2009/10/13

Reflections of Rosemary / Debby Boone

Reflections of Rosemary
 デビー・ブーンと言えばパット・ブーンの娘さんで「You Light Up My Life」のヒットで有名な美人歌手、と言う程度の記憶しか私にはありませんでした。ところが、先日jazzaudiofanさんの「West Coast Jazz Party 2009」というライブ・レポートを読んでおりましたら、そのライブにデビー・ブーンも出演していた事を知り、懐かしさと驚きが相半ばしました。
 デビーがジャズ?とちょっと不思議な気がしたのですが、jazzaudiofanさんの情報によりますと彼女はローズマリー・クルーニー(1928-2002)のご子息と結婚されており、そのライブも義母を偲ぶアルバムからの選曲だったとのことでした。探してみますと「Reflections of Rosemary」という題名でアルバムが出ており、早速購入してみました。余談ですがジョージ・クルーニーは彼女の甥で息子さんではありません。

1. Blue Skies 
2. I'll Be Home 
3. Best Is Yet to Come 
4. I'm So Lonesome I Could Cry 
5. Mood Indigo 
6. It Might As Well Be Spring 
7. Van Heusen Medley: But Beautiful/Moonlight Becomes You/Like Someone in 
8. You're Gonna Hear from Me 
9. It Never Entered My Mind/In the Wee Small Hours of the Morning 
10. I've Grown Accustomed to His Face 
11. Time After Time 
12. Music That Makes Me Dance 
13. You Are There
(14: Hidden Track: Blue Skies Demo By Rosemary Crooney)

 全てロージーが得意としていた、説明不要の有名なスタンダードナンバーばかりです。そしてデビーの素直な歌唱とバックのオーソドックスな伴奏で安心して聴いていられます。
 裏返して言えばやはりポップス歌手の歌唱であって、ジャズ歌手としての歌い回しやスキャット唱法等のテクニックは持ち合わせてはおられないようです。それはデビーの一曲目の「Blue Skies」とロージーの隠しトラックを聴き比べてみれば明らかです。でもそれをカバーして余りまる亡き義母への温かい愛情に満ちていて、本当に心温まるアルバムとなっています。

 ライナーノートにはデビー自身が一曲ずつ思い出を書いておられます。例えば一曲目の「Blue Skies」についてその一部を抜粋してみましょう。

「私の息子ジョーダンはローズマリーさんの初めての孫でした。そして22年間に渡る祖母と孫の関係はとても純粋な喜びに満ちていました。ジョーダンが2歳の時ローズマリーさんは彼に「Blue Skies」を歌い始めたんです、そうしたら彼の喜んだ事!それ以後彼が悲しんだり落ち込んだりしたして励ましの必要な時には必ずと言っていい程この曲を歌ってあげていました。(ゆうけい意訳)」

 ロージーと家族の写真も沢山掲載されていて、それを見ているだけでもほのぼのとします。先程も申し上げたようにコアなジャズファンには物足りないかもしれませんが、それでも買って損の無いアルバムだと思います。なにしろ、デビー、50を超えた今でも大変美しいですしね。

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2009/10/05

PLACE TO BE / 上原ひろみ

プレイス・トゥ・ビー(初回限定盤)(DVD付)
 今日最も脂の乗り切っている(体じゃないですよ^_^;)日本人女性ジャズピアニストの一人、HIROMIこと上原ひろみの新譜です。前作「Jazz In The Garden」はスタンリー・クラーク・トリオ名義のトリオ作でしたが、今回は初めてのソロ・アルバムとなっています。

『上原ひろみの才能は無限だ。と,思わせるほどパーフェクトな出来ばえのソロ・ピアノ・アルバム。正確無比な高速のタッチ,クラシックの香り漂う演奏,悲哀のこもった音楽世界。聴きどころを挙げればきりがないが,いずれにしても上原が唯一無二のアーティストであるゆえんが詰まっている。今年の《東京 JAZZ》で共演予定の矢野顕子がボーカルをつとめたデュオ曲も必聴。(AMAZON解説より)

1. BQE
2. Choux a la creme
3. Sicilian Blue
4. Berne Baby Berne
5. Somewhere
6. Capecod chips
7. Islands Azores
8. Pachelbel's Canon

Viva! Vegas
9. Show City, Show Girl
10. Daytime in Las Vegas
11. The Gambler

12. Place to be
13. Green Tea Farm (Japanese Bonus Track) feat. 矢野顕子』

 彼女は10年に一回はソロアルバムを作りたい、と思っていたそうで、機が熟した時期を迎え満を持して録音したようです。ピアノはYAMAHA CF-IIISです。以前紹介した小曽根真さんのソロアルバムと同じヤマハの最高機種のグランドですが、小曽根さんの音とHIROMIの音は随分違います。
 小曽根さんの方は長いキャリアを経てクラシックに軸足を移しつつあるため、打鍵やペダリングで倍音や反響の余韻を味わいつつ来し方を慈しむ様に弾いていておられました。かたや、HIROMIは初挑戦と言う事で自由闊達に今の自分の思いのたけをピアノにぶつけている感じがします。必ずしもジャズの音ばかりではありませんが、その若さと意気込みがどの曲にも感じ取れて、聞いていて気持ち良いですね。

 ライナーや解説によりますと、題名は「今居るべき場所」という事になりましょうか。曲名からも分かるように、彼女が暮らした町、ライブで回った町の音によるスケッチブックとなっています。1はBrooklyn Queens Expresswayの略で目くるめく様な疾走感溢れるご機嫌なオープニングとなっています。その後
2: フランス、
3: シシリア島(前作にも収録、聞き比べると面白い)、
4: ベルン、
5: NY(オスカー・ピーターソンへのオマージュらしいです)、
6: ボストン(Capecod chipsは5年間暮らしたボストンの名物料理)、
7: アゾレス諸島、
8: ドイツ、
と巡って行き、9~11は憧れの地、いつかはここで弾きたいとの強い思いを持ってラス・ヴェガスを組曲としています。このアルバムのクライマックスと言えましょう。

 そしてアルバムの題名にもなっている「Place To Be」に関してはHIROMIは

"Everyone is looking for the place to be.Where is mine?Where is yours?I believe life is like a big journey to find the place to be."

と記しています。聴く人各々が自分の居るべき、或いは思い出のある場所を思い浮かべながら聴くと心に響いてくると思います。私の場合はこの曲が映画「オリオン座からの招待状」の主題曲だった事もあり、小さい頃親がやっていた映画館を思い出していました。

 日本盤ボーナス・トラックの13はずばり茶畑、彼女の故郷静岡ですね。念願だった矢野顕子との共演を果たし、あっこさんのボーカルも入っております。好きな人にはたまらないサービスですが、どうも私はあっこさんのボーカルは(大汗(^_^;)。

 と言うわけで、素敵なソロ・アルバムを作ってくれました。神館和典氏のライナーによると、

「2日間のレコーディングは朝から深夜まで行われた。わずか2日で13曲!想像を超える体力と集中力でひろみは何度も鍵盤と向き合った。2日間の休憩は食事を5分ずつ2度だけ。おそるべし、上原ひろみ!」

だそうです。1950-60年代の天才肌のミュージシャン並の入魂振りですね。上原ひろみの20代の集大成、多くの方に聴いていただきたいアルバムだと思います。

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2009/04/20

Jazz In The Garden / The Stanley Clarke Trio

ジャズ・イン・ザ・ガーデン
 スタンリー・クラークの新作は、驚いたことに彼の長いキャリアの中で初めてのフル・アコースティック・アルバムだそうです。と紹介するよりも、日本のファンにはHIROMIこと上原ひろみの新譜だよ、と紹介した方がそそられるかもしれませんね。

The Stanley Clarke Trio
Stanley Clarke - Acoustic Bass
Hiromi - Piano (Yamaha)
Lenny White (Drums)

1. Paradigm Shift (Election Day 2008) 
2. Sakura Sakura 
3. Sicilian Blue 
4. Take the Coltrane 
5. 3 Wrong Notes 
6. Someday My Prince Will Come 
7. Isotope 
8. Bass Folk Song, No. 5&6 
9. Global Tweak 
10. Solar 
11. Brain Training 
12. Under the Bridge 
13. L's Bop (Japanese bonus track)

 桜(?)の花の前で3人が和やかに微笑んでいるように、演奏も終始3人の息がぴったり合っています。特に年長の二人のリズム・セクションは長い付き合いでもあり、完璧そのもの。それに30歳ほどの年の差のあるHIROMIがうまく入り込んでいるという印象。さすがの才媛です。

 個人的にはこの面子を見た時には当然ながらRTF(リターン・トゥ・フォーエヴァー)のような音楽を期待したのですが、今回は完全にアコースティックのみで、商品説明曰く「ストレート・アヘッド・ジャズ」です。もちろんどの曲の演奏もクオリティは高く凡曲は無いのですが正直なところ

随分エンジンのかかりが遅いアルバム

だなあ、という第一印象でした。あくまでも素人の意見ですが、ベストテイクと思えるのが10~12あたりで、それまでが少々退屈なんですね。

 1でオバマ大統領を祝し、2で日本に敬意を表する、なんて事をこのアルバムを聴く人が本当に期待しているんでしょうか?3でようやくHIROMIのオリジナルが出てきますが、随分地味でオーソドックスなトリオ演奏です。わざわざHIROMIが書かなくても?と言う感じもしますが、今後へのステップと捉えているんでしょうか。

 そんなややかったるい感じをひきずりつつスタンダード演奏が続き、HIROMIは7あたりから、スタンは得意の8あたりからようやくエンジンがかかりはじめ、9,10で二人が熱くなり、HIROMIのオリジナル曲11「Brain Training」でとうとうクライマックスを向かえます。12はレッチリのカバーでHIROMIの個性が全開、ライブで言うとアンコール曲という感じです。なお、12は日本盤のボーナス曲でレニーのドラムをサービスと言ったところです。

 はっきり言ってスタンのリーダーアルバムという形を取ってはいますがHIROMIのファン層を購買のターゲットにしているはずです。そういう意味ではこんな堅苦しい構成にせずに最初からHIROMIのはじけっぷりを見せたほうが良かったんじゃないかと思いますね。或いはこれが最初の挨拶代わりで、次はRTFをアヴァンギャルドにしたようなアルバムを作ってくれるのならば嬉しいですが。

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2009/03/23

Tarantella / Lars Danielsson

タランテラ
 スウェーデンの名ベーシストLars DanielssonACTレーベルでの5枚目となる素晴らしい新作がリリースされました。彼が見出したポーランドの天才ピアニストLeszek Mozdzerとのデュオ・アルバム「Pasodoble」を以前紹介しましたが、今回はそのLeszekの他に新たにトランペット、ギター、ドラム三名のミュージシャンを加え、非常に多彩で美しい演奏を展開しています。

1: Pegasus
2: Melody On Wood
3: Traveller's Wife
4: Traveller's Defense
5: 1000 Ways
6: Ballet
7: Across The Sun
8: Introitus
9: Fiojo
10: Tarantella
11: Ballerina
12: The Madonna
13: Postludium

Lars Danielsson (double bass, cell, bass violin)
Leszek Mozdzer (piano,celesta,harpsichord)
Mathias Eick (trumpet)
John Parricelli (guiter)
Eric Harland (drums,percussion)

 本アルバムでのLarsの作曲および演奏は今までにも増して素晴らしいと思います。Leszekとの関係が成熟した事を受けて、更に一歩進んで自らの持てる才能を意欲的に発揮している印象を受けました。良く歌うベースは勿論のこと、チェロやバス・ヴァイオリンの演奏にも驚きました。特に3「Traveller's Wife」でのチェロ独奏は鳥肌が立つほど美しく感動的です。

 新たに加わったアーチストも無名の人ばかりですが、素晴らしい才能の持ち主ばかりです。1「Pegasus」でのMathias Eickのミュート・トランペットが醸し出すブルージーでいながらやはりどこか北欧的な清冽な雰囲気が冒頭から早くもこのアルバムの素晴らしさを予見させます。ギターのJohn Parricelliも東欧的雰囲気を持つ8「Introitus」で印象的なギターを聴かせ、ただ一人の黒人であるEric Harlandも黒人ならではのパーカッションのセンスが活きた5「1000 Ways」、10「Tarantella」や才能全開の12「The Madonna」でのドラムプレイで見事Larsの期待に応えています。それにしてもLarsはもうすっかりアメリカにおけるCharles MingusやDave Hollandのような、若手育成の役割を担うヨーロピアン・ジャズの中心人物となりましたね。

 そしてやはり最後に特筆すべきは私一押しのLeszek Mozdzerのピアニズム。このアルバムに於いても鮮烈な印象を残しています。冒頭の「Pegasus」から2「Melody On Wood」の流れに於いてヨーロピアン・ジャズのエッセンスを見事に提示し、13の「Postludium」でのLarsとのインタープレイで静謐な美の世界を織りなして最後を締めくくるまで、ありとあらゆるタッチに聴き惚れてしまいます。二人のインタープレイは既にバーチュオーゾの域に達した事をどの曲でも実感できました。
 先ほどLarsがDave Hollandに比肩しうると述べましたが、その伝でいえばLars&LeszekはHolland&Gonzalo Rubalcabaに勝るとも劣らないコンビであると思います。

 早くも今年最高のジャズアルバムの一つであることを予感させる傑作です。ぜひどうぞお聴きください。

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2009/02/12

Upojenie / Anna Maria Jopek & Friends with Pat Metheny

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Upojenie

 ポーランドの歌姫アンナ・マリア・ヨペクの2003年のアルバムで、パット・メセニーがプロデュースしています。リンク先はメセニーの名義で高音質で有名なNonesuchレーベルから出ているUS盤ですが、私が聴いているのは実は帰省しておられたオラシオさんに頂いた正真正銘のポーランド盤です、思いがけない嬉しいプレゼントでした、ありがとうございます。

 オラシオさんもおっしゃってましたが、本当にメセニーはどこにでも顔を出す人ですね~。AMAZONのリンク先のレビューにもありますが、メセニーのカバー曲が数多く収録されております。始めのうち気がつかなくて「Still Life」「Offlamp」の頃のシンセギターに似てるなあと思っていたら. So May It Secretly Begin、Are You Going  With Me?なんかもしっかりカバーされていたのでした。

 残念ながら私はポーランド語は分かりませんが独特の浮遊感と妖艶さを感じるボーカルで気持ち良くメセニーの音楽世界を東欧色に塗り替えています。また、アルバムタイトルの「Upojenie」はアンナのオリジナルですが、ボーカル、サックスとメセニーのアコギ、シンセギターがとてもマッチしていて素晴らしいです。ちなみに「Upojenie」は虜と言う意味だそうで、まさに虜になりそうな雰囲気です。

 サポートする「Friends」もオラシオさんの折り紙付きの凄腕ポーランド・ミュージシャンばかりで、なんとあの超絶技巧ピアニストLeszek Mozdzerも参加してます。メセニーの「Travels」に入っていた「Farmer's Trust」のカバー「By On Bye Tu」なんか最高ですね。

 ヨペクのリンク先の公式HPで試聴もできますのでヨーロッパ・ジャズファンもメセニーファンも是非ご一聴を。

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2009/02/03

ANIMATO / John Abercrombie

Animato
 ギタリスト、ジョン・アバクロンビーの1989年の作品のリイシューですが、先日まことさんが紹介しておられて興味をひかれたので買ってみました。

1. Right Now 
2. Single Moon 
3. Agitato 
4. First Light 
5. Last Light 
6. For Hope Of Hope 
7. Bright Reign 
8. Ollie Mention 

John Abercrombie (g, g-synth)
Jon Christensen (ds, perc)
Vince Mendoza (composer and synth)

 先ずは何と言ってもジャケットが良いですね(笑。ECMの美意識を感じさせる素晴らしい意匠だと思います。にもかかわらず、このリイシューは作りが安っぽくてディスクが取り出しにくい。ECMもキースに金をかけすぎなんじゃないでしょうか(苦笑。

 ジョンはECM系のギタリストの代表的な人で、内省的で静かなサウンドが特徴的ではありますが、もちろん早弾のフレーズも結構聴かせる人です。最近の作品ではチャールズ・ロイドの「The Water Is Wide」でのサポートがとても印象に残っています。写真を見て、こんなおっさんだったのかとも思いましたが(^_^;)。

 さてこのアルバムではヴィンス・メンドーサが大半の作曲とシンセを担当しており、その柔らかいサウンドウォールの前でジョンとヤンの二人が演奏していると言う印象を受けます。ジョンのギターシンセの音がパット・メセニーの「Watercolors」の頃の音に似てるのがちょっと気になりますが、淡色系の水彩画を見ているような美しい曲が並んでいます。ジョンとヤンのインタープレイがややハードな1、ECM的美意識が溢れ出ている7から8への流れなどが特に聴きどころだと思いますね。

 もちろんじっくり聞き込めば利き所はここかしこにありますが、そうでなくともナイトキャップ代わりやドライブのBGMにもお勧めの一枚です。

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2009/01/29

Out Of Track / Giobanni Mirabassi

新世紀~Out of tracks~
 以前20万ヒット記念企画で取り上げさせていただいたジョバンニ・ミラバッシの新譜です。ミラバッシと言えば澤野工房、かと思いきや、ビデオアーツに移籍してのアルバムとなっています。大阪から東京へなんて吉本の芸人じゃあるまいし、なんて突っ込みたいところですが、一体どんな事情があったんでしょう。題名は澤野工房と言う旧来の軌道(track)から離れますという決意表明なのでしょうか?

1. ディア・オールド・ストックホルム 
2. ピエラヌンツィ 
3. 南へ帰ろう 
4. アローン・トゥギャザー 
5. ル・シャン・デ・パルチザン 
6. ジャスト・ワン・オブ・ゾーズ・シングス 
7. ズーム 
8. インプレションズ 
9. スーヴェニア・スーヴェニア 
10. ヒアズ・トゥ・ユー・イントロ 
11. ヒアズ・トゥ・ユー 
12. コンヴィテ・パラ・ヴィーダ 

Giovanni Mirabassi (p)
Gianluca Renzi (b)
Leon Parker(ds)

 まずはミラバッシのピアノ、快調です。胸のすくような流麗なフレーズもヨーロッパ的陰影のあるメロディラインも健在です。jazzaudiofanさんが2008年ベスト・ジャズ・インスト・ディスク7位に挙げられていたのも頷けます。
 選曲も面白いです。ピアソラの「南へ帰ろう」のカバーは特に素晴らしい。また、「Avanti!」に収録されていた「パルチザンの歌」を再演したり、ジョーン・バエズの「Here's To You」を取り上げたりするところなど、やはり政治的メッセージ色の強い曲が彼は好きなのかなと思ったりもします。

 ちなみ「Here's To You」は「死刑台のメロディ」という映画の主題歌で、当時私は映画館で観たのですが、今では当たり前のエンドロールで主題歌が流れるという構成が斬新で、バエズの「Here's to you Nicola and Bart」と言うフレーズが脳裏に焼き着いてはなれませんでした。
 ちなみにこの映画の時代は日本洋画史の汚点と言われる「洋画邦題メロディ乱発時代」で、「小さな恋のメロディ」にあやかれとばかりトホホな題名をつけられた傑作が次々と話題にもならず埋もれていきました。この「死刑台のメロディ」も例外ではありません。
 原題は「Sacco and Vanzetti」と言う二人の死刑囚の名前で、1920年代に起こった有名な「サッコとヴァンゼッティ事件」を映画化したものです。赤狩りと人種偏見に根ざした思想的偏見に満ちた裁判により死刑になった二人のイタリア人を描いた傑作映画ですから、イタリア人のミラバッシが取り上げるのは当然かもしれませんね。イントロと本編に分けて2曲構成としているところなど、力の入れようが他曲とは全然違いますね。

 閑話休題、トリオについてですが、ベースもドラムもところどころではソロを取って存在を主張しますがあまりインタープレイ的にミラバッシに絡むところはなく、良く言えば出しゃばりすぎず、悪く言えばお飾り的な穏当な演奏に終始しています。あくまでもミラバッシのピアノを聴くアルバムと言えるでしょう。

 最後に音質ですが、う~ん、まあまあ(苦笑。やっぱり澤野工房の方に一日の長がある感じがします。

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2008/06/11

Chopin Impresje / Leszek Mozdzer

Chopin_impresje1
 ポーランドの天才ピアニスト、レシェク・モジュジェルのショパン集です。先に言っておきますが、すんごいアルバムですよ~(煽。前記事で紹介したザビエル・レコードで運良くゲット出来たのですが、そんなに在庫はないと思うので早いもん勝ちです!

 モジュジェルについては先日紹介したラーシュ・ダニエルソンとのDUOアルバムで初めて知ったのですが、毎度お馴染みオラシオさんのブログからは

「レシェクの真の実力はこんなものではない」

という雰囲気がプンプン漂っております(笑。という訳で探しまくってとりあえずこれを見つけたわけです。

Leszek Mozdzer(p)
Tomasz Stanko(tp)*
Zbigniew Namyslowski(sax)**

1. Mazurek C Op.24 Nr 2
2. Nokturn F Op.15 Nr 1
3. Etiuda Ges Op.25 Nr 9
4. Nokturn G Op.15 Nr 3
5. Mazurek A Op.17 Nr 4
6. Preludium As Nr 26 (My Secret Love)
7. Preludium A Nr 7
8. Etiuda A Op.25 Nr 4 (Segments)
9. Mazurek F Op.68 Nr 3
10. Nokturn F Op.15 Nr 1 (2nd Version)*
11. Nokturn Fis Op.48 Nr 2
12. Mazurek G Op.24 Nr 1**

『ポーランドと言えばショパン、ピアノといえばショパンということで、ポーランドのピアニストがショパンを弾くのは至極当然といえば当然の事。というわけで、現代ポーランドジャズ界の奇才ピアニストLeszek Mozdzerがショパンと真っ向から向かい合い、掟破りのアレンジ攻撃を繰り広げている作品。(ザビエル・レコード解説より)』

 クラシックの世界ではショパンは汎世界的題材であるわけですが、ポーランドにあってはジャズピアニストにとっても避けて通れない課題のようです。そう言えば以前紹介した、同じレシェクはレシェクでもクワコウスキさんの方もライブでショパンを取り上げていましたね。。。あっ、読み返してみるとそこにも「早いもん勝ち」と書いてあるわ(爆。(→熱しやすく醒めやすいB型なので全然覚えてない)

 閑話休題、曲目はマズルカ、ノクターン、プレリュード、エチュードの中から選曲してありますので、クラファンには耳馴染みの曲ばかりでしょう。かく言う私もショパンだけは色々と持っておりまして、ルビンシュタインポリーニアシュケナージなどの大御所、鬼才アシャナシエフ、そして上述のジャズ畑からクワコウスキさんなど、色々聴き比べてみました。

 いやあ、DUOという制約から解き放たれたモジュジェルさん、凄いっ!クラシックと違って解釈が自由なジャズだけあって、右手の装飾音符の豊かさ、華麗さ、自由闊達さには鳥肌が立ちます。それでいて基礎的なテクニックが確固たるものである事は私でも明瞭に聞き取れます。彼は5歳から18歳までクラシックを研鑽していたそうですが、その間相当ショパンを弾きこんでいたんでしょうね。さすがにルビンシュタインやポリーニの演奏と聴き比べると若いなあとは思いますが、まあこの二人と比べる方が野暮ですね(笑。

 全体的な印象としては、6にチャーリー・パーカーの主題を取り入れたというクレジットなどもあるのですが、前回同様ブルース的コード進行やジャズ的なノリは希薄で、クラシックの作法を濃厚に残した流麗且つ透明な寒色系の音調です。
 例えば5のマズルカ17-4。実はこの曲、クワコウスキさんの「ショパン」の時にもアシャナシエフと聴き比べてます。今回改めて三者を聴き比べてみると、クワさんのブルース色の強い事強い事(笑、こちらは完璧にジャズのノリです。それに比べるとモジュさんのジャズ色は希薄で、段違いにスピードが違うとは言え曲を自己解釈して解体してしまうことで有名なアシャナシエフさんにむしろ近い、現代音楽的な印象を受けます。

 そんな彼の本領が発揮されるのはやはりマズルカだと思います。

「ポーランド人の血が騒ぐのよ(by 未知やすえ姐さん)」(^_^;)

 ポーランド民衆の舞踏音楽を純粋芸術の域にまで止揚したのがショパンのマズルカ、と言われていますが、それを更に現代のポーランド風に解釈すればこうなるのではないか、という彼の主張がとても明快に出ていると思います。
 17-4、24-1,2、そして晩年の68-3を取り上げていますが、特に24が素晴らしいです。マズルカ24-2は一曲目に持ってくるだけあって彼自身相当自信があるのでしょう、原曲の雰囲気を留めつつも押さえようのないイマジネーションに任せて自由奔放なソロが展開していく様は圧巻です。迷うことなくこのアルバムのベストテイクに推します。
 一方押さえとしてラスト曲にマズルカ24-1を配置するところなど、余程24番が好みとみえます。こちらではこれまたポーランドジャズ界の至宝、「ナミさん」ことズビグニェフ・ナミスウォフスキの感動的なサックス演奏も聴けます。

 これを聴いていると、最近の若いクラシックのピアニストのマズルカ全集を聴いてみたくなります。しかし、私こちら方面の知識がないんですよね~(涙。以前レコ芸で江崎昌子さんのマズルカ全集が特選になっていたような記憶がありますが、ご存知の方がおられたらどうか教えてくださいm(__)m

 というわけで、クラシックファンでも現代音楽まで許容範囲内にある方なら文句なく楽しめるアルバムだと思います。むしろカチカチのコアな4ビート・ジャズファンにはお勧めできないような音楽性だと思っていただいて結構です。
 ポーランド国内での録音なので前回紹介したACTレーベルよりは若干音質は劣るかもしれませんが、決して悪くはありませんのでオーディオファイルでもそれ程がっかりはしないと思います。是非どうぞ。

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2008/06/01

Pasodoble / Lars Danielsson & Leszek Mozdzer

Pasodoble
  ポーランドはさすがショパンを産んだ国だけに、ジャズの分野においても天才的なピアニストを多く輩出しています。とはいえ、本邦では情報がなかなか手に入れにくい事も事実。そこで頼りになるのがポラジャズを語らせれば右に出るものの無いオラシオさんのブログです。
 そのオラシオさんが今一押しの新世代のピアニストがLeszek Mozdzer (zの上にドットがつきます、レシェク・モジュジェルと読むそうです)だそうです。オラシオさんの論評によると

「キース・ジャレットや故ミシェル・ペトルチアーニらの孤高のピアニズムに比肩する実力を持っている存在と言ってもいい」

そうで、これは聴かねばと思い、まず比較的容易に手にはいるこのDUOアルバムを購入してみました。とはいえ、アマゾンで海外のディーラーに申し込んでドイツから送られてくるまで半月くらいかかりましたけど(苦笑。スウェーデンの高名なベーシスト、ラーシュ・ダニエルソンと組んで製作された「Pasodoble」です。

1. Praying (LD)
2. Fellow (LD
3. Entrance (LD)
4. Prado (LD)
5. Pasodoble (LD)
6. Daughter's Joy (LD)
7. It's Easy With You (LM)
8. Hydrospeed (LM)
9. Reminder (LD)
10. Innocence 91(LM)
11. Follow My Backlights (LM)
12. Eja Mitt Hjrta(trad arr by LD)
13. Berlin (LD)
14. Distances (LM)

 以上のようにラーシュがアレンジを含めて9曲、レシェクが5曲と今回の主導権はやはり大物の方のラーシュにあるようです。出だしからしてベースの音圧がやけに大きく、ベース主体のアルバムかなと思わせます。ベースをブリブリ言わせたいオーディオファイルにはぴったりかもしれませんね。余程オンマイクで取ってるんだろうかとも思いましたが、唸り声や息遣いが殆ど聞こえてこないので、おそらくピックアップを使っているんでしょう。

 それに対抗すべくピアノの音圧も結構高めに録音されていて、両者とも音像は大きめ、そのあたりの好き嫌いはオーディオファイルの中にもあるんじゃないかと思います。私はもう少し自然なライブ感覚で録音して欲しかったですけどね。

 しかしそれより何より二人のテクニック、曲の素晴らしさ、そして熱い交感には素直に感動します。ライナーノートによると二人はラーシュのアルバム発表後のライブツアーで初めて出会い、二人ともが

「このプレーヤーこそが自分にとって理想の共演者だ」

と感じたそうで、このアルバムはいわば必然として出来上がったものなのでしょう。どちらかと言えば暖色系のラーシュと、対照的に寒色系のレシェクのバランスが、演奏に於いても曲の配列に於いても絶妙です。

 全体を通しての印象としては、ビートやノリと言った本場アメリカ的要素よりも、透明感のあるリリシズム溢れる旋律を重視した、ECM系のヨーロピアンジャズの系譜に入ると思います。もちろんただ単に耽美的なアルバムではなく、ジャズらしいスリリングな展開も随所に見られますし、ラーシュはベースのほかにチェロも弾き、アルコ奏法もあちこちに導入してメリハリをつけています。、一方でレシェクもチェレスタやハーモニウムを併用しており、これもベースと良く合っています。
 

 さて、レシェクの演奏!最初はそれほど凄いとは思えないんです。何故かと言うと、一音一音がクリアで音の分離がきれいな打鍵であるために、ぱっと聴くだけではゆっくりと弾いているようにしか思えないんですね。クラプトンではありませんがピアノの「スローハンド」(笑。しかし聴き込むにつれて次第にこれは凄いテクニックと抜群のセンスを持ったピアニストだなと分かってきました。
 彼は5歳からピアノを始め18歳でジャズに出会った、とライナーに書いてありますから、その間はクラシック畑を歩んできたのだろうと思います。それが正確なタイムキープ、一音一音が端正でかつクリアな打鍵、フォルテッシもからピアニッシモまでの強弱の正確さなどのしっかりとしたテクニックの基礎になっているものと思います。

 そんな彼の真価が発揮されているのは何と言ってもタイトル曲の「Pasodoble」でしょう。この題名の意味は分かりませんが、最初レシェクが数小節曲のテーマを弾いてラーシュにソロを受け渡します。そのラーシュが持てるテクニックを駆使して見事な演奏を展開した後、ソロをレシェクに返してからの演奏が凄い!目くるめくとはこういうことを言うのでしょうか、あえて例えるとキース・ジャレットが神がかった時のソロ演奏の右手がレシェク、左手のサポートがラーシュ、とイメージしていただければ当たらずとも遠からずだと思います。

 レシェク自身の作品も7,11などとても面白いと思いますが、本国では「New Chopin」と形容されるほどの人気作曲家だそうで、真の実力はまだまだこんなものではないんでしょう。繰り返しになりますが初DUOアルバムでこれだけの作品を仕上げてしまうとは本当に驚異的なユニットだと思いますが、是非レシェクのソロアルバムも聴いてみたいと思います。

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2008/03/04

Avanti!/ Giovanni Mirabassi (3)

Imagine
(Imagine/John Lennon 1971 and The pacifist demonstration in front of the Pentagon,1967)

はむちぃ: さて皆様記念企画も大詰め、「AVANTI!」レビュー各論後半に参りましょう。
ゆうけい: こんなレビューおもろないわい!のお声も無く、感謝感激雨あられm(__)m
は: 人生幸郎師匠ですかあんたは、この~泥亀っ!
ゆ: ごめんちゃい!と言うわけで軽い準備運動も終わりましたので(笑、最後までがんばっていきまっしょい!

9: A Si M'Bonanga (Johnny Clegg)
  写真:ケープタウンの平和大行進、1989年9月13日

は: ここへ来て初めてゴスペル調のメロディが流れてまいりました。題名はズールー語で「我々はまだ見ていない」と言う意味だそうでございます。まだ自由を、正義を、平和を見ていないという意思が込められておりまして、27年間投獄されていたNelson Mandela氏の釈放を祝う賛歌であり、亡くなったSteve BikoVictoria MxengeNeil Aggettへの挽歌でもあると解説されております。
ゆ: ゴスペル調で反アパルトヘイトとなると当然黒人の曲かと思ってしまいますが、実はこの曲ホワイト・ズールーと呼ばれた白人のロックミュージシャンジョニー・クレッグが作ったものです。南アフリカの音楽シーンでマンデラ氏シンパとしては黒人トランペッターヒュー・マセケラが有名ですが、彼も良い曲を書いているんですね。
は: 同じ白人で英国音楽シーンの大御所ピーター・ガブリエル様もご自身のアルバムで「BIKO」と言う曲を書いておられますね。
ゆ: おおび~こびこびこ~ずび~こ~♪、サード・アルバムに入っていて彼の代表作の一つですな。彼はその後も世界の音楽活動をサポートしていきますが、マンデラ財団の活動などでクレッグとも同じステージに立っていますね。

10: La Butte Rouge (Rene Tybh- Montheus)
  写真:第一次世界大戦、シャンパーニュ地方バポームの丘の攻防戦、1915年9月25日

は: ここで少し時代は遡りまして第一次世界大戦の反戦歌が流れます。
ゆ: 見開き一杯に展開する兵士の写真は最も激しい攻防を繰り広げた所謂「ソンムの戦い」時のシャンパーニュ地方の映像でしょうか。もやしもんを読んでああノンアルコールワインが飲みたいだなんだ言ってる今からは想像もつかない時代があったということですな。
は: それを知るのも歴史の勉強でございましょう、それにしてもこれもまた反戦歌とは思えないほど美しく穏やかな演奏でございますね。
ゆ: さすがシャンソンの国フランスと言ったところですね、題名は「赤い丘」と言う意味だと思うんですけど、そういう題名の曲をイブ・モンタンか誰かが歌っていたような記憶がありますね。

11: Addio Lugano Bella (Pietro Gori)
  写真:ミハイル・アレクサンドロヴィッチ・バクーニン

は: 更に時代を遡りまして無政府主義者のバクーニンが出てまいりました。
ゆ: アラゴンと言いバクーニンと言い通好み(^_^;)というかなんというか、一体どういう人選なんでしょうか(苦笑。と言ってもまあ曲で選んでいるわけなんですが。
 と言うわけでこの曲、同じくアナキストで法律家でもあり詩人作曲家でもあったというPietro Goriと言う人がバクーニンに捧げた曲だそうで、これがまた壮絶に美しいですねえ。思わず聞き惚れてしまいました。「アナーキー・イン・ザ・UK」とは対極にあるような曲です(笑。
は: 題名は「さようなら愛しのルガーノよ」と言う意味で、ルガーノはバクーニンが最後に暮らした土地だそうです。そういう哀悼の思いが込められているんでしょうね。

12: Johnny I Hardly Knew Ye (trad.)
  写真:ハンガーストライキに入ったシン・フェイン党員受刑者に祈りを捧げるため刑務所の前に集まった民衆を制止する警察のバリケードライン(1981年、おそらく)

は: ここでアイリッシュ・トラッドが突然出てまいりました。
ゆ: アイリッシュ・トラッドって妙に懐かしいメロディラインを持っているんですがこれもそうですね、どこかで聞いたなあという親近感が持てます。
は: ブックレットによりますと元々はアイルランドの反戦歌であったものを、後年アメリカにおいてパトリック・ギルモアが「When Johnny Comes Marching Home」と言う勝利の歌に改変してしまったそうでございます。
ゆ: 困った奴ですな、ギルモア博士(違。南北戦争のときにやたら凱旋歌として歌われてポピュラーになってしまったんですが、見開き一杯の写真はアイルランド独立運動に関するものですね、年代の記載がないんですがボビー・サンズ等のハンガーストライキは1981年ですので恐らくその時の映像ではないかと思います。

13: Bella Ciao (trad.) 
  写真:イタリアのファシストデモ、1930年代

は: またまたパルチザンの歌に戻りまして、これはイタリア版でございます。「恋人よさようなら」と言う題名で有名な曲ですね。
ゆ: 恋人よ~さようなら~季節は巡ってくる~けれど~あの日の二人~宵の流れ星~、、、お~いはむちぃ君、なんで止めてくれんのだ(^_^;)。
は: やるやると思ってたら案の定、、、(ーー;)、それは五輪真弓様でございましょ!
ゆ: スマソ、元々は前回も出てきた「田植え女」の歌だったそうですが、第二次大戦中に反ファシズム運動家が1942年にこの曲に詞をつけてパルチザンの歌となった経緯があるそうです。

14: Imagine (John Lennon)
  写真:ペンタゴン前の平和主義者のベトナム反戦デモ、銃口に花を挿すデモ参加者、1967年

は: ここで突然ジョン・レノン様登場~でございます。
ゆ: 写真もこれまた有名な「銃口に花を挿す青年」ですしね、曲、写真共にこのブックレットの中で最も有名なものだと思いますからちょっとコラージュしてみましたが、やっぱりこの曲を目玉としている解説や感想が多いですね。
は: おや、ジョン様命のご主人様にしては冷めた態度でございますね。
ゆ: イマジンばかり有難がる薄っぺらい風潮にはさすがに疑問を感じますね。このアルバムに関して言えば、これだけ他に優れた曲があればわざわざこの曲を目玉にすることも無いと思いますし、恐らくGMも本意ではないでしょう。
は: 確かにそうですね、他の曲と比べて特別力を入れていると言う雰囲気も無く、全体の流れを考えてさらっと流している印象さえありますし。
ゆ; 感動的なイマジンのピアノ・ソロを聴きたければ、例えばゴンザロ・ルカルカバがチャーリー・ヘイデンの尽力でキューバからアメリカへ出てきた時のライブなんかが良いと思いますよ。

15: My Revolution (Giovanni Mirabassi)

は: GM様のオリジナルでございます、決して(以下略)!
ゆ: わ・か・り・は・・・・、機先を制されてしまったorz
は: orzは久しぶりでございますね(シレッ(-_-)
ゆ: はむちぃ君強くなったのう(゜o゜)(遠い目)、さてそれはさておき、この曲にかける彼の熱意が伺える演奏ですね。強い打鍵のワンノートが響き渡る導入部は心臓にドスッと応えました。
は: 全て白黒写真で統一されたデザインの中、この項だけ赤と黒のコントラストも鮮やかで目を引きますね。
ゆ: 全くですね、赤に特別な意味を込めているわけではないんでしょうけど見事な意匠だと思います。彼のライナーノートも、前回はむちぃ君が表現したように「ステートメント」と称していい内容で、是非手にとって読んでいただきたいですね。

16: Plaine, Oh Ma Plaine (Knipper - Goussev)
  写真:第二次世界大戦、スターリングラード包囲戦でのロシア軍兵士、1942年

は: さてようやく最後の曲にたどりつきました、この曲の題名は「愛する草原よ」と言う意味で、第二次世界大戦中のソ連軍を鼓舞し、その後長く赤軍コーラスの代表的なレパートリーとして親しまれておりました。
ゆ: 早い話が「ポーリュシカポーレ」ですね。スターリングラードの攻防戦と言えばショスタコの交響曲第7番と言う名高いクラシック曲もございますが、人口に膾炙していると言う点ではこの曲のポピュラリティは圧倒的ですね。
は: GM様の演奏も最後を飾るにふさわしい劇的な盛り上がりを見せますね。
ゆ: 本当に鬼気迫る気迫を感じますね、この演奏は本当に凄いです。実は何の興味も無く横で食事をしていた娘が、この曲が流れた途端に目が点になって微動だにせず聴き入ってしまったんですよ、それくらいの吸引力のある演奏と言うことですね。
は: 普段ご主人様のソフトには鬼ちゃん以外何の興味も示されないのに、真剣にジャケットを手にとって見つめておられましたね。
ゆ: 耽美派には1、シャンソン派には2~4の流れもはまるかもしれませんが、これがまず間違いなくこのアルバムのベストテイクだと思いますね。往年の歌声酒場でこんな演奏をしたら凄いことになるんじゃないでしょうか(笑。

は: 最後に思いっきり盛り上がりましたところで、全曲のレビュー終了でございます。最後に一言ご主人様お願いいたします。
ゆ: 皆様の購買意欲をどれほど刺激できたかどうかは分かりませんが、個人的には「映像の世紀」を「音楽」で振り返ることが出来、楽しくレビューできました。k1xv1x様まことにありがとうございました。
は: ありがとうございます。はむちぃメもなんとか大役を果たし終え、思い残すことはございません(ToT)。

ゆ: ちょ~っと待った~!!(古
は: やっぱり(--〆)。で何でございます?
ゆ: 実はブックレットの最初のページは見開きになっているんですが何の説明も無く曲も付随していないんですね。
は: そう言えばそうでございますね、アメリカの1964年の映像で警官隊と黒人がにらみ合っているところを見ると当時盛り上がっていた黒人公民権運動でございましょうか。
ゆ: おそらくそうでしょうね。それにしても、GMはどうしてこの写真を載せてしかも曲をつけなかったんだろうねえ。What's Goin' On? なんてフェイクはともかくとして、マーチン・ルーサー・キング牧師やマルコムXなど、歌の題材には事欠かないと思うんだけどね。
は: 「I HAVE A DREAM !」 と言うステートメントなんじゃないでしょうか。
ゆ: ゲゲッ、はむちぃ君、何と言うハイブラウな返しを(驚愕

は&ゆ: 私には夢がある、だから前へ!AVANTI!

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2008/03/03

Avanti!/ Giovanni Mirabassi (2)

Pinochet
(Augusuto Jose Ramon Pinochet Ugarte, 1915-2006)

はむちぃ: さて「AVANTI!」レビューの二回目は各論に入ってまいります。
ゆうけい: 16曲ございますので半分に分けて先ずは1~8曲目をレビューいたしましょう。

1: El Pueblo Unido James Sera Vecido (Sergio Ortega - Eduardo Carrasco)
  写真:アウグスト・ピノチェト、クーデター直前、1973年

は: さて一曲目ですが、不安に満ちたマイナー和音の連打で始まります。革命歌集という事もあり思わず身構えてしまいますが、その後驚くほど美しい旋律が流れ始めるのにはびっくりいたしました。
ゆ; 何も言われないで聞いたら晩年のビル・エヴァンスの諦観に満ちたマイナー曲かと思ってしまいますね。本当にサンチャゴに雨が降る情景が目に見えるようです。

は: 「サンチャゴに雨が降る」はチリ社会主義人民共同派(アジェンデ派)と右派軍部(ピノチェト派)の凄絶な戦いを描いた映画でございましたが、まさにその渦中の1973年に生まれた曲でございますね。
ゆ: セルヒオ・オルテガによって作られた名曲ですね。題名は「団結した人民は決して敗れない」と言う意味ですが、当時日本では「不屈の民」の題名で知られていたように記憶しています。
は: この曲の成り立ちがブックレットに記載されておりますが、オルテガ様が路上で歌われている曲を聴いてお作りになったとか。
ゆ: 漁った資料を参考にもう少し詳しく解説しますと、1973年7月、ピノチェトの軍事クーデターの少し前、サンチャゴの財務省前広場で一人のストリート・シンガーが革命歌を歌い叫ぶ様に心を動かされたらしいです。後日、2・3人の仲間がオルテガの自宅に集まった際にその曲を思い出しピアノで弾いて出来上がったのがこの曲で、僅か二日後にはその曲は超満員の観衆の中、キラバジュンによって演奏されたそうです。もちろんストリートで歌い叫ぶシンガーも心を動かすでしょうけれど、後年まで残る名曲として完成させたオルテガも立派です。

は: にも関わらずアメリカの後押しもありピノチェト政権が誕生しその後数々の虐殺が起こりますね。
ゆ: ビクトル・ハラもその犠牲者の一人でしたね。ザ・クラッシュはアルバム「サンディニスタ!」の中でそれを告発し、スティングはソロ第二作「ナッシング・ライク・ザ・サン」に2曲ピノチェトの虐殺を告発する曲を収録しています。そのうちの一曲が名作「フラジャイル」ですね。
は: ピノチェトはそれでもアメリカと言う強い後盾により長く政権を維持しますね。
ゆ: 東西冷戦が終了してアメリカが見放すまでね。でも彼はその後も生き延びて亡くなったのは僅か二年前のことなんですよね。冒頭にクーデター直前と晩年の写真を合成してみましたが、アメリカに利用され捨てられた悲哀も感じますし、権力の儚さと醜さを体現しているような気もします。

2: Le Chant Des Partisans (Anna Marly, Joseph Kessel, Maurice Druon )
  写真:第二次大戦のフランスのパルチザン、1944年8月

は: 二曲目は一転して軽やかなシャンソン風の曲調でございますね。
ゆ: GMも本当に心弾むように楽しげに弾いてますよね。このアルバムには各国のパルチザンの歌が収録されているんですが、これはもっとも有名な一曲ですね。直訳すると「パルチザンの歌」なんですが、「自由の歌」と言う呼び名の方が遥にポピュラーでしょう。
は: ドゴールの自由フランスを象徴する曲でございますよね。
ゆ: 作曲者のアンナ・マリーはロシア人ですけどね。ブックレットの解説を読むと元々スモレンスクのレジスタンスのために作った曲だそうです。

3: Ah! Ca Ira (Becourt - Ladre)
  写真:フランス革命、1789年10月5日 

は: これも説明不要の名曲、フランス革命を代表する歌「サ・イラ」でございます。エディット・ピアフ様の熱唱でご存知の方も多いかと存じます。
ゆ: べクールと言う人が作曲しマリー・アントワネットもお気に入りでハープシコードで弾いていたとか。後年革命派の歌詞がつくとは彼女も想像だにしなかったでしょうね。断頭台に消える運命の彼女を思ってか、GMは左手で緊張を強いる不協和音を、右手で有名な旋律を弾くという粋なアレンジをしていますね。
は: ちなみに「サ・イラ」とは「希望あれ」と言う意味でございまして、米国の駐仏大使ベンジャミン・フランクリンも好んだ言い回しだとブックレットに記載されております。
ゆ: 近年ロジャー・ウォーターズも同名のオペラの音楽監督を担当しております。

4: Le Temps Des Cerises (Jean-Baptiste Clement, Antoine Renard)
  写真:パリ・コミューン、モンマルトルの大砲、1871年

は: フランスの曲が続きます。一世紀下りまして時はパリ・コミューンの時代、これも有名な「桜んぼの実る頃」でございます。
ゆ: GMは軽やかに涼しげに弾きはじめます。まるでシャンゼリゼの恋人たちを祝福しているかのようです。でもこのシャンソンはパリ・コミューンの悲痛な歴史と深く結びついているんですね。だから後半の盛り上げ方は彼のこの曲への、そしてパリ・コミューンへの思い入れの深さを物語るかのようです。
は: パリ・コミューンは1871年に、パリの労働者たちが権力を握って樹立した、世界初の革命的自治政府でございますね。ブックレットを読みますと作詞者ジャン=バティスト・クレマン様がルイーズと言う女性を悼んで作られた歌だそうでございます。
ゆ: これは世界史の教科書参考書の余録などに良く載っていますね。パリを包囲したヴェルサイユ軍がコミューンと一般市民への大量虐殺を行った「血の一週間」の最中に、詩人クレマンが若い野戦病院付看護婦ルイーズと出会うのですが、 彼女は手に桜んぼの入った籠を携えていたといいます。ルイーズはかいがいしく負傷兵の手当てにあたっていましたが、クレマンが二度と彼女を見る事はありませんでした。彼女も犠牲者の一人になってしまったからです。そしてこのシャンソンは次の献辞とともに彼女に捧げられました。

「1871年5月28日日曜日、フォンテーヌ・オ・ロワ通りの看護婦,勇敢なる市民ルイーズに」

は: ちなみに5月28日はコミューン陥落の日でございます。ジャン=バティスト・クレマン様のお墓には今も作り物の桜んぼがそっと添えられているそうでございます。

5: Hasta Siempre (Carlos Puebra)
  写真:コンゴのチェ・ゲバラ、1965年

は: いよいよチェ・ゲバラが登場してまいりましたね。
ゆ: 昔の雰囲気左翼の憧れの的でしたもんね~。彼の著作を知たり顔で喫茶店で読んでる学生をよく見かけたものです。掲載されている写真はコンゴ時代のものなんですが、ブックレットによると代表作の一つ「革命戦争の旅」はこのコンゴでの活動が失敗に終わった後に書かれた本なんですね。
は: カストロの「別れの手紙」が発表された際キューバの作曲家により作られた曲だそうでございますが、丁度その直後くらいの写真なのでございますね。
ゆ: もうこの写真の一年後には銃殺刑が待ち受けているんですが、その様な過酷な運命を象徴するかのような陰鬱な余韻を残す演奏ですね。
は: アルバム中この曲で唯一使われているサウンド・イフェクトが銃殺刑を暗示しているかのように響きますね。
ゆ: ピアノソロと言うクレジットしかないので直接弦を払ったりしてるのかもしれませんが鳥肌が立ちますね。 

6: Je Chante Pour Passer Le Temps (Leo Ferre, Louis Aragon)
  写真:ルイ・アラゴン、1945年

は: 続いてはルイ・アラゴン様でございます。ダダイスト、シュールレアリストとしても有名でございますが、後に共産主義に傾倒され数々の著作を残されました。
ゆ: ルイ・アラゴンまで出てくるとはねえ、ライナーには思想自体には興味が無いようなことを書いてますが、実はGMってコミュニスト?って思っちゃいますね。
は: そのアラゴン様の詩に曲をつけたレオ・フェレ様もまた左岸派シャンソン歌手の超大物ですしね。
ゆ: さすがレオ・フェレの作曲だけあって実に味わい深いメロディラインではありますね。

7: Sciur Padrun Da Li Beli Braghi Bianchi (trad.)
写真:シルヴァーナ・マンガーノ(映画「苦い米」の主演女優)、1949年

は: この曲は革命とは趣を変えまして民衆歌の一つでございます。
ゆ: イタリアの有名な「田植え女」の歌ですので、平易で親しみやすいまるで童謡のようなタッチの楽しい曲調になっています。しかし「田植え女」の実情は、家族から離れ女だけの共同生活で過酷な重労働を強いられていたそうです。題名は

「うちらのボスはかっこええ白い服を着てはるわ」

と言う意味だそうですが、まあ

「それにひきかえうちらの格好はどやさ(byいくよくるよ師匠)」

てな感じなんでしょうね。
は: そういう過酷な労働実態を描いたセミドキュメンタリー映画が1949年の「苦い米」というネオリアリズムの傑作でございますね。
ゆ: ブックレットに掲載されているのはそのスチール写真なんです。だから「田植え女」もとびきりの美人(笑。幾らなんでも報道写真じゃないですよね。
は: その後ヴィスコンティ映画「ベニスに死す」や「ルドヴィヒ」などの傑作で中年女性役で活躍されるシルヴァーナ・マンガーノ様がまだ若々しくお美ししゅうございますね。

8: El Paso Del Ebro (trad.)
写真:スペイン市民戦争、エブロ川の戦い、1938年2月12日

は: いよいよ今回最後の曲となりましたがトリにふさわしく、題材は「国際旅団」として多くの文化人が参加したことでも有名なスペイン内戦でございますね。
ゆ: アンドレ・マルローの「希 望」、ヘミングウェイの「誰が為に鐘は鳴る」、ジョージ・オーウェルの「カタロニア賛歌」等々数え上げればきりが無いですね。ピカソの「ゲルニカ」もこ の戦争が題材ですし、掲載された写真はジャン・マイトロンのものですがあのロバート・キャパも従軍して写真を撮ってたんですよね。
は: さてこの曲でございますが、ブックレットによりますと、もともとはナポレオン遠征時代のスペインのパルチザンが歌っていたラブソングだったそうでございますが、スペイン内戦の「エブロ川の戦い」で散っていった共産党員兵士たちへの鎮魂歌となっていったそうでございます。
ゆ: 史上に名高い激戦で反乱軍・政府軍ともに多大な犠牲を払った消耗戦でしたから、ラブソングにしては沈鬱なメロディラインですよね。

は: 皆様長丁場お付き合いありがとうございました。今回はこれまでにいたしまして小休止を頂きます。そういえば今回はご主人様のボケも少なく私メの疲労感も少のうございました(^_^;)。
ゆ: 題材がシリアスなものばかりですから仕方ありませんね、できることならフランス革命Higedanshaku_2あたりで髭男爵のネタを入れたかったんですが(笑。う~ん、今年のファンタは出来がいい、あっはっはっはっは~。
は: はいはい、次回をお楽しみにと言いたいところですが不安一杯になってまいりました(ーー;)。
ゆ: おっとそれは事情が変った、な!大丈夫だよ君私に任せたまえ、あっはっはっはっは~(不安倍増。

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2008/03/02

Avanti!/ Giovanni Mirabassi (1)

Avanti!
AVANTI! Giovanni Mirabassi 澤野工房(SKE333015)

Giovanni Mirabassi (p)
recording date: May 14th, 15th, Nov 3rd, 2000

1: El Pueblo Unido James Sera Vecido
2: Le Chant Des Partisans
3: Ah! Ca Ira
4: Le Temps Des Cerises
5: Hasta Siempre
6: Je Chante Pour Passer Le Temps
7: Sciur Padrun Da Li Beli Braghi Bianchi
8: El Paso Del Ebro
9: A Si M'Bonanga
10: La Butte Rouge
11: Addio Lugano Bella
12: Johnny I Hardly Knew Ye
13: Bella Ciao
14: Imagine
15: My Revolution
16: Plaine,Oh Ma Plaine

はむちぃ: さて皆様大変お待たせいたしました、今回より3回に渡り「ゆうけいの月夜のラプソディ」200000ヒット記念企画をお送りいたします。お題は200001番を踏んでいただきましたk1xv1x様のリクエストでジョバンニ・ミラバッシ様のソロ・ピアノ集「AVANTI!」でございます。なお、御名前が長うございます故、以後はGM様と略させていただきます。
ゆうけい: 皆様こん**は、はむちぃ君前説ありがとう。しかしGMとは、なんかトヨタに抜かれそうになっている某大企業を連想しますね、「GM必死だな」みたいな(笑。
は: ご自身がライナーノートの中でそう略されておりますゆえ問題ございませんでしょう(-.-)(ボソッ、それよりご主人様、またまた長丁場でございます故、ボケは無しでさっさと参りませんと。
 さてこのアルバム、GM様の初ソロアルバムでございますが、なんと

「世界中の革命歌、反戦歌、或いは民衆の歌の私的なコレクション」

という珍しい構成でございまして、豪華なブックレットには18-20世紀の重要な政治的な写真と共にGM様の思いが記されてございます。
ゆ: GMはイタリア人なので主文は伊太利語なんですが、幸い英訳がついております。いやあホッとしたなあ、伊語だけだとどうレビューしたもんやら途方に暮れるところだったよ(汗。

は: というわけでさっさと参りますが、澤野工房様の常で堅牢かつ立派なデジパック仕様でございます。おまけに今回は先程述べましたように豪華ブックレットが付属しております。
ゆ: マーラー五番勝負で随分強くなったのう、はむちぃ君や('_')(遠い目)、というフェイクはさておき、本当に丁寧な作りですね。厚手の上質紙を用いてさながら歴史写真集の趣がございます。これで2500円は好事家の皆様には安く感じられるのではないでしょうか。

は: 写真集の事は後程検討する事にいたしまして、早速針を落としてみる事にいたしましょう。
ゆ: CDですから針を落としちゃイケませんな、はむちぃ君(^_^;)、でもこの写真集を見てると本当に古いSPに針を落として音を出したくなる雰囲気があるよね。
は: 失礼いたしました、さて一聴いたしますに流麗な演奏でございますね。ジャズと言いますと独特のタイム感覚やシンコペーション、不協和音、ブルーノート音階等を多用したりするものですが、そういう感覚がこのアルバムには希薄でございますね。
ゆ: キース・ジャレットが「Facing You」あたりでソロ活動を始めた頃を思い出しますね。その後「ソロ」や「ケルン」などに発展していくにつれ

「これはジャズではない」

という批判が巻き起こりましたが、もうあれから30年以上の歳月が流れていますし、こういうソロピアノも今は素直にジャズとして受け入れていいんじゃないでしょうかね。ここで聴けるGMの演奏の肌合いは、敢えて言うとECMあたりを源流とする

ヨーロピアン・ジャズ

というカテゴリーなんだろうなと感じます。
は: 左手の和音、右手の主題の単純なリフレインから始まり、徐々に展開していく流麗な分散和音の音粒の微粒子感、切なさが印象的なメロディライン、Silence Between Notes等々キース様が確立されたソロ・インプロのエッセンスのようなものが脈々と受け継がれているようですね。
ゆ: まあ、もういつまでもキースばかりにこだわらなくていいとは思いますけどね。特に今回は「元歌」があってそれに色付けをしていくところがあの頃のキースとは全く違うアプローチですよね。
は: 随所に聴き慣れた旋律が出てまいりますから、飽きずに最後まで聴き通せますね。
ゆ: 歌の性格上私より一世代上の全共闘世代には涙モノじゃないですか(笑。まあ冗談はともかく、革命歌が多いにかかわらず本当に旋律は美しいですね。キース的な演奏だけでなく、ビル・エヴァンスの様なタッチも感じますし、ジャズのみならずラベルドビュッシー等の印象派を連想させるようなフレーズもありますし、はむちぃ君が言うように退屈しませんね。
は: 確固たるテクニックをお持ちなのが良くわかります。
ゆ: 単純にテクニックということだけで言うと、ジャズにしてもプログレにしてもヨーロッパには恐ろしいほどのテクニシャンがゴロゴロいますよね、さすがクラシックの聖地ではあります。でもGMの演奏にはそれ以外のサムシング、人の心に訴えかけてくるエモーショナルな要素がありますね、そのあたりがさっすがイタリア、

ラテンの血が騒いだの」(by未知やすえ姐さん)

は: ちょ~~~っと待~ったりぃぃぃぃ~な~、未知師匠は河内の出でございます
(--〆)
ゆ: ちっちゃい舌を思いっきり巻きましたな、はむちぃ君(^O^)

は: ボケてる暇はないんでございますご主人様(怒。さっさと次へ参りましょう、そのエモーショナルな要素の源泉はGM様ご自身が語っておられますように、元歌へのシンパシーでございましょう。
ゆ: いよいよブックレットについて語らねばなりませんね。
は: それぞれの曲に一枚ずつその曲に縁りのある報道写真が添えられております。唯一の例外が15の「My Revolution」なのですが、
ゆ: 小室哲哉だから?
は: 「わ、か、り、はじめたマ~イレボリューション ♪」って、ち・が・い・ま・す!渡辺美里様の歌ではございません、GM様のオリジナルでございまして写真の代わりにこのアルバムに関しての重要なステートメントが掲載されているのでございますっ!

ゆ: 結構ノってるやないの、はむちぃ君(^_^;)、いや、ごめんごめん。この所信表明を読みますと彼が革命やパルチザンなどの歌に感動したのは

「歌わねばならない切羽詰った状態」

において産まれた曲の真の強さに感動したからだと言う事です。さて、彼が取り上げている歴史的事件とはどのようなものなのでしょうか、ぱらぱらとめくっているだけではランダムで分かりにくいですな
(?_?)。
は: そうおっしゃるに違いないと思いましてはむちぃめ、写真を年代順に整理して年表を作ってまいりました。

1789年5月: フランス革命、(イラスト) [3] 
1871年  : パリ・コミューン、モンマルトルの大砲 [4]
1870年代  : ミハイル・アレクサンドロヴィッチ・バクーニン [11]

1915年9月: 第一次世界大戦、シャンパーニュ地方バポームの丘の攻防戦 [10]
1930年代 : イタリアファシストデモ [13]
1938年2月: スペイン市民戦争、エブロ川の戦い [8]
1942年  : 第二次世界大戦、スターリングラード包囲戦でのロシア軍兵士 [16]
1944年8月: 第二次世界大戦、フランスのパルチザン [2]
1945年  : ルイ・アラゴン [6]
1949年  : シルヴァーナ・マンガーノ(映画「苦い米」) [7]

1965年  : コンゴのチェ・ゲバラ [5]
1967年  : ペンタゴン前の平和主義者のベトナム反戦デモ、銃口に花を挿すデモ参加者、[14]
1973年  : クーデター直前のアウグスト・ピノチェト [1]
1981年  : ハンガーストライキに入ったシン・フェイン党員受刑者に祈りを捧げるため刑務所の前に集まった民衆を制止する警察のバリケードライン [12]
1989年9月: 南アフリカ・ケープタウンの反アパルトヘイト平和大行進、[9]

ゆ: おおっ、はむちぃ君、それでこそ我が家の筆頭執事じゃ!こうしてみるとやはりGMは欧州人ですね、自分が生まれるより前の時代の歌は伊仏西露を中心とした欧州の曲で占められております。
は: 子供の頃から聴かされたり教えられたりした曲なのでしょうね。同時代を生きて能動的に選べるようになると、中南米やアフリカなど第三世界のものも増えてまいります。
ゆ: まさに「映像の世紀」を観ているようですね。二十世紀を振り返るいい機会ですから、次回からはそれぞれの曲について検討してまいりましょう。

は: おおっ、いつに無い綺麗なまとめ方でございますっ、ご主人様。困難な作業ではございますが頑張ってまいりましょう!
ゆ: 実は一番苦労してるのは記事冒頭の写真作りだったりして(笑。
は: 相変わらずしょうもないところに凝るんですから(ーー;)。。。ところでご主人様、k1xv1x様のリクエストにも関わらず、重要な要素が抜けております事に、はむちぃメ今気が付きました。

ゆ: へ?(゜o゜)、総論はこんなもんで十分じゃないの?
は: ずばり、「オーディオファイル」としての視点に欠けておりますよ(-_-)。
ゆ: そ、そうであった、ハンドル名からしてAyre使いのk1xv1xさんのシステムで聞きたいものじゃ、SPもSystem 7をお使いらしいしのう(羨。
は: ご主人様、自分のシステムではどうなのかと言う視点が欠けております(ーー;)。
ゆ: そ、そうだな、う~ん、うちのシステムでピアノを云々するのは一番苦手なんだけど、一つだけ感じるのは音量を上げるほど感動できる音になっていくんですよね。
は: 確かに音量アップとともにグランドピアノ特有の余韻や共鳴が段々原寸大に近づいていく気がいたします。まずは良識ある録音と言うことでしょうか、なおSKETCHレーベルはあまり聞き馴染みがございませんがフランスのレーベルだそうでございます。では皆様、次回よりの各論をお楽しみにお待ちくださいませ。

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2008/02/15

I'm Still Here / Kiyoshi Kitagawa Trio

Kiyoshikitagawa 
 久々のジャズネタです。神戸三宮のタワレコには澤野工房のコーナーがあるんですが、先日そこで試聴して買ってみました。関西出身の世界的ベーシスト、小曽根真トリオでも有名な北川潔さんの新譜です。

Kiyoshi Kitagawa(bass)
Danny Grissett(piano)
Brian Blade(drums)

1. KG
2. Short Story
3. Ciao, Ciao
4. Another Prayer
5. Tomorrow
6. Innocent Mistake
7. I'm Still Here

 正直言って小曽根真トリオでしか知らなかったんですが、こちらでは思う存分弾きたおしてますね。久しぶりにコアなアコースティック・ジャズ・トリオの演奏を聞いたな、という充実感があります。

 北川さんの演奏はロン・カーターのタッチに似てるなあと思いましたが、解説(例によって小さな紙切れ一枚です)を読むとやはり一番影響されているベーシストだそうです。詳細な解説は北川さん自身のブログをどうぞ。

 個人的にはダニー・グリセットというピアニストが凄いなあと思いました。凄いだけじゃ分からんだろ、と怒られそうですが、そうとしか言いようが無い(^_^;)。一曲目のKGとは北川さんの良きパートナーケニー・バロン翁のことですが、彼のようないぶし銀の演奏ではなく、もっと若々しく華やかな雰囲気を感じます。テクニックも抜群で、ハード・バップのスピリットを持ちつつハービー・ハンコックのようなフレージングができる人ですね。久々にワクワクさせてくれるピアニストが現れたようで嬉しい限りです。

 もちろん気心の知れたブライアン・ブレイドのサポートは磐石。このトリオで去年公演したそうなんですが、惜しくも聞き逃してしまいました。澤野さんまた呼んでください!

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2007/12/08

Falling in Love Again / Makoto Ozone

フォーリング・イン・ラヴ・アゲイン
 12月8日には毎年何某かのジョン・レノンに関する思いを書いているのですが、今年はちょっと趣向を変えてこのアルバムを紹介したいと思います。理由は極く単純、一曲目に「(Just Like)Starting Over」が入っているから(笑。

小曽根真さんの、何と13年ぶりになるピアノ・ソロ・アルバムだそうです。帯によりますと

『ジャズそしてクラシック、ジャンルを超えて活躍する小曽根がいまふたたび「自分自身」と「音楽」を見詰め直し、「最愛の人」への思いを込めて奏でる最新作!』

だそうです。まさに「Starting Over」のアルバムなんですね。確かに彼の原点であるピアノの音を今一度見つめなおしている感じがします。選ばれたのはヤマハのフラッグシップ・グランド・ピアノ、YAMAHA CF-IIISです。普段からやれ、スタインウェイだ、ベーゼンドルファーだと気取ったことを書いてますが、このアルバムを聴くとCF-IIIsも相当凄みのある(もちろん弾く人が弾けばですが)ピアノだと思います。実は先日クリスマスコンサートの練習で、ヤマハのスタジオをお借りしたんですが、グランドピアノが置いてあってリーダーが手遊びに弾いてたのを聞いていてやっぱりグラピの生音はいいなあ、と思いましたね。ましてやCF-IIIsをプロが弾く、その現場に居合わせた人は幸せだろうなあと思います。

 そうそう、その録音体制も万全。レコーディング・エンジニアは小曽根ファンにはおなじみで彼が全幅の信頼を寄せるJoe Ferla、マスタリング・エンジニアは「伝説の」とさえ形容され、ジョン・レノンも全幅の信頼を寄せていたGreg Calbiです。
 弱音から最強音まで見事なダイナミック・レンジでヤマハの魅力を、そしてOZONEの魅力を余すことなくとらえています。と、偉そうなことを書きましたが、ピアノ再生が最も難題の我がシステムには少々手ごわいアルバムです。腕とシステムに自信のある方は是非トライしてください。

 さて、オビの「最愛の人」とは誰でしょうか。「このアルバムの全ての曲をmisuzuに捧ぐ」とクレジットされていますから、当然ながら愛妻みすずさんですね、いやあお熱いことで(^_^;)。冗談はさておき、ラスト曲「SHE」は万感の思いをピアノに叩きつけていてなかなか感動的です。もともとはシャルル・アズナブールの曲ですが、映画「ノッティング・ヒルの恋人」でエルビス・コステロが歌って有名になりました。その英語の歌詞が掲載されていますが、思わず先日紹介した「ティファニーで朝食を」のホリー・ゴライトリーを思い浮かべてしまうような一節がありましたので、最後にご紹介しましょう。もちろん小説の方のホリーですが、やっぱりイメージはオードリー・ヘップバーンかな(苦笑。

She
Who always seems so happy in a crowd.
Whose eyes can be so private and so proud
No one's allowed to see them when they cry.
She may be the love that cannot hope to last
May come to me from shadows of the past.
That I'll remember till the day I die.

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2007/06/14

80年代ジャズベスト10

 前回の70年代ジャズ編に続きまして、80年代編です。とは言ってみたものの、ロック、邦楽でも書いたように、自分自身が音楽を聴く暇が無くなってしまいますし、特にジャズに関しては殆ど記憶が無く、選ぶのにはかなり苦労しました。スイングジャーナルの別冊なども参考にさせていたきました。

 80年代ロックについての私見の中でロック・アーチストもみんな優等生にならざるをえなかった旨書きましたが、それはジャズでも同じことだったと思います。ジャズメンで麻薬をやってないものなど無かった50-60年代を何とか生き延びたミュージシャンの殆どは80年代初頭までに亡くなるか、病に倒れています。前回紹介したビル・エヴァンスアート・ペッパーもその範疇のアーチストですね。また最後の破滅型天才と思えるジャコ・パストリウスも1987年にその生涯を閉じます。
 そう考えると、マイルス・デイヴィスが第一線に復活したのは奇跡的でこの80年代にも素晴らしい作品を発表し続けたのは驚異的で例外的でしょう。他の主要ミュージシャンはまあウィントン・マルサリスほどのエリートではないにせよ、優等生然とした人ばかりとなってしまいました。私の好きな村上春樹の作品の一つに「国境の南、太陽の西」という小説があるのですが、その小説中でジャズ・バーを経営する主人公が

「時に神がかった天才的な演奏をしてくれるジャンキーの問題児は今の時代には必要無い。いつでもある一定のレベルの演奏をしてくれる紳士的なプレイヤーでないと今のジャズ・バーの経営は成り立たないんだ」

という旨の発言をしていますが、まさにその通りの時代となったんだろうと思います。その様な時代の空気の中でどのような作品があったのか、自分でも再発見をするつもりで選んでみました。

1980
Bill Evans Trio 「Consecration」
Consecration
 一つの時代が終わった事を告げる挽歌とも言うべき傑作。80年9月ニューヨークでの公演中にビルは倒れ、帰らぬ人となりました。アルコールによる肝硬変並びに出血性胃潰瘍が死因でしたが、もう随分前から公演など無理な体になっていたのでした。それにもかかわらず彼は病院行きを拒否し、新しいマーク・ジョンソンジョー・ラバーバラとの新トリオに最後の情熱を注いでいました。このアルバムはその直前サン・フランシスコのキーストーン・コーナーでのライブで、スコット・ラファロポール・モチアンとのトリオに匹敵するような素晴らしい演奏が涙をそそります。今はコンプリート版しかないようで17000円はイタイですが、買って損のない作品であることは確かです。

Grover Washington Jr 「Winelight」

ワインライト
 グローヴァーは本邦では過小評価されていたきらいがありますが、この作品もおりからのメローブームに乗って大ヒットしてしまったために、ジャズファンからはそっぽを向かれてしまいました。でもマーカス・ミラーや元Stuff連中のリズム・セクションの作り出すグルーブは強力で、それに乗って伸び伸びとブローするグローヴァーのサックスももちろん一級品。タダの軟弱なイージーリスニングでない事は虚心坦懐に聴けば一発で分かるのですけれどね。とにもかくにもあの時代を代表する一枚であることは確かだと信じます。

1981 
Miles Davis 「The Man With The Horn」
The Man with the Horn
 まさしく「王の帰還」。アル・フォスター以外は殆ど無名の新人と組んで新しい音楽観を提示した作品に世界中が湧きかえりました。特に新人の中で「蚊トンボ」とマイルスが呼んでいたマーカス・ミラーが全面的にマイルスをサポートしています。ただ、昔と全く違うポップス的なサウンドに旧来のジャズファンは戸惑いを隠せませんでした。でもロックファンからすると十分にジャズでした、それもとびっきりかっこいいね。一曲目の「Fat Time」なんか本当にしびれました。もちろん完成度では後年の「You're Under Arrest」の方が上かもしれませんが、インパクトの点ではこのアルバムに勝るものは無かったと思います。

Micel Petrucciani 「same」
ミシェル・ペトルチアーニ・トリオ
ミシェル・ペトルチアーニ・トリオ

 80年代のアコースティック・ジャズ・ピアニストで、新たな感性を示してくれた人と言えばこの人でしょう。彼の演奏は、かのチャールズ・ロイドを奮い立たせ、再起に導いたほどでした。このアルバムは通称「赤ペト」と呼ばれる初リーダー作ですが、ハンディキャップをものともしない流麗で且つ力強い演奏は素晴らしいの一言。ビル・エヴァンスの後継者と目されていた時期もありましたが、やはりこの人の個性も唯一無二のものだったように思います、残念ながら彼も夭折してしまいますが、これはジャズ界にとっては大きな痛手でした。

Jaco Pastorius 「Word Of Mouth」
ワード・オブ・マウス
 自他ともに認めるジャコの最高傑作で80年代最高のジャズ作品であると思います。ウェザー・リポートでも主要レパートリーであった「Three Views Of A Secret」をはじめ、彼の作編曲能力が演奏能力と同じほど素晴らしい事を世に知らしめたアルバムです。
 しかし意外な事にこのアルバムはアメリカ本国では余り注目されず、翌年ウェザー・リポートを離れてからは持病の躁鬱病と酒及びドラッグ中毒による奇行が喧伝され始め、ついに87年に至って野垂れ死にのような無残な死が彼を襲います。稀代の天才にしてはあまりにも哀しい最期でした。

1982 
Shakatak 「Night Birds」
ナイト・バーズ
 イギリスのジャズ・ファンク・シーンから現れたグループで、このアルバムは日本でも大ヒットしました。私も社会人になりたての頃でしたがカーラジオにカセット突っ込んで良く聴いていました。何と言ってもビル・シャープの新鮮なキーボードのメロディ・ラインの心地よさがこのグループの生命線ですね。実は現在でも現役バリバリのグループで毎年来日しておられます。

1983
Kieth Jarrett 「Standards, Vol.1」
スタンダーズ Vol.1
 70年代の記事にも書きましたがキースは電化音楽には否定的な立場をとっています。その彼がスタンダードを演奏するトリオという伝統的スタイルに取り組んだ最初の作品で、スタンダードもキースゲイリー・ピーコックジャック・ディジョネットという凄腕の人間がやるとこれだけ斬新なものになるか、と当時大絶賛を持って迎えられました。そしてその後20年以上の長期間にわたり所謂「スタンダーズ・トリオ」としてレギュラーな活動を続けて行く事になります。ただ、このトリオが他の追随を全く許さないというところに逆にこの時代以降のジャズ・シーンの弱さが見え隠れしてしまいますね。

Herbie Hancock 「Future Shock」

Future Shock
 一曲目「ROCKIT」が80年代ジャズの新しい形を決定付けた、と言っても過言ではないでしょう。ハービーという人は本当に何でもできる才人で、このアルバムではヒップホップ・ロックを貪欲に取り込んでジャズの範疇を超えあらゆるジャンルのリスナーを虜にする傑作を作ってしまいました。後年「Futue 2 Future」で自らに落とし前をつけるまで、彼のこの作品に匹敵するようなバーサタイルな傑作を作れる人はいなかったように思いますね。

1984
David Sanborn 「Straight To The Heart」
Straight to the Heart
 サンボーンという人は泣きのサックスとか言って軽く見られがちですが、マーカス・ミラーと組んでいたこの頃は素晴らしいアルバムを連発していました。そしてこのアルバムはスタジオ・ライブを収録しており、バリバリ吹きまくるサンボーンを聴く事ができます。またそれ以上にと言ってはサンボーンに失礼ですが、マーカスのキラー・チューンとして有名な「Run For Cover」でのスラッピングは最高です。

1987
Pat Metheny Group 「Still Life (talking)」
Still Life (Talking)
 80年代を代表するギタリストとしてはパットかリー・リトナーを挙げないといけないのですがどういうわけかあと一枚しか選択の余地が残っていません(・_・;)。という事で、一番聴いていたアルバムを最後に推すことにします。PMGには他にも「オフランプ」や「アメリカン・ガレージ」などの傑作はあるのですが、聴いていてひたすら気持ち良い気分にさせてくれるこのアルバムを好きだという人は多いですね。南米音楽の影響が入っているのもその一因かもしれません。A面の「Minuando」に始まり「Last Train Home」に終わる流れの美しさは最高です。B面も佳曲揃いですが、手前味噌なことを言わせてもらうと、オーディオが良くなればなるほど真価を発揮するちょっと難しいサイドですね。

 寺島某に言わせれば「パット・メセニーというのはジャズの辺縁にいる人」だそうですが、裏を返せばコアな4ビートファンがいつの間にか音楽の周辺に追いやられていったのが70-80年代だった、、、のかもしれません。

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2007/06/13

70年代ジャズベスト10

 ロック邦楽と続いてきたので、今度はMAO.Kさんのお勧めもあり、ジャズの分野で自分なりのベスト10を選んでみました。

 50年代、60年代はちょっと怖くて手を出せないので(^^ゞ、先ずは70年代から。ロックがそうだったように70年代への転換点は69年にありました。この年にマイルス・デイヴィスの「ビッチェス・ブリュー」が発表されています。電化マイルスと呼ばれたマイルスの時代が始まり、ジャズ界にも電化の波が否応無く押し寄せたのが70年代と言えます。生粋のジャズファンはこの時代、苦虫を噛み潰したような顔をしていましたが、ロック小僧だった私は聴く音楽の選択枝が増えて単純に嬉しかったです。

 ところが帝王マイルスが70年代後半に入り、持病が悪化して半引退状態に入ってしまいます。50年代から常にジャズの先頭を走り続けてきた彼の引退は、皮肉な事に4ビートジャズの復権をもたらします。VSOPの活躍などはその最たるものでしょう。何しろこのグループ、アコースティック・マイルスの最後のグループのマイルスがフレディ・ハバードに入れ替わっただけですからね。

 マイルスだけでなく、ビル・エヴァンスアート・ペッパーといったビッグ・ネームもこの時代に最後の一花を咲かせて鬼籍に入りますし、古き良き時代の代表的なグループMJQもその活動を停止します。

 というわけで私のベスト10は勃興する電化ジャズ、最後の一花を咲かせる大御所のアルバムを交えつつ、電化マイルスで始まり、VSOPで幕を閉じます。最先端の音楽で始まり、復古調の音楽で終わるというのが、この時代のジャズの流れを何か象徴している気がしますね。ジャズファンへの失礼を顧みずに言わせていただくと、

「4ビートの正統派ジャズはこの時代を以ってクラシック音楽となった」

のだと思います、というかその当時から感じていた事ですけれど。

1970
Miles Davis Group 「At Fillmore」

At Fillmore: Live at the Fillmore East
 ロックの殿堂フィルモア・イーストに殴りこみをかけた電化マイルス。その4日間の演奏が二枚組に渡って記録されています。リンク先を見ると曲名が書いてありますが当時のレコード面には「~day Miles」と記してあるだけでした。(~には水~土曜が入ります)
 とにかく前衛的で、混沌としたロックともジャズともつかぬ猛り狂った音の氾濫がA面からD面まで延々と続きます。まあもの凄いエネルギーだけは感じ取る事ができますが、当時は呆気にとられたという印象の方が強かったです。これが名盤だと分かるのはその後の歴史のフィルターを通してからの事でした。
 ちなみにチック・コリアキース・ジャレットのツイン・キーボードが聴けるライブはこれだけで、特にキースのオルガンは堂々とマイルスの裏を取って臆するところがありません。さすがマイルスに「もう一度一緒に演奏したい唯一のミュージシャン」と言わしめただけの事はあります。

1972 
Chick Corea 「Return To Forever」
Return to Forever
 Fuisonという分野を確立した名作、所謂「かもめのチック」です。モレイラ・プリム夫妻、スタン・クラーク、ジョー・ファレルという面子は今でこそ強力だなと思いますが、当時はフリムのボーカルに代表されるような軽やかなイージー・リスニング的音楽ととらえられていました。ですからジャズファンからはそっぽを向かれていましたが、広くジャズ以外のファン層を開拓した功績は大きかったと思います。

1973 
The Crusaders 「Scratch」

スクラッチ
 ウェイン・ヘンダーソンがまだ在籍していた、とってもファンキーな頃のクルセイダーズの傑作ライブ。B面でのウェインのメンバー紹介や「Way Back Home」での超絶ロングトーンなど、とにかく熱い会場の雰囲気が楽しめる極上の一枚です。白人でゲスト参加しているラリー・カールトンも「excellent guitar player!」と紹介されていて素晴らしいプレーを展開しています。

1974 
Modern Jazz Quartet 「The Last Concert」

The Complete Last Concert
 長期間メンバー交替無く4人組で完璧なチームワ-クを誇ってきたMJQが23年の歴史に幕を閉じたコンサートの記録。「朝日のようにさわやかに」で始まるミルト・ジャクソンのヴァイブとジョン・ルイスのピアノの絡みの緊張感はここに至っても健在で、名曲「ゴールデン・ストライカー」「人知れず」「サマータイム」「スケーティング・イン・セントラル・パーク」などには彼等が築き上げてきた孤高の様式美を十二分に聴きとる事ができます。
 後年再結成するとは思いもよりませんでしたが、その時の音はこのアルバムに比べると何とも凡庸で緊張感のないもので、やはりこのアルバムが「古き良き時代」の終焉を告げたのだ、という事を感じずにはいられませんでした。

1975 Keith Jarrett 「The Koln Concert」
ザ・ケルン・コンサート
 マイルス学校の卒業生キースは意外にも電化には否定的で、その後チックとは異なった道を歩みます。伝統的なカルテット構成によるアメリカン4(生と死の幻想など)、ヨーロピアン4(マイソングなど)の2グループで斬新なアコースティック・ジャズを切り拓く一方で、彼の代名詞とも言えるもう一つの活動が即興のソロ・コンサートでした。その中でも最高傑作といわれているのがこのケルン・コンサートです。彼の中で昇華されたジャズ、クラシック、ゴスペルその他もろもろの音楽の要素が渾然一体となり、至上の美とも言える音が紡ぎ出されていく様は圧巻です。ECMの総帥マンフレッド・アイヒャーがこれを記録音楽として残してくれたのは、人類の偉大な財産であると言っても過言ではないでしょう。
 ちなみに私が持っているアナログはトリオ盤、ポリドール盤の2種類あるのですが、微妙に音質が違っています。

Jaco Pastorius 「Jaco Pastorius」
ジャコ・パストリアスの肖像(紙ジャケット仕様)
 たった一人の人間がエレクトリック・ベースの奏法の通念を根底から覆し、その新たな可能性を提示した、驚くべき傑作。後年パット・メセニーは「ジャコがいなかったらエレクトリック・ベース奏法は今と全く違ったものになっていただろう(悪い意味で)」と述べています。一曲目の「ドナ・リー」から最後の「忘れ去られた愛」までとにかく驚きの連続でした。よく「無人島に持って行きたい一枚」的な企画がありますが、そこでこのアルバムが挙げられることが多いのは何度聴いてもその度に新しい発見があるからでしょう。

1976
Weather Report 「Heavy Weather」

Heavy Weather
 マイルス学校の優秀な卒業生ジョー・ザビヌルウェイン・ショーターが結成したウェザー・リポートは70年代電化ジャズの新しい地平を切り開いていきましたが、彗星のように現われた驚くべき新しい才能ジャコ・パストリウスを取り込む事により、ついにそのキャリアの頂点に達し、70年代を代表する驚くべき傑作を産み出しました。それがこのアルバム「ヘビー・ウェザー」です。(実際はジャコが手渡したデモテープをジョーは一年くらいほって置いたみたいですが^^;)
 マントラも後年カバーしたザビヌルの名曲「バードランド」、2曲目ショーターの究極のバラード「おまえのしるし」、3曲目のジャコの才能全開の「ティーン・タウン」と、A面での冒頭三連発であっという間にノックアウトされてしまいますが、その後も素晴らしい曲やジャコの超絶プレーの連発が襲ってくるのですからたまりません。
 私は迷わず70年代ベスト1にこのアルバムを推します。実際セールスもフュージョンの枠を超えて他のロック・ポップスのアルバムと比肩できるくらいでしたし。でも後年ザビヌルが語ったところによると、いくら売れてもこのグループはライブで演奏するのに金がかかりすぎて全然儲からなかったそうです。

1977
Art Pepper 「Live At The Village Vanguard」
Saturday Night at the Village Vanguard
 50年代ウェスト・コースト・ジャズの代表的アルト・サックス奏者でありながら度重なる麻薬禍で再起不能といわれていたアート・ペッパーが奇跡の復活を果たした時期のビレッジ・バンガードでの熱演を収録したライブアルバム。(私が持っているのは4枚組みCDなのですが、今回捜しても見つかりませんでしたのでリンクはばら売りの一枚目にしてあります。)
 もともとは「ミーツ・ザリズム・セクション」や「モダン・アート」などで聴けるような才気煥発の演奏を得意にしていた才人でしたが、ここではエモーショナルでいて誠実な演奏が聴けます。彼自身が「ストレート・ライフ」と呼んだ人生の年輪を感じさせるところなど、日本人好みと言えばそれまでですが、実に感動的なライブではあります。一曲目の「キャラバン」なんかスタンダードの代表みたいな曲でそれこそ星の数ほどの録音があると思いますが、その中でも十指に入るような名演ではないかと思います。
 その後彼は諦観に満ちたアルバムを何作か発表後82年にその波乱の生涯を閉じます。

Bill Evans 「You Must Believe In Spring」
You Must Believe in Spring
 ビルのアルバムはどうしても一枚は入れたかったのですがこれにしました。実を言うとこの時期に録音してありながらレコード会社の都合で長い事お蔵入りしており、発売されたのは彼の死後でした。ですから厳密に言うと80年代のアルバムなのですがご容赦ください。
 他界した兄ゲイリー、妻エレーンへの追悼の曲に代表される深い哀しみに満ちた美しいバラードが主体のアルバムで、彼の切々とした哀しみがその演奏の中からにじみ出ています。いつもより控えめなエディ・ゴメス、エリオット・ジグムンドのサポートも素晴らしい。
 彼はその後マーク・ジョンソンジョー・ラバーバラとの新しいトリオに昔のスコット・ラファロポール・モチアンとのトリオに勝るとも劣らない可能性を見出しますが、残念な事に彼の体はアルコールによりぼろぼろに侵されており、治療を拒否した壮絶なライブの後ゲイリーやエレーンの後を追うようにして1980年にその生涯を閉じます。

1979 
V.S.O.P.「Live Under The Sky」
V.S.O.P.: Live Under the Sky
 伝説となった日比谷野音での豪雨の中でのライブを完璧に収録したアルバム。ジャズのコンサートとしては珍しく、当時大変な話題になったのを覚えています。
 VSOPとは確か「Very Special One-Time Performance」の略だったと思います。というのも、もともとはニューポート・ジャズ・フェスティバルの目玉企画として黄金期のマイルス・デイヴィス・グループ(ハービー・ハンコック、ロン・カーター、トニー・ウィリアムス、ウェイン・ショーター+MD)を再現する予定だったのが、マイルスの復帰が叶わなかったためにフレディ・ハバードが急遽代役を務めた一回きりのグループ編成の筈だったのです。それがあまりの好評にこのメンバーでの演奏がその後もあちこちで行われ、その白眉がこの日本での雨中のコンサートでした。確かに今聴いても興奮するような熱演でハービーの

「You are the greatest audience ever!」

という観客への賛辞もあながちお世辞では無い様に思います。録音も素晴らしく、弱音部で豪雨の音も鮮明に捉えられており、まことに稀有なアルバムではあります。

 ただ冒頭にも述べたように、70年代の締めくくりがこの懐古的アルバムで、始まりが前衛を絵に描いたような電化マイルスであったというのは順序が逆じゃないか、と言う気が今でもします。当時産業ロックと揶揄されながらどんどん技術革新を繰り広げていたロックの隆盛からは完全に取り残され、次の80年代にはいよいよその差が歴然としてしまいます。80年代を代表するジャズの曲としてすぐ思い浮かぶのが、このVSOPのメンバーであったハービーがロック・ヒップホップの世界に踏み入った「ROCKIT」であるのは皮肉にも思えますし、またマイルスの先進性が彼に受け継がれた必然の結果という気もします。という訳で次回は80年代をお送りいたしますが、果たして10枚選べるんでしょうか、正直不安です(^_^;)。

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2006/12/02

バースディ・コンサート/ジャコ・パストリアス

バースディ・コンサート
はむちぃ: 皆様、私事で恐縮ではございますが、本日12月2日は主人ゆうけいの誕生日なのでございます。
ゆうけい: ゆうけい@Drスランプでございますm(__)m。恥ずかしながらこの歳まで生きながらえて参りました。

は: またまた寝不足@スランプで体調不良のようでございますね、トホホ、で、何歳になられたんでございます?
ゆ: 「下天の内を比ぶれば」にあと一歩の歳になってしまいますた。
は: で、わざわざ誕生日をネタにするほどの話題がございますのですか?
ゆ: それなんだよはむちぃ君、話せば長いことながら

昨日12月1日に鳥肌の立つような事件

があったのじゃ、聞いてくれるかのう、ばあさんや。
は: 誰がばあさんですか、誰が(--〆)、まあ私以外に相手する方もおられませんでしょう、話して下さいませ。とりあえず冒頭のCD、天才夭折ベーシスト、ジャコパストリアス様「バースデイ・コンサート」に関係しているんでございますね。
ゆ: イエ~ス、ダッツライト!実はだな、昨日某星無氏のレビューに感化されて、ジャコのこのアルバムを久しぶりに引っ張り出して聞いておったのだ。

は: 確かにこれは素晴らしいアルバムでございます。1981年、ジャコ様の30歳の誕生日に故郷フォート・ローダーデイルに仲間を呼んで和気藹藹のコンサートを繰り広げられておられます。この数年後の悲劇のかけらさえ見えませんね。ではこのコンサートの素晴らしさに鳥肌が、、、
ゆ: まあ慌てるでない、確かにジャコの絶頂時代ではあるな、「Continuum」や「Amerika」でのソロの美しさは奇跡的と言っても良いじゃろう。
は: フレットレスベースでそれまでは花形楽器であるギターでやっていたような流麗なソロをこなしていくという、ジャコ様の確立したスタイルでございますね。この後フォロワーはゴマンと出ましたが、確かにこの演奏の美しさを凌駕しうる演奏はまあございませんでしょう。しかしその反面ベースの低音の迫力には乏しいという声もございますが、、、?
ゆ: それがだね、このアルバムでのサポートプレイを聴いてると、結構ブイブイ低音の深いところが出てるんだよ、床が共振するくらいにね。高速パッセージの時とタッチを変えたりして出す所は出してるんだよ、考えてみればエレキ・ベースという楽器を知り尽くしている彼なら当然だけどね。

は: そして共演者の豪華さも鳥肌モノでございますね、サックスのボブ・ミンツァー様、マイケル・ブレッカー様、
ゆ: 「Invitation」での二人の熱いソロは素晴らしいの一言ですね、それにリズムセクションで今回のプロデューサー・ピーター・アースキン、天才コンガ奏者ドン・アライアスも乗りまくってるし。

は: これでデビュー作でご主人様お気に入りの「KURU/Speak Like A Child」で共演しておられたハービー・ハンコック様がおられれば完璧でございましょう。
ゆ: チッチキチ~、はむちぃ君それは違うのだ、ジャコはウェザー・リポートジョー・ザビヌルに最大限の敬意を表して、自己のバンドには決してキーボード奏者を入れなかったのだよ。
は: そ、そうなのでございますか、ではジャコ様のバンドでは和音を出せる楽器はご自身のベースだけだったのでございますね!?
ゆ: そうそう、それでいてあれだけ美しい調和のとれた演奏ができるのだから、彼が演奏者としてだけでなく、コンポーザー、アレンジャーとしても如何に優れていたか分かるよね。このアルバムでもアンサンブルは「気持ち良い」の一言。それに何と言ってもみんながジャコを愛し尊敬しているという気持ちが演奏に溢れてるのが素晴らしいな。
は: ジャコ様にナイショでみんなが打ち合わせしておいたという「Hasppy Birthday」も大変うるわしゅうございますね。

ゆ: そうそう、で、、、なんなんですが(^_^;)、、、、、実は鳥肌が立ったのはそう言うことではないのですな。
は: ええっ(、、、これだけ長い前振りをしておきながら(-_-;))、、、と申しますと?
ゆ: 実はライナーノートを読んでいてびっくりしたのだ、このコンサートの開催日=ジャコの誕生日なんだが、これが1982年の昨日すなわち

12月1日

だったのだ~。
は: おおっ、何と言う偶然、ジャコ様の霊が呼んだのでございましょうかぁぁぁ(驚愕。
ゆ: まあジャコが呼んでくれるくらいなら私のエレベの腕前ももっと上がるんだろうけどね(^_^;)、嬉しい偶然に歓喜の涙を流しつつ聴きまくっていたのでございました。
は: という訳でございまして皆様、スランプのずんどこどん底に沈みながらも辛うじてネタが尽きずに持ちこたえておりますゆうけいを今後もよろしくお願いいたしますチィm(__)m

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2006/09/27

Metheny Mehldau

  前回に引き続いてもう一枚ハマっているジャズアルバムを。私の大好きなギタリストとピアニストが夢の共演!という一枚です。アルバム名もそのまんま「Metheny Mehldau
Metheny Mehldau
Metheny Mehldau

Pat Metheny (g)
Brad Mehldau (p)
Larry Grenadier (b)
Jeff Ballard(ds)

1. Unrequited (Mehldau)
2. Ahmid-6 (Metheny)
3. Summer Day (Metheny)
4. Ring Of Life (Metheny)
5. Legend (Mehldau)
6. Find Me In Your Dreams (Metheny)
7. Say The Brother's Name (Metheny)
8. Bachelors III (Metheny)
9. Annie's Bittersweet Cake (Mehldau)
10. Make Peace (Metheny)

 ノンサッチレーベルからの発売ですから、ジャケットがとてもしゃれていて美しいですね。写真だけでは判りませんがとても凝った仕掛けになってるんですよ。ノンサッチレーベルの特徴である、CDケースに必ずカバーをつけているところに目をつけたデザインなんです、実際買ってみてお確かめの程を(^_^;)。

 さて、ジャケットをめくってみると二人がそれぞれライナーを書いています。それによりますと、
 
 メセニーはジョシュア・レッドマンから素晴らしいピアニストがいるよ、と聞かされていて、ある夜車のラジオから流れてきたジョシュアの曲中でのピアノ演奏に衝撃を受け、車を止めて聴きいったそうです。

 一方のメルドーにとってメセニーはマイルス・デイヴィスジョン・コルトレーンキース・ジャレットと同列というほど心酔・尊敬するアーチストだったそうです。初めて聴いたのはStarlessさんもお気に入りのライブアルバム「Travels」のなかの「ついておいで」だそう。
Travels
Travels

 という訳で二人が曲を持ち寄って作成されたのがこのアルバム。期待にそぐわぬ出来です、と紹介したいところですが、メセニーが好きな私でもやはり彼独特のギター・シンセの音色とメルドーのアコースティック・ピアノの音は今一つ有機的に絡んでいない印象を受け、最初の2曲くらいはややがっかりしましたね。やっぱりメセニーにはライル・メイズか、、、

 ところが驚き、4,7のリズムセクションを入れたカルテット演奏になると俄然素晴らしい演奏が展開されます。この二人はブラッド・メルドー・トリオでやってましたし、ラリーはメセニーとも組んでいましたし、もう4人とも気心がしれてるんでしょうね。ラリーのブンブン唸るベース、ジェフの歯切れ良いドラミングが後ろからぐんぐん煽りまくり、雰囲気を一変させてしまいました。

Brad Mehldau Trio featuring Pat Metheny

といった趣でしょうか、これこそ私が聴きたかった演奏だ!とちょっと興奮してしまいました。このカルテットでのライブを是非やって欲しいですねえ。

 そしてサプライズはもう一度最後に待っていました。ラスト曲「Make Peace」です。メセニーが「One Quiet Night」で初めて披露したバリトン・ギターに持ち替え美しい旋律を弾き始めると、今度こそはそれに絡んでくるメルドーのピアノとの相性も抜群で、感動的に美しい曲に仕上がっています。これは必聴です!
One Quiet Night
One Quiet Night

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2006/09/26

ショパン / レシェク・クワコフスキ・トリオ

 最近はまっているジャズのアルバムの中から今日はこの一枚をご紹介します。先日ご紹介したポーランド・ジャズの逸材レシェク・クワコフスキが母国の偉大な音楽家ショパンに挑戦したライブ・アルバムです。
ショパン(レシェク・クワコフスキ・トリオ)
ショパン(レシェク・クワコフスキ・トリオ)


Leszek Kulakowski Trio
and Slupsk Chamber Oechstra
CHOPIN And Other Songs

Leszek Kulakowski - piano
Andrzej Cudzich - bass
Adam Czerwinski - drums
with Slupsk Chamber Oechstra

1: Mazurek a-moll Op.7, Nr. 2
2: Preludium c-moll Op. 28
3: Nokturn cis-moll
4: Mazurek a-moll Op17. Nr. 4
5: Ewencja
6: Walczyk Decadencki
7: Free Steps

Recorded Live November 17 1994 at the Slupsk theatre

ポーランド・ジャズ評論家オラシオさんのレビューはこちら

 Kazimierz Rozbickiという方の書かれたライナーノートによりますと、レシェク・クワコフスキはPolonia Recordsからファースト・アルバムを出した後僅か2ヶ月の間に作曲、オーケストラ用のスコア作成、企画、会場の確保(財政面を含めて)等全てを行い、このライブにこぎつけたとのこと。前回はその演奏にびっくりしましたが、今回は行動力と作曲の才能に驚嘆してしまいました。もちろん、その結果としてのこのアルバムの出来栄えにも。

 1-4はショパンのマズルカ、前奏曲、夜想曲を演奏しています。トリオ演奏自体は予想通り、ショパンのオリジナルをジャズ風にブルージーにアレンジして弾きまくると言うもの。ショパン流の華麗なメロディを高速で弾きこなすレシェク、この頃から既に素晴らしいタッチを披露していたんですね。オラシオさんも書いておられますが、サポートするベースもゴリゴリした力強いタッチでピアノを煽っています。惜しむらくは録音が今ひとつで弦がブンブンしなるような迫真のタッチが出ていない事。まあ、あの当時のポーランドの国力で、ライブ録音という事で仕方ないのかもしれません。

 興味深いのは室内響のアンサンブル。いわゆる本場アメリカのビッグ・ジャズ・バンド風のスイング感のあるアレンジとは趣が異なり、さりとてクラシックのアンサンブルでもありません。敢えて言うと、現代音楽風に不協和音の多い不安定なハーモニーを盛り込んだ印象です。それでいて、不思議とトリオ演奏に違和感なく絡んできて、最後は聴衆のやんやの喝采!
 ライナーノートによると彼はもともと音楽学校でヴァイオリンを修め、卒業後はドイツに渡りハンブルグ・モーツァルト・オーケストラにも長く所属していたとのことで、作編曲の素養はその頃に磨かれたものと思われます。
 
 というわけで、典型的なピアノ・トリオに室内管弦楽団と言う構成、最初は少し違和感がありましたが、4のマズルカイ短調17-4のあたりまで来るとその盛り上がりは本当に素晴らしい。このアルバムの白眉でしょう。ショパンの曲の中でもマズルカはポーランドの民俗音楽だけに国民性への深い理解が必要であり、その演奏はとりわけ難しいとされていますが、そこはポーランド人の血のなせる業か、ジャズに編曲した上でなおかつ会場を興奮の坩堝に巻き込む力技、畏れ入りました!としか言いようがありません。

 このマズルカイ短調17-4と言う曲、あの思索するピアニスト、或いはピアノを弾く哲学者、鬼才ヴァレリー・アシャナシエフが自身のマズルカ集でいの一番に取り上げているんですね。まあ言ってみりゃマズルカというのはポーランド民謡な訳で、それをここまでアウフヘーベンするか(爆、と言うくらい深い思索を以ってアルバムの冒頭に持ってきた17-4は静謐で厳かな雰囲気に満ち満ちており、それでいてどこか物悲しい郷愁を誘う旋律が実に美しい傑作です。おそらくショパンのマズルカの中でも傑出した一品なのでしょう。
 それをレシェクがどう料理しているか、クラシックファンにも興味深い演奏だと思いますので是非聴いてみてください。

鬼才アファナシエフの軌跡8 ショパン:マズルカ集
鬼才アファナシエフの軌跡8 ショパン:マズルカ集

 と、ここで終わってしまえばまあ面白い企画盤という事で片付けられてしまいそうですが、実は、4の興奮の醒めやらぬまま次々にたたみ掛けていく彼のオリジナル曲がこれまた壮絶に凄いんです。単調なモノトーンのリズムを芯にして自在に音が飛び交うエヴェンシア」、ワルツのリズムが古き良き時代のヨーロッパ映画を思わせる闘う気力も失せて」、そして大団円を迎えるに相応しい大作フリー・ステップス」、この4から7の流れがこのアルバムを傑作たらしめていると思うのは私だけでしょうか!?

→と、オラシオさんに振ってみたりする(^_^;)、と言うのは冗談ですけど、6の曲の雰囲気と邦題が合わない気がするんですけどどうなんでしょうねえ。あてずっぽですが、原題は「デカダン・ワルツ」のような意味のポーランド語かなとか思うのですが?

 唯一残念なのは日本語版ライナーノート。ガッツプロダクションさんにはこのような素晴らしいアルバムを日本に紹介してくださって感謝しますが、あの中学生の夏休みの感想文のできそこないみたいな文章はないでしょう、とは申し上げたい。今からでもオラシオさんのレビューに差し替えてください(^_^;)。

まあ、なんにせよ、一聴の価値はあります。アマゾンにまだ2,3枚在庫があるようですので早い者勝ちですよ、是非どうぞ(^o^)/

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2006/08/26

カタルシス / レシェク・クワコフスキ・トリオ

Katharsis
カタルシス(Katharsis)
カタルシス(Katharsis)
1:糸を紡ぐ女
2:冷め切れぬ愛
3:カタルシス
4:トムおじさんの稲
5:再び現れしもの
6:アタルシス
7:レフ・カタジニアジュ
8:ひばり
9:アルレイクナ・ダンス
10:ラブ・ストーリー

1998年録音
レシェク・クワコウスキ(p)
ヤチェク・ニェジェーラ(b)
マルチン・ヤール(dr)
W/ ストリング・カルテット

は: ご主人様、今日は珍しくポーランド・ジャズのご紹介でございますね。
ゆ: そうなのだ、相互リンクしていただいているオラシオ主催万国音楽博覧会オラシオさんがジャズ批評2006年9月号(133号)に

「ポーランド・ジャズ:「磨かれた世代」のピアノ・トリオの名盤たち」

という記事を掲載されたので、そのお祝いじゃ!(^^)!
は: それはそれは、オラシオ様、先日の切り番ゲットについで、まことにーーー

は&ゆ: おめでとうございます~(^o^)/

ゆ: じゃ、そういうことで、お後がーー
は: ご主人様、いよいよ頭が(以下略)、カタルシスでございます、カ・タ・ル・シ・ス
ゆ: その物言い、何処かの奥様に似てきたな(^_^;)、そうそう、ショパンの国ポーランドの誇る若手ジャズピアニスト、レシェク・クワコウスキの傑作としてオラシオさんがいの一番にレビューしておられるのだな。
は: ジャケットがカッコようございますね!
ゆ: ところがAMAZONから送られたきたアルバムの表ジャケは、ジャコがかぶってたような毛糸の帽子を着た冴えない中年のおっさんがピアノを弾いておるのじゃ、一瞬間違えたかと思ったぞ(大汗
は: では冒頭写真は裏ジャケでございますか!?
ゆ: そうそう、早速ひっくり返して表ジャケにしました(^_^;)

は: で、内容は?なにかアバンギャルドな雰囲気でございますね、弦も入っておりますし。
ゆ: 私の凡庸なボキャブラリーでは説明しきれんので、オラシオさんの記事を抜粋して見ましょう、著作権に触れない程度でね。

アンサンブルの絡み合いが雨滴に濡れたような叙情を演出する大変美しい一枚です。

もっと詳しく知りたい方はこちらをどうぞ。
は: 完全に人の褌で相撲を取っておられますね、ご主人様(-.-)
ゆ: まあまあそう言うでない、お祝い事じゃ。それにしてもやっぱりクラシックの国じゃのう、アメリカのジャズとも違うし、かといって日本のジャズに見られるようなリリシズムとも違う、現代音楽のような不協和音の使い方が斬新に聴こえるな。レシェクのピアノ・タッチも実に切れが良いのう。
は: 敢えて言えばドボルザークの影響を受けたビル・エヴァンスに近いものがありましょうか。
ゆ: ふーむ、確かに、はむちぃ君なかなか鋭いのう、でも、ドボルザークチェコですよ~ん。
は: ガ~ン(T_T)、そうでした、ジョージ・ムラーツ様ですね、チェコといえば。
ゆ: そのジョージ・ムラーツの助けを借りて、同じくストリングスを導入して、ドボルザークの故郷チェコで録音した木住野佳子さんの「プラハ」もなかなか良いアルバムじゃが、やっぱり日本人好みの叙情性が濃厚じゃのう。
プラハ
プラハ


は: それと比べてみるとやはりアバンギャルドな雰囲気が濃厚ですね、こちらのアルバムは。
ゆ そうですね、フランシス・レイの「ある愛の詩」を敢えて叙情性を排したアレンジに変えているところなど、彼らポーランド・ジャズの真骨頂なのかもしれません。
は: まことに聴き応えのある一枚、東欧ジャズ畏るべし、でございました。

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2006/07/21

Another Side Of Me / Marcus Miller

LEVI’S(R) BLACK PRESENTS アナザー・サイド・オブ・ミー
 マーカスの新譜が到着しました。著名なゲスト・ミュージシャンと共演した曲を中心としたベスト盤となっています。Levi's Black Presentsと銘打たれており、Levi'sのデニムのケースに入ってます。渋い

1: Brazillian Rhyme feat Lalah Hathaway
2: Takin' It To The Streets performed by Take 6
3: Girls and Boys feat Mavy Gray
4: Boomerang feat Raphael Saadiq
5: Come Together
6: Rush Over feat Me'Shell NdegeOcello
7: Power
8: It's Me Again feat Djavan
9: Snakes performed by David Sanborn
10: Your Amazing Grace feat Chaka Kahn
11: Silver Rain [ Guitar Mix] feat Eric Clapton
12: Black
produced by Marxcus Miller

Levis1,5,6が「Tales」、4,7,8,10が「M Squared」、3,11が「Silver Rain」から、2はTake 6の「Beautiful World」、9がDavid Sanbornの「Upfront」からの選曲。個人的には大変美味しい選曲で、当分これだけで満足できそう。

12だけが新曲でAll Instruments and Vovals by Marcus Miller、つまり全部一人でこなしちゃってるわけです。ブルーノートでも感じたけど、マーカスってボーカルもホントにうまい。

8月に来日するマーカスのイベントに関するご招待特典の案内が入ってましたが、関東方面のリーバイスの店だけじゃん、関西にもまた来てよ~マーカス、「ダチ」なんだからさあ(→マイミクになってもらっただけ^^;)

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2006/05/13

You Must Believe In Spring

 jazzaudiofanさんが紹介しておられたアラン・パスクァの「ボディ・アンド・ソウル」を最近良く聴いております。キース・ジャレットを敬愛するというだけあって、その叙情性溢れる演奏はなかなか心地よいです。とはいえ、アルバムをレビューしても二番煎じになるだけですし、一曲目の「You Must Believe In Spring」を手持ちの本家本元の演奏と聞き比べてみることにしました。
ボディ・アンド・ソウル
ボディ・アンド・ソウル

 この名曲はご存知の方も多いと思いますが、映画「ロシュホールの恋人たち」の為に書かれた曲で、作曲者はフランスの巨匠ミシェル・ルグラン
 ということでまずは元祖から。ジャズ界の人たちとも共演の多いルグランですが、ちょっと異色の組み合わせで、クラシック界の歌姫ジェシー・ノーマンとの共演アルバムを引っ張り出してきました。

おもいでの夏~ジェシー・ノーマン meets ミシェル・ルグラン
おもいでの夏~ジェシー・ノーマン meets ミシェル・ルグラン

ジェシー・ノーマン(vo)
ミシェル・ルグラン(p)
ロン・カーター(b)
グラディ・テイト(ds) 

 当然といえば当然ながら、今回聴いた中では最も気品の高い演奏。ルグランのピアノは非常に端正ですが、随所にきらりと光るようなインプロと思われるフレーズを挟んでいるところはさすがです。ロングラディも全てインプロビゼーションだと解説に書いてありますが、それが信じられないほど控えめできっちりとつぼを押さえた演奏です。
 そしてジェシーのベルカントはやはり普通の歌手とは一線を画する気品の高いもので、曲自体もともとジャズではなくミュージカル用に書かれたピースですのでこの曲には良く合っています。
 ルグランもあまり自分の曲をジャズ・ポピュラー流に崩し過ぎる演奏はお好きでないようです。ちなみに自分の編曲、演奏以外で好きなのはマリーナ・ショウのものだそうです。私は聴いた事がありませんがおそらく原曲をあまり崩さず端正に歌っているのではないでしょうか。

 続いてはやっぱり本家・ビル・エヴァンスです。この曲がスタンダード的に扱われるのはやっぱりこの人が取り上げているからでしょう。実はトニー・ベネットとの「Together Again」の方が早いのですが、やはりこの曲はこのアルバムの印象が強いですよね。

You Must Believe in Spring
You Must Believe in Spring

ビル・エヴァンス(p)
エディ・ゴメス(b)
エリオット・ジグムント(ds)

 ビルの死後に発売されたということ、墨絵のようなジャケット、そして一曲目の亡き妻エレインに捧げた「Bマイナー・ワルツ」の印象から、静謐な哀しみと美しさに満ちたアルバム、というイメージが強いのですが、「You Must Believe In Spring」を久しぶりに聴いて驚きました。静かなのはビルによるテーマ導入部だけで、後は結構「走っている」演奏だったんですねえ。
 ビルの演奏の代名詞インタープレイの醍醐味とでも言いましょうか、エディ・ゴメスの渾身のソロに煽られるように、ビルもかなり速くかつ強いパッセージをインプロで展開して行きます。今回改めて聴いてみて、この曲におけるゴメスの演奏は、彼の長いビルとの共演歴の中でも最高の演奏の一つではないかな、と感じました。

では最後にアラン・パスクァ・トリオで聴いてみましょう。

アラン・パスクァ(p)
デレク・オールズ(b)
ピーター・アースキン(ds)

 うーん、さすがに元祖本家を聴いたあとでは分が悪いか(^_^;)。というか、ビル・フォロワーはかくあるべし、という枠に縛られているような印象はありますね。ビル好き日本人にあわせた企画サイドの問題かもしれませんが、あまりにも上記のビルの演奏を意識しすぎているような気がします。逆に言うとあの演奏を現代風に洗練させるとこうなりますよ、という感じでしょうか。日本でのビルへのトリビュートアルバムに入っている益田幹夫トリオの「Porka Dot And Moonbeams」をちょっと思い出しました。
 演奏では特にピーター・アースキンのドラミングが現代風洗練を感じさせます。さすが当世一のテクニシャンだけあって、原曲のジグムントには悪いけど、段違いに巧いです。あれだけシンバルを軽やかかつスピーディに叩ける人ってちょっといないんじゃないかな。

 というわけで元祖本家現代風洗練と、三者三様に楽しめましたが、とにかく演奏というのは

先入観を捨てて無心でまず聴いてみるべし

という教訓を得ることができました。

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2006/05/01

thunderbird / Cassandra Wilson

サンダーバード
サンダーバード

 映画ネタの続きになりますが、「アメリカ・家族のいる風景」のOSTがまだ出ていないのは寂しい限りです。しかしそれを補って余りあるアルバムが出ています。この映画の音楽を担当したTボーン・バーネットがプロデュースを担当したカサンドラ・ウィルソンの2年ぶりの新作「サンダーバード」です。店頭試聴して即買いでしたが、前回痛い目にあったコピーコントロールCDではなかったので一安心。東芝EMIもようやく愚を悟ったか^^;。悟ってませんでした(ーー;)(次の記事参照)

1. Go To Mexico(C.Wilson et al)
2. Closer to You (Jakob Dylan)
3. Easy Rider (trad.)
4. It Would Be So Easy (C.Wilson et al)
5. Red River Valley (trad.)
6. Poet (C.Wilson-K.Ciancia)
7. I Want to Be Loved (Willie Dixon)
8. Lost (J.H.Burnette)
9. Strike a Match (J.H.Burnette-E.Cohen)
10. Tarot (Wilson-Ciancia-Keltner)

『 カサンドラ2年半ぶりの新作。キーマンはやっぱり、プロデュースを担当したT.ボーン・バーネットでしょう。聴いた瞬間、10年前『ニュー・ムーン・ドーター』発表時にカサンドラにインタビューした際の一節が頭に浮かんだ。といっても、正確に彼女の言葉を覚えているわけではないので、当時のメモを引っぱり出した。「私は音楽を作る側にいるから、ジャンルなんて考えない。音楽はひとつであって、カテゴリーとかジャンルなんて、私は信じない。洋服や食べ物と同じね。いつも同じ服を着ていたくはないし、同じものを食べつづけるのもいや。ジャズ・シンガーと言われても、それはそれで一向に構わない。でも、自分ではシンガー・ソングライターだと思っている」ブルーノート入りしてからのカサンドラはクレイグ・ストリートと組んでブルース/フォーク色の濃い作品を発表してきたが、どうやらここらあたりで、また別の洋服を着たくなり、別の食べ物がほしくなったようだ。それで今回、T.ボーン・バーネットと組むことになったと理解していい。バーネットは48年セントルイス生まれ、テキサス育ちのシンガー・ソングライター、ギタリスト、プロデューサー、映画音楽家(『アメリカ、家族のいる風景』『ウォーク・ザ・ライン ~君につづく道』など)。また、ボブ・ディラン、エルヴィス・コステロらとの活動でも知られている。だから当然、この新作はバーネット色が濃厚。バーネット色ってなんだと言われると困るけど、要するにブルース、R&B、カントリーなどが一体となったアメリカン・サウンド。テキサス育ちのバーネットなので、そこにはテックスメックス(テキサスにおけるアメリカとメキシコの混合文化・音楽)の要素も加わっている。新たな相棒バーネットと組むことによって、カサンドラは確実に自身の世界を広げた! (市川正二) -CDジャーナル 2006年04月号 より引用 』

 いきなりトミー・リー・ジョーンズの新作「メルキアデス・エストラーダの3度の埋葬」を連想させるかのような「Go To Mexico」で幕を開けます。テックスメックス的なアレンジからいきなり野太いエレキ・ベースの低音が入ってきて迫力満点、そしてカサンドラの声、歌唱力は健在そのもの。

 ヴァン・モリソンジョニ・ミッチェル、更にはザ・バンドマイルス等カバーものの選曲にいつも冴えを見せる彼女ですが、今回はTボーンのプロデュースということもあってか、ディランの息子の曲やウィリー・ディクソンの曲に混じってトラッドも取り上げています。彼女の深い声を更にリバーブで深くし、けだるく尾を引くギターとの掛け合いで聴かせる「Red River Valley」なんかは非常に味わい深いです。拙宅の残響の多さではちょっと音量を上げると辛いところはありますが(涙。

 個人的には「アメリカ・家族の居る風景」のためにTボーンが書き下ろしたという「Strike A Match」がとてもよかったです。そう言えばサム・シェパード、しょっちゅうマッチを擦ってました(^_^;)
 

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2006/04/28

One Quiet Night / Pat Metheny

One Quiet Night
One Quiet Night

 少し古いアルバムで恐縮ですが、パットのアコースティックのソロを紹介します。理由はSPケーブルを替えて一番感動したアルバムだから(苦笑。そういえば昔、AF(オーディオファン)で紹介してりゅういちさんにジャケット写真がいいですねえと言うコメントを貰ったこともありました。

1. One Quiet Night
2. Song For The Boys
3. Don't Know Why
4. Another Chance
5. And Time Goes On
6. My Song
7. Peace Memory
8. Ferry Across The Mersey
9. Over On 4th Street
10. I Will Find The Way
11. North To South, East To West
12. Last Train Home

 パット・メセニーが自身のホームスタジオで1本のマイクだけを使って録音した本作は、バリトン・ギターによるワンマン・ソロ・アルバムという点が一風変わっている。バリトン・ギターは通常のギターより低い音程でチューニング、ベース的効果をも狙った特殊なギター。パットの6弦バリトン・ギターは、これまでパットのギターを何本も制作しているカナダ人女性Linda Manzerによる特別モデル。それにしても、バリトン・ギター1本によるソロ・アルバムなんて前代未聞のことだ。パットによればこのアルバム、「純粋に自分自身の探究心、そしてある晩(2001年11月24日)、自宅で演奏を楽しんだ時の喜びを表現するために作られた作品」なのだという。静かなたたずまいだけど、内に情熱を秘めたソロ演奏はクラシカルな美しさに彩られている。ノラ・ジョーンズのヒット曲Don't Know Why、キース・ジャレットのMy Song、ジェリー&ペースメイカーズのFerry Across The Mersey以外はすべてパットのオリジナルで、新曲のほか、『スティル・ライフ』収録のLast Train Homeを再演しているのも話題だ。(市川正二、AMAZON解説より)」

 この紹介文で殆ど語りつくされていますが、チューニングが普通より低く、低音弦の響きが普通のギターと全然違います。といいつつ、今までそれほどうまく鳴らせなかったのですが、SPケーブルをキンバーセレクトにして驚きました。ギターの豊かな響きと低音の深さを今までになく深く再現できてしまいました。表題曲やMy SongLast Train Homeなんか感動ものです。

 NBSのブラックラベルのエージングが済んでいればもっと凄いのかもしれませんね~。(ボソッ(-.-))

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2006/01/10

Higher Ground

 ようやく今年初めての音楽レビューです(滝汗。何しろ年末から怒涛の忙しさで、満足に聴きこむ機会がなかったもので未聴CDが山積状態(>_<)、ぼちぼち紹介していきたいと思っています。まずは昨年の超巨大ハリケーンカトリーナにより壊滅的被害をこうむったニューオーリンズのミュージシャンを救済する目的で行われたHigher GroundのCD化から。アメリカ在住でいらっしゃるjazzaudiofanさんのブログで出たのを知って買い込んでおりました。
Higher Ground Hurricane Benefit Relief Concert
Higher Ground Hurricane Benefit Relief Concert

1: This Joy / Shirley Caesar
2: Over There / Terence Blanchard
3: Go To The Mardi Gras /  Art & Aaron Neville
4:  Basin Street Blues / Diana Krall
5: Never Die Young / James Taylor
6: The House I Live In / Dianne Reeves
7: New Orleans Blues / Marcus Roberts Trio
8: I Think It's Going To Rain Today / Norah Jones
9: Dippermouth Blues / Wynton Marsalis Hot Seven
10: I'm Gonna Love You Anyway / Buckwheat Zydeco
11: Is That All There Is / Bette Midler & LCJO
12: Just A Closer Walk With Thee / Irvin Mayfield Jr.
13: Here's To Life / The Jordan Family
14: Blackwell's Message / Joe Lovano
15: Come Sunday / Cassandra Wilson & LCJO
(LCJO: Lincoln Center Jazz Orchestra)

 概要については、jazzaudiofanさんがAMAZONのレビューコーナーに書き込んでおられますので、ここに再掲させていただきます。

2005年9月17日にニューオーリンズのミュージシャンを救済するためのチャリティー・コンサートがニューヨークで開かれ、アメリカでは公 共テレビチャンネルで全国放映された。その演奏の一部を収録したCDがついにブルーノートから発売された。ウィントン・マルサリスのリーダーシップにより 企画されたもので、コンサートやCDの売上から得られる収益は「Higher Groundハリケーン救済基金」を通じ、被害を受けたミュージシャンや音楽業界関係者/関係企業に寄付される。
 
日本のジャズファンの皆さんで、ニューオーリンズのジャズの復興に少しでも貢献したいと思われる方はぜひCDを購入して欲しい。コンサート自体は 5時間にわたって行われたのですべての演奏が収録されているわけではないが、CDではウィントン・マルサリスを始めとして、ダイアナ・クラールノラ・ ジョーンズダイアン・リーヴスカサンドラ・ウィルソンジョー・ロヴァーノなどが参加。多彩なアルバムに仕上がっている。

 去年のハリケーン被害によるニューオーリンズの惨状には唖然とさせられましたが、やはり多くのミュージシャンも被害を受けられたようですね。ジャズの故郷復興の為、皆さん買いましょう!とはいえ勿論、お情けで買って欲しいというだけではありません。本当に素晴らしい演奏が目白押しなので是非楽しんでいただきたいと思いますし、ライブ盤にしては音質もとても良好です(輸入盤)。

 こういうイベントの常で、まずは一曲目のアップテンポの軽快な曲で観客を一気に乗せてくれます。それに続いて、ウィントンの弟子の中でも売れっ子のテレンス・ブランチャードが観客をクールダウンするが如くしみじみとしたバラード演奏を聴かせてくれます。往々にして理が勝ちすぎるウィントンの弟子にしてはエモーショナルな演奏のツボを心得た人です。
レッツ・ゲット・ロスト~ジミー・マクヒュー作品集
レッツ・ゲット・ロスト~ジミー・マクヒュー作品集

 レッツ・ゲット・ロストというアルバムでも非常に良い演奏を聞かせてくれていますが、このアルバムに客演した歌姫のうち、4,6,15の三人がここでも素晴らしい歌声を聴かせてくれます。もう風格さえ感じるダイアナ・クラール、堂々としたこれぞ正当派ライブ歌唱の見本と言うべきダイアン・リーヴスもさることながら、(自分の好みもあるのですが)LCJOをバックに歌うカサンドラ・ウィルソンの歌唱は素晴らしいです。彼女は異色な楽器とのスキャット共演に良い持ち味を出すのですが、今回は名ヴァイオリニストマーク・オコーナーのフィドルとの絡みが絶品です。

 その他にもノラ・ジョーンズ(彼女はニューオーリンズでのライブをDVD化しているくらいですから思い入れが深いんでしょうね、ブルーノート所属でもあるし)、ジェームス・テイラーベット・ミドラー等楽しめる曲が揃っております。また、ジャズ演奏ではマーカス・ロバーツ・トリオが良いですね。彼等の演奏は先日石井先生宅でベルリンフィルと競演しているのを見たのですが、素晴らしかったです。今回も入魂の演奏です。
 ウィントンは今回は裏方に徹していたのか、押さえ気味です。それが効を奏したか(^_^;)、理屈抜きで楽しめる一枚です。チャリティにもなります、是非どうぞ買ってみてください。

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2005/11/25

Susan Wongでした

 先日の石井先生宅オフでhomさんが持っておられて名前がわからず気になっていたアルバムですが、ふとしたことから分かりました。
アイ・ウィシュ・ユー・ラブ
アイ・ウィシュ・ユー・ラブ

 香港の歌手で何とか・ウォン、ということだったのでフェイ・ウォンしか知らない私は彼女が「雨の日と日曜日は」なんか歌ってたかなあ?でも良い声やん、なんて結構気になってました。スーザン・ウォンさんは香港出身オーストラリア育ちで香港では「女神様」と呼ばれるほど活躍している歌手だそうです。ああ、女神様!

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2005/10/02

Herbie Hancock:POSSIBILITIES

Possibilities
Possibilities

 今日はダイビングの機材をオーバーホールに出すために三ノ宮に出かけました。ついでに阪神優勝記念セール中の上新電機でCDを物色してきました。真っ先に目に付いたのがこれ。ハービーの新譜は何とも豪華なコラボレーションアルバムです。各界の優れたアーチストとの共演により、それぞれのもつ可能性(Possibilities)をジャンルにとらわれずに引き出していこうという意図で制作されています。以前ジョニ・ミッチェルと「サマー・タイム」をレコーディングした時に彼女の持つジャズ歌手としての能力に深く感銘を受けたのがきっかだったようです。

 結果として素晴らしいボーカルアルバムが出来上がってしまいました。ハービーによると、共演したいアーチストをリストアップしていくと、結果的にほとんどがボーカリストになってしまったとのことです。まあポップスの分野は90%以上ボーカル曲だから無理もないと本人も納得してるようです。
 しかし凡百のボーカルコラボレーションアルバムと違うのはやはりハービーのピアノの素晴らしさ。ハービーといえば複雑なブロックコードやモード手法、更には大胆な電子楽器の導入といった高度な技術面が強調されがちですが、素直に彼のアルバムを聴いてみると、ピアノの音色がとても美しいのです。このアルバムでも随所で透き通るように硬質な高音域の響きや流れるようなメロディ、転がるような音粒の美しさを堪能できます。ジャズ特有の不調和音でさえ心地よいのは彼の真骨頂で、出来るだけ良い状態のオーディオシステムで聴きたくなります。
 では各曲のパーソネルと簡単な印象を。ちなみにこれは日本盤で、輸入盤は順番が違うようです。

1. “Stitched Up” featuring John Mayer
Written by John Mayer/Herbie Hancock
Herbie Hancock - piano
John Mayer - vocals, guitar
Michael Bearden - keyboards
Willie Weeks - bass
Steve Jordan - drums
 一曲目の冒頭からいきなりジョン・メイヤーのこれぞロック魂だ!というボーカルに圧倒されます。ハービーは想像以上の出来栄えに自信を持って一曲目にこれをもってきたようです。(輸入盤でも一曲目です)スティーブ・ジョーダンの硬質なスネア・ドラムもよくマッチしています。

2. “Safiatou” featuring Santana and Angelique Kidjo
Written by [Harold Alexander]
Herbie Hancock - piano
Carlos Santana - guitars
Angelique Kidjo - vocals
Michael Bearden - keyboards
Chester Thompson - organ
Dennis Chambers - drums
Raul Rekow - percussion
Karl Perazzo - percussion
Benny Rietveld - bass
 さすがに超大物サンタナだけあって、もう完全にサンタナ色に染まっています。アンジェリーク・キジョーのボーカルも強烈な個性を放ちます。だからハービーはもちろんチェスターやデニチェンなど大物もサポートしているのですが、影が薄いです。この曲だけはこのアルバムよりサンタナ自身のアルバムに入れたほうがよかったかも(^_^;)。

3. “A Song For You” featuring Christina Aguilera
Written by Leon Russell
Herbie Hancock - piano
Christina Aguilera - vocals
Michael Bearden - keyboards
Bashiri Johnson - percussion
Nathan East - bass
Teddy Campbell - drums
 アメリカ音楽界の仙人レオン・ラッセルの名曲ですがーーこれは驚きました。クリスティーナ・アギレラ

ものすっごくうまい!!

これほどの歌唱力を持っていたとは寡聞にして知りませんでした。まあ当のハービーが一番驚いたらしいですから無理もないか。ちなみにファーストテイクでハービーが腰を抜かすほど驚いて完璧だと思ったらしいのですがアギレラが満足できずに6テイクも取り直したらしいです。それだけに、カバーされることの多いこの曲ですがこれ以上の出来のものはないんじゃないかと思えるほどの出来栄えになっています。ネイサン・テディのリズムセクションも堅実にサポートしており、更にバシリのパーカッションがよいアクセントをつけています。

4. “I Do It For Your Love” featuring Paul Simon
Written by Paul Simon
Herbie Hancock - piano
Paul Simon - vocals, guitar
Pino Paladino - bass
Steve Jordan - drums
Cyro Baptista - percussion
Jamey Haddad - percussion
Gina Gershon - jew’s harp
 なんとポール・サイモンまで参加するとは!それも名作「きみの愛のために」です。彼の場合、他流試合を挑むというよりはどんな音楽も自分の糧として取り込むタイプですのでボーカルスタイル自体全く変える事は有りませんが、バックの演奏と心地よく溶け合って完全にジャズピースになっています。アレンジではパーカッションセクションが大変凝っていてオーマニならこの再生、やりがいがありますよ。

5. “Hush, Hush, Hush” featuring Annie Lennox
Written by Paula Cole
Herbie Hancock - piano, keyboards
Annie Lennox - vocals
Steve Lewinson - bass
Pete Lewinson - drums
Tony Remy - guitar
 私の大好きなアニー・レノックスの参加は大変嬉しいですね。曲はエイズの子供を持った親の悲しみを切々と歌うバラードですが、母親となったアニーの慈愛に満ちた歌声が心に沁みてきます。自分のシステムではちょっとピアノの残響が多すぎるのが残念でした。まだ吸音材が足りないか!?

6. “Sister Moon” featuring Sting
Written by Sting
Herbie Hancock - piano
Sting - vocals
Michael Bearden - keyboards
Lionel Loueke - guitar
John Patitucci - bass
Cyro Baptista - percussion
Steve Jordan - drums
 もともと歌のうまさには定評もありますし、ジャズ界の面々との付き合いも深いスティングなのでそうビックリする事も無いと思っていましたが、ハービーと出会って更に進化したようです。彼独特の裏声を抑え気味に歌いこんでおり本当に風格のあるジャズ歌手の雰囲気です。Lionel Louekeというギタリストはアフリカ出身の天才ギタリスト。アフリカはリチャード・ボナにしてもそうですが、凄い人が次々と出てきますね。ここでも非常に個性的なリフを聴かせてくれます。

7. “When Love Comes To Town” featuring Jonny Lang and Joss Stone
Written by U2
Herbie Hancock - piano
Jonny Lang - vocals, electric guitar
Joss Stone - vocals
Greg Phillinganes - keyboards
John Robinson - drums
James Harrah - acoustic guitar
Reggie McBride - bass
 原曲はBONOとBB KIngという濃い二人の掛け合いがスリリングなU2のナンバーですが、ここでは二人の若いギタリストが凄くブルージーなアレンジで楽しませてくれます。さすがにボーカルの迫力は本家には及びませんが。

8. “Don’t Explain” featuring Damien Rice and Lisa Hannigan
Written by Arthur Birdsong
Herbie Hancock - piano
Damien Rice - vocals
Lisa Hannigan - vocals
Tomo - drums
Vyvienne Long - cello
Shane Fitzsimons – bass
 ビリー・ホリデイの名曲でヘレン・メリルのバージョンも有名なスタンダード中のスタンダードを二人の若いボーカリストが果敢にチャレンジしています。ピアノ、ベース、ドラム(当然ながらブラッシュ)の基本的なジャズ・バラード演奏にチェロをかぶせるという非常に斬新なアレンジがとても美しいです。

9. “I Just Called To Say I Love You” featuring Raul Midon
Written by Stevie Wonder
Herbie Hancock - piano, keyboards
Raul Midon - vocal, guitar
Stevie Wonder - harmonica
Greg Phillinganes - keyboards
 ラウル・ミドンという人は全く知りませんでしたがスティービーの名曲をうまくこなしています。スティービーもハーモニカで参加しています。

10. “Gelo No Montana” featuring Trey Anastasio
Written by Trey Anastasio/Herbie Hancock/Cyro Baptista
Herbie Hancock - piano, keyboards, organ
Trey Anastasio - guitar, vocals
John Patitucci - bass
Cyro Baptista - percussion
Steve Jordan - drums
Jennifer Hartswick - vocals, trumpet
“Bassy” Bob Brockman - trumpet/flugel horn
Paul Shapiro - tenor sax/flute
 最後は非常に美しいインスト曲で幕を閉じます。日本盤がこれを最後に持ってきた意図がよく判ります。あまり日本のレコード会社のやり方にはいい印象を持った事が無いのですが、ボーナストラックもいれず、この曲を最後においたという見識には拍手を贈りたいですね。元フィッシュのトレイ・アナスタシアが切れのいい演奏を展開すれば、あまりにも売れっ子過ぎてマンネリがちにさえ思えるセッションプレイヤー・ジョン・パティトゥッチも、今回ばかりはハービーの期待にこたえようとしてか、よく歌うベースプレイを聴かせてくれます。featuring Johnとしてもいいくらいです。

 ジャズの苦手だけどどんなものか聴いてみたいという人にも、ジャズが好きだけどたまにはポップス系統のアルバムを買おうかなという人にも、もちろん創価学会会員でなくても(^_^;)、万人が楽しめるいい作品ですよ。

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2005/05/28

ザ・ローリング・ストーンズ・プロジェクト

ザ・ローリング・ストーンズ・プロジェクト
ザ・ローリング・ストーンズ・プロジェクト
abstract1 ( front cover design: Abstract#1 by Ronnie Wood )  2年前イラク戦争が始まった次の日という異様な雰囲気の中、大阪ドームでローリング・ストーンズのリックス・ツアー大阪公演は行われたのでした。気のせいか「Gimme Shelter」でリサ・フィッシャーが熱唱する「War!Children!」の熱の入り方が尋常でない気がしましたし、キースは気が立っていて「Monkeyman」の時にミックと喧嘩してました。 (後にモンキーマン事件と語り継がれている---かも) (ご主人様またいい加減なことを(ーー;)) (そうだなキースの機嫌の悪いのはいつものことだからな(^_^;)、でも喧嘩はホントよ)  さて、その時のツアーメンバーでホーンセクションのTim Riesがとっても素敵なアルバムを作ってくれました。ストーンズのナンバーをジャズにアレンジしてしかも超豪華ゲストが参加、しかもSACDです。ストーンズファンならずともこれは絶対買いです!!一応リックスツアー時のメンバーをおさらいしといて本題に入りましょう。これはこれでもうアルバムになってますのでご存知のかたも多いでしょう。 ROLLING STONES LICKS WORLD TOUR 2002/3
Mick Jagger Keith Richards Charlie Watts Ronnie Wood with Chuck Leavell (kb) Darryl Jones (b) Lisa Fisher (back vo) Bernard Fowler (back vo) Blondie Chaplin (ba vo) Bobby Keys (sax) Tim Ries (sax,kbs) Kent Smith (tp) Michael Davis (tb)
 さて、このアルバムにはストーンズからはキース、ロニー、チャーリーの3人が、サポートメンバーからはダリル、リサ、バーナード、ケント、マイケルが参加しています。もうストーンズツアーの顔となっているボビーが参加していないのはちょっと残念だけど、同じサックスのティムの作品だからまあ仕方ないでしょう。ダリルはマーカス・ミラーのあとにマイルス・デイヴィス・グループに参加したことで有名になった一流ベーシストですが、ビルが抜けたあとはストーンズのツアーに無くてはならない人になりましたね。  そしてゲストミュージシャンですが、ジャズ畑からの素晴らしい人たちがずらりと顔を揃えました。  John Scofield, Bill Frisellといった名うてのギタリスト、小曽根真との付き合いも長い凄いテクニックを持ったJohn Patitucci, Clarens Pen、そのほかにもJeff Ballard, Brian Blade, Bill Churlapといった渋いメンバーが顔をそろえます。  そして真打のヴォーカリストは----- Norah Jones:上記の大阪公演で日本初公開だった「Wild Horses」をノラ流にしっとりと歌い上げます。素晴らしい出来栄えで鳥肌が立つほど!ビル・フリゼールのギター、ティムの奥様のハープとのハーモニーも美しすぎるほどバッチリと決まってます。ティムもこの曲だけはノラの参加を前提にアレンジしたそうです。ライナーで
Norah, you are truly a rare bird with a song in your heart.
と惜しみない賛辞を送っています。 Sheryl Crow: キースの代表的ナンバー「Slipping Away」をキースとデュエット!大阪公演でのキースの歌い方はひたすらダルでしたが、ここではシェリルが参加することにより小粋な曲に仕上がっています。  おっと忘れてました、ティムのテナーも最高です。特に「Wainting on a Friend」にはにやり!これってソニー・ロリンズが参加したので有名な曲なんですよ。ソニロリに負けず悠々と太いブローを聞かせてくれます。  曲目は下記のとおり。誰がどこに入っているのか、想像してみるだけでも楽しいですよ。ちなみにフロントジャケットはロニー画伯の抽象画でなかなかの優れものです。いいジャケットを見るといつも思うのですがCDサイズはものたりませんねえ、アナログで出ないかなあ。 01:(I Can't Get No)Satisfaction 02:Honky Tonk Women(original trio) 03:Slipping Away 04:Street Fighting Man 05:Wild Horses 06:Waiting on a Friend 07:Paint It Black 08:As Tears Go By( bonus track for Japanese edition) 09:Honky Tonk Women(Keith'a Version) 10:Ruby Tuesday 11:Gimme Shelter 12:Belleli(Tim's original)

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2005/03/16

シルバー・レインにはまる

 先日のマーカス・ミラーのライブに間に合わなかった「シルバー・レイン」が二日遅れで到着し、はまりまくっております。
シルヴァー・レイン
マーカス・ミラー

by G-Tools

 

2001年に発表した『M2~パワー・アンド・グレイス』がグラミー賞を受賞したマーカス・ミラーの4年ぶりのアルバム。エリック・クラプトンが歌うエリックとの共作「シルヴァー・レイン」の他、ベートーベンの『ムーンライト・ソナタ』、スティーヴィー・ワンダーの「レゲ・ウーマン」やメイシー・グレイをフィーチャーしたプリンスの「ガールズ&ボーイズ」、ジミ・ヘンドリックスの「パワー・オブ・ソウル」、エドガー・ウィンターの「フランケンシュタイン」などユニークな楽曲を取り上げるアグレシッヴなブラック・フュージョン・アルバム。
 20代半ばでジャズの巨匠、マイルス・デイビスのアルバムをプロデュース、その後はジャズのみならずブラック・ミュージック界のトップ・プロデューサーとして君臨するマーカスの才能が炸裂。(AMAZON解説より)

 前回のグラミー賞受賞作にして故グローヴァー・ワシントン・Jrにささげられた「M squared」も傑作でしたが、今回の作品はより親しみやすくかつ高度な演奏も楽しめる作品となっています。下記曲順は日本盤です。

1.イントロ・ダクション(マーカス)
2.ブルース・リー(マーカス)
3.ラ・ヴィレット(マーカス、ライラ・ハサウェイヴォーカル)
4.ビハインド・ザ・スマイル(マーカス)
5.フランケンシュタイン(エドガー・ウィンター
6.ムーンライト・ソナタ(ベートーベン
7.レゲ・ウーマン(スティーヴィー・ワンダー
8.パリ(マーカス)
9.シルヴァー・レイン (エリック・クラプトン+マーカス、クラプトンヴォーカル)
10.メイク・アップ・マイ・マインド(マーカス)
11.ガールズ・アンド・ボーイズ (プリンス、メイシー・グレイヴォーカル)
12.ソフィスティケイテッド・レディ(デューク・エリントン
13.パワー・オブ・ソウル(ジミ・ヘンドリックス
14.アウトロ・ダクション(マーカス)

15.イットル・カム・バック・トゥ・ユー (日本盤ボーナス・トラック)
16.シルヴァー・レイン ( ジョーイ・キブル(Take6)ヴォーカルバージョン )

 いきなりのスラップのパンチの効いた「イントロ・ダクション」に続き、オリジナル作品「ブルース・リー」でのマーカス・ミラー(b)、プージー・ベル(ds)の作り出す強烈なグルーブは、先日のノリまくりのライブそのままのマーカス・ワールド。
 ただ、今回はそれだけで無く楽曲の素晴らしさも特筆ものです。前作はカバーがやや少なめで正直言って「Goodbye Pork Pie Hat」を過ぎたあたりで少し退屈になりましたが、今回はバラエティにとんだカバー(太文字参照)を随所にちりばめていて全体としての流れが緩急自在となっています。マーカスのオリジナル曲も楽曲として完成度が高く、また一本調子にならないので最後まで聴き飽きないですね。それに、間奏的な短い曲がちりばめられており、息抜きとともにマーカスのソロが楽しめます。 
 また、常連のライラ・ハサウェイに加え、クラプトン、メーシー・グレイ等のヴォーカルも楽しめ、ホント捨て曲が無いと言う感じです。
 オーディオ的にもずしんとくる重低音が楽しめます。ボブ・マーリーのエンジニアを努めていたデニス・トンプソンを最近はマーカスも起用しているだけあり、表題作に代表されるようにレゲエ独特のずしんとくる重低音を重視して作っているようです。マーカスファン、プージーファンのオーディオファイルにはたまらない録音です。こりゃ、もしサブウーファーを入れたらどうなるかなあ?ちょっと怖かったりして。

 

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2005/03/04

Face The Music

There maybe trouble ahead

But while there's music and

Moonlight and love and romance

Let's face the music and dance

(from "Let's Face The Music And Dance", lyrics by Irving Berlin) 

ホエン・アイ・ルック・イン・ユア・アイズ
ダイアナ・クラール ジョン・クレイトン ラッセル・マローン ジェフ・ハミルトン
ユニバーサルクラシック  1999-05-21


by G-Tools

 いつもお邪魔させていただいているたかけんの名刺は元FJAZZフォーラムマネージャーにして三重県を中心に活躍されているサックス奏者たかけんさんのHPです。
 そのHP内のたかけんBBSで、クリント・イーストウッドのアカデミー監督賞の話からダイアナ・クラールの話題に移り、私が彼女の「Let's Face The Music And Dance」が好きだと書いたら、

face the music

という成句の意味について教えていただきました。

 一応この曲について説明しておくと、ジャズのスタンダードの名曲で、もともとはフレッド・アステアの映画「艦隊を追って」の挿入歌でした。作者はアメリカのシューベルトと呼ばれたアーヴィング・バーリン。バーリンという名前を知らない人はいても「ホワイト・クリスマス」を知らない人はまずいないでしょう。その作者です。
 さてこの成句の意味ですが、私は単純に「音楽を聴いて(踊りましょうよ)」と思っていたのですが、

face the music = acccept the consequence

という意味になるそうです。結果を受け入れる、それも悪いほうの結果を甘んじて受け入れる、更には罰を受けるという意味まであるようです。へ~~(何へえだ?。もちろんこの歌では「音楽を聴く」方ともかけてあり、それを知って聴いてみると実に洒脱な歌ですね。

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2004/09/17

Patricia Barberの新譜、気合が入ってます。

Live: A Fortnight in France
Patricia Barber

 以前記事で取り上げたPatricia Barberの新譜が届きました。初のライブということでかなり気合が入ってます。アップテンポの曲も多く、各楽器のソロパートも十分とってあります。パトリシアのピアノがこれほど凄いとは今まで気が付かなかったほど。失礼ながらDiana Krallのピアノがお孃さん芸に思えてしまうほどでした。伴奏者ではMichael Arnopolのベースが聴きものです。殆どのアルバムで彼女と付き合ってきただけに息がぴったり合っているのはもちろんですが、ライブなので自らも十分楽しんで弾いている様子が伺えます。

 曲ではビートルズのカバー曲の「Norwegian Wood」を楽しみにしていましたが、大体の予想通りの歌唱法で安心して楽しめました。後半のソロの取り合いではギターのNeal Algerのコードチェンジして主題を演奏しているのが面白かったです。オリジナルでは「Whiteworld」の摩訶不思議な歌詞が面白い上に演奏もスリリングでよかったです。

 惜しいことに私のシステムではやや残響が多く、特にパトリシアのピアノがもう少しすっきりと聴けたらなあ、と思いました。今後の課題ですね。

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2004/09/02

Like A Little Fish

 前回の続きになりますが低音といえばベースですね。Starlessさんのような自身の演奏経験が無いので細かいテクニックに関しては分かりませんが、El.b.に関して度肝を抜かれたという経験がたった一度だけあります。ジャコ・パストリウスのソロ・デビュー作「Jaco Pastorius」です。そのスゴさというのは一聴して分かりました(まあ分からんほうがおかしいですけど)。

 今でこそウェザーリポートの名作”Heavy Weather"でのジャコの演奏パートというのは理解できている(つもり)のですが、実は買った当時、あの流麗なメロディーラインがジャコのものとはつゆ思わずザビヌルがシンセで弾いてるのだろうと思っていました。もちろん当時「ジャコ加入の衝撃」というような記事はたくさん目にしていたと思うのですが、曲作りのほうに貢献してるのだろうなんてのん気に聞き流していたわけです。そんな折りも折り、このデビュー作があまりにも高い評価を受けているので、まあどんなもんか聴いてやろうてな調子で貸しレコード屋さんで借りてきました。
 もう一曲目バードのカバー曲”Donna Lee"でぶっ飛びました。こ、これがベース?じゃあひょっとしてWRでのあのメロディーラインも??てなもんです。

 Joni Mitchelの”Shadows and Light"ツアーをはじめ数多くの共演のあったパット・メセニーに「ジャコがいなければ現代のエレクトリックベース奏法はなかっただろう」と言わしめたほどですから、未だにジャコへのトリビュートアルバムが引きもきらず登場するのも頷けます。オーディオファイルにはブライアン・ブロンバーグの”Jaco"が有名ですが、私が個人的に好きでよく試聴に使っているのは

The One/Ponta Box   の一曲目   "Like A Little Fish"

 ジャコがらみで言うとPonta Boxでも初代ベースの水野正敏さんの方がジャコ流ベースの教則本まで書いておられて有名ですが、このアルバムではバカボン鈴木さんにバトンタッチしています。そのメンバーチェンジの不安を吹っ飛ばすかのように、一曲目で痛快にグルーブしまくるジャコ流ベースを弾かれたらもう快感としか言いようがありません。実は私幸運なことに、この面子での神戸チキンジョージでのライブにめぐり合えたんですが、この曲がやはり最高でした。そのあと続いてWRメドレーまで聴かせてもらって大変美味しい思いをしました。

 ところでこの曲が何故ジャコへのオマージュなのかお分かりでしょうか。関西では雑魚のことを「じゃこ」というんですね。だからPONTAさん流のしゃれで
ジャコのように(弾く)」→「雑魚のように」→「Like A Little Fish
になったんだと私は確信しております。

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2004/08/27

Patricia Barberの新譜が出る!

Patricia Barber - Gigs

 現在のジャズシンガーの中でも傑出した個性を持つパトリシア・バーバーの新譜がでます。嬉しいことにライブアルバムのようです。シカゴのナイトクラブを本拠地とする彼女ですが、今回はフランスでのライブのよう。彼女のように知的でエスプリあふれるシンガーはきっとフランスでも受け入れられていることと思います。日本にも来てほしいですね。

 彼女のことをはじめて知ったのは、「Nightclub」でした。独特の呟くように言葉を並べていく歌唱法でスタンダード曲を料理していく才能にビックリしました。特におそらくカントリー系の曲と思われる”You Don't Know Me"を見事にバーバー流ジャズに昇華させたのには痺れました。後年オーディオファンにはおなじみのジェニファー・ウォーンズのカバーも聞きましたが胸に沁み入る度合いが全く違いました。
 一方オリジナル曲にも独特の才能を見せ、「Modern Cool」中の”Postmodern Blues”のインテリジェンスあふれる歌詞、独特のピアノタッチにも驚かされました。

 今回のアルバムには「ノルウェイの森」が入っているようで、バーバー流解釈が楽しみです。

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2004/08/18

シャカタクチック・デイズ

 表題のような英語はありません(当たり前か)。「わが人生のハードタイムズに聴いていた音楽」とでも訳しましょうか。

 わが愛車ビートも13万キロを超えてもなお元気で走り続けているのですが、流石にあちこちガタは出てきています。特にラジオの受信状況が最悪になってきているのでカセットテープ(未だに)を聴く機会が多くなってきました。先日ブラインドでカセットケースから選んだテープにShakatakのNIGHT・BIRDSが入っていて懐かしく聴いてました。

 この曲を聴いていたのは社会人になって間もなくの頃ですから1982-3年だろうと思います。以前にも少し書いた事があるのですが、社会人になって数年は我が人生のオーディオ暗黒時代なんです。家に帰れば寝るだけという生活、そのうちCDなるものが出てきてますますオーディオ意欲が失せていきました。だから家で音楽を聴いていたという記憶がオールモストナッスゥイング、覚えているのは殆ど車の中。
 とはいえ、AU-607というサンスイの重たいアンプは引越しのたびに持ち歩いていたのだから、最低限のオーディオ魂(^_^;)は残っていたんでしょうし、「ミュージック・マガジン増刊 ザ・ゴールデン80’s」に載っているアルバムの殆どは一応知っているのだから取り敢えずは聴いてたんでしょうけど。
DSCF0029

 でもって、覚えているアルバムというのが

Shakatak/NIGHT・BIRDS
中島みゆき/予感
Cyndi Lauper/She's So Unusual
Eurhythmics/ベストもん
Sade/Pride

くらい。10年近くでこの程度。いやあ貧困だなあ。でも、どこに勤めていてどういう辛い事があったかとか、そういうイメージが付随しているので強烈に印象に残っているんですよね。例えばSHAKATAKなら先日恐ろしい事件のあった加古川は宝殿あたりの道を、買ったばかりのスカGで夜遅くに晩飯を食べるところを探して走らせていたとか、予感なら淡路島の海沿いの道を落ち込んで気晴らしに走らせている時とかね。

 一応Shakatakの名誉のために言っとくと、このアルバムは決して軟弱なカーデート用BGMなだけではありません。真剣にオーディオで聴いてもピアノのタッチの弾ませ方や、樂器的に使っている女性ボーカルの浮かばせ方等、結構楽しめる英国ジャズの傑作のひとつだと思います。

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