:デイヴィッド・イグネイシアス 
出演:レオナルド・ディカプリオ、ラッセル・クロウ、マーク・ストロング、ゴルシフテ・ファラハニ

アラビア語を駆使し、イラク社会に溶け込んでいる若きCIA局員フェリス(レオナルド・ディカプリオ)。現地の風習を理解・尊重する彼に対し、直属の上司ホフマン(ラッセル・クロウ)は「中東は人の住むところではない」とうそぶくような男。安全な本国から電話一本で部下をこき使うくせに、献身的な現地協力者でさえ必要とあれば平気で切る冷酷さを持っていた。 長年追うテロ組織のリーダーをなかなか探り当てられない彼らだったが、ある手がかりからホフマンはフェリスにヨルダン行きを命令。そこでヨルダン総合情報部(GID)の局長ハニ・サラーム(マーク・ストロング)の協力を得よという。(前田有一の超映画批評より)』

 これぞ良くも悪くもハリウッド、典型的なCIA対アルカイダのアクション・ムーヴィーでございます。主人のゆうけいはこういう「金はかけたぞ、食らえこの野郎」的な映画には辟易しておりまして、普段は敬遠しがちなのでございますが、それでも観てしまったのは一重に監督が「ブレードランナー」「ブラック・レイン」「グラディエーター」「ブラックホーク・ダウン」のリドリー・スコット様故でございましょう。

 リドリー・スコット映画といえば何と申しましても独特な映像美が最大の魅力でございますね。今回も北アフリカのロケにおいて8台のカメラを常時同時に作動させて撮影された映像美には目を奪われるものがございます。途中でラッセル・クロウがアラビアのロレンスを揶揄するシーンがございますが、あの映画を髣髴とさせるものがございました。

 内容も元ワシントン・ポストの中央アジア派遣記者デイヴィッド・イグネイシアスと綿密に練り挙げた原作を「デパーテッド」のウィリアム・モナハンが脚本に書き下ろしただけの事はあり、実によく考え抜かれております。CIAの諜報部員が場末の看護士にころりと参ってしまう如何にもハリウッド的な安直な設定はいかがなものかとは思いますが(笑。

 アラビアのロレンスではオマー・シャリフが主演のピーター・オトゥールに負けない存在感を示しておられましたが、今回はハニ・サラーム役のマーク・ストロングが美味しいところをさらった感がございます。ラッセル・クロウの老練な演技、すっかり演技派俳優となられたレオナルド・ディカプリオの体を張った素晴らしい演技もさすがと思わせはいたしましたが、マーク・ストロングは「嘘」を絶対に許さないエリート・アラブ人の情報部局長という役どころを圧倒的な存在感で演じておりました。ディカプリオに「Don't tell me a lie!」と釘をさすところなどはゾクゾクいたしましたね。

 という訳でございまして、前田有一様の「映画自体の思想が古い」という厳しい指摘は甘受すべきとは存じますが、それでもリドリー・スコットの隅々まで配慮の行き届いた映像美と役者を活かす監督手腕により観るに値する映画となっている点を評価し、75点をつけさせていただきました。

2:幻影師アイゼンハイム(The Illusionist)

前田有一採点: 60点
はむちぃ採点: 78点
ゆうけいの一言: この監督はフェリーニ・フォロワーか?

幻影師 アイゼンハイム [DVD]

『2006年/アメリカ・チェコ/109分
監督: ニール・バーガー
撮影:  ディック・ポープ
音楽: フィリップ・グラス

長きにわたり隆盛を誇ったハプスブルグ家も斜陽にさしかかった19世紀末のオーストリア、ウイーン。天才イリュージョニストのアイゼンハイム(エドワード・ノートン)のショーを観に、皇太子レオポルド(ルーファス・シーウェル)が許婚のソフィ(ジェシカ・ビール)とやってくる。出し物に参加させるためソフィを舞台にあげたアイゼンハイムは、彼女がかつて自分とかけおちを誓った幼馴染だと気づく。

さて、アイゼンハイムは身分の差により引き裂かれた彼女との恋をずっと忘れられずに生きてきた男。一方ソフィも、傲慢なDV男のレオポルドとの政略結婚などイヤイヤ。今でもアイゼンハイムだけを愛している。キツい監視下で再び互いを求めあう二人だが、その先には過酷な運命が……。』

 舞台は10世紀末のウィーン、華麗なる幻影師と貴族の女性の恋物語といえばヨーロッパ映画かと思いきや、みんな英語を話しているというのが最大の驚きだったとゆうけいが申しておりました(笑。

 冗談はさておき、本筋は貴族と賎民の恋物語というべたなネタでございます故、映画の成功の如何は映像の素晴らしさにかかっているといっても過言ではございません。その一点においてこの映画は素晴らしい出来であり、観る者を引き込んで止みません。耽溺できる、と申し上げてもよいくらいでございましょう。
 プラハで撮影されたという19世紀末のウィーンの情景や、衰退しかかっているとはいえ欧州一の貴族であったハプスブルグ家の皇太子の宮廷のさすがの絢爛豪華さ、そしてまだ電気の無い時代の炎による劇場の照明などがとても印象的で、ちょっとフェリーニ映画を思い起こさせるほどでございました。

 主人公アイゼンハイムのイリュージョンのVFXも見所でございます。しかし中にはあまりにも見事すぎて現実感が無いものもございました。また、彼の仕掛けるヤマ場のトリックがあの時代ではとても無理だろうと思うほど荒唐無稽なのが難点ではございますが、まあそんな事をいうのも野暮だろうというくらい素晴らしいイリュージョンを堪能できる事は間違いございません。

 さて、キャストで一番のキーとなる俳優は主演女優のジェシカ・ビールでしょう。彼女の役柄に求められるのはハリウッド的美貌でもなく、闊達な演技力でも無く、全ての所作に高貴な雰囲気を醸し出せる点であると思いますが、それを十分にこなしておられました。主人のゆうけいが「あの女優がこんな高貴な演技が出来るとは」と驚いておりましたが、この映画をきっかけに演技派として広く認められたそうでございます。これからの活躍が楽しみな女優さんですね。
 そう言えば警部役のポール・ジアマッティが髭男爵に見えて笑えてくるとゆうけいが申しておりました。

 以上、前田有一様は冷静に評価して60点という辛い点数をつけておられますが、雰囲気を楽しむ映画としては素晴らしい出来である事、それにフィリップ・グラスのミニマルでモノトナスな弦の響きが意外に映像にフィットしている事を加点して、78点をつけさせていただきました。

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2009/08/09

ハリー・ポッターと謎のプリンス

Action3
はむちぃ: 皆様こん**は、本日の映画レビューはただいま劇場公開中のハリポタシリーズ第6作目となります「ハリー・ポッターと謎のプリンス」でございます。主人公の皆様も随分成長なさいましたね。しかし、何故に冒頭写真がダニエル・ラドクリフ様ではなくてエマ・ワトソン様?
ゆうけい: 「賢者の石」を再鑑賞するのも一興かもしれませんね。まあ、一番成長が楽しみなのがエマですから(笑。
は: さすがtwitterでエマ様をフォローされておられるだけの事はございます(-.-)(ボソッ。
ゆ: これこれはむちぃ、余計な事はイワン・レンドル。

『人気シリーズ第6作。ハリーの宿敵ヴォルデモートの過去が描かれる。幼少期のヴォルデモート=トム・リドルを演じるのは、レイフ・ファインズの甥ヒーロー・ファインズ・ティフィン。ヴォルデモートとの最終決戦が迫っていることを予感するダンブルドア校長は、ハリーとともにヴォルデモートの守りをとく手がかりを見つけようと、かつて学生時代のトム・リドルを教えたこともあるホラス・スラグホーンを魔法薬学教授として学校に迎える。

Harry Potter and the Half-Blood Prince 
2009年、イギリス、アメリカ、154分
配給:ワーナー・ブラザース映画
監督:デヴィッド・イェーツ 
原作:J・K・ローリング 
脚本:スティーヴ・クローヴス 
出演:ダニエル・ラドクリフ ルパート・グリント エマ・ワトソン ヘレナ・ボナム=カーター デイビッド・ブラッドリー  アラン・リックマン 他』

は: う~む、前回「フェニックスの騎士団」のレビューでご主人様がおっしゃったように、最終話へのブリッジという難しいシチュエーションではございますが、この作り方はいかがなものでございましょう?
ゆ: 今回もDVDになるまで待った方がよかったかもね~(嘆息。はっきり言ってハリポタ史上最低の作品でしょう。デヴィッド・イェーツもついに血迷ったか、と思わざるをえませんねえ。一応前回と同じように箇条書きにしますと

「原作の改竄とさえ思えるほどの脚本の致命的な失敗」
「演出過剰なのに緊張感がない」
「ラブコメなのに暗い」
「俳優に魅力がどんどん減じていく」
「CGに余り見るべき物が無くストーリーと絡んでこない」

今回は褒め言葉が見つかりませんねえ。

は: 巷間言われておりますように、学園内での恋の鞘当てが過ぎると言うところでございましょうか。
ゆ: 一番の問題はそこでしょうね。回を追う毎に長尺となっていく原作を3時間程度にシェイプアップしていく作業が大変なのは分かるのですが、今までは

「ハリー・ポッター・サイド 対 ヴォルデモート軍団」

という原作全体を通して貫かれている構図を中心にすえる事だけは忠実に守っていたと思うんです。ところが、今回はあまりにも変更・脚色が過ぎて、はむちぃ君の言うようにラブコメと化した中間部で完全に映画が弛緩してしまい、シリーズ全体を通して守られてきた緊張感が完全に失われてしまいましたね。
は: デス・イーターに任命されたドラコ・マルフォイ様だけがやたら悩んでいるのが痛々しゅうございました。
ゆ: ハリポタ軍団がやたらいちゃいちゃしまくってるので、痛々しいのを通り越して滑稽にさえ思えましたね。ひとえにイェーツ監督の責任でしょう。

は: 最初に人間界の近代的なミレニアム橋が崩れ落ちるところは凄いCGでございましたが、それだけで終わってしまい、学園どころか魔法界全体、更には人間界にも崩壊の危険が迫ってきていると言う切迫感がまるで無かったですね。
ゆ: それなのに雰囲気だけはやたらと暗い、これでは一体どういう映画を作りたかったのかわからないですね。大体からミレニアム橋が崩れ落ちると言うのは原作には無い設定で、あそこまでやるなら魔法省と英国政府の交渉をちゃんと描いても良かったと思います。他のCGではアイルランドの有名な海岸線をロケして合成した洞窟の入り口のシーンは壮大で目を見張りましたが、洞窟の中に入るとちゃっち過ぎてこれもアンバランスになってしまいました(涙。

は: それに今回はヴォルデモートは姿さえ見せず(若い頃を除く)、デス・イーター軍団の攻勢も殆ど描かれませておりませんね。
ゆ: ヴェラトリックス役のヘレナ・ボナム=カーターだけはやたら頑張ってますけど、やる事がせこ過ぎて腹立たしくさえ思いました。実は原作では終盤にヴェラトリックスをはじめとするデス・イーター軍団がついに学園内に侵入し、学園サイド+不死鳥の騎士団と壮絶な死闘を繰り広げた末についにダンブルドアが斃れるのですが、その本作でも一番重要な場面をばっさり切り捨ててしまうとは呆れてものが言えません。
は: 前回は死闘の末にシリウス・ブラック様が斃れましたのでそれなりの感動もございましたが、今回は呆気なかったですね。
は: ダンブルドアの最期をあのように軽くしてしまうとは、原作の大きな流れを完全に損ねてしまいましたね(嘆息。

は: そこまでして描きたかったラブコメシーンも何かだらだらしてるだけと言う気もいたしました。
ゆ: もともと個人的には原作でのハーマイオニー・グレンジャーの知性的な部分を描いていない事がこの映画シリーズを通しての一番の不満だったのですが、もう今回に至って堪忍袋の尾が切れました。切れついでに言わせていただくと、ハーマイオニー役のエマ・ワトソン以上の美人を持ってくるのがまずいと判断したんでしょうけど、他の女子が軒並み不●工過ぎて、勝負にも何にもならんじゃないですか。逆にエマくらい魅力のある俳優をオーディションして来いって言うんですよ。
は: おおっ、ご主人様、今回は相当お怒りでございますね(^_^;)。他に魅力的な女優様はいなかったのでございますか?
ゆ: エマの次に美人なのがヘレナ・ボナム=カーターじゃねえ。胸の谷間勝負ではヘレナが貫録勝ちしてましたけど(笑。色恋に関係無いところでは、前回も申し上げましたがルーナ・ラブグッド役のエバナ・リンチが、今回もコケティッシュな好演を見せてくれましたけどね。

は: 常連の俳優さんはいかがでしたか?
ゆ: ただ一人、セヴェラス・スネイプ役のアラン・リックマンだけがその存在感を際立たせておりましたね。
は: 味方か敵か分からない不気味さを重厚な演技で演じ切っておられましたね。
ゆ: 他のレギュラーが年を重ねるに連れ魅力を失い下手な脚本と演出の犠牲となる中で、彼だけは超然としていて素晴らしい。率直に申し上げて、この後の原作の流れを鑑みて、ハリーの取り巻きよりも彼を準主役級にして脚本を組み立てていった方が良かったのではないかと思いますね。

は: というわけで今回はトホホなブリッジ作品となってしまいましたが、とりあえず最終話「死の秘宝」へのつなぎ役は最低限果たしたと言うところでしょうか。
ゆ: セヴェラスがダンブルドアを倒した事と、分霊箱の謎を説明した事だけがこの映画の意義だったとはまあ情けないですねえ。
は: それと殆ど気づかないほどの扱いでございましたが、冒頭で魔法杖店のオリヴァンダー様が誘拐されたことも忘れないで下さいませ。と言うことで、「死の秘宝」第一部は来年11月、第二部は2011年夏公開だそうでございます。
ゆ: 皆さん気長に待ちましょう(笑。ちなみにアラン・リックマンヘレナ・ボナム=カーターは来年春のティム・バートン作品「Alice In Wonderland」に出演するはずですのでお見逃し無く!

は: ではご主人様、最後に一言お願いいたします。
ゆ: 正直に申し上げて映画館の入館料に見合うだけの映画ではないと思います。それと、これは原作にも言えることなのですが、「Half-Blood Prince」は「混血のプリンス」であって「謎のプリンス」ではありません。こういう自主規制は日本語への冒涜です。

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2009/06/14

路上のソリスト(The Soloist)

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はむちぃ: ゆうはむ映画レビュー、今回は現在公開中の洋画「路上のソリスト」でございます。LAタイムズのコラムニストのコラム記事から始まった実話に基づく物語でございまして、当然ながらLAが舞台でエサ=ペッカ・サロネン&LA交響楽団が全面的に協力していることで話題になっております。
ゆうけい: クラシック・ファン&オーディオファイルには必見、と言いたいところなのですが、決してそんなに単純に音楽を楽しむ映画ではございません事を最初にお断り申し上げておきます。と言いつつ、初めて内部が公開されたウォルト・ディズニー・コンサートホールの威容には度肝を抜かれましたな(笑。
は: 音楽モノといいますと、ご主人様があまりの脚本のトホホぶりに辟易された「奇跡のシンフォニー」などを思いだしてしまいますが(^_^;)?
ゆ: あの脚本のサービス精神たっぷりのアリエナイザー的展開がハリウッド的虚構世界でのサニーサイドを象徴しているとすれば、この映画はまさに現実世界の暗黒面を正面から見つめていますね。マーラー5番勝負part IIで疲れ果てているはむちぃ君につきあわせるのはチト気の毒なんだが、どうしても見ておきたくてね。
は: 映画は私のメインの担当分野でございますからかまいませんよ、その代わり今日はボケ無しでまいりますよ(-.-)ボソッ。では映画紹介からまいります。

『アカデミー賞で7部門にノミネートされた『つぐない』(07)のジョー・ライト監督が、「音楽に対して本気で取り組むなら、世界がひれ伏す才能だった」と語られる天才音楽家・ナサニエル・エアーズの物語を映画化。主演は、『Ray/レイ』(04)で伝説のジャズ・ミュージシャン、レイ・チャールズを演じて、アカデミー賞を獲得したジェイミー・フォックスと、『アイアンマン』(08)の大ヒットが記憶に新しい、ロバート・ダウニーJr.。

ロサンゼルス・タイムズで「弦2本で世界を奏でるヴァイオリニスト」と題されたコラムで紹介された、ナサニエル・エアーズ(ジェイミー・フォックス)。ジュリアード音楽院に通い、華々しい将来を約束されていたのに、ある病気(統合失調症、ゆうけい付記)が原因で路上で暮らすことになった天才音楽家。コラムの執筆者スティーヴ・ロペス記者(ロバート・ダウニーJr.)は、ナサニエルと関わっていくことで、ナサニエルの才能に感服し、音楽家としての人生を取り戻してほしいと願い、彼の治療を計画する。しかし、ナサニエルのとった行動は、ロペスの人生観を根底から覆すものだった。

監督:ジョー・ライト
製作:ゲイリー・フォスター、ラス・クラスノフ
製作総指揮:ティム・ビーバン、エリック・フェルナー、ジェフ・スコール、パトリシア・ウィッチャー
原作:スティーブ・ロペス
脚本:スザンナ・グラント
撮影:シーマス・マクガーヴェイ
美術:サラ・グリーンウッド
編集:ポール・トシル
音楽:ダリオ・マリアネッリ
2009年アメリカ映画、配給:東宝東和
上映時間:1時間57分』

は: 予想以上に暗くて重い映画でございましたね。
ゆ: そうですね、単純な音楽ものでも無く、どこかの国の絵空事のような難病ものでもなく、フィクションに限りなく近いからこそ、どうしても心の奥にどんよりと残ってしまう後味の悪さがありますね。
は: 以前ご紹介した英国映画「この自由な世界で」に似た重さでございますね。監督のジョー・ライト様が「偏見とプライド」のような映画を撮る英国人監督である、という事もあるのでしょうか。
ゆ: そうですね、映画のタッチを決めるのは監督ですからそれも大きいと思います。しかしそれよりも何よりも「統合失調症」をリアルに描ききっている事が大きいでしょうね。

は: LAの公園の一角のベートーヴェン像の前で二本しか弦の無いボロボロのヴァイオリンから素晴らしい音色を奏でる、奇妙な風体で喋ることの支離滅裂なホームレスの黒人にLAタイムズのコラムニストが興味を惹かれ、調査してみると本当にジュリアード音楽院に在籍した事のある才能あるチェリストだった事が判明して、と言う出だしで物語は始まりますが、
ゆ: どう見ても彼は精神を病んでいる。しかし彼の音楽的才能は見捨てるには惜しい。そこでスラム街にあるLAMPという精神障害のホームレスを収容する施設に彼を入れようとする。さてその後の成り行きは?というところなんですが、とにかく感動モノのヒューマン映画に仕立てようとするなら

「統合失調症でも音楽的才能があればこんな素晴らしい事が可能だ」

というスタンスでエンターテインメントの方向に振れば済むのですが、そうでなく

「どんなに素晴らしい音楽的才能があっても統合失調症を発症してしまえばこうなってしまうんだ」

というノンフィクション映画に近いスタンスで作ったところにこの映画の意義があると思いますね。

は: その代償として映画の人気、興行的収入を犠牲にしてしまうリスクがございますよね。
ゆ: その通り、大評判になった新聞コラムの実話の映画化と言う話題性に乗っかって安易な映画を作らなかった製作サイドの慧眼とも言えますが、数々のオファーからこのプロデューサーを選んだ原作者のスティーブ・ロペスの選択の結果でもあるとも思います。
は: プロデューサーはハッピーエンドにはなり得ないこの物語を「ユニークな友情の物語」として描きたいとロペス様に申し出て気に入られたそうでございます。
ゆ: となると後は監督・脚本家にしっかりとした人を持ってくる事ですね。
は: 先ずは脚本ですが、「エリン・ブロンコビッチ」で名を馳せたスザンナ・グラント様に白羽の矢が立ちました。
ゆ: 彼女はロペス氏のコラムを読んで感動し、

「難しいのはこれほど私を感動させた題材をどう伝えればいいのかということだった」

と述懐しています。そしてその方法として実在のナサニエル氏とロペス氏とかなりの時間をともにする事で構想を固めていき、幾つかの架空のシチュエーションを加えた上でこのシリアスな脚本を書きあげたそうです。、英国の気鋭の若手監督ジョー・ライトはこれがハリウッド初作品だそうですが、アメリカから送られてくる沢山のオファーの中から

「英国人としてのアウトサイダーの視点が有利に働くかもしれないと感じてこの脚本を選んだ」

そうです。ただ、近代的大都市にして路上生活者6万人と言われるLAに降り立ち、高層ビル群に接するスラム街スキッド・ロウに足を踏み入れた時は、アメリカ資本主義社会の現実を目の当たりにして、かなりの衝撃を受けたようです。
は: 主人公ナサニエルがスキッド・ロウで多くの浮浪者の幸せを神に祈りますが、本当に「天使の街」という都市名が皮肉なほどのすさみ様でございますね。
ゆ: もう一人の主人公であるコラムニストのロペスは取材を重ねるうちにそのナサニエルの姿に打たれ、また彼の才能故に彼をどん底の生活から救いあげようとします。また、スキッド・ロウの住民の福祉向上を市長に掛け合い多額の予算を配分させることに成功しますが、それがどういう結果をもたらすか、そしてそれが本当に意味のある行為だったのか、この映画は冷酷なまでに問い詰めていきます。

は: その二人の主人公を演じるのが「レイ」でアカデミー賞を受賞したジェイミー・フォックス様とロバート・ダウニーJr様ですね。
ゆ: ジェイミー・フォックスの演技は今回も入魂でしたね。彼はピアノを弾けるので音楽の素養があるんですが、
は: 今回ナサニエルを演じるに当たってヴァイオリン、チェロをプロから学び、更には統合失調症の専門医師とも会って研究を重ねたそうでございます。
ゆ: それでも「レイ」のレイ・チャールズの演技の印象が強烈なのでしばしばナサニエルが盲目だと勘違いしそうになって困りました(笑。
は: 一方ロペスを演じるダウニーJr様も自分の行為の正当性について悩むコラムニストを渋く重厚に演じておられましたね。
ゆ ただ、ちょっとナサニエルとの距離感に戸惑っている感じは否めませんでした。後で買ったパンフレットを読むと、「アイアンマン」「「トロピック・サンダー」と忙しくリサーチの時間を全然取れないまま撮影に突入し、またジェイミーと別撮りの場面も多くて、

「ジェイミー・フォックスは今回素晴らしい演技をしていると思う。だが、一つ残念なのは彼との共演の醍醐味をあまり味わえなかったこと」

だと語っていて、さもありなんと思いましたね。

は: さて、難病モノ嫌いのご主人様から見て、ジェイミー様の統合失調症の演技はいかがでございましたでしょうか?
ゆ: 十分合格点だと思いますね。コミュニケーションの難しさ、幻聴による社会生活の困難さなどを、普通の人が見れば怖がるくらいに演じていましたから。実際精神病院からの紹介患者を日常的に見ている者として、この病気の患者とコミュニケーションをとる事がどれほど困難であるか、どれほど他者を困らせるかは痛いほど良く分かります。
は: パンフレットで日野原重明先生がこの病気について解説しておられますが?
ゆ: 正直言って通り一遍の楽天的教科書的解説で、ナサニエルのような実際の患者の実態をあまりご存知ないんじゃないかと思いました。決して妬みで言うのではなく、内科で象牙の塔の最重鎮として医療の王道を歩んで来られた方の目にはなかなか触れない醜悪な現実がこの世界には存在するのだ、という事をこの映画の方が良く教えてくれるんじゃないですかね。
は: もちろんそれで日野原重明様の功績が損なわれえるわけではございません。
ゆ: 柴田錬三郎先生ではありませんが、まあ一言だけでも地べたから物申したかっただけです(苦笑。

は: さて、最後になりましたがこの映画のもう一つの大きなテーマである音楽はジョー・ライト監督との付き合いも長く、「プライドと偏見」ではアカデミー賞も受賞されましたダリオ・マリアネッリが担当しておられます。
ゆ: 監督とも相談の上、今回はナサニエル氏本人が尊敬しているベートーヴェンを選んで見事にアレンジしておられますね。登場した曲をざっと挙げてみますと、

交響曲第3番「英雄」
弦楽四重奏第12、14、15番
ピアノとチェロのためのソナタ第4番
ピアノ・ヴァイオリン・チェロのための三重協奏曲ハ長調Op56
交響曲第9番「合唱」
バッハ / 無伴奏チェロ組曲第1番ト長調BWV.1007

などでした。
は: LASOのリハーサルを聴いて感動するナサニエル様の視覚イメージとしての色彩が画面に乱舞する「英雄」、そしてラスト・シーンでサロネン様がお振りになる第9番がやはり出色の演奏でございました。
ゆ: あの色彩の乱舞はてんかんの方は見ない方が良いですね、発作を起こしてしまいそうです(マジ。もちろん正論的にははむちぃ君の言う通りなんですが、映画的にはコラムに感動した老婦人から贈られたチェロを手にしてトンネルの中で弾き始める四重奏第15番イ短調Op.132が良かったですね。
は: トンネルからカメラを上方にパンして飛翔していく鳩の群れをとらえる手法により、見事にロペス様の心象風景と重ね合わせていましたね。
ゆ: 撮影監督のシーマス・マクガーヴェイのこの映画一番の腕の見せ所でしたし、それに15番のチェロの音色がよくマッチしていました。
は: ジョー・ライト様がこの映画の目的としていた

Above & Below
ベートーヴェン & ホームレス
映像 & 音

を融合させるという意図が見事に達成されたシーンでございましたね。
ゆ: この曲はベートーヴェンが腸カタルで病床についていた時期を挟んで書かれ、「病癒えた者の神への感謝の歌」というテーマがあるそうですが、それが映画自体のテーマとも重なっており、この映画に一段の深みを与えておりましたね。

は: というわけでございまして、決して万人向けの映画ではございませんが見応えのあるヒューマンドラマにベートーヴェンの音楽が融合いたしました秀作でございます。
ゆ: 見ていて決して気分の良い映画ではございませんが、たまには見応えのある映画を見たい、ついでにクラシック音楽も楽しみたい、という方は是非ご覧下さいませ。

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2009/05/12

WALL・E(ウォーリー)

ウォーリー [DVD]
はむちぃ: 皆様こん**は、本日の映画レビューは洋画アニメで世界的に大ヒットし、本年度アカデミー賞長編アニメーション賞も受賞いたしました「WALL・E(ウォーリー)」でございます。
ゆうけい: 短編賞の「つみきのいえ」に続いてこれでアカデミー賞のアニメ部門は制覇しますな(笑。まあ冗談はともかく、ディズニー傘下に入ったとは言え、数々の傑作を生み出してきたPIXAR Animation Studioの作品ですからな、決して失望させてくれることは無いでしょう。
は: では早速参りましょう。 

『キミは、ボクのタカラモノ。
宇宙で一番ピュアな愛が、地球を救う力になる。
ピクサーが贈る、29世紀のラブストーリー

700年間、ひとりぼっちで働いてきたゴミ処理ロボットのウォーリー。
ある日突然、ピカピカの天使が現れた。地球の未来を変える、驚くべき秘密と共に…。

『モンスターズ・インク』『カーズ』のスタッフが結集!
ディズニー/ピクサー史上最大のスケールで贈る、“愛”と“感動”の最高傑作!
(AMAZON解説より)』

は: 圧倒的な完成度を誇るCGを背景に、感情を持つようになったロボット同士のほのかな交歓を描いてなかなか泣ける作品でございましたね(ウルウル。
ゆ: はむちぃ君もバーチャルで暮らすうちに随分知性と感情を身に付けたからねえ(笑。確かにピクサーの面目躍如たるものがありますな、

「どうだい、これが世界水準のアニメだよ」

とピクサー総帥のジョン・ラセターが胸を張っているような気がしますね。旧型ロボットのウォーリーと最新鋭ロボットのイヴの造形も上手いし、この二人(?)を軸とした無声映画的ストーリー展開はちょっとチャップリンを連想させるほどで、本当に面白かったですね。でもねえ、、、(ーー;)
は: は、何か瑕疵がございましたでしょうか?
ゆ: う~~~ん、、、、、(-_-)
は: ご主人様がこういう映画で考え込まれるときはプロットか、SF設定でございますね、多分。

ゆ: 図星ですな(苦笑。先ずストーリーの大前提の説明が弱すぎるんだよね。
は: 何故人類が地球上から完全に姿を消したのか、生物が絶滅したのか、という点でございますね。
ゆ: その通り。後半で一応理由は分かるんだけど、それでは弱すぎるでしょう。基本的設定に瑕疵があると映画全体に説得力が無くなるんだよねえ。

は: SF的設定でもお気に召さない点がございましたか?
ゆ: もうそれは色々とありまくりで、全部は語れないほどですね。虚構世界の中で愛を描いてきたピクサー・スタジオの作品なんですが、ここまで無茶な設定をしているのは珍しいですねえ。
は: あまリしゃべりすぎるとネタバレにもなりますしね。では一番気に入らない一点だけお願いいたします。
ゆ: 700年間ユートピアのような巨大宇宙船の中で暮らした人類が、

「皆同じようなデブデブの体型になり、骨格も筋力も弱り、ロボットの助け無しでは起居さえままならなくなっている」

と言う描写は結構秀逸だと思うんです。
は: はいはい、これは現実に宇宙生活で危惧されている点も含まれておりますね。
ゆ: その通り、だからこそその設定をラストの方で活かしてくれると思っていたんだ。ネタバレにならない程度にぼかして言うと、私はてっきり

「一見人間としての尊厳を取り戻したように見えるバカ船長より、実はコマンドの通りにしか判断できないオートパイロットの方が実は正しかった」

という、皮肉などんでん返しが用意されていると思っていたんだけれど、全くのスルー。。。(--〆)
は: そう言われますと確かに、人類はダシに使われただけでございましたね。

ゆ: でもまあ、のほほんと見るには良い映画ですね、サッチモの「ラヴィアン・ローズ」をはじめとするトーマス・ニューマンの選曲・音楽も良いし、この映画のキーとなる男女が手をつなぐシーンの出てくる映画が「ハロー・ドーリー」であるところもノスタルジアを感じさせて良いですね。
は: 「ハロー・ウォーリー」と言ったところでございましょうか、ピクサーの総帥ジョン・ラセター様の温かいお人柄が偲ばれますね。
ゆ: そうですね、そう言えばエンドロールの最後の方で

in loving memory of Justin Wright

というクレジットが流れてきました。調べてみましたら、Justin Wrightさんは心臓病で心臓移植を受けた既往のあるピクサー社の社員で、去年心臓発作で亡くなられたそうです。最新の技術を応用しながら社員一人一人の仕事を大事にするピクサーの一面が見て取れますね。
は: それがピクサー映画が傑作を生み続ける秘密かもしれませんね。そしてエンドロール終了後に待っているPIXARロゴとウォーリーのコラボレーションも、皆様お見逃しなく!

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2009/05/04

グラン・トリノ

Grantrino
はむちぃ: みなさま、こん**は、GWいかがお過ごしでしょうか、今日のレビューは、GWに是非ご覧いただきたい洋画「グラン・トリノ」でございます。監督・主演のクリント・イーストウッド様は先日わが国の春の叙勲に叙せられ、話題になりました。
ゆうけい: 彼自身が叙勲をどう考えているのかは知りませんが、丁度この映画のプロモのため来日していた息子さんのカイル・イーストウッド(ベーシストで音楽担当)がとても喜んでいましたね。おそらく硫黄島二部作がいたく選者の琴線に触れたのだと思いますが、まあ最終肩書きだけでタナボタで降ってくる叙勲とは違って、彼には十分受けるだけの資格があると思います。

は: そしてこの映画も傑作の誉れが高いですね。これも秀逸な前作「チェンジリング」から殆ど間をおかず作られたとは思え無いほどの完成度には、はむちぃメ、驚きを隠せませんでした。
ゆ: 全くね、元々俳優出身だけあって殆ど全てをワン・テイクで撮ってしまうし、息のあったイーストウッド組を全面的に信頼しているから、あっという間に撮影は進んでしまうらしいけど、それにしても呆れるほどいとも簡単に傑作を作っちゃいますね。
は: 今回は新人脚本家ニック・シェンク様の持ちこみ脚本をいたく気に入って自ら主演・監督を買って出たとのことですね。
ゆ: これをやるのは自分しかいない、と一読して思ったそうです。彼は新人を世に出すことを自分の使命と感じていますし、その点でも素晴らしい監督ですね。彼を巨匠と呼ぶのはもう誰も否定しないと思うけど、それにしてもこれが79歳の監督が79歳の俳優を主人公にして撮った映画とは信じ難いねえ。

は: はむちぃメ、パンフレットを読ませていただきましたが、このお年でこのような傑作の監督・主演をするのはオーソン・ウェルズチャーリー・チャップリンにも不可能だったし、おそらくウッディ・アレンにも不可能であろうと書いてございました。
ゆ: まるで元巨人の王・長嶋の引退年齢を超えて4番を張っている阪神の金本みたいだな(笑。いや、冗談はともかく、マカロニ・ウェスタンと蔑まれ黒澤明の「用心棒」のパクリと非難された「荒野の用心棒」から彼の映画俳優人生が始まったことを思うと、

よくぞクロサワを超えたな!

と思いますね。
は: 黒澤明様は88歳でお亡くなりになりましたが、79歳以後に撮った映画は「夢」「八月の狂詩曲」「まあだだよ」の三本でございましたね。
ゆ: もうすっかり老成しちゃって、今のイーストウッドのような興行的にも芸術的にも映画を成功させるエネルギーは残っていませんでしたからね。
は でははむちぃメが序盤をまとめてみましたので、映画を振り返って参りましょう。

 舞台は現代のデトロイト。かつての自動車王国の面影はなく、住宅街は黒人やアジア系移民で溢れ、民族間の小競り合いが耐えない。そんな治安の悪い街からは白人は殆ど出て行ってしまった。
 主人公のポーランド系白人ウォルト・コワルスキクリント・イーストウッド)は、頑固で不機嫌な老人。元フォードの熟練工である事を誇りにし自らがスティアリング・コラムを取り付けた愛車のグラン・トリノを磨き上げる事が唯一の楽しみである。また、朝鮮戦争も出征したが、その際の苦い記憶を持つ。
 映画は彼の妻の葬儀で始まる。トヨタのディーラーをして羽振りのいい息子がランドクルーザーに乗っているのを苦々しく思い、葬儀にへそ出しルックで表れた孫には愛車を褒められても唾を吐き、亡き妻から面倒見を頼まれてやってくる神父には悪態をつく。「移民が増えた」と怒りながらも、転居して施設で暮らすよう説得する息子夫婦を叩きだすほど愛着のあるこの街を離れない彼は、護身用の銃で、周囲に睨みをきかす。
 そんなある日、隣に住むラオス・モン族の一家の息子タオ(ビー・バン)が、グラン・トリノを盗もうと忍び込む。見つけたウォルトは激怒するが、根はまじめなタオが従兄らに脅されていると知り、興味を覚える。そこからタオとタオの聡明な姉スー(アーニー・ハー)との交流が始まり、ウォルトはこのアジア系の隣人を理解し好感を持つようになる、タオ一家も彼に心を開いていく。

ゆ: スマートなまとめありがたう、はむちぃ君、さすが昨日奥様に洗ってもらっただけの事はあるな(笑。
は: おそれいります(-.-)、それにしても本当にイーストウッド様しかできないような役柄ですね。
ゆ: 彼の当たり役ダーティ・ハリーを彷彿とさせますね、持ち込み脚本との事ですから、先ず間違いなく彼を念頭に置いて書いたんでしょうね。

は 序盤での状況説明も見事ですね。テンポ良く話が進んでいくとともに彼の置かれている状況がはっきりしていきます。
ゆ: ついに現実でもクライスラーが倒産しましたが、まさにデトロイトははむちぃ君が説明してくれた通りの状況なのだろうなと思わせる説得力がありますね。息子たちが

「父さんはまだ50年代を生きているつもりなんだ」

と語るように、時代の流れと人種問題の深刻さが見事に重層的に描かれています。
は: 主人公の癒しがたい記憶の中で朝鮮戦争を、CIAが偵察に利用したために東南アジアを追われてアメリカに移住せざるを得なかったモン族の登用でベトナム戦争を語ることにより、アメリカの病根をさりげなく抉り出しておりますね。
ゆ: そのアジア系移民を嫌い、黒人を嫌う白人層も決して単一民族では無い事もちゃんと提示しています。彼自身がポーランド系、飲み仲間の理髪店店主がイタリア系、建設現場監督がアイルランド系で、お互い聞くに耐えないような差別用語で相手を罵り合いながら仲良く日常会話を交わす様がとても興味深かったです。しかしどんな映画でもアイリッシュは飲んだくれなんですね(^_^;)。

は: 東南アジアのモン族の登用はおそらくハリウッドで初めてでしょうね。
ゆ: 脚本家の着眼点をちゃんと理解してそのまま現実化させるところが彼の見識の高さですね。モン族のコミュニティは本当に小規模でしょうし、まして俳優など殆どいないでしょうから、普通なら他の民族に置き換えてしまうんじゃないでしょうか。それをせず、モン族の全くの素人を何の逡巡もなく主役級に登用し、また、モン族の慣習も積極的に見せています。そして主役の二人はその期待に見事に応えていますね、まさにイーストウッド・マジックの醍醐味でしょう。
は: それではその後の展開を説明させていただきます。

 タオを自分なりの流儀で教育し、就職の世話もしてやり、タオの成長を喜ぶウォルト。しかし、タオが従兄弟のチンピラ・ギャングたちに報復のいじめを受けた事に激怒した彼は暴力的な行動で相手をねじ伏せてタオに手を出さないように警告するが、結局それは取り返しのつかない事態を招いてしまう。警察を信用せず届け出ないタオ一家をに痛切な責任を感じたウォルトは、怒り狂って報復しようとするタオを彼の自宅に閉じ込め、正装し、初めて神父の勧めに従い懺悔を行い、独りで決着をつけるべくでかけるが。。。

ゆ: 先ほどダーティ・ハリーを髣髴とさせると書きましたが、ハリー・キャラハンは悪を倒すためならどんな暴力も辞さないキャラクターでした。今回ウォルトに扮したイーストウッドはそうでは無い解決方法を選択します。
は: その自己犠牲の高潔さは感動的ですが、ずばりご主人様の好きな解決方法ではありませんでしょう。
ゆ: そうだね(^_^;)、個人的にはあれしか無いのか、という疑問はもちろん持っていますよ。結局

あんな奴らに対話による説得は意味が無い

というスタンスではハリー・キャラハンと何ら変わってはいませんから。
は: 「衝撃のラスト」を用意しないとハリウッド的傑作は産まれませんものね。

ゆ: ほ~、今日のはむちぃ君は奥様に洗ってもらっただけあって(以下略)、でもネタバレしない程度に一応説明しておきますと、実は「衝撃のラスト」というのは看板に偽りありで、物語はもう少し続くんですね。そのエピローグにより重苦しくも深い感動を残して映画は終わるわけですが、実は私がこの映画で一番素晴らしいと思ったのはラストシーンからエンドロールに移るところなんですよ。
は: 青く澄み切った空、ミシガン湖と思われる綺麗な湖。その湖岸道路をのそばをタオが駆るグラン・トリノが走り抜けていきますね。そこへクリント&カイル・イーストウッドマイケル・スティーブンス、英国のジャズシンガー、ジェイミー・カラム共作の主題歌が滑りこんで参ります。本当に美しい映像と音楽でございました。
ゆ: ややロング・ショットで湖岸道路を捉えられる場所にカメラを固定し、グラン・トリノが走り去って見えなくなってからも後続の車を延々長回しで撮ってそれをエンドロールのバックにしているんですね。その映像も故意に彩度を落として古き良き時代をイメージさせています。
は: なるほど、それで延々と車が走り去るだけのシーンなのに言い様の無いノスタルジアを感じたのでございますね。
ゆ: 主人公のウォルトが一番輝いていた、そしてフォードが世界に自慢できるグラン・トリノを作った時代古き良きアメリカへの祈りにも似た思いがこの長回しのシーンには込められていたと思うんです。
は: クリント・イーストウッド様を名監督と呼ぶに相応しい技でございますね。というわけで、GWに何か一つ素晴らしい映画をみたい、と思われておられる方がおられましたら是非ご覧下さいませ。

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2009/01/05

カンフーパンダ

カンフー・パンダ スペシャル・エディション [DVD]
はむちぃ: 皆様、こん**は、はむちぃでございます。本年最初の映画レビューはお正月という事でお気楽な「カンフーパンダ」から始めましょう。
ゆうけい: ハリウッド版パンダ映画で本家中国で賛否両論を巻き起こしたそうですが、果たしてどんなもんでしょう、若干の不安はございますが観てみましょうかね。

『 信じる心が奇跡を起こす!最強のカンフー戦士、“龍の戦士”に選ばれたのは、ぐうたらで食いしん坊のパンダだった!?
 美しい安住の地「平和の谷」には龍の巻物の奥義を得たものが史上最強の“龍の戦士”になるという伝説があった。ある日、極悪カンフー戦士のタイ・ラン(ユキヒョウ)が刑務所を脱獄、巻物を狙って平和の谷に迫り来る。タイ・ランに立ち向かう“龍の戦士”に選ばれたのは、何と、ぐうたらで食いしん坊のパンダのポーだった!カンフーを愛する心は人一倍、でもカンフー・マスターなんて夢見るだけのポーは、師匠のシーフー老師(アライグマ?)、憧れのカンフーの達人“マスター・ファイブ”(虎、猿、蟷螂、蛇、鶴)の力を借りながら、厳しい特訓を受け成長していく。
果たしてポーは史上最強の戦士となり、平和の谷を守ることができるのか!?そして、龍の巻物に記された、ある真実とは・・・?』

声優:
ポー: ジャック・ブラック
シーフー老師: ダスティン・ホフマン
マスター・タイガー: アンジェリーナ・ジョリー
タイ・ラン: イアン・マクシェーン
マスター・モンキー: ジャッキー・チェン
マスター・カマキリ: セス・ローガン
マスター・ヘビ: ルーシー・リュー
マスター・ツル: デヴィッド・クロス
ウーグウェイ導師: ランダル・ダク・キム

は: 。。。。。(-_-;)
ゆ: 。。。。。(--〆)
は: しょっぱなからトホホ賞の有力候補が現れましたね。
ゆ: Dreamworksも落ちたもんですな、というか、やっぱり西洋人からみりゃこんなもんですよ、みたいな。

は: 脚本は一応カンフー映画の作法を守っておりましたが少々安っぽかったですね。
ゆ: 少々では失礼でしょう、安っぽさ満点と言わなくちゃ。
は: 大体から

パンダの親が鳥

と言う設定からして訳分かりませんね。
ゆ: そうそう、出だしからしてナメてますね。スタッフが企画会議で

「ん?中国市場を開拓すんの?じゃ、パンダってやつを主人公にしたら?」
「人気No1の動物らしいしね、で内容は何にする?」
「やっぱ中国ったらカンフーでしょ!」
「じゃあ適当にジャッキー・チェンのナントカ拳の動物をからませてみますか」
「いいねえそれ、でもって格闘シーンのCGで中国人の度肝を抜いてやると」
「でもアニメでカンフーシーンって結構ムズイよ」
「そんなもん日本のアニメ見りゃ大抵見当つくでしょうよ」
「ま、そうだね、で老師みたいなのに適当に悟りの境地を語らせりゃ一丁出来上がりか」

ってなブレインストーミングしてるのが目に見えるようです。

は: とりあえずハリウッドですからそのCGはお得意のものかもしれませんが、それも見事に空回りしておりましたね。
ゆ: いくら格闘シーンで3D-CGに凝ったって、拘束されて20年も身動き一つ出来なかったユキヒョウがいきなり落下する岩石群をつたって上に登っていったり、蟷螂が吊り橋を一匹で支えたりしてちゃ、そりゃ物理上有り得んだろうと子供でも突っ込みたくなりますよ。
は: まっ、そんな事言ったら全ての修練・格闘シーンが成り立ちませんが(^_^;)
ゆ: いや、その辺にハリウッドの勘違いしてるところがあると思うんですよ。ああいう荒唐無稽な格闘シーンがそれこそ「絵空事」として成立するのはドラゴンボールのような2Dの世界だからこそだと思うんですよ。それを3Dの精密なCGでやるとかえって嘘臭くなっちゃう、という日本のオタクなら肌身に沁みて分かってる事が分かってないんじゃないですかねえ。

は: まあ、それもさることながらパンダ映画としてはパンダがあんまり可愛くないのが致命的な欠点でしょうね(笑。アメリカ人から見たパンダってあんなものなんでしょうか?
ゆ: ハリウッドも中国を巨大な市場とみて媚を売ったつもりなんでしょうけど、顔と体つきが声優やってるジャック・ブラックそっくりでしたな(爆。しかし、私がもっと許せなかったのは

絶滅危惧種パンダユキヒョウを善悪に分かれて戦わせる」

と言う点で、これは傲慢もいいところですね、ハリウッドだから何やっても良いってもんじゃないでしょう。
は: どうせなら谷口ジローの「約束の地」でのユキヒョウの表現を見てほしかったですね。
ゆ: おっ、はむちぃ君渋いところついてくるねえ。まあそれはともかく絶滅危惧種をあんな風に扱われて中国政府がよく怒らなかったもんですな。
は: ところがその中国政府が

「なぜ『カンフー・パンダ』のような作品が中国で製作されないのか」(Wikipediaより)

と言ったそうです。
ゆ: バカじゃないの?
は: CGの技術は劣っても中国映画もレベルが高いことを誇るべきですよね。
ゆ: ところがその中国をはじめとしてアジア諸国で軒並み史上一位の興行収入をあげたらしいんだよ(嘆息。さすがにアニメ先進国の日本ではそれほど話題にならなかったけどね。

は: 媚を売ると言えば声優陣も豪華絢爛でございますね。
ゆ: まあシュレックもそうだったからDreamworksの得意技なんでしょうね。ジャック・ブラックはまあこういう役にはぴったりですけど、ダスティン・ホフマンくらいの超大物になれば、担ぎ出される前にもうちょっと考えなきゃね。
は: ジャッキー・チェンルーシー・リュウもこんな映画に協力してちゃ「SAYURI」のチャン・ツイィーの二の舞になってしまわないか心配でございます。
は: ジャッキーがでルーシーがですからねえ、なんか無意識の差別感覚を感じますね。まあ二人ともあんまり台詞無かったけど(苦笑。でもってマスター5で一番活躍するのはなんですけど、これも絶滅危惧種だし、アンジェリーナ・ジョリーも国連難民高等弁務官事務所の親善大使までやってるのなら、もう少し脚本を吟味して欲しかったですね。

は: と言うわけで新年早々ご主人様ともどもぼやき倒してしまいました。
ゆ: まるでマシンガンズの漫才みたいでしたな(笑。まあ、子供だまし+黄色人種だましの映画であると申し上げておきましょう。

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2008/12/08

靖国 YASUKUNI

靖国 YASUKUNI [DVD]
はむちぃ: みなさまこん**は、本日は12月8日でございます。何の日かと申しますと、
ゆうけい: もちろん知ってます、ジョン・レノンの命日ですっ、はは、違うか!(ものいい、吉田サラダ風)
は: ま、ご主人様の世代にはそうでございますが、本日レビューの映画から推量してくださいませんと。。。(-_-;)
ゆ: わかってますがな、67年前の今日、真珠湾攻撃で日米が開戦したのです。
は: というわけでございまして、本日の映画は右翼左翼政治家マスコミを巻き込んで大変な騒ぎになりました、問題のドキュメンタリー映画「YASUKUNI」を取り上げてみたいと思います。あえて政治思想には踏み込まないゆうはむ映画レビューにしてはかなり危険な取り組みですございますね。

ゆ: まあ去年は「太陽」を取り上げていますから全く政治思想に関心がないわけではないんですが、今回は二つのモチベーションがあるんですよ。
は: ほう、ではその一つ目とは?
ゆ: 実は先日、田母神俊雄(当時防衛省航空幕僚長)なる御仁が「日本は侵略国家であったのか」という懸賞論文を書いて物議を醸したでしょ。
は: はいはい、政治家マスコミを巻き込んで大騒ぎになり、結局免職で無く、異動定年という形で決着されました。
ゆ: それそれ、そうなんだけど、大騒ぎした割りに論文の内容・質については語ってないでしょ。
は: 確かに防衛省幹部が「侵略戦争ではなかった」と発言しシビリアン・コントロールを乱したという点だけが取り上げられておりますね。
ゆ: で、調べてみたらここに載っていたんだけど、これがまあビックリ、たった9ページのいわば稚拙な感想文でおよそ論文の体をなしていないんだよ。
は: 確かに論文にあるべき要旨、目的、方法、結論、考察、引用文献と言う体裁がまったくありませんね。
ゆ: 当選させるほうもさせる方だけど、これで踊らされるマスコミもマスコミだね。おそらくこれは2チャンネル用語で言う「釣り」を誰かが意図的に仕掛けたと思うんだ。どこかの雑誌やネットには黒幕の推量が載っているんだろうけどね。

は: 国会招致にまで発展させた野党はまんまと罠にはまったと言うわけですか?
ゆ: そう、大笑いして拍手喝采してる奴がきっといるんだろうね。そう言う意味でこの映画にまつわる大騒ぎも一種の「釣り」だと思うんだ、それを堂々と主張してるのがいつも紹介してる「前田有一の超映画批評」なんだよ。
は: ふむふむなるほど、普段は冷静な前田様が「0点」をつけてかなり激烈な批判を展開されてますね。
ゆ: そうなんですね、ただそれを鵜呑みにしていてはいけないと思ってこのタイミングで観ようと思ったわけなんです。これが第二のモチベーション。
は: 了解でございます、そこまでご主人様が深く考えられておられたとは存じませず失礼いたしました、では恒例の内容紹介に参りましょう!

ゆ:、でもはむちぃ君!その前に一言言わせてくださいっ!
は: はあ、なんでございましょう?
ゆ: ものいいイロモネア出場権獲得おめでとう、違うかっ!
ゆ: 違いますっ!(--〆)

『上映中止の映画館も続出、政治家をも巻き込んで社会現象を生み出した問題のドキュメンタリー!!
真のアジア友好を目指す合作映画!!
東京・九段下にある「靖国神社」に関る様々な人々を、10年に渡って撮り続けたドキュメンタリー。毎年8月15日の終戦記念日になると、そこは奇妙な祝祭的空間に変貌する。旧日本軍の軍服を着て「天皇陛下万歳」と猛々しく叫ぶ人たち、的外れな主張を並べ立て星条旗を掲げるアメリカ人、境内で催された追悼集会に抗議し参列者に袋叩きにされる若者、日本政府に「勝手に合祀された魂を返せ」と迫る台湾や韓国の遺族たち。狂乱の様相を呈する靖国神社の10年にわたる記録映像から、アジアでの戦争の記憶が、観るものの胸を焦がすように多くを問いかけながら鮮やかに甦ってくる。そして知られざる真実がある。靖国神社のご神体は刀であり、昭和8年から敗戦までの12年間、靖国神社の境内において8100振りの日本刀が作られていたのだ。「靖国刀」の鋳造を黙々と再現してみせる現役最後の刀匠。その映像を象徴的に構成しながら、映画は「靖国刀」がもたらした意味を次第に明らかにしていく。
※靖国神社のご神体が「刀」であるという考えは、制作会社である有限会社龍影の見解によるものです。(AMAZON解説より)』

は: 散々前振りを展開した割には退屈な映画でございましたね。。。。。
ゆ: そうそう、内容を伴っていないのに大騒ぎになったところが田母神論文とそっくり!
は: いつもは「映画」としての評価を優先される前田様が内容の吟味に終始されておられるのも不思議でございます。
ゆ: そう言う意味では「釣り」の映画と分かっていて「釣られて」しまった面もありますね。一個の映画として見た場合、内容の掘り下げは浅いし、全体の構成、画質のムラ、ロケでのポータブルカメラのフレームワーク、そして編集と全てがアマチュアレベルだと思いましたね。ドキュメンタリー映画としては落第のレベルですね。
は: 公式HPを見ますと李纓と言う監督はそれなりの実績を持っておられるプロでございますが。
ゆ: ちょっと信じ難いですね~。

は: 靖国に刀を奉納する90歳の刀匠のインタビューと終戦記念日の靖国の騒動を交互に写しながら映画は進行していくのですが、肝心の刀匠のインタビューがはむちぃメ良く理解できませんでした。
ゆ: まるで噛み合っていないまま進んでいきますね。腹立たしいくらいいらいらしました。大体が、90歳の御高齢の方に政治思想を無理やり語らせようとする姿勢はいかがなものかと思います。インタビュアもインタビュアです、多分監督自身がインタビューしてるのだと思いますが、失礼ながらまだ日本語が十分お達者じゃなくて、あの程度の稚拙な日本語の質問では何ら有意な返事を引き出すことはできないでしょう。
は: どちらがわにも通訳をつけていただきたかったですね。もしあれが監督の「」だとすれば、最後に「私は小泉(純一郎)さんの靖国参拝に賛成」の一言だけを引き出したかったみたいな感じですね。

ゆ: というか、そこだけ辛うじて日本人でもディクテーションできたという感じですね。
は: では、前田様のおっしゃるようにやっぱり「0点」の映画なんでしょうか?
ゆ: 0点は厳しすぎるでしょうけどね、あの靖国での騒ぎは一応本当に起こっておるんでしょうし。
は: 靖国信奉派、反対派、宗教的違憲論者、合祀反対派それぞれの言い分はちゃんと語らせておられますしね。
ゆ: そう言う意味では意図的な編集は避けてますよ、と言うスタンスは守っているように思います。だから編集の仕方によっては結構しっかりしたドキュメンタリーになったかもしれないと思うと、少し未練の残る映画ではありますね。

は: では最後に一言お願いいたします。
ゆ: 靖国と言う存在にある程度の見識をお持ちの方にはあえて観るまでもない出来の映画ではあると思います。これから国際政治を勉強したい、と言う方にはどのように中立であろうと努めても、中国の方が靖国を語ろうとするとこのようなバイアスがかかる、と言う点を学んで欲しいですね。
は: もちろん日本による戦争被害者の立場からすると当然のことなのですが、ドキュメンタリー映画の難しさを痛感いたしますね。

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2008/11/27

この自由な世界で

Cinequanonbest
 先日西宮球場跡に華々しく「阪急西宮ガーデンズ」という大型ショッピングモールが新設されました。阪急ブレーブス時代の球場内外の胡散臭い雰囲気を知っているものにとっては隔世の感があります。
 そしてその中にもシネコンのTOHO CINEMASが入りました。阪神間にこれだけ沢山のシネコンが出来て大丈夫なんだろうかなんて余計な心配までしてしまいますが、一方で単館系直営館がますます経営難になるのは必定で、ついに神戸ハーバーランドにあるシネカノン神戸が12月20日をもって閉館することになりました。
 私が過去レビューさせていただいた中でも「フラガール」「紙屋悦子の青春」「ゆれる」「転々」「純喫茶磯辺」など、多くの良質な佳品を提供しておられたのでとても残念です。
 そこで今日、おそらくこれが最後のシネカノンでの映画鑑賞という思いで出かけてきました。映画は、このような弱肉強食の新自由主義淘汰社会の現実とリンクしているがごとき、名匠ケン・ローチの傑作「この自由な世界で」でした。

『 舞台はロンドン。アンジーはひとり息子を持つシングル・マザー。職にめぐまれず、息子は両親に預けっぱなし。働いていた職業紹介所を、またも理不尽な理由でクビになった彼女は、思いきってルームメイトのローズと自分達の職業紹介所を立ち上げる。アンジーは持ち前のパワーでビジネスを軌道にのせるが、ある日、不法移民を働かせる方が儲けになることを知る。もっとお金があれば息子とも暮らせる、もっといい生活ができる……。ローズや心優しい移民青年カロルの心配をかえりみず、彼女は越えてはいけない一線を越える。そして事件が起きた……。
『麦の穂をゆらす風』でカンヌ映画祭パルムドール大賞に輝いた英国の至宝ケン・ローチ監督の最新作は、ロンドンを舞台に名もなき者の営みに世界を見い出す、これぞローチの真髄といえる感動作。「自由」という言葉の意味を深く考えさせる、この傑作をぜひともお見逃しなく。

2007年/イギリス/カラー
ドルビーSRD/96分
監督/ケン・ローチ
出演/キルストン・ウェアリング、ジュリエット・エリス、レズウォフ・ズーリック
配給/シネカノン
(シネカノンHPより) 』

はむちぃ: とういう訳でまた呼び出されて参りました、はむちぃでございます。先ずは観終わっての印象はいかがでございますか?
ゆうけい: 一言で言って後味の悪い映画ですね、救いようのない泥沼にはまり込むような。「善き人のためのソナタ」の社会主義管理体制も陰鬱でしたが、東西冷戦終結と社会主義の敗北から20年、到来したのは夢のようなユートピア社会とは程遠い冷酷な弱肉強食の格差社会だったという現実はとても重いです。

は: とても恋人同士や家族で楽しむ映画ではないようですね。
ゆ: 強いて言えば大学の経済学部のゼミで観に行くような(苦笑、でもほんとは派遣問題貧富格差拡大に悩む日本でももう他人事ではないわけで、この現実を誰もが直視する必要がありますね。
は: そのあたりはこの映画のオフィシャルHPに詳細に書いてございますね。
ゆ: 是非読んでいただきたいですね。更にはこの映画のような「移民」問題を日本では長く「外国人労働者」と言い換えることにより事の重大さをカモフラージュしてきましたが、真剣にこの問題に向かい合う時がもう来ていますからね。

は: さてこの物語はごく普通の職業斡旋会社の社員だったシングルマザーの女性が理不尽な理由で会社をクビになり、ルームメイトと二人で職業斡旋会社を立ち上げるところから始まりますね。
ゆ: 当初は就労ビザを持つ東欧からの正規移民に狙いをつけて奔走し上手く会社を軌道に乗せるのですが、ある派遣先の労務担当者から不法移民からならいくらでも搾取できると悪知恵を吹き込まれるんです。
は: 「マフィアのボスがそれをやって警告だけですんだ」という話ですね。もちろん最初は拒否しますし、共同経営者にも強硬に反対されますよね。
ゆ: 当然なんですが、じゃあ実際彼女がやってることがまともかと言えば、山谷や西成で怪しげな連中が朝から人集めして軽トラの後ろに詰め込んでどこともわからない職場へ運んでいくのとおんなじような、結構グレーゾーンにはまり込んでいる事をやってるわけなんですよ。
は: 女だてらにと言ったら男女平等法に引っかかりそうですが、よくもまああんな屈強な外国人連中を相手に渡り合えるものでございますね。
ゆ: そのあたりの演出はさすが社会派のケン・ローチだと思いますし、キルストン・ウェアリングと言う、不思議なことにちょっとオージー訛りの英語を喋る無名の女優さんもよく頑張っていますね。ただ、母親の働く姿を見せに孫を連れてきた彼女の父親がショックを受けて打ちひしがれるシーンは胸が痛みます。

は: その父親が本当に不法なことはしていないのか、と何度も問い詰める場面も痛々しゅうございました。
ゆ: 彼女は本当は心優しい人間で、不法移民の親子を助けてやったりする場面があったりもするんですが、借金を返済し下層階級から抜け出すために必死に頑張っているだけなんですね。
は: ところが現実にはグレーゾーンに手を染めなければやっていけない。。。
ゆ: そうこうするうちについに不法移民の派遣と言う超えてはならない一線を踏み超えてしまい、ピンハネできる手段を編み出し、とにかく新しい立派な事務所を抱えてそのローンを払い終えるところまで行こうと突っ走ってしまうわけです。

は: 「マフィアのボスの手口 」なんて決して一般市民が手を染めてはいけない世界でございますよね。
ゆ: そうなんですが、「これくらいなら」とか「あともう少しだけ」という彼女の心理が手に取るように分かるので、とてもリアルなんですよ。
は: 気がついたら泥沼に入り込んでいた、と言うシチュエーションですね、そして、親友の共同経営者にも愛想を尽かされるところまで行ってしまった時には、思いもよらぬ魔の手が迫ってきておりました。
ゆ: 当然の報いと言えばそれまでなんですが、ラスト近くの事件は衝撃的ですね、こちらも心臓が止まりそうになりました。
は: その結果として彼女が選ばざるを得なくなった運命がまたひどいものでございました。
ゆ: ケン・ローチの真骨頂と言える、英国ないしEUをはじめとする新自由主義体制への強烈な批判的問題提起だったと思います。

は: まるで前回の「善き人のためのソナタ」と対をなすような作品でございましたね。前回の「善き人のためのソナタ」の主人公が冷戦終結後に手に入れた「自由」は孤独感と無力感しか彼にもたらさなかったのではないかと言うエーリッヒ・フロム的心理分析がございましたが?
ゆ: ここで描かれる自由主義とは純粋に政治経済体制の問題であって心理学的な自由ではないんですね。
は: そのあたりが日本語では個人主義自由主義とも字義が曖昧に捉えられていて誤解が多いところですね。
ゆ: ちなみにエーリッヒ・フロムは1941年に「自由からの逃走」を著した時には、経済体制は個人の自由に任せた自由主義では社会が崩壊する、適度な統制経済が望ましいという非常に興味深い持論を展開しているんですよ。
は: まさか60年後にこのような社会が到来するとは思いもよらなかったとは思いますが、ある意味慧眼でいらっしゃったのですね。
ゆ: 実体経済に見合わない過剰なマネーゲーム競争の果てに100年に一度といわれる経済恐慌を引き起こした現代社会の心理学的性向が那辺にあったのか、現在の心理学者は真剣に考えてフロムのような社会の木鐸となってほしいですね。

は: では最後に一言お願いします。
ゆ: 最後の最後まで素晴らしい作品を提供され続けた神戸シネカノンに深い敬意と感謝の念を表します。
は&ゆ: ありがとうございました!

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2008/11/26

善き人のためのソナタ

善き人のためのソナタ スタンダード・エディション
はむちぃ: みなさまこん**は、今回の映画レビューは「善き人のためのソナタ」をとりあげます。久々のドイツ映画でございますね。
ゆうけい: あまりにも能天気な脚本で辟易した後には欧州の重厚な映画を観ないと精神的均衡が崩れそうでね(^_^;)。まあ冗談はともかく、前からずっと観たいと思っていたんですが、ようやくレンタル屋さんでみつけました。
は: おっしゃるとおりドイツらしい重厚な作品でございまして、昨年度のアカデミー外国語映画賞を受賞しております。
ゆ: 原題は「Das Leben Der Anderen」で「他人の生活」と言う意味です。「他人の生活」を盗聴する旧東ドイツの秘密警察シュタージの一員を主役にした優れた心理ドラマです。

『舞台は東ベルリン、時は1984年。すべては単純な調査の任務から始まる。ゲルド・ヴィースラー大尉(ウルリッヒ・ミューエ)は国家保安省シュタージの一員。この手の仕事のスペシャリストだ。有名な劇作家ゲオルク・ドライマン(セバスチャン・コッホとその恋人で女優のクリスタ=マリア・ジーラント(マルティナ・ゲデック)を監視することになる。ドライマンはブラックリスト入りしている演出家アルベルト・イェルスカ(フォルカー・クライネル)のような反体制派と関わりがあることで知られているが、記録には傷がない。だが、この実直に見える市民を監視する隠れた動機がヘムプフ大臣(トーマス・ティーメ)にあることがわかり、すべては一変する。すなわち、この監視には個人的な理由があったのだ。こうしてヴィースラーの共感の対象は政府から国民へ――少なくともこの一個人へと移行していく。危険は承知の上で、ヴィースラーは特権的な立場を利用しドライマンの人生を変化させる。ここでヴィースラーがおこなう神のような行動は些細で誰にも知られないものかもしれないが、すべてに大きな影響を与えるかもしれない。ヴィースラー自身に対しても。監督・脚本のフロリアン・ヘンケル・フォン・ドナースマルクは単純な設定から始めて、複雑な状況と感情的な関わりへと発展させ、見事な長篇第1作を展開させる。3つのエピローグはどう考えても多すぎるが、『善き人のためのソナタ』は全編にわたって気品があり、混乱のない映画だ。(Kathleen C. Fennessy, Amazon.comのレビューより抜粋)』

ゆ: 大変優れたレビューですね、もうこちらが申し上げることがないような(笑。
は: それではゆうはむレビューが成り立ちませんよ(-_-;)。
ゆ: 確かにね、それに「神のような行動」と言う指摘にはいささか異論もありますしね。

は: 以前「ヒトラー最期の十二日間」でもご紹介したように、ナチスドイツを描いた優れた作品はドイツには数多くございますが、旧東ドイツのシュタージは崩壊してからの歴史が浅い事もあり、まだタブー視されておりようやく最近になって人々は重い口を開けはじめたそうでございます。
ゆ: 考えてみればベルリンの壁崩壊からまだ20年経っていないんですね。このころ西ベルリンではカラヤンが絶頂にあり、米英では「ライブ・エイド」なんていう催し物も企画されていたとは信じられない思いですね。
は: どちらかというとジョージ・オーウェルの「1984」の世界ですね。
ゆ: おおっ、はむちぃ君何と鋭い返しを(@_@;)。確かに社会主義の管理社会が描かれておりますね。
は: またドイツという国を考えてみますと密告と盗聴で人民を支配するという点でナチスドイツと共通点も多いですね。
ゆ: 全くそのとおり、はむちぃ君今日は切れまくっておりますな。そういう点では「ヒトラー最期の十二日間」と良く似た重厚な心理ドラマを作る事はドイツ映画の実力をもってすれば十分可能でしょうね。ただ、それを観る側にある程度の知識と見識がないと、やれ

「ヒトラーも人間だった、良い人だったんだ」
「シュタージの中にも良い人はいたんだ」

と言うような愚かな見識を述べる人間が現れて歴史の教訓が反故にされる危険性があります。それがこのような優れた映画の両刃の剣と言えるでしょうね。

は: なるほど、いつもは内容を語らないゆうはむ映画レビューでございますが、それでは今回は主人公の心理を追いかけてみる事にいたしましょうか。シュタージのヴィースラー大尉は盗聴を開始した時点では職務に忠実な冷酷非情な人間です。
ゆ: 冷酷非情と言うのは自由社会から見た観点であって、シュタージととしては非常に優秀な人材であるわけです。ナチスドイツのゲシュタポにも同じような人材はいたでしょう。そのような社会体制を支持・維持する階層には共通する心理学的性向が備わっていると喝破したのは他ならぬドイツから亡命したエーリッヒ・フロムだったことを思いだしますね。
は: 名著「自由からの逃走」でございますね。
ゆ: そうそう、あまり知られていないことだけどこの本はただ単なる心理学書ではなく、ナチスドイツの成立過程を論じるのが主眼だったと言われています。その本の中でナチス支持階層に共通する心理的構造として

「支配者への盲目的従属のマゾヒズム、自分より下の者への苛烈なサディズム」

を挙げているんですね。
は: まさにヴィースラー大尉、ひいてはシュタージ全体にも通じますね。
ゆ: 社会主義体制への盲目的従属のマゾヒズム、政治犯への48時間尋問と言う非人道的な容赦ないサディズム、この二つをヴィースラー大尉は自分の心理的性向とは自覚せず、国家への忠誠と職務の忠実な遂行という行動論理にすり変えていた、とフロムなら分析したでしょうね。
は: 自分の薄汚い欲望から劇作家宅の盗聴を命じる大臣も全く同じような心理的性向の持ち主だったと言えるでしょか。
ゆ: まさにそうでしょうね、彼にはヴィースラーと異なり全く心理的成長が無かった故に壁の崩壊後ものうのうとそのまま生き続けるのがヴィースラーとは対照的で憎憎しかったですね(苦笑。

は: さてヴィースラー大尉は盗聴相手の劇作家と恋人の愛の会話や交歓に感情移入して行き、更には「善き人のためのソナタ」というピアノ曲を聴いて涙を流し、劇作家の西側への秘密情報漏洩を見逃してやると言う行動に出ますね。
ゆ: 表情一つ変えずに心理的変化を演じるウルリッヒ・ミューエの演技は見事ですね。「善き人のためのソナタ」を聴いた時に流す涙も見事でした。彼に劇的変化をもたらすものが、政治的感化による転向でなく「セックス」や「音楽」であるところがやはり極めて心理学的だと思います。
は: ヴィースラー大尉の上司の

レーニンベートーベンの激情ソナタを人民に聴かせてはいけない、何故なら悪人になれなくなるからだ、と言った」

と言う台詞が象徴的でございましたね。
ゆ: そう言う台詞からすぐに「社会主義=悪」と論じると、ヴィースラーはこの時点で悪人から善人に、社会主義者から自由主義者に変わったと言う事になります。しかしこの変化はそういう単純な善悪や政治思想の切り替えではなく、盲目的受動的な隷属から主体的思考の獲得と言う心理学的変化だと思うんです。そういう心理学的成長の一助となるものが音楽であり、そのような人民の心理的成長は社会主義支配にとって障害になるという事をレーニンは熟知していて敢えてそう言う言葉を使ったのでしょうね。

は: そのヴィースラーの行動の結果、劇作家は壁の崩壊まで生き延びる事ができましたが、一方で恋人の女優を結果的に死に追いやりました。
ゆ: ヴィースラーは彼女を尋問し白状させる一方で二人を助けようとある行動を取ります。心理的変化がついに具体的行動を伴う場面なのですが、その後に起こる彼女の死は予想外の出来事であり、彼の心に深い傷を負わせた事は想像に難くありません。
は: 東西統一後についた郵便配達夫としての演技の演出がその事を暗示しておりましたね。
ゆ: 落魄の余生という感じでしたね。それは女性を死なせた罪悪感であったかもしれないし、シュタージという既成の「権威」によりかかっていた男がそれをなくしたかわりに手に入れた「自由」が実は深い孤独感や無力感しかもたらさなかったということかもしれません。これもフロムの受売りですが(笑。まあそのように推測するしかない誰も知らない内面を監督のフロリアン・ヘンケル・フォン・ドナースマルクは上手く演出していると思いました。
は: だからこそ、自分と恋人の生活を完全盗聴されていた事を知り愕然とした劇作家がついに彼を探し出した時、敢えて声をかけずに立ち去ったのでしょうね。
ゆ: もちろん怒りをぶつけるためではなく、嘘の報告により自分を助けてくれた事への礼も言いたかったんでしょうし、彼にとって最後に残されたあるも尋ねてみたかったのだと思いますが、とぼとぼと郵便を配達して回る彼を見た時に直感的に全てを理解したのでしょうね。

は: その後劇作家はこの経緯を「善き人のためのソナタ」という本に著すのですが、その謝辞が暗くて重いこのドラマに一筋の光明をもたらしたように思いました。
ゆ: シュタージの一員の勝手な心理的成長が全く関係のない「他人の生活」に劇的な変化をもたらしてしまう、ということは本来あってはならない事であり、実際彼も落魄の余生を送らざるを得ないわけですが、それでも最後に本屋で本の謝辞を見てかすかに微笑むところには何か救われる思いがしましたね。
は: 彼も「善き人」と認めてあげてよいのかなと思わせましたね。
ゆ: その辺が危ないところだと言ったでしょうが(^_^;)。最後にこちらも謝辞ですが、ドイツ語の原題名につき、もなこさんに貴重なご意見を賜りました。この場を借りてお礼申し上げます。

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2008/11/20

August Rush OST

August Rush
 先日「奇跡のシンフォニー(原題"August Rush")」という映画を観たのですが、これがまあアメリカ脚本家協会がストライキを打つくらいのご時勢ですから、ついに向こうの脚本家もぶちきれたかと思わせるくらいのトホホ度。ハリウッド版「母を訪ねて三千里」は、なんぼなんでもそんな事アリエナイザー的展開の連続でとても感心しました(苦笑。
 唯一素晴らしかったのがハンス・ジマーマーク・マンシーナの黄金コンビによる音楽。バッハからヴァン・モリソン、脅威のスラッピング・ギターからゴスペル、最後には現代音楽的なシンフォニーともう音楽の闇鍋状態で何が出てくるのか息も打つかせぬ展開でした。終わった途端OSTをアマゾンで探してクリックしてました。ちなみに映像面でも廃墟と化したフィルモア・イーストや名門ジュリアード音楽院、セントラル・パークの野外音楽堂等が出てきて楽しめます。

1. Main Title - Mark Mancina 
2. Bach / Break - Steve Erdody and Jonathan Rhys Meyers 
3. Moondance - Featuring Jonathan Rhys Meyers 
4. This Time - Jonathan Rhys Meyers 
5. Bari Improv - Kaki King 
6. Ritual Dance - Kaki King 
7. Raise It Up - Jamia Simone Nash and Impact Repertory Theater 
8. Dueling Guitars - Heitor Pereira and Doug Smith 
9. Elgar / Something Inside - Steve Erdody and Jonathan Rhys Meyers 
10. August's Rhapsody - Featuring Freddie Highmore - Mark Mancina 
11. Someday - John Legend 
12. King Of The Earth - John Ondrasik 
13. God Bless The Child - Chris Botti and Paula Cole 
14. La Bamba - Leon Thomas III 
15. Moondance - Chris Botti (hidden track)

 日本盤のジャケットがあまりにださいし、解説や余計なボーナストラックは要らないと思って輸入盤にしたんですが、多分音質的には正解。でも、解説があるなら読みたかったと思った点が一点だけあります。収録曲のどこにも全くハンス・ジマーの名が無いんですよ。ようやく見つけたのがプロデューサーの謝辞の中で一回だけ出てくるだけ。想像するに大御所ハンス・ジマーは監修役、実質的な仕事はマーク・マンシーナが殆どこなしたというところでしょうか。

 マーク・マンシーナと言えばプログレ・ファンにはYesEL&Pのプロデューサーとしてのイメージが強いと思いますが。「スピード」の音楽を担当してからはすっかり映画音楽家になりましたね。今回も、現代音楽風にもガーシュウィン的にも聞こえる「August's Rhapsody」(10)というこの映画のクライマックスとなる壮大なシンフォニーのスコアを書いています。

 そしてそれ以上に彼のセンスが光るのは素晴らしいミュージシャンの選択。脅威のタッピング・ギターを聴かせるカーキ・キング、主演俳優でありながら完璧にロックバンドのボーカルを演じ(歌い)きったジョナサン・リース・メイヤーズ、そして怒涛のエンドロールではソウルシンガージョン・レジェンドポーラ・コール、才人ジョン・オンドラジク等が素晴らしい歌声を聴かせ、最後を締めくくるのは名トランペッター、クリス・ボッティ

 ちょっと映画のネタばらしをすると、「ネバーランド」や「チャーリーとチョコレート工場」の名子役フレディ・ハイモアが主人公の少年を演じています。絶対音感を持つ11歳の少年と言う設定なんですが、初めてギターを叩きだしたかと思う間もなく、すぐさま驚くべきタッピング&スラッピング・ギターの演奏が展開されるという、もう笑うしかない場面で実際に弾いているのがカーキ・キング。私はこの映画で初めて知ったのですがその筋では有名な女性ギタリストだそうです。それにしてもフレディ・ハイモアが弾いているようにしか見えないんですよね、エアギターの大会に出たら拍手喝采ですよ、ホント。

 そして何と言ってもフレディ・ハイモアのまだ見ぬ父親であるロック・シンガーを演じるジョナサン・リース・メイヤーズ、「ヴェルヴェット・ゴールドマイン」でも主演してましたが、今回はそれ以上の迫力を感じました。ヴァン・モリソンの名曲「Moondance」(3)も歌ってますが、あれだけ自分流に完全に歌いこなし演じきるとはもう脱帽です。アル中治せよ(苦笑。
 まあ冗談はともかく、このアルバムにも4曲収録されているんですが、ベストトラックは「This Time」(4)かな。ちなみに彼の曲は何とフィル・ラモーンがプロデュースしているんですよ!

 そうそう、親子と知らずこの二人が出会ってお互いのギターを交換してギグする場面があるんですが、これまた凄い演奏でまたまた笑うしかない(^_^;)。その曲が「Dueling Guitars」(8)です。ギター・ファンのオーディオファイルなら5、6、8を聴くだけでも買う価値があるんじゃないでしょうか。

 そしてまだ見ぬ母にしてジュリアードの卒業生の名チェリストはケリー・ラッセル。彼女の演奏シーンも見事。指使いなんかを見ると実際そこそこの音が出てるんじゃないですかね。ちなみに実際に使われいる音はSteve Erdodyと言う方のチェロ演奏です。

 いやあ、こう書いてくると素晴らしい音楽映画だったような気がしてきた(笑。興味の湧いた方はくれぐれも感動を期待しないで観てください。そして音楽が気に入ったらOSTもどうぞ。

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2008/11/09

My Blueberry Nights

マイ・ブルーベリー・ナイツ スペシャル・エディション
はむちぃ: 皆様こん**は、本日は久々の洋画レビューでございます。
ゆうけい: ホントですね、調べてみたら6月の「スウィーニー・トッド」以来です。まあ今年は蒼井優布教強化年間と言うことでご容赦の程をm(__)m。
は: またまたお辞儀文字まで使って(-_-;)、で、映画はご主人様のお好きなノラ・ジョーンズ様初主演作「My Blueberry Nights」でございますが、
ゆ: そうそう、ノラ・ジョーンズ主演+主題歌、「恋する惑星」「ブエノスアイレス」のウォン・カーワイが監督、更には音楽がライ・クーダーでしょ、観ないわけにはいきませんよね、ジュード・ロウとのポスターも素敵ですし。。。。。
 という事で騙された方も多かった、み・た・い・な!
は: キングオブコメディですかあんたは、って最初からそんな事言っていいんですか?
ゆ: いんじゃね、み・た・い・な!
は: はいはい、さっさと参りましょ(--〆)。

『【ストーリー】
ニューヨーク。失恋したエリザベス(ノラ・ジョーンズ)は、とあるカフェに出入りするようになる。毎晩ブルーベリー・パイを残して待っていてくれるカフェのオーナー、ジェレミー(ジュード・ロウ)。優しい彼との会話に、心が慰められるエリザベスだったが、失恋相手が新しい恋人といるところを見てしまい、旅へ出ることを決める。数々の人々と出会いながら、エリザベスはジェレミーが待つニューヨークへ戻りたいと思い始める・・・

【キャスト】
ノラ・ジョーンズ
ジュード・ロウ
デヴィッド・ストラザーン
レイチェル・ワイズ
ナタリー・ポートマン

【スタッフ】
監督:ウォン・カーウァイ
脚本:ウォン・カーウァイ、ローレンス・ブロック
音楽:ライ・クーダー
(AMAZON解説より)』

はむちぃ: ははあ、確かに不思議な感覚の映画でございますね。
ゆうけい: はむちぃ君、褒めすぎだよ(笑、正しく言うと

「最初と最後だけアイスクリームのCFみたいな恋愛映画、真ん中が出来そこないのドーロ・ムービー」

と言うのが正解ですな。
は: ご主人様ロードがドーロになっております(-.-)(ボソッ。
ゆ: まっ、そんなもんですよ、みたいな!ってしつこいか、しかしどこをどう間違ったんでしょうね、ウォン・カーワイさん。英語の作品は初めてらしいけど、だからと言ってハリウッド映画を知らんわけでも無いでしょうに。特に最初の旅先でのエピソードや、荒野に伸びる道路脇の風景なんかヴィム・ヴェンダースの名作「パリ・テキサス」を意識してるようにも思えるんだけどね、結局スカ食らってますけど。

は: 風景の話が出てまいりましたが映像はそれなりに美しいように思えるんですが。
ゆ: 確かにね、アジア人からみたアメリカの色彩はこんな感じですよ、という美意識はチャン・イーモウ監督とはまた少し違ったセンスで凄いものがあるとは思いますね。カメラのフレームの中の奥行感もウォンさん独特のセンスですし。
は: 狙っている人物を相手の肩越しやカウンター越し、あるいはガラスの向こうに捉えたりする映像でございますね。
ゆ: そうそう、だから場面場面のカメラ回しは良く出来ていて、良質の作品と言う印象を与えているんですが、肝腎のストーリーが

「最初と最後だけアイスクリームのCFみたいな恋愛映画、真ん中が出来そこないのドーロ・ムービー」

ではちょっと情無いですねえ。
は: 二度も強調されなくても(^_^;)。まあ、主人公のノラ様の行動にどう言う意味付けを持たせるのか、道中での二つのエピソードが彼女の精神的成長に果たして繋がっているのか、疑問な面もございますね。
ゆ: 結局デリの店主ジュード・ロウが出す如何にもアメリカ的な甘ったるいデザートがこの映画を象徴しているような気はしますね。

は: で、主演のノラ様はいかがでございましたでしょう?
ゆ: まあ映画は初主演なんですが、さすがにトップ・シンガーだけあってカメラ慣れしていて、自然体の合格点の演技はしていました。ラストのジュード・ロウとのキス・シーンもなかなかイケてますね。
は: ポスターが話題になりましたね、でも恋愛映画と思って観にいかれた方にはまさかあれだけしか見所が無いとは思わなかったでしょうね。
ゆ: 最後まで辛抱するのが大変だったでしょうね(笑。しかしそれより何より問題なのは共演陣ですね。

は: はて、皆様素晴らしい方ばかりでございますが?
ゆ: それがいかんのですがな、いくらノラ・ジョーンズラヴィ・シャンカールの血を引くエキゾチックな美人でも、所詮ハリウッドの一流女優に太刀打ちできるわけ無いでしょ。脇にあれだけの大女優をそれも二人も持ってきちゃノラが可哀想ですよ。
は: 確かに二つの旅行中のエピソードの相手がレイチェル・ワイズナタリー・ポートマンでございますものね。このお二人と比べますと失礼ながらぽっと出のイモ姉ちゃんにしか見えないきらいはございました。
ゆ: おっ、はむちぃ君も言いますね(苦笑、ウォン・カーワイ監督は香港時代の感覚で一流歌手と一流女優を組み合わせればOKみたいなつもりでいたんでしょうね、でもここはアメリカハリウッド、その第一線の女優の格の違いを計算に入れてなかったと思います。ノラも絡みのシーンでは堂々と渡りあっているので勘違いしちゃったのかもしれませんね。でもレイチェル・ワイズナタリー・ポートマン一人でフレームの中に入ってくると、やっぱり存在感そのものに明らかな差があるんですよ。まあ、キャスティングを決めてからでは遅すぎたんでしょうけど。
は: 初めての英語映画の監督と言う事で張り切り過ぎましたのでしょうね。

ゆ: さて、貶してばかりでもなんですので、音楽に参りましょう。ウォン・カーワイもアメリカのロード・ムービーと言えばこの人しか無いと思ったんでしょう、さすがライ・クーダー、良い仕事してますね。
は: ご主人様のお好きな「パリ、テキサス」では殆どご自身が作曲されておられましたが、今回は色々なシンガーの曲を散りばめておられますね。
ゆ: まあ主演がノラ・ジョーンズですからね。彼女の新曲「The Story」を久しぶりに聴けるだけでもよしとしましょうというところですが、個人的にはオーティス・レディングの「Try A Little Tenderness」やカサンドラ・ウィルソンがニール・ヤングの曲をカバーした「Harvest Moon」なんかが印象に残りました。
は: ラストに流れる曲も素敵でございましたね。
ゆ: Cat Powerの「The Greatest」ですね、素晴らしいバラードでした。彼女実は本名のChan Marshallでこの映画にも出てるんですよ(^^)v
The Greatest

は: と言うわけでございまして、とりあえずノラ・ジョーンズ・ファン、ウォン・カーワイ・ファン、ディープなアメリカ音楽・ファンには見逃せ無い映画かと思います(大汗。
ゆ: 最後のキス・シーンを見て「The Greatest」を聴くまで皆さん頑張りましょう。

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2008/06/18

スウィーニー・トッド

スウィーニー・トッド フリート街の悪魔の理髪師 特別版 (2枚組)
はむちぃ: 皆様こん**は、今回の映画レビューはゆうけいお気に入りのティム・バートンジョニー・デップ・コンビの最新作「スウィーニー・トッド」でございます。
ゆうけい: ども、映画館で観たかったのですがかなわず、DVDレンタルを楽しみにしておりました。今回はホラー・ミュージカルの映画化ということで、賛否両論渦巻いておりましたので期待と不安半々で鑑賞しました。

『ロンドンのフリート街で理髪店を営んでいるベンジャミン・バーカー(ジョニー・デップ)は、ある日悪徳判事ターピン(アラン・リックマン)の策略で無実の罪を着せられて投獄されてしまう。15年後、命からがら脱獄し、アンソニー(ジェイミー・キャンベル・バウアー)という船乗りに助けられた彼は、スウィーニー・トッドと名を変えロンドンに戻ってきた。フリート街へと戻ってきた彼は、かつて家族と共に暮らしていた家の大家で、通称『ロンドン一不味いパイ屋』の女主人・ラベット(ヘレナ・ボナム=カーター)と再会。彼女から、残された家族がたどった悲惨な運命を聞かされて復讐を誓う。ラベットのとりなしで、元の場所で『営業再開』したトッドは、判事の懐刀である小役人・バムフォード(ティモシー・スポール)を丸めこみ、見事判事をおびき寄せることに成功するが…。』

スタッフ:
監督:  ティム・バートン
原作:  スティーヴン・ソンドハイム、ヒュー・ウィーラー
脚本:  ジョン・ローガン
音楽:  スティーヴン・ソンドハイム

は: 何とも陰惨で暗い物語でございますね。床屋がカミソリで客を殺し、階下の女主人が死体を材料にミートパイを作って売るとは何とも恐ろしゅうございます。
ゆ: ティム・バートン監督は以前にもジョニデプとのコンビで「スリーピー・ホロウ」というサスペンスを同じようなゴシック・タッチで作っているんだけれど、話自体がそれよりなお陰惨でグロテスクですね。彼としては日本で初めてのR15指定を受けたのもむべなるかな、というところですね。
は: おまけに主人公のジョニー・デップ自身が無益な殺人を平然と繰り返しますし。
ゆ: そうそう、コンビの代表作である夢物語のようなタッチの「シザーハンズ」と同じようなメークはしてますが、シザーハンズのような無垢さや温もりが微塵も感じられない殺人鬼と化してしまってますから、まあ

「いくらジョニー・デップでもこんな映画は嫌だ」

という人がいても仕方ないでしょうね。個人的にはどんな役でも平然と演じられるのが彼の持ち味だとは思いますけど。

は: それにしてもどうしてわざわざこんな嫌われるような映画をお作りになったんでしょう?弱者や社会の底辺で生きている人たちへの温かい眼差しがティム・バートン様の持ち味だったように思うのですが。
ゆ: そう言う意見が多いようですが、私が思うにはティムは決して感動ヒューマン映画を撮る大監督ではなくて、未だにB級作品にこだわっているカルト監督なんだろうと思いますね。大体彼はもともとホラー大好き少年で、ヴィンセント・ブライスに熱中していたそうですし、こういうブロードウェイで大ヒットしたホラー作品を観ると血が騒ぐんでしょう、そう言う意味ではやはり彼らしい映画なのではないでしょうか。

は: 確かに映像はティム一流の美学が貫かれていますね。
ゆ: 彩度を落とした暗めの映像の中で血の赤だけを鮮烈に描くところなんてこだわってますよね。あの赤はちょっと赤すぎて血に見えないくらいなんですが、

「オリジナルの劇に忠実に作った」

そうですから、いかにも人工的なところさえ彼の計算のうちなんじゃないですか。

は: では俳優陣の演技はいかがだったでしょうか?
ゆ: もう芸達者ばっかりですから、安心して観ていられますね、、、と言いたいところなんですが、個人的には二つほど問題点がありました。
は: で、その一つ目とは?
ゆ: ティムのパートナーのヘレナ・ボナム=カーターが上手すぎて完全にジョニー・デップを喰っちゃいましたね。元々演技は達者な人なんですが、人形劇を除いては旦那とジョニー・デップのコンビの時は控えにしていたんですけどね、本性が出ちゃいましたか(笑。
は: 「ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団」のゆうはむレビューでご主人様が

『ゆ: 何と言ってもヴォルデモート卿軍団最強の敵役魔女ベラトリクス役のヘレナ・ボーナム・カーターですね、あそこまでやるとはジョニー・デップも苦笑いしてるでしょう。』

とおっしゃってましたが、まさにその通りでございますね。

ゆ: 実は第二の不満もそれに関係してるんですよ。仇役のターピン判事を演じるのがアラン・リックマン
は: 彼の名前を知らない人でもハリー・ポッター・シリーズの重要人物セヴェラス・スネイプ先生と言えばピンと来ますよね。
ゆ: それがかえって災いしているんですよ。この映画でも喋り口がスネイプ先生そのままなんで、真剣に嫌われ役をやっていても台詞を聞くと思わず笑っちゃうんです。おまけに部下がティモシー・スポール
は: ワームテールことハリーポッターシリーズの情けない悪役にして醜男のピーター・ペティグリューでございますね。
ゆ: そうそう、実際第6巻ではスネイプ先生にこき使われてるんですよ、この映画と役柄までそっくりじゃないですか。
は: もちろんお二人ともに演技には文句のつけようがない適役ではあるんですが、ヘレナ様のハリポタシリーズ登場を利用しての配役とも取れますね。
ゆ: そうそう、ティム・バートン独特の茶目っ気かもしれませんが、話題作りを兼ねてわざとこの配役にしたかもしれませんね。

は: 最後に音楽ですが、ティム・バートンと言えばダニー・エルフマンというくらいほとんどのティム作品で音楽を担当されてましたが、今回は違いますね。
ゆ: まっ、元のミュージカルの作曲がスティーヴン・ソンドハイムですから、これは当然でしょう。それにしてもみんな歌が上手いですね、ジョニー・デップなんか感動するくらい上手かったです。公私共に多忙を極めているようですが、どこでヴォイス・トレーニングしてたんでしょうね。
は: 殆どの登場人物がミュージカル初挑戦だそうでございますが、とてもそうは思えませんね。
ゆ: 徹底的にミュージカルにこだわった、と言う意味ではティムらしい「こだわり」に溢れた作品でしょう。

は: というわけで公開当初賛否両論渦巻いていた作品でございますが、「B級映画の巨匠」という観点からみれば立派な(笑)ティム・バートン作品でございます。
ゆ: ホラー作品の嫌いな私でもそれ程嫌悪感無く観られましたから、ティム・バートンが好きな方にはやっぱり観て欲しいですね。問題は彼がこれからどこへ行こうとしているのかなんですが、私としてはあくまでもB級にこだわってジョニー・デップと二人三脚でやって欲しいです。

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2008/05/25

ダーウィン・アワード

ダーウィン・アワード
はむちぃ: 本日は久々の洋画紹介でございますが、何かいや~な予感が、、、(-_-;)
ゆうけい: どうも~、ひっさしぶりにトホホ映画探検隊のゆうけいどぇ~っす。
は: やっぱり(;一_一)、で題名は「ダーウィン・アワード」でございますね。
ゆ: いやあ邦画でトホホを見つけるのはいとも簡単なんですけど、洋画で笑い飛ばせるトホホ系映画を見つけるのは苦労するんだよね、でも、これはピンと来るものがありました。実はThe Darwin Awardと言うのは実在しているんです。リンク先を見ていただくと分かりますが、

最も馬鹿馬鹿しい死に方をしてくれた事により、人間の遺伝子から不良な部分を取り除くことが出来、人類の未来に貢献してくれた死人に送る賞」

と言うものすごくブラックな賞なんですよ。私もリンク先の受賞された故人の死に方を幾つか拝見いたしましたが、笑ってはいけないと思いつつ(以下略)。
は: それを映画化したとなると、確かにお馬鹿な映画が出来上がりそうでございますね。では拝見いたしましょう。

『優秀なプロファイラーでありながら血を見ると失神してしまう刑事のマイケル(ジョセフ・ファインズ)は、連続殺人犯を取り逃がした事を機に警察を辞職する羽目に。失意のマイケルだが、「ダーウィン賞」の受賞者が保険会社に毎年何百万ドルの損害を与えている事に気づき、自分を保険会社に売り込む。会社は4週間で証明すれば採用するとし、マイケルは女性調査員のシリ(ウィノナ・ライダー)と組んで全米各地を回る事に。そこには様々なバカな事件が、彼らを待ち受けていた。。(goo映画より)』

は: いやあ、これでもかと言うくらい馬鹿な死に方が出てまいりましたね。
ゆ: 笑えますねえ、これを喋っちゃうと観る方の興味が半減しますからやめときますが、死んだ方には気の毒とはいえどうしてそんな馬鹿な事をするの!?と言いたくなりますね。
は: ベテラン保険調査員のシリ様が最後の方で

「保険会社はどんな顧客にだって金を払わないのよ、それで絶望した人々が結局はあんな馬鹿な死に方を選ばざるを得なくなるのよよ」

と心情を吐露される場面がございましたが。。。
ゆ: まあ、とってつけたような理屈で一応社会派コメディにしておこうとする魂胆じゃないでしょうかね。商売柄日本の保険会社のやり口も多少知っていますし、向こうはそれよりなお酷いかもしれませんが、それだけであんな馬鹿な死に方を選ぶわけもありません(苦笑。でも

「苦情電話なんて音声ガイドの迷路に引きずり込んでしまえばやがて相手はあきらめて切ってしまう」

と言う台詞には思わず喝采をあげてしまいましたね!禿同です。
は: 電話の嫌いなB型のご主人様がとりわけ嫌いなのが音声ガイダンスですもんね~、滅多に喧嘩などされない奥様とそれで、、、
ゆ: これこれ、はむちぃ君、余計な事はイワン・レンドル

は: イワン雷帝よりは新しゅうございますが、それでも古いですよ(-_-) 、古いと言えばウィノナ・ライダー様も久しぶりにお見かけしましたね。
ゆ: ほんとですねえ、調べてみたらコンスタントに仕事はしてるみたいなんですが、実生活での万引き事件以来こちらではとんとお見かけしませんでしたね。
は: シリと言う役名はポール・オースターの奥さんと同じ名前でございますね。
ゆ: そうそう、ですから北欧系のはずなんですけどそんなところは微塵も感じない典型的にベタなアメリカ人を演じてましたね。でも調べてみたらウィノナ・ライダーの本当の姓はホロヴィッツなんですよ、驚きました、現実は映画より奇なりですな(笑。

は: ベタなアメリカと言えば音楽的にもビリー・ジョエルを主人公が好きだったり、ヘビメタのメタリカのライブがあったりと、ベタなアメリカがそのまま出てまいりましたね。
ゆ: 主人公マイケルが車の中で「ビリー・ジョエルのピアノマン」をかけてシリをリラックスさせようとしたら余りにも懐メロ過ぎるのでシリがいや~な顏するんですが、マイケルがそれを「うるさい音楽をかけすぎたかな」と勘違いするところなんかにやっとさせますね。でもかかってたのは「Vienna」でしたね、あれは「ストレンジャー」に入ってたはずですが(苦笑。
は: メタリカのライブは本当にメタリカ様が出演されてましたね!
ゆ: きっとこんなお馬鹿な映画が彼らも好きなんでしょうね(^_^;)。そう言えば彼ら空耳アワーの常連ですが、今回は会場に落ちてくる車を見たジェームズ・ヘッドフィールドが呆然として

お ち た !

と日本語で言ってるように見える場面があるんですよ。口パクアワーですな(^O^)、タモリ倶楽部がお好きな方は是非見て下さい!笑えますよ。

は: と言うわけでございまして、お馬鹿な死に方をする方々が次々と出てはまいりますが、映画自体は割りとまともな映画でございましたね。
ゆ: B級には違いないですが、そう言う意味では当てが外れましたね。実はこの映画の殆どの場面でファインダーのフレームが写っているんですが、このあたりのアイデアもとても面白いと思いました。
は: 面白い趣向でございましたね。あと、例によって例のごとくエンドロールの後にしゃれたエピローグがございますのでお見逃し無きようお願いいたします。

ゆ: も一つおまけに超おバカネタを。日本版オフィシャルサイトに「EBlogparts」という、

「マウスを連打してウィノナ・ライダーを脱がしていく(--〆)」

という、ほっっっんとうにお馬鹿なブログパーツが用意されています。さすがにこのブログに貼る勇気はありませんが、興味のある方はどうぞ~~~~~。

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2008/04/12

ヒロシマナガサキ

ヒロシマナガサキ

 先日はむちぃ君にどうせ田中麗奈の作品をレビューするなら「夕凪の街桜の国」にしないのですか!と突っ込まれてしまいました(笑。まあもちろんそれもやるつもりでしたが、やるなら先ずこの映画を観てからにしようと思ってずっとDVDレンタルの開始を待っていたんです。
 アカデミー賞ドキュメンタリー映画賞受賞者であるスティーヴン・オカザキ監督が、25年の歳月をかけて完成させた原爆のドキュメンタリー映画「ヒロシマナガサキ White Light/Black Rain」です。ようやく観る事ができました。月並みですが感想は

「国籍を問わず、一人でも多くの人に見てほしい」

と言う事に尽きます。そしてやはり当事者である日本人には「MUST」の映画であると思います。

 もちろん、原爆関係の本や映画は沢山読んできたし観もしたしで知識・見識は十分ある、と言う方も沢山おられると思います。実を言うと私もそう思っていた一人です。主な興味はこの映画が昨年8月6日、広島に原爆が投下されたその日に、全米にむけてテレビ放映された事、および賛否両論の反響の大きさにありました。
 しかし、映画を観終わった後ではそのような事より何より、日本人はこのテーマを日々新たに何度も何度も検証を重ね続けるべきであり、このような映画は作られ続けるべきだという思いを強くしました。そして作られるのならこの様な優れたドキュメンタリーであって欲しいと思います。

『 原爆投下から60余年を経た今、日本でもその惨劇の記憶が薄れつつあるが、世界の多くの人々には、いまだ被害の実態についてほとんど知られていない。アメリカでは、原爆が戦争を早期に終わらせ、日米両国民の多くの命を救ったのだという、いわゆる“原爆神話”が広く受け入れられている現実がある。
 本作は、14人の被爆者と、原爆投下に関与した4人のアメリカ人の証言を軸に構成されている。その中にはオカザキ監督の人生を決定づけた「はだしのゲン」の作者・中沢啓治氏の姿もある。惨劇から、ゆうに半世紀を越えるにもかかわらず、彼らの証言はひたすら生々しく、私たちの心をかき乱す。それはとりもなおさず、原爆というものがいかに忌むべき存在であるかの証左に他ならない。貴重な記録映像や資料を交え、広島・長崎の真実を包括的に描いた本作は、被爆者たちの想像を絶する苦悩に向き合い、彼らの生きる勇気と尊厳を深く受け止めている。(AMAZON解説より)』

 「想像を絶する」と言う表現はある意味便利な言葉でもあり、危険な言葉でもあります。想像を絶するのであれば実際にその映像や証言を知るべきなのにそれをせずそこで思考停止してしまうからです。
 この映画にはそういう意味で真に見るべき新たな映像と聞くべき証言が数多く含まれています。60年経っても癒えないケロイドや剥き出しの肋骨をカメラの前に晒した証言者の勇気を見るものはしかと受け止める義務があると思います。
 そして長崎の被爆者の

「何度も死のうと思ったがカトリック信者であるから自殺は出来なかった、カトリック信者の数多く住むナガサキに何故原爆を落としたのか」

という証言は恐らく海外のクリスチャンには相当の衝撃を与えたのではないかと推測します。そしてそれと同じくらい日本人は「被爆者差別」の罪深さを反省すべきです。折りしも新基準の原爆症認定による申請者が未だに続いている事をニュースは伝えています。

 付け加えるならばこの映画を正しく観る一つのポイントとして、特典映像の監督のインタビューは必見だと思います。

 例えば映画冒頭、原宿かどこか東京の街で若者に

「1945年8月6、9日に何があったか知っているか」

を問うインタビューが出てきます。悉く知りません。これが恣意的な編集かどうかを知りたかったのですが、インタビューにちゃんとその質問がありました。8人まで尋ねて誰も知らなかったので監督も日本人スタッフも驚くと共に諦めたそうです。恥ずべき無知な馬鹿者どもだと切り捨ててしまう事は容易ですが、監督は必ずしも彼等のせいではない事をちゃんと理解しています。
 個人的な意見を言えばそのような街に繰り出した事自体が恣意的な気もしますし、「原爆が落ちた都市を二つ知っていますか」と言う質問なら恐らくですが半分くらいは答えられたんじゃないかとも思います。大事なのはこの様な若者に正しい情報を与え続ける事であり、その意味でもこの様な映画がこの時期に作られる意義は大きいと思います。

 そしてまたオカザキ監督はこのインタビューで、

「この映画が難産であって却って良かった、何故ならその間にアメリカ人は9.11のテロを経験したからだ」

とも述べています。アメリカ人はあのテロにより被害者としての視点を経験したのでよりこの映画を深く理解できたようです。
 実は本ブログの映画レビューにどうしてこんなに太平洋戦争の悲劇を描いた映画が多くなってしまうんだろうと自分自身で訝しく思っていたのですが、このコメントを聞いていてはっとしました。阪神淡路大震災の経験が無意識のうちにこういうテーマに向かわせるのではないかと。阪神淡路大震災も7000人近くという4桁の死者を出しましたが、例えば長崎は5桁、広島は6桁の死者を一瞬にして出しました。先ほど述べたように「想像を絶する」世界です。そのような想像を超える世界を知る事により自分の体験した痛みの重さを測ってみたいという無意識の欲求があるのかもしれません。

 ちょっと柔らかい情報も入れておきましょう。バックに流れる音楽は殆どがモグワイシガー・ロスイーノハロルド・バッド等のポストロック、アンビエント音楽です。そしてそれが少しも不自然でなく映像に溶け込んでいるのは、この種の音楽の持つ多様化する映像世界への順応性なのだろうと思います。
 
 観て楽しい映画ではありませんが、インタビューを入れても2時間程度です。あなたの人生の2時間だけを、どうかこの映画に委ねてみてください。

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2008/03/21

エディット・ピアフ~愛の賛歌~

エディット・ピアフ~愛の讃歌~ (2枚組)
はむちぃ: 皆様こん**は、はむちぃでございます。今回の映画レビューはエディット・ピアフ~愛の賛歌~でございます。めまぐるしくジャンルが変わるのがゆうけいのゆうけいたるところでございますが、いやはやなんとも(-.-)
ゆうけい: は?なにか疑問でも(笑、というわけで演歌と言えば美空ひばり、ジャズと言えばビリー・ホリデイ、そしてシャンソンと言えばエディット・ピアフでございます。彼女の壮絶な人生を描いた伝記映画として各国で絶賛され数々の賞を受傷受賞しておりますが、さていかがなものでございましょうや?

『   第一次対戦中に生まれたエディットは、祖母が経営する娼館に預けられ、やさしい娼婦たちのもと育った。しかし、大道芸人の父親に引き取られ、その側で歌うことを覚える。これをきっかけに彼女にとって歌は生きがいに。パリの名門クラブのオーナー見いだされその才能を開花させるが、オーナーが死体で発見される。彼女に容疑がかけられ、疑いはすぐに晴れるが、世間の目は厳しかった…。
    フランスが生んだ世界の歌姫エディット・ピアフの生涯を描いたオリヴィエ・ダアン監督作。そのドラマティックな人生はじつに映画的だが、この映画の成功は、その波瀾万丈の人生よりもエディット・ピアフという人物の個性と本質をきっちり描き出したことにほかならない。そのピアフの喜び、孤独、愛、憎しみすべて感情を芝居に注ぎ込んだピアフ役のマリオン・コティヤールは、まるでピアフが乗り移ったかのような魅力的なパフォーマンスで魅了。間違いなくコティヤールの代表作となる!と断言できるくらい素晴らしい。そして名曲の数々をピアフの人生に重ね合わせ、感動を呼び起こす演出も力強く、脇をかためるジェラール・ドパルデュー、エマニエル・セニエなどの役者たちも好演。たった47年でその生涯を閉じたエディット・ピアフ。彼女をよく知る人も知らなかった人も、その人生に心を震わせること間違いない、傑作である。(斉藤香、AMAZON解説より) 』

奥様: 暗い映画やな!(断言&退場)

は: おおっ、久しぶりに奥様の「寸鉄映画を刺す」一言が!
ゆ: た、確かにね(^_^;)。貧困、眼病、放浪、闇社会、麻薬、酒、リウマチ、そして死。生老病死で四苦八苦してのたうちまわるピアフさんの姿ばっかりでしたな(苦笑。ハリウッド資本で作ってたら華麗な愛の遍歴とか、反ナチ運動とかをもっと取り上げてたでしょうね。まあ、欧州映画の作り方の一つの立派な見識だとは思います。

は: これほどまでに酷い人生を歩まれていたとははむちぃメ不覚にして存じ上げませんでした(涙。
ゆ: 公式サイトのレビューにある方が

「君をピアフにしてあげるといわれても私は逃げ出す」

と書いておられるのには笑いましたな。
は: その苛烈な人生の殆どを演じられたマリオン・コティヤール様の演技は素晴らしかったですね。
ゆ: TAXIシリーズのリリーと同一人物とは想像もつきませんな(笑。
は: アメリなどとともにマリオン様の代表作となるでしょうね。
ゆ: まっ、アカデミー賞受賞も当然でしょう。というかひたすら彼女の演技だけを見続けさせられる映画ですね(苦笑。
は: 時間軸が言ったり来たりするせいもあって男優陣の役柄が分かりにくい面がございましたね。
ゆ: 日本人には区別のつけにくい顔の方が多かったですしね。それに予想外に彼女と関わりのあった実在有名人の登場が少なくて地味メの脚本でしたしね。
は: ジャン・コクトー様くらいでしょうか。
ゆ: 私も隅から隅まで把握したわけじゃないですけど、イブ・モンタンシャルル・アズナブールジョルジュ・ムスタキも出てきませんでしたねえ。

は: 先程欧州映画らしいという評価がございましたが、映像も欧州美にあふれておりますね。
ゆ: この映画の見どころの一つですね。それは素晴らしいもので、フランス、ニューヨーク、カルフォルニアの対比が見事でした。ところがこれが驚いた事に日本人の永田鉄夫が撮影しているんですよ(^o^)!!!
は: この映画でセザール賞を受賞されましたね。しかしまたビックリマーク三つの喜び方はひょっとして、、、
ゆ: そう、原田知世様主演の「大停電の夜に」を撮影した方なんですよ~。

は: はいはい(-"-)、次参りましょう。歌の方はピアフ様ご自身の音源が数多く用いられておりますね。
ゆ: それに見事に映像を合わせましたね。実際少しはマリオン自身が歌ってるんですが、全部彼女が歌っているのかと錯覚してしまいそうでした。素晴らしい歌の数々を聴くだけでも元は取れる映画ですよね。一言だけ言わせていただければ、この映画の原題は代表曲の一つ「バラ色の人生(ラヴィアンローズ)」なんですよ、邦題の副題が別の代表曲である「愛の賛歌」なのはちょっと疑問ですね。
は: 日本のカラオケでもよく歌われて馴染みの深い方を使ったのでしょうね。
ゆ: 岩谷時子さんの偉大な業績ではありますが、まあカラオケでいい気になって歌いあげてる方々は一度この映画をご覧になって元歌詞を知って貰いたいですね(笑。

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2008/03/06

ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団

ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団(1枚組)
はむちぃ: さて今回は月ラプ恒例の映画ハリー・ポッター・シリーズのレビューでございます。ちなみに前回は「炎のゴブレット」でございましたが、今回は第五昨「ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団」でございます。
ゆうけい: 過去4作は全て公開時に映画館で見ていたんですが、今回は体調不良ということもあり、DVDになってから自宅で鑑賞いたしました。

『 ホグワーツ5年生となったハリーを出迎えたのは、周囲の白い目と新聞のふざけた見出し。ハリーがヴォルデモートの復活話をでっちあげたと書きたて、ハリー・ポッターならぬハリー・プロッター(策略家)と糾弾する始末。更に悪いことに、魔法省大臣コーネリウス・ファッジが闇の魔術に対する防衛術の新任教師として送り込んで来たドローレス・アンブリッジの“魔法省お墨つき”の授業は、ホグワーツに迫り来る闇の魔術に対しては不十分であった。そこでハリーはロンとハーマイオニーに説得され、有志を集めて“ダンブルドア軍団”を結成、厳しい監視の目をかいくぐりながら、きたる壮絶な決戦に備えるべく秘密の訓練を開始する。(AMAZON解説より)』

は: この映画シリーズはマンネリを避ける目的もあってか、監督が次々交替いたしますね。本作は監督にデイビッド・イエーツというTV出身の新人を迎えております。
ゆ: 出せば世界中で大ヒット間違いなしのシリーズですから出世のチャンスといえるのかもしれませんが、正直なところ本作と次回作を担当する監督は「貧乏くじ」的なところがあって気の毒ですね。
は: 大団円を迎える第七作「死の秘宝」がクライマックスで、それまでの過渡期的な作品ですからね。
ゆ: おまけに原作が

分厚い
暗い
地味
重要人物が死ぬのがハイライト」
未解決のまま終わる」

ですからな、これを「単品で観ても面白い2~3時間の映画」に仕上げろと言う方が無理ですよ(苦笑。

は: まあまあ(^_^;)、それを踏まえて映画を観ての感想はいかがでございましょう?
ゆ: ゆうけいはハリポタシリーズに甘いと言われるんですが、それを承知で言わせて貰えればまあまあ面白かったと思いますよ。あの原作を手際よくまとめてストーリーの繫がりにちゃんと整合性を持たせていましたしね。
は: それゆえバッサリ切られた部分も多うございますね。
ゆ: 何と言っても今回はハリーの親友のロン・ウィーズリーが完全に脇役に回ってしまったのが残念でした。ロン役のルパート・グリントも寂心なしか寂しそうでしたね。原作では監督生になったりクイディッチの正式メンバーになったりで結構活躍するんですが。
は: クイディッチのCGは第三作までの楽しみの一つだったのが第四作では原作の都合上出てきませんでしたから、今回期待していていた向きも多いでしょうしね。
ゆ: そうですね、私も少し残念ですが映画の流れをみると止む無し、正解だったかなと思います。まあフレッド&ジョージがそれなりに大暴れしてくれたから良しとしましょう。

は: さっきCGの話が出ましたが、今回の映像はいかがでございましょう。
ゆ: ホグワーツ魔法学校は第3作以降の設定をほぼ忠実に踏襲していたと思います。今回の目玉は何と言っても魔法省でしょうね。ロンドンの地下にある巨大な施設で、寂れた地区にある電話ボックスが入り口になっていると言う設定なんですが、原作でこんな感じかなと思っていた設定を結構想像通りかつゴージャスに映像化していて個人的には好感が持てました。
は: 架空の動物のCGも手堅くまとめてございましたね。巨人族のグロウプには、はむちぃメちょっとがっかりいたしましたが(^_^;)。
ゆ: 確かにね(笑、まあ今まで様々なCGを駆使して来たシリーズですからさすがに新味はなかったですね。死を直視した者だけに見えるセストラルという動物が個人的には面白かったですが。

は: さて本作では新しい登場人物が何人か出てまいりましたが、ご感想はいかがでございましょう。
ゆ: 何と言ってもヴォルデモート卿軍団最強の敵役魔女ベラトリクス役のヘレナ・ボーナム・カーターですね、あそこまでやるとはジョニー・デップも苦笑いしてるでしょう。
は: ティム・バートンの奥様で「チャーリーとチョコレート工場」や「スイーニー・トッド」にも出ておられますが、本当に芸達者な方ですね。
ゆ: 役柄としては新たな友達となる風変わりな女性ルーナ・ラブグッドを演じたエバナ・リンチがおいしいところを持っていきましたね。喋り方やちょっとした仕種なんか本当に原作のイメージどおりですね、スタッフも良く見つけてきたと思います。次回作以降の活躍が楽しみな女優さんです。
は: 逆にこれは残念と言うキャストはございますか?
ゆ: 周りのレギュラー陣の成長に連れてハリー役のダニエル・ラドクリフ君がチビになってきたのが辛いですね、まあこればっかりは仕方ありませんが。あとハリー君初のキスシーンのお相手となるケイティ・ラングにそれ程魅力が無いように感じるのは私だけでしょうか?まあ向こうの人が見たらエキゾチックで魅力的なのかもしれませんが。

は: 相変わらず本筋に触れない映画レビューでございましたが、最後に一言お願いいたします。
ゆ: 単純にSFファンタジーとして楽しめるのが第一、二作、大人の鑑賞に堪えうるのが第三、四作だと思います。そして本作は単独の作品としてみれば、、、トホホです(笑。しか~し、第七作が終わる時、良いブリッジであったと評価されるでしょう、多分。
は: 第七作は二回に分かれると言う噂ですよ(-_-)(ボソッ。
ゆ: げげっ、あと三回もあるのか(呆。。。

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2008/02/28

ストリングス

ストリングス ~愛と絆の旅路~
は: 今回の映画レビューは趣向を変えましてデンマークの人形劇映画「ストリングス」を取り上げてみました。
ゆ: まあ身も蓋もない話をすれば、はむちぃ君だって現実世界の私に操られているわけですが、操る糸(ストリングス)を見せないようにいつも気を遣っているわけでございます。ところが、この人形劇ではその糸に大きな意味を持たせており、この逆転の発想が大変素晴らしい作品を産んだといえましょう。

『”マリオネット”。そこは全ての生き物が天上と糸で結びつけられている世界であった。ある夜、ヘバロン王国の王、カーロが自らの行いを悔い自害する。息子ハル王子に国の平和を託す遺書を遺して。しかし君主の座を狙う王の実弟ニゾとその家臣ガラクは真実を隠蔽し、その死を敵対するゼリス一族の長、サーロの仕業に見せかける。暗殺されたと信じたハルは家臣エリトと共に仇を討つため旅立つのであった。』

は: おっしゃるとおり、最初に人形たちを操るスタッフ(人間)がいる舞台裏を写すところから始まりまして、操り糸をつたってカメラは地上に下りてゆき、そこから物語が始まりますね。
ゆ: この糸が「神と人形を結び命を与えている」と言う設定なんですね。だから糸が切られるとその部分は動かなくなり、奴隷から新しいパーツを補充しなくてはなりませんし、頭の糸が切られると絶命するんです。この設定がこの映画に文字通り生命の息吹きを吹き込んでいますね。
は: そしてこの糸は様々なシーンで印象的に用いられております。戦闘シーンでは通常映画のリアルな立ち回りとは一味違った醍醐味がございますし、ラブシーンでは男女の愛の交歓を象徴的に描いております。
ゆ: 物量作戦で力づくで描くハリウッド映画や徹底的に細部まで描きこむ日本アニメとは全く違った象徴主義的で高尚な手法ですね。クライマックスとなる戦いの情景など、上空の糸の交錯と空の色の変化により象徴的に表現していて見事なものです。制作したスタッフには素直に恐れ入谷の鬼子母神でございます。

は: 鬼子母神で思い出したわけでもありませんが日本の能・狂言・文楽などの侘び寂びの世界観にも通じるところがございますね。
ゆ: おっ、はむちぃ君なかなか鋭いですね、物語自体は民族紛争や王位継承を巡るドロドロした世界が描かれているんだけど、不思議と生臭くないのはそう言うことかもしれませんね。

は: その一方で人形の見せる演技も素晴らしゅうございますしね。
ゆ: 主要人物の顔の半分を画面端に大写しにする場面が頻出するんですが、その感情表現たるや大したものですね。きいちご賞映画に出ていた方々には是非参考にして欲しいです(笑。
は: 入手した情報をまとめますと、人形師は欧州各国から集められた精鋭22名、それぞれの人形は長さ5メートルの糸で上から操られ、一体当たり5人がかりで動かしているそうでございます。全部で115体用意された人形を操る糸の長さは、のべ10キロメートルにも達し、撮影だけでも23週間かかっております。CGなどのは一切用いていないそうでございます。
ゆ: それでこその人形の演技力なんですね。権力闘争や民族間の憎しみ合いの悲惨さ愚かさが人形達の演技を通じて本当に良く描かれていたと思います。ラストシーンの、頭を糸を切られて亡くなった主人公の妹が筏に乗せられて海へ流されていく情景の哀しさ、美しさは映画史上に残る名シーンと言っていいのではないでしょうか。
は: 寄り添っていた鳥が初めて大空へ羽ばたくシーンでは、はむちぃめも涙を禁じ得ませんでした(T_T)。

  、、、ところでご主人様、日本語版については言及無しでございますか?
ゆ: 庵野秀明がメガホンを取ったジャパン・バージョンですか、どうなんでしょうね、あの声優陣で期待しろという方が無茶じゃないんですか?
は: ここまでべた褒めしてきて最後の最後にまたまたその様な過激な発言を(--〆)。
ゆ: まあこの映画のDVDの入手を容易にしてくれたことには感謝しますけど、ちゃんと英語版も入っていますので先ずはそちらを鑑賞するべきでしょうね。
は: 英語の理解できないお子様には日本語版だけでも十分楽しめますでしょう。
ゆ: まあそう言えばそうなんですけど、この映画は人形劇だからと言って決してお子様向けではありません。むしろ映画・芸術をある程度理解できるようになった年齢層に観ていただきたいですね。

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2008/02/17

パイレーツ・オブ・カリビアン/ワールド・エンド

パイレーツ・オブ・カリビアン/ワールド・エンド 2-Disc・スペシャル・エディション
はむちぃ: みなさま、厳寒の候お元気でいらっしゃいますでしょうか、はむちぃでございます。今回の映画レビューはディズニーアクション娯楽超大作パイレーツ・オブ・カリビアンの三作目にして解決篇「At World's End」でございます。
ゆうけい: 何しろ3時間近い大作で観るのもしんどいのですが、早くはむちぃを出せと言うプレッシャーが強くてねえ(笑。
は: またまたそういうことを(ーー;)、ホントは評判が散々なだけに見るのが億劫だったんじゃありませんか?
ゆ: バカナコトヲイウナ(辻本風棒読みで)。でもまあ、前作でこのレビューでは褒めまくった「Dead Man's Chest」よりひどい評判だからね~、前田さんの超映画批評なんか前作が55点で今回は40点ですから(爆

『海賊たちの自由な時代は、世界制覇をもくろむ東インド貿易会社のベケット卿によって終わりを告げようとしていた。残された道はただひとつ、選ばれし9人の “伝説の海賊”を召集し、命運を賭けた決戦を挑むのみ。ジャック、エリザベス、ウィルの運命が再び交差するとき、前人未到の“ワールド・エンド”で、海賊たちの自由を賭けた最後の決戦の火蓋が切られる―。

「海賊映画」を復活させた大ヒットシリーズ3部作の完結編は、過去2作と違う味わいが残るだろう。これまでの作品は、わりとシンプルなストーリー運びで、登場人物たちの意図も明快であった。この3作目は、それぞれに秘められた思いが複雑で、しかも一瞬のセリフや表情を観逃すと分かりづらい部分もあるので、2度、3度と観てフォローしたくなる。観る側としては納得のいなかい気分にもなるが、何度も観たくなるというのは、もしかしたら名プロデューサー、ジェリー・ブラッカイマーの策略かもしれない。
   ジャック・スパロウ救出の物語は、新登場の海賊長サオ・フェンが暗躍するシンガポールに始まり、アジアンテイストの衣装や武器、海賊船が見どころのひとつになる。「デイヴィ・ジョーンズの海の墓場」で何十人も登場するジャックや、海の大渦巻きの中での海賊船バトルなど、今回も驚きの映像が詰まっているのは確か。9人の「海賊長」がそろうシーンも圧巻だが、ジョニー・デップが役作りの見本にしたキース・リチャーズが特別出演し、わずかな出番で場をさらうカリスマ性を発揮している。あれこれあって迎えるラストは、1作目の冒頭とリンクしているようで、シリーズファンは妙に懐かしい感慨に耽るだろう。エンドクレジット後のシーンは別にして、3部作を終えるにはふさわしい結末であると思う。(斉藤博昭)(AMAZON解説より)』

は: なるほど、はむちぃめハラハラドキドキのし通しでございました。
ゆ: もう完全な物量作戦で、ハリウッドの面目躍如たるものがありますね。やり手ばばあプロデューサージェリー・ブラッカイマー

「金払った分は満足させてやるぜ、食らえこの野郎!」

と言われているみたいです。
は: ご主人様、やり手ばばあのギャグは前回もお使いでしたよ
(--〆)。巷間言われているようなクライマックスまでの冗長さ、話の分かりにくさ、おふざけのくどさなんてのは全然感じませんでしたね。
ゆ: そうなんだよね、敵味方の入れ替わりの激しさや登場人物の多さなどから評判が悪いんだろうけれど、シリーズの解決篇としてみれば、とてもよく出来た作品だと思いましたね、最初から最後まで楽しめました。
は: 人物描写の浅さとか、芝居のディズニーアトラクションっぽさとかは致し方ございませんでしょうけれどもね。
ゆ: まあ、ルーカスのスター・ウォーズ・シリーズでもあの程度ですから(^_^;)、ハリウッドならではで、敢えて言うと監督の力量不足でしょうね。はっきり言ってブラッカイマーにとっては、キャストとCGだけ手配してしまえば監督なんてどうでも良かったんじゃないでしょうか。

は: ご主人様お気に入りのジョニー・デップ様はいかがでございましたでしょう?
ゆ: もう完全に遊んでますね、演技の方は「スイーニー・トッド」の方を鑑賞しましょう。それにしてもキース・リチャーズをあそこまでおもちゃにしちゃあいけません。
は: 今回の新キャストとして注目されるのはシンガポールの海賊の親玉サオ・フェン役のチョウ・ユンファ様でしょうか。
ゆ: アジア映画界の至宝をここまでコケにしますかね~、まあ本人は楽しんでやってたかもしれませんが、もうちょっと威厳を持たせてあげたかったですね。
は: グリーン・デスティニーの御師匠様が悲惨な最期でございました(ToT)。人種差別的なものを感じたりもいたしますが、その点ではブードゥー教の預言者ティア・ダルマ役の黒人俳優のナオミ・ハリスも同じような扱いでございましょうか。
ゆ: 「尊敬してるようで差別してる」という、典型的なハリウッドにおける無意識の白人優越主義ですね。しかしまあなんですね~(こえピョン風)、女神様に変身するのは良いけどあれで終わりかよ、解き放たれたからにはもっと暴れてもらわないと(失笑。前田有一さんは綾波レイに例えてましたが、あれじゃ巨神兵です。

は: さて、エンドシーンとエンドロール後のエピソードから察するに、、、
ゆ: まだやるつもりで探りを入れてますな(笑、エンドシーンの20年後、エンドロール後の10年後あたりが狙い目でしょうかね。脚本家とキーラ・ナイトレイはやる気が無いみたいですが、ブラッカイマーならどうにでも都合つけてやるかもしれませんね。
は: と言うわけでございまして、何も考えずにアトラクションと思って楽しんでくださいませ。

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2008/01/12

ドリームガールズ

ドリームガールズ スペシャル・コレクターズ・エディション
はむちぃ: 皆様お待たせいたしました、本日は主人ゆうけいが正月に予告しておりながらほったらかしていた映画「ドリームガールズ」のレビューでございます。
ゆうけい: 1年前に話題になった映画を今頃やるのもどうかなとも思うのですが、お付き合いくださいませ。

『1962年。音楽での成功を夢見るエフィー、ローレル、ディーナの3人は「ドリーメッツ」というグループを結成し、新人オーディションへの挑戦を繰り返していた。そんな彼女たちに大きな可能性を見出したのが、中古車販売会社を経営するカーティスだった。マネジメントを買って出た彼は、地元の人気シンガー、ジェームス・アーリーのバックコーラスに抜擢する。パワフルなステージは全米の注目を集め、「ザ・ドリームズ」に改名したディーナたちはスター街道を歩み始めるが……。

スタッフ:
監督・脚本……ビル・コンドン
製作……………ローレンス・マーク
製作総指揮……パトリシア・ウイッチャー
音楽……………ヘンリー・クリーガー
歌詞……………トム・アイン

CAST:
カーティス・テイラーJr. …… ジェイミー・フォックス
ディーナ・ジョーンズ…………ビヨンセ・ノウルズ
ジェームス・"サンダー"・アーリー…エディ・マーフィ
マーティー・マディソン………ダニー・グローバー
エフィー・ホワイト……………ジェニファー・ハドソン
(AMAZON解説より)』

は: スプリームスメアリー・ウィルソンの自伝を元にしたブロードウェイ・ミュージカルの映画化で、スプリームスとモータウン・レコードを髣髴とさせる登場人物達の栄光と挫折を描いております。
ゆ: 映画ではカーティス・テイラーJrとなっていますが、明らかにベリー・ゴーディー・ジュニアがモデルで、彼が起こしたモータウン・レコードの花形スターだったのがスプリームスでした。昔はシュープリームスと言ってましたが今はスプリームスと表記するようですね。前回も申し上げましたが、随分前のミュージカルでどうして今頃?という気がしないでも無いんですが、ダイアナ・ロス役のビヨンセ・ノウルズフローレンス・バラード役のジェニファー・ハドソンと役者が揃ったので満を持して、と言うところなのかもしれません。

は: 実際ジェニファーは圧倒的な歌唱力でアカデミー助演女優賞まで獲ってしまいましたしね。
ゆ: 全く凄い歌唱力で、ビヨンセも喰ってしまいましたね。
は: 勿論ビヨンセ様も素晴らしい歌唱力を持っておられるのですが、実は声量が無く歌唱も平板だったというダイアナがモデルの為にわざと抑えざるを得なかったのが気の毒でしたね。
ゆ: 序盤は美貌まで抑えていて本当にビヨンセか?と思いましたね(笑。スプリームスのダイアナ・ロス、デスティニーズ・チャイルドのビヨンセと、どちらも女性トリオの花形スターという共通点があってだぶるところはありますが、この映画を見る限り歌唱力はビヨンセの方が上なんでしょうね。演技力の方は、まあ今回は歌がメインでしたし、「ピンクパンサー」は地でやってたし、まだ分からないところはありますけどね。

は: この二人だけがクローズアップされがちですが、その他の女優さんも皆様歌唱力抜群でございました。
ゆ: それに加えてレイ・チャールズの生涯を描いた「Ray」でアカデミー賞をとったジェイミー・フォックス、歌手もやってたエディ・マーフィーと男優にも歌える役者を揃えたところが実はこの映画の成功のミソなんじゃないかと思いました。

は: 映画としての出来はいかがでございましょう?
ゆ: それがこの作品の評価の分かれるところでしょうね。はじめからミュージカルの映画化と観点で見通せば、それなりに優れた作品なのでしょうけれど、何か歌の部分とストーリーがかみ合わない違和感がありましたね。こちらは映画としても優れていた「シカゴ」を書いたビル・コンドンとは思えないような脚本だなあと思って観てました。
は: 最初は普通のドラマ仕立てで話が進んで、途中シリアスな場面で突然予期せぬ人物が歌いだしたりしてびっくりする事もございましたね。
ゆ: そうそう、登場人物も今ひとつ感情移入しにくいところがありますよね、結局みんな嫌なやつだなあ、みたいな。
は: 確かにジェニファー・ハドソンが演じるエフィーは見方によってはタダのわがままな女みたいな感じがしますね。
ゆ: そうですね、それに歌を除けばそれ程大した演技をしているようには見えないんですが、本当に歌唱力だけでオスカーを獲ってしまった感があります。
は: 虐げられ続けてきた黒人社会から栄光をつかむ話なので、黒人の方でないと分かりにくい演技の綾のようなものもあるのでございましょう。
ゆ: 確かに私達日本人にはちょっとその辺は難しいですよね。エフィーの姓がホワイトなのはそういう意味ではとても皮肉ですな。

は: ちょっとした余興ではジャクソン5そっくりのグループが出ていましたね。
ゆ: あのかわいいマイコー少年が後年「Dirty Diana」などという歌を作るとは誰が予想したでしょうか(笑?
は: ご主人様現実と映画を混同しておられます(-.-)。というわけで、モータウン・サウンドに思い入れのある方には色々と楽しめるミュージカル映画、という結論でお開きでございます。
ゆ: ありきたりの結論で申し訳ございません。やはり人種問題が絡むとレビューも難しゅうございます。

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