2009/11/23

The Fall / Norah Jones

The Fall
 今日の一言で「まだ届かない」と書いていたNorah Jones待望の四作目「The Fall」がやっと届きました。
 ジャズの名門ブルーノートから「Come Away With Me」で衝撃のデビューを飾ったのは2002年の事でした。BNのアルバムとしては驚異的なセールスを叩きだし、一躍世界にその名を知らしめたノラですが、その後はあくまでマイペースで「Feels Like Home」(2004)、「Not Too Late」(2007)、更には友人との匿名バンド「Little Willies」と、自分の好きなカントリー色の強いアルバムを出し続けていました。音楽的に失速しているとの声も多くありましたが、なんだかんだ言ってもノラ名義のアルバムのセールスは累計で3,600万枚に達しています。いくら旧来のジャズファンが「BNの伝統を壊してしまった」と揶揄・批判してもこの圧倒的な数字の前にはBNの屋台骨を支えているのは彼女だと認めざるをえないでしょう。
 さてそんなノラの新作、音楽でも私生活でも良きパートナーだったリー・アレキサンダーと別れた事もあり、新たにジャクワイア・キングをプロデューサーに迎えバンド・メンバーも一新し、共作を含め全曲を彼女を作詞・作曲するという意欲作となっています。

1. Chasing Pirates 
2. Even Though 
3. Light As A Feather 
4. Young Blood 
5. I Wouldn't Need You 
6. Waiting 
7. It's Gonna Be 
8. You've Ruined Me 
9. Back To Manhattan 
10. Stuck 
11. December 
12. Tell Yer Mama 
13. Man of the Hour 

 ジャクワイア・キングはトム・ウェイツの『ミュール・ヴァリエーションズ』でエンジニアを担当し、以来、ウェイツとの関係を保ちながら、キングス・オブ・レオンなどのオルタナティヴ・アクトを手がけてきたエンジニア兼プロデューサーだそうです(宇田和弘氏レビューより)。

 ノラもトム・ウェイツのファンで「ロング・ウェイ・ホーム」を取りあげた事がありますし、その線での新たなSSWとしての自身を表現するためにキングを起用したものと思われます。サポート・ミュージシャンも上述のリーをはじめ従来のバンドメンバーは参加せず、キング人脈のマーク・リボージョーイ・ワロンカージェイムス・ギャドソンらで固めており、新しいノラを表現するのに貢献しています。

 実際PVで先行発表された「Waiting Pirates」、続く二曲目の「Even Though」、三曲目のライアン・アダムズとの共作の「Light As A Feather」と冒頭から立て続けにオルタナ・カントリーっぽい雰囲気が濃厚です。その結構低音がずしんと腹に響いてくるアレンジに従来のノラファンは少なからず驚いた事と思います。勿論私もですが(笑。

1283600127_182  以前某所で彼女の写真を取り上げたのですが、ショートカットでギターを弾く彼女の姿には驚きました。しっとりとピアノで弾き語りをする長髪の美人歌手という従来のイメージを払拭しとうとするその姿と同じような変化がはっきりと音にも出ているようです。

 とは言え、ノラの熱心なファン以外の方にはアレンジが変わっただけでノラの歌自体はいつもどおりで変わり映えはしない、と感じられるかもしれません。まあそれくらい「ノラ節」の個性が際立っているとも言えますが「都会派カントリー(ちょっと表現が矛盾していますが(笑。)」という軸をぶらさないところは彼女の芯の強さなのか、或いは不器用さなのか、気は早いですが今後の変化を見守りたいと思います。

 そんな中でも、ノラファンとして今回感心するのは進境著しいソングライティングの才能です。マイク・マーチンとの共作で、先ほど述べた冒頭のオルタナ・カントリー3連発から一息つかせる軽快なテンポが気持ち良い「Young Blood」、次の二曲のしっとりとしたバラード「 I Wouldn't Need You」「Waiting」あたり素晴らしいと思います。

 その他にも本作の白眉と思えるバラード「Back To Manhattan」、名曲「Don't Know Why」の作者ジェシ・ハリスと共作した「Tell Yer Mama」など聴きこむほどに味が出てくる曲が目白押しです。

 多くのポップス・ファンは今でも「Come Away With Me」の幻影を追いかけていると思います。でもこの作品を聴くと、もういつまでもデビュー作のような作品を求めても仕方ない、これが今のノラなのだという割り切りが必要なのだと思います。新しいノラを応援していきましょう。

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2009/11/16

Soulbook / Rod Stewart

Soulbook
 スティングに続いてもう一人英国ロックの大御所のアルバムを紹介。ロッド・スチュワートの新作「Soulbook」です。咽喉の手術でさすがのロッキン・ロッドも声質・声量とも衰えてしまい、復帰第一作の「Human」(これはいいアルバムだったと思います)以降はアメリカン・ソングブック・シリーズのような、妙に老成したカバーものに活路を見出して、それなりに成功していました。しかし私は余りそんなロッドは見たくないもので、しばらく彼から離れていましたが、さすがにこれにはやられました(笑。ソウルの名曲集なんです。彼自身がライナーノートの冒頭に

This is the album I have waited my whole life to record.

と記しているように、昔からソウルはロッドの十八番だったんですよね。有名なところではジェフ・ベック・グループの「Ol' Man River」とか、後年ジェフと録音した「People Get Ready」とか。

1. It's The Same Old Song 
2. My Cherie Amour Featuring Stevie Wonder
3. You Make Me Feel Brand New Duet with Mary J. Blige
4. (Your Love Keeps Lifting Me) Higher And Higher 
5. Tracks Of My Tears Featuring Smokey Robinson
6. Let It Be Me Duet with Jennifer Hudson
7. Rainy Night In Georgia
8. What Becomes Of The Broken Hearted
9. Love Train
10. You've Really Got A Hold On Me
11. Wonderful World
12. If You Don't Know Me By Now
13. Just My Imagination

 このライイナップを見ていただくとわかるように、サム・クックオーティス・レディングJBジャッキー・ウィルソンテンプテーションズフォー・トップススタイリスティックスと、どの曲をとっても私たち日本人でさえ誰もが一度は耳にした事のある超有名曲ばかり。

 再び彼自身のライナーを読んでみると、これらの曲は彼がやせっぽちの貧乏なティーンエージャーの頃、北ロンドンの片隅で唯一の財産と言っていいオンボロのラジオから流れていた曲ばかりだそうです。まさしく清志郎の「トランジスタラジオ」の世界ですな。

 これらの有名曲を彼独特のハスキーボイス(Humanの頃に比べると随分回復していますね)である時は軽く流し、ある時はじっくりと歌いこんでいます。そしてロッドだからこそ対等に渡り合える超豪華ゲストが4人。そのうち二人(S.Wonder, S.Robinson)はなんとオリジネイターなんですからたまりませんね。そして二人のDiva、M・J・ブライジ、J・ハドスンの歌唱も素晴らしい。バックもR・パーカー・Jrをはじめ、手練のミュージシャンががっちりと固めています。

 まあ、もういい加減カバーで稼ぐのはやめにしてフェイセズの再結成に参加してよ、という声もあるのは重々承知ですが、それにしてもこのカバー集は別格。さすがロッド!と久しぶりに涙しましたよ、もう降参です。全ての洋楽ファンに聴いて欲しいと思います。

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2009/11/14

If On A Winter's Night... / Sting

If on a Winter's Night...
 冬はX'mas企画アルバムのシーズンで、人気ミュージシャンにはオファーが大抵あります。勿論質の高いX'masアルバムを作る人もいますが、、中にはオファーを逆手にとって冬をテーマにした優れたオリジナルアルバムを作ってしまう実力者もいるわけで、例えば去年のEnyaの「And Winter Came...」がそうでした。
 そして最近の私のヘビー・ローテーションがStingのこのアルバムです。クラシック・ファンは驚かれるかもしれませんが、彼はなんと現在ドイチェ・グラモフォンと契約しています。DGでの第一作「Songs From The Labyrinth」はなんとリュート奏者ダウランドの作品集でした。本気でクラシックをやってるのは凄いなと思いましたが、余りにもイメチェンし過ぎて面食らった方も多いと思います。そして第二弾となる本アルバムのテーマは

『時代を超えてイギリス諸島で歌い継がれてきたわらべ歌、子守歌、そしてクリスマス・キャロルの数々。コンセプトは冬。』

1. Gabriel's Message 
2. Soul Cake 
3. There is No Rose of Such Virtue 
4. The Snow it Melts the Soonest 
5. Christmas at Sea 
6. Lo How a Rose E'er Blooming 
7. Cold Song 
8. The Burning Babe 
9. Now Winter Comes Slowly 
10. The Hounds of Winter 
11. Balulalow 
12. Cherry Tree Carol 
13. Lullaby for an Anxious Child 
14. Hurdy Gurdy Man 
15. You Only Cross My Mind in Winter 
16. Blake's Cradle Song (Bonus Track - Deluxe Version Only) 

 詳細はSting自身がライナーノートに記していますが、全曲実にしっかりと歌いこんでいて感心します。一曲目のクリスマス・キャロルの名曲「Gabriel's Message」から早くも濃厚なケルトっぽい雰囲気が漂い、クリスマスの時期に貧しい子供たちが家の前でクリスマスキャロルを歌うお礼にごちそうかお金をもらうというイギリスの伝統行事を歌った“A Soalin”をベースにしたと思われる曲「Soul Cake」は実に楽しく軽快に、ニューカッスル・バラードの「The Snow it Melts the Soonest」、パーセルの『妖精の女王』からの佳曲「Now Winter Comes Slowly」、シューベルトの『冬の旅』の終曲「辻音楽師」をベースにスティングが英訳&編曲をおこなった「Hurdy Gurdy Man」等々のクラシックの数々はベルカントこそ無いもののしっかりと歌詞をかみしめる様に歌いこみます。それらの名曲に混じってスティングのオリジナル曲2曲「The Hounds of Winter」「Lullaby for an Anxious Child」も全く違和感なく溶け込んでおり、さすが稀代のコンポーザーだけの事はあります。

 それにしても感心するのがStingの歌唱力。今更何をと言われるかもしれませんが、ポリスのデビュー時には、彼が将来これ程コクのある芳醇な声質を以て説得力のある歌唱をするシンガーになるとは思ってもみませんでした。ちょっと古すぎますか(^_^;)、まあ確かに名作「シンクロニシティ」からソロ名義の傑作を連発した80年代に大きく成長したことは明らかですが、年輪を重ねるに連れ、ウィスキーが樽の中で熟成されるように更に上手くなったなあと思います。去年のポリスReunion Tourでは逆に年齢を感じさせないパワーも見せ付けていましたけどね。

 さて、楽器の方ですがさすがに今回は前回ほどシンプルではなく、コンサートでお馴染みのドミニク・ミラーは勿論、クリス・ボッティ(トランペット)、ダニエル・ホープ(ヴァイオリン)も参加しています。また先ほど述べたように、ケルト楽器であるフィドルやスコティッシュ・ハープ、バグ・パイプなども加わり、英国・アイルランド地方の冬の夜を髣髴とさせる上質な出来上がりとなっています。もちろんポリス時代のロックのビートやソロ時代に傾倒していたジャジーな雰囲気は望むべくも無い地味なアルバムではありますが、冬の夜長にはじっくりと楽しめる一枚だと思います。

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2009/11/01

Greatest Hits Live / Three Dog Night

Greatest Hits Live
 前回紹介したKing Crimson IIIが超難解な音楽に取り組んでいた頃に、徹底したエンターテインメント性とポップで良質な曲選択で人気を博していたのがスリー・ドッグ・ナイトでした。往年のファンには懐かしいこのグループの未発表ライブ音源が12曲収録されたアルバムが出た事をMidge大佐さんのブログで知り、懐かしい思いがしました。

1. One Man Band
2. Family of Man
3. Easy to Be Hard
4. Never Been to Spain
5. Mama Told Me (Not to Come)
6. Old Fashioned Love Song
7. Eli's Coming
8. Liar
9. Celebrate
10. Try a Little Tenderness
11. One
12. Joy to the World

Cory Wells (Vo)
Chuck Negron (Vo)
Dunny Hutton (Vo)
Mchael Allsup (g)
Jimmy Greenspoon (kbds)
Floyd Sneed (ds)
Joe Schermie (b)

 このバンドは1967年にダニーを中心に結成され、ヴォーカルが3人という当時でも珍しい構成でした。バックの4人はスカウトされた腕利きのミュージシャンでしたから、当初から高い演奏能力を有しており、また殆どの曲は「外注」で、ある意味商業的ロックの魁だったのかもしれません。その選曲眼は抜群でヒットを連発し、このライブの頃は全盛期だったと思います。 このツアーは1972年~1973年に行われた壮大なワールドツアーで、欧州、北米、オセアニア、そして日本を回りました。本作の音源はドイツ、イギリスのもので、これだけ良質な録音がよく未発表で残っていたなと思います。

Tdn1  実はこのツアーのライブ・アルバムはツアー終了後間もなく「Around The World With Three Dog Night」と題して発表され大ヒットしました。「80日間世界一周」にかけたと思われる気球の写真のジャケットが壮麗な、凝った作りの二枚組みで、今回久しぶりに取り出してみましたら、3300円のプライスタグが貼ってありました。当時の厨房には高価なポップ・アルバムを何故プログレ命の私がわざわざ買ったのか?記憶にございません(笑。

Tdn2  ちなみにこのアルバムにはソロ演奏を含めて17曲が収録されており、殆どの曲は今回の未発表音源とダブっています。久しぶりに通しで聴いてみましたが、ボーカル、演奏とも当時の最高水準といって過言はないでしょう。上手いというより、関西弁で言うところの「達者」なグループだったと思います。だからライブならではの盛り上げ方も心得ており、随所でライブならではのフェイクや煽りを入れており、その熱気をこのアルバムは余すところ無く伝えてくれます。

 特に「Eli's Coming」でのコーリーの白人とは思えない濃いボーカルは凄くて、このアルバムの白眉でしょう。個人的には当時英語の授業で習ったばかりだった「have never been to  = まだ行った事が無い」という言い回しが頻出する「Never Been To Spain」が凄く好きになりました(笑。また、「Joy ToThe World」「Black And White」には微笑ましい日本語のMCが入っており、少なくともこの二曲は日本公演を収録したものだと分かります。

 ただ、この「Around The World」はごった煮的に世界中での録音をつぎはぎしている事、CDではアナログのジャケットの凝った作りを楽しめない事が欠点といえば欠点です。その意味では今回のアルバムの方が収録曲の選曲も良いし、2箇所だけの音源でまとまりもあるし、音も未発表音源とは思えないほどのクオリティだし、止めに、、、安いし、Midge大佐さんのおっしゃるように、超お買い得だと思います。往年のファンのみならず、知らない若い世代の人にも是非聴いていただきたいアルバムだと思います。

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2009/06/18

Lullaby / Jewel

Lullaby
 Jewelの新譜が出ました。子守唄集との事なのでこれは和むかな、と思って買ってみました。考えてみればJewelは「今日の一曲」で取り上げた事がありますが、レビューは初めてですね、結構iPodには入れて聴いてるんですけど。

1. Raven 
2. All the Animals 
3. Sweet Dreams for You 
4. Twinkle, Twinkle Little Star 
5. Circle Song 
6. Cowboy's Lament 
7. Day Dream Land 
8. Sov Gott (Sleep Well) 
9. Dreamer 
10. Forever and a Day (Always) 
11. Gloria 
12. Somewhere Over the Rainbow 
13. Angel Standing By 
14. Simple Gifts 
15. Brahms' Lullaby

 一曲目のギター一本で歌う「Raven」から、あの独特の憂いを帯びたクリスタルボイスがSPの間にぽっと浮かんできて和みます。ちなみに1,2,5,6,8,9,11,13が彼女のオリジナルであとはスタンダードやトラディショナルとなっています。

 個人的には賛美歌のような11「Gloria」と、傑作デビューアルバム「Pieces Of You」所収の「Angel Standing By」のセルフカバーの13が良かったです。彼女が「Angel Standing By」を子守唄として歌ってくれるなんて何と言う贅沢でしょう(笑。

 彼女の最近の路線でややカントリーっぽいアレンジが多いあたり若干の好き嫌いはあると思いますが、録音はナチュラルで好もしいと思います。Jewelファンの方はもちろん、ストレスを抱えておられる方、不眠症の方も是非どうぞ。

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2009/05/28

Live at the O2 Arena / Katie Melua

Live at the O2 Arena
 グルジア生まれでイギリス在住の歌姫Katie Meluaの初ライブアルバムがリリースされました。エリザベス女王の前でも歌った出世曲「The Closest thing To Crazy」を収録したデビューアルバム「Call Off The Search」、「Nine Million Bicycles」の大ヒットを産みながら日本では発売されなかった「Piece By Piece」、拙ブログでも以レビューした3rd albumの「Pictures」の過去3枚からのヒット曲を中心に、珍しいグルジアのフォークソングや、なんとJanis Joplinのカバー等全19曲、CDの収録時間ぎりぎりまでたっぷりと聴かせてくれます。

1. Piece by Piece 
2. Lilac Wine 
3. Kviteli Potlebi (Yellow Leaves) 
4. My Aphrodisiac Is You 
5. Crawling Up A Hill 
6. Mary Pickford 
7. Blues In The Night 
8. If You Were A Sailboat 
9. Ghost Town 
10. Perfect Circle 
11. Spiders Web 
12. Toy Collection 
13. Scary Films 
14. Mockingbird Song 
15. The Closest thing To Crazy 
16. Nine Million Bicycles 
17. On The Road Again 
18. Kosmic Blues 
19. I Cried For You

Katie Melua

Henry Spinetti(ds)
Tim Harries (b)
Luke Patashnick (g)
Jim Watson (p)
Luis Jordan (perc, g)
Grank Gallagher (keys, vn, pipes)

recorded live at the O2 on Nov 8th, 2009
produced by Mike Batt
2009, Dramatico

 バックバンドは6人、結構上手いです。残念ながら育ての親のマイク・バットはプロデュースに専念しているようです。

 さて、ケイティですが、エレクトリック・ギター一本で歌いだす1からもう既に大物の風格が漂っています。さすがクイーンと共演して臆せず堂々と歌っていただけのことはあります。

 スローなナンバーから結構ハードなナンバーまでまで幅広く歌いこなせる歌唱力・声量はさすがですが、やはり持ち味・最大の聴かせ所は1、8, 15, 16、19などの大ヒットしたバラードでしょう。時には言葉をかみしめる様にじっくりと歌い、時には軽く流し、時にはちょっと声を裏返し、時にはビブラートを効かせスキャットを入れたりと、ライブならではのフェイクを自在にいれつつ歌いこむそれらの歌にはちょっとジーンと来ますね。

 グルジアのフォークソングの3もほのぼのとしますが、MCで「Georgian」と発音しているので、アメリカのジョージア州の民謡か?と勘違いしそうになりました(笑。グルジアもGeorgiaなんですね。

 さて、そのアメリカの生んだ偉大なシンガー、ジャニス・ジョプリンの「Kozmic Blues」や如何に?静かでスローな導入部からして違和感がありますが、まあなにしろ声が綺麗過ぎるし上手すぎます(笑。彼女はエラ・フィッツジェラルドエヴァ・キャシディのファンで歌唱法も参考にしている事は以前のレビューでも書きましたが、さすがにジャニスの真似は難しく、ケイティ節で処理するしかなかったんでしょうね。
 バックの演奏が現代版Full Tilt Boogieっぽい結構良い感じを出しているので、余計に惜しいです。今回聴いた限りではしばしば比較の対象となるノラ・ジョーンズの方がカバーは上手いですね。

 とは言えまあそれも贅沢な注文で、ケイティ・ファンには文句なくお勧めできますし、初めて聴かれる方にも彼女のベスト集としてお勧めできるアルバムです。録音もライブとしては良好の部類に入ります(輸入盤)。なお、CDの収録時間の制限の関係で入れられなかった下記の3曲はオフィシャルHPからダウンロードできるそうです。

Thank You Star
Two Bare Feet
Spellbound

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2009/04/23

Live 1969 / Simon & Garfunkel

Live 1969
 私が物心ついて洋楽に興味を持ち始めた頃、「2人が4人の人気を追い越そうとしている」というあおり文句を色々な雑誌で目にしました。4人とはビートルズの事で、2人とはサイモン&ガーファンクルの事でした。その2人が行った1969年のツアーは彼らの最大のヒット作「明日に架ける橋」の次のアルバムに収録されるべく録音された筈でしたが、その後間もなく2人がコンビを解消したため長い間「幻の音源」とされていました。その録音が先年、アメリカのスターバックス限定で発売され、マニアの間では垂涎の的でしたが、ついに一般発売になりました。と言うわけでベストハウス図鑑ではありませんが、「押さえました」。

1. Homeward Bound
2. At the Zoo
3. 59th Street Bridge Song (Feelin' Groovy)
4. Song for the Asking
5. For Emily, Whenever I May Find Her
6. Scarborough Fair/Canticle
7. Mrs. Robinson [From the Graduate]
8. Boxer
9. Why Don't You Write Me
10. So Long, Frank Lloyd Wright
11. That Silver-Haired Daddy of Mine
12. Bridge Over Troubled Water
13. Sound of Silence
14. I Am a Rock
15. Old Friends/Bookends Theme
16. Leaves That Are Green
17. Kathy's Song

Paul Simon (vo & g )
Art Garfunkel  (vo)

Joe Osborne (bass)
Hal Blaine (ds)
Fred Carter, Jr  (g)
Larry Knechtel (kbd)

 彼らのライブと言えば1981年のセントラルパークのアルバムがあまりにも有名ですが、あれは久しぶりの再結成コンサートでバックも当時のStuffの面々がサポートしていました。ですので彼らのオリジナルアルバム中に収録されている現役時代のライブとはかなり雰囲気が違っていました。一方このアルバムではジョー・オズボーンをはじめとする気心の知れたサポートメンバーとの全盛時のまさに「リアルタイム」のパフォーマンスを聴く事ができます。ですから聴きなれた曲ばかりにもかかわらず、どの曲も瑞々しさに溢れていて聴き飽きません。凡庸な表現ですが1969年にタイムスリップしたかのようです。

 観客の反応もリアルに捉えられています。先ほど聴きなれた曲ばかりと書きましたが、このツアーの時点では「明日に架ける橋」はまだリリースされておらず、観客は後に彼らの代表作となる「明日に架ける橋」をはじめとして、このアルバムに収録されている4,8,9,10,12は初めて聴く曲だったはずです。。。「羨ましい」の一言ですね。

Here is my song for asking
Ask me and I will play
So Sweetly, I'll make you smile
(lyrics from "Song For Asking")

君たちの望む歌を僕は書いてあげる、そして君たちを笑顔にしてあげる」という実にシンプルな歌詞がポールの心からのメッセージであった事をこのライブ音源は教えてくれます。そしてそれが「あの時代の空気」を触媒として生まれたものであり、その後のまたたく間の音楽産業化の波にのまれて永遠に失われてしまったものである事も痛切に感じます。S&Gはもうすぐ来日公演を行いますが、行かれる方はこのアルバムを聴くのは後にした方が良いかもしれませんね。

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2009/03/09

Raising Sand / Robert Plant and Alison Klauss

Raising Sand
 元Led Zeppelinのボーカリストのロバート・プラントとブルー・グラスの歌姫アリソン・クラウスの共演アルバムです。二人とも好きなシンガーですから当然ながらフェイバリット・アルバムではあったのですが、まさかColdplayの「Viva La Vida」をさしおいて本年度第51回グラミー賞最優秀レコード賞最優秀アルバム賞の2部門を含む計5部門を獲得するとは思っていませんでした。そんな凄いアルバムなのかなあと最近良く聴きかえしているのですが、華やかさとは程遠い典型的な「渋い」作品です、やっぱりグラミーは「アメリカ」のお祭りなんだなあと思いますね。

1. Rich Woman 
2. Killing the Blues 
3. Sister Rosetta Goes Before Us 
4. Polly Come Home 
5. Gone Gone Gone (Done Moved On) 
6. Through the Morning, Through the Night 
7. Please Read the Letter 
8. Trampled Rose 
9. Fortune Teller 
10. Stick with Me Baby 
11. Nothin' 
12. Let Your Loss Be Your Lesson 
13. Your Long Journey

 いきなり伝説的シンガー・ソングライターDorothy LaBostrieのR&Bナンバー「Rich Woman」からフィル・インしていくこの感じはまさしくプロデューサーのTボーン・バーネットの世界ですね。もちろん彼のギター以外にもマーク・リボーノーマン・ブレイクと言った気心の知れた名手を配していますし、所謂オルタナ・カントリーの好きな方にはたまらない曲の連続です。ローリング・ストーンズがカバーして大ヒットした「Fortune Teller」などを選曲するところなんか思わずにやりとしてしまいます。

 Zeppのロバート・プラントがカントリーを、と驚かれる向きも多かったようですが、もともとZeppはカントリー志向が結構強かったですし、Zepp信者にはむしろ違和感は無いんじゃないでしょうか。例えばZeppでもPqge and Plantでも取り上げている「Gallows Pole」なんかがそうですよね。そのPage and Plantの頃に比べても、彼の声量やキーは随分落ちているのが寂しいですけれど、でもそれがかえってカントリーっぽい渋さに合っているとも言えます。

 アリソン・クラウスの方はまさにストライクど真ん中の分野ですから安心して聞いてられますし、むしろもっと彼女の比重を増やして貰いたいくらいです(笑。ヒットした「Gone Gone Gone」のデュエットも良いですが、「Please Read The Letter」でのフィドル、「Fortune Telller」のハミング・スキャットなどの技も強く印象に残りました。ロバートも良いパートナーを見つけたもんです。

 じゃあ、グラミー賞5部門が頷けるかと言えば、繰り返すようですが

「地味で渋い」このアルバムがねえ、へぇ~~~

という印象が否めません。「おおっ、あのゼップのプラントがわが国のカントリーを!」ってな感じでやっぱりネーム・バリューの大きさがものをいったんじゃないでしょうか。このアルバムがこれだけの評価を受けるのなら、マーク・ノップラーエミールー・ハリスの「All The Roadrunning」なんかもっと評価されて良いんじゃないかなあ、と思うのはエミールー・ファンの僻みでしょうか(笑。

 ちなみにロバートとアリソンのお二人が良い雰囲気を醸している白黒写真はパメラ・スプリングスティーンが撮っています。そう、通称パム、ブルースの妹さんですね。

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2009/03/05

No Line On The Horizon / U2

ノー・ライン・オン・ザ・ホライゾン  
 日本人写真家杉本博司氏の「海景」の表ジャケを見ただけで手に取りたくなる、U2の約4年半振り通算12作目となるスタジオ・アルバムです。まあとりあえず押さえとかないといけないアルバムでしょう。

1. No Line On The Horizon 
2. Magnificent 
3. Moment of Surrender 
4. Unknown Caller 
5. I'll Go Crazy If I Don't Go Crazy Tonight 
6. Get On Your Boots 
7. Stand Up Comedy 
8. Fez - Being Born 
9. White As Snow 
10. Breathe 
11. Cedars Of Lebanon

 U2の黄金時代を築いたDaniel LanoisBrian EnoSteve Lilywhiteの御三家が全員Produceに復帰しただけあり、さすがの素晴らしい仕上がりになってます。このところポップに走っていた感があるU2でしたが、分厚いサウンド・ウォールで陰影をつけながらも透明感のあるロック・サウンドが戻ってきました。「The Unforgettable Fire」のあたりが好きな方、ラノア・サウンド&イーノ・エフェクトの好きな方には、もう「No Line On The Horizon」の出だしからたまらない展開です。

 惜しむらくは「The Joshua Tree」のような単体でも大ヒットしそうな曲が無いところでしょうか。早速シングルカットされた「Get On Your Boots」はそれでもまあヒットはするでしょうけど、この曲だけそれ以外の曲から浮いている感じは否めないですね。

 まあ、同じイーノがプロデュースに携わったColdplayのような、これからが勝負でシングル・ヒット曲をバンバン出さなければならない若いバンドではないですし、良くも悪くもU2+御三家も年齢と経験を重ねたと言うところなのでしょう。ボノのキーも全盛期よりは下がってきたし、エッジのギターは昔ほど殺気だっていないし、ラリーのドラミングも随分老練になってきたなと思います。それでもいまだにこれだけのエネルギーで完璧なU2サウンドを作れるところに彼らの底知れぬ力を感じます。

 と言うわけで1でU2復活に涙し、渾身の大作3,4に圧倒され、バラード曲9に和み、ラストの11におけるボノのつぶやくような歌唱にその意味を探りつつ終わる、トータル・アルバムだと思います。長い年月を経てU2の新たな傑作が誕生した事を祝いましょう。

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2009/01/26

American Pie / 今日の一言の説明

American Pie
 1月24日の今日の一言は、
Drove my chevy to the levee, but the levee was dry. 」
でしたが、これはkoyamaさんが指摘されたように、アメリカの70年代を代表するヒット・チューン「American Pie (Don McLean)」の一節です。何となく皆さん感じれれておられると思いますが、その前の今日の一言「オバマ大統領が任期を全うされますように」の続きでオバマ大統領の就任演説に引っ掛けて引用してみました。以下、簡単にご説明します。

 ベトナム戦争前のアメリカの黄金時代を代表する花形産業であった自動車会社のCMに

「 drive your chevy to the levee! 」

というジングルがありました。chevyとは多くの方がご存知と思いますがGMのブランド、シボレーの愛称で、leveeはもちろん堤、土手、川辺ですね。ですから日本語訳すると

「シボレーに乗って川辺へ遊びにいこうぜ」

という感じですが、韻を踏んでいて覚え易いフレーズなので、ドン・マクリーンも借用したのだと思います。
 そのGMも今や政府に救援を仰がなければいけないほどの落日振りなのは皆さんご存知の通りです。オバマ大統領が先日の就任演説で

「 Our economy is badly weakened 」

と述べなければならなかった現況と、ドンの歌詞の

「行ったは良いけど、川の水は枯れてしまってたぜ」

という歌詞が妙に符合するような気がして載せてみたわけです。

 ついでに言うと就任演説にはleveeも出てきます。オバマ氏がアメリカ人の美点としてあげ、それに期待していると述べる

「 It is the kindness to take in a stranger when the levees break, 」

という部分です。当然堤防が決壊する時と言う意味ですが、思わずLed Zeppelinの「When The Levee Breaks」を思いだしてしまったのは私だけでしょうか(笑。

 ちなみに「American Pie」は8分30秒もある大作で、1959年に飛行機事故で他界したバディ・ホリーを悼む歌だという事だけははっきりしていますが、歌詞には暗喩やダブル・ミーニングが数多く含まれ、全貌を知っているのはドンだけだという笑い話まであります。今日の一言に引用したフレーズも実は諸説紛々あります。ちょっとそのサビの部分を紹介してみましょう。

So bye-bye, Miss American Pie.
Drove my chevy to the levee,
But the levee was dry.
And them good old boys were drinkin' whiskey and rye
Singin', This'll be the day that I die.
This'll be the day that I die.

 一行目のキャッチーなフレーズだけで日本でも大ヒットしてしまいましたが、実はこの「American Pie」が何を指すのかさえ諸説あったんです。一時は「American Pie」はバディ・ホリーが乗っていた飛行機の名前だという説が有力でしたが、これはこの歌に関して多くを語らないドン自身が珍しく否定しているようで、結局は典型的なアメリカの可愛い子ちゃんと言う意味に落ち着いているようです。

 二行目は上に述べた通りですが、leveeはパーティ、宴会の事だという意見もあります。確かに辞書には「大統領の歓迎レセプション」という訳が載っています。その場合dryはアルコール抜きのという意味になります。

 にも関わらず、them good old boysは酒を飲んでいるわけですが(笑、この連中が誰かという事も様々な憶測を呼びました。何故

「This'll be the day that I die.」

などと歌っているかがこの歌詞だけでは理解できないからです。単純に「俺たちは今日死んじまうんだ」と訳すると、何らかの社会的事件を暗喩している可能性があることになり、KKKにより虐殺された公民権運動論者のことを指しているんだという意見までありました。
 実は単純に「俺たちゃ死にゃしないぜ」という意味の言い回しだったのに、それを当時の日本人が知らなかっただけ、という見方が今は大勢を占めているようです。それにしても何故そんな事言わなきゃいけないのか、文脈からは理解できませんね。軽快なリズムとメロディで流れていくのでそんなに深く考える暇も無いのですが、つくづく不思議な歌です。

 ちなみにシングル盤はかなりカットされ短縮されていたと思います。おそらくそのバージョンですが、マドンナが「Music」中でカバーしています。

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